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東京都在住のオーディオマニアです。リビングオーディオです。狭いスペースを与えられてやっています。MPS-5,Marklevinson No32Lなどを愛用中。クラシックはほとんど聞かず、ポップス、ラッ…

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オーディオデザイン DCHP-100の私的レビュー


「私がオリジナルだ。」 (ルパンVS複製人間より、マモーの台詞)

以前からこのアンプについてはいつか書くだろうことは分かっていた。
このアンプは他のヘッドホンアンプたちとは根本から違う素性が、
聞いてすぐさまに感じられたからだ。
ただし、この特別なシングルエンドヘッドホンアンプのためには
特別なキーワードが必要だ。
それはオリジナリティという言葉だろうと思う。
このアンプのルックスやボリュウムパーツは見慣れたものではない。
ここではオーディオデザイン オリジナルのアンプを
生み出したいというある種の覚悟が強く感じられる。
また、このアンプは適切なボリュウム調整さえできれば、
上流からの音を素のままに表現することに長けるようだ。
送り出しのもつオリジナルの音が耳に届くと思う。
音調は奇抜ではないが、
そういう意味でもオリジナリティはある。
私のオーディオは、
人と違う、自分だけのオーディオをやりたいという側面と、
記録されたあるがままの情報全てを、
改変しないで出し切りたいという側面が
相克しながら形作られている。
完全に相似形ではないにしろ、
DCHP-100はそういう葛藤が一つの形になったようで
その意味で興味深い。

外観:
斬新である。
メタリックブルーとアルミシルバーの
ツートンカラーのオーディオ機器はあまり見たことがない。
計測機器のような冷静かつ精密な面持ちである。
持った重さはやや軽く、
ライトな味わいの音が出てきそうな予感がする。
中央やや右寄りに二重構造のボリュウムがある中央のツマミで粗動、
周囲のダイアルで細動する。
粗い調節と細かい調整の両方に巧みに対応する。
これはアドバンスト L-padアッテネーターといわれる、
特殊なボリュウムである。カタカタッと軽快に回るので、
操作感はかなり小気味よい。
中央のツマミを0dBに合わせた状態が音が最も澄み切るようだ。
この状態で周囲の粗動ダイアルを動かして微調整するのが、
音質的にはいい。
入出力はRCAのみである。
このヘッドホンアンプをJorma PRIME RCAでKLIMAX DSに
そのまま結線すると、アンプのボリュウムを完全に絞りきっても、
かなり盛大に音が出た。
私は普段はオフにしているDS内蔵のボリュウムを絞ることで、
これに対応している。
なお発熱はほとんどないが、筐体の両脇にはヒートシンクを完備する。
フロントパネルには他にヘッドホン1、2と、そのセレクター、
そしてpreferenceとGainのトグルスイッチが付いている。
preferenceをONにすると
高周波ノイズを除去するフィルターが入るようだが、
聴感上は焦点が甘くなるようである。
私はOFFつまりフィルターを介さないStraightを常に選んでいる。
Gainは様々なヘッドホンに対応するためのものであるが、
こちらも聴感で0dBを選択している。
足は四点支持、いや正確には2+2点支持と言うべきだろう。
前の2つはパネル両脇のアルミの支柱であり、
後はゴムのような材質のインシュレーターが
前の2本よりも狭い間隔で底板に直接取り付けられている。
前2つと、後2つの足の材質や構造が
全く違うオーディオ機器はあまり記憶にない。
全体に端正な印象であり、ピュアオーディオの機器というよりも、
実験室にある計測器のような雰囲気があり、
好感が持てる。(音もそうだが)
どこか軽みを感じさせる、絶妙な気分があり、
重厚長大、物量投入一辺倒のハイエンドアンプばかりでは
面白くないと思っていた私を喜ばせるし、
ボリュウムやカラーリングに、
他にはないオリジナリティが発揮されていて、これも嬉しい。

音質:
なかなか絶妙である。
パッと聞きではなかなか特徴の掴めないフラットな音調だが、
長期の試聴で、その傾向はおのずと知れた。
ここにまずあるのは無邪気なほどに素直な音だ。
ディスクに記録されたオリジナルの音を
ストレートに出してくる感じがある。
これは計測器的な冷静沈着な側面であるとも言える。
逆に言えば音楽の内容に寄り添うような鳴り方は一切しない。
他のアンプが大きな振幅を誇示して、グッとくる部分を
このアンプはサラリと演ってみせる。
これがもともとの音だと言わんばかりだ。
狡猾な音作りは微塵も感じないモノだ。
安定性と正確さが優先された音で、美音を演出する傾向が全くない。
そのかわり、細かな音を拾い上げる能力には素晴らしいものがある。
これでこそヘッドホンを使う価値があろうというものだ。
それでいて解像度の高さが際立ちすぎた、
ギスギスした音調でもない。
これは各楽器の分離感よりは、
多くの音源が一体化し、
一斉に鳴っている雰囲気を重視するからだろう。
また、広いレンジの中に音楽信号の全てを内包する、
意外な懐の深さは安定性の高さの証である。
音源内の全ての音が、DCHP-100に管理され、はみ出したり
勝手に独り歩きしたりしないようにできている。
音場感は広さや狭さという言葉で表現できない。
その音楽に与えられた分だけの空間を過不足なく聞かせる。
また、DCHP100の一音、一音の透明感はすこぶる高いものがあり、
注意深く成形、研磨された光学レンズを通した光、
風景を眺めるような雰囲気を感じることもある。
音のエッジは丸くもなく、また尖るでもない。
音の輪郭が過剰に表現されることを意識的に避けているようだ。
高域方向へも低域方向へも十分に伸びている音である。
中域はまさに中庸。濃くも薄くもない絶妙なサジ加減、
いや絶妙な軽みがあると言えよう。
ただ、この帯域に濃厚さや、まぶしいほどの明るさを求める方には
このアンプは合わないと思う。
全帯域はやや柔らかな音触であり、
B~B2あたりの鉛筆で
カスレなく描写されたデッサンを眺めるような印象である。
音の締め上げを重視する向きには
このサウンドはどうだろうか。
キツイ音ばかりで辟易しているという方は歓迎だろう。
スピード感は速すぎず、遅すぎず。
これみよがしに誇示するところがなにもない。
なお、小音量時でも腰砕けない音であることも特筆すべきだ。
これは特殊なボリュウムパーツの威力であろう。
さらに、しっかりした電源部があるようで、
HD800をグリップよくドライブできるので、大音量にしても不満がない。

ジャンルで言えば
アニソンにこれほど良く合うアンプはあまりないように思う。
実物のオーケストラをホールに入れて録音するような
空間のリアリティを要求するソフトよりも、
仮想空間上に展開し、各音源が一線にバランスよく並んだような
やや二次元的な、打ち込みの音楽にマッチングがある。
そして、全体を支配する絶妙な軽みもアニソンに合うように思う。
アニソンと言われる音源を、
それほど多く持ち合わせているわけではないが、
こうして多くのアニソンが在るべき様に鳴っているのを聞いていると、
いかに偶然にしろ、このアンプが時代のニーズにマッチした
オーディオマシーンであることを痛感する。
CD,SACDプレイヤーやファイルプレーヤー、
あるいはインターコネクトケーブルの実力を測るための
普遍的なものさしとしての意味合いも個人的には感じられた。
あたりまえといえばそれまでだが、
このアンプは非常に上流の機器のクォリティに音が左右されやすい。
また上流からのRCAケーブルの品質にもかなり敏感である。
このアンプの評価についてディスカッションする場合は、
他のヘッドホンアンプ以上に上流機器、
ケーブルの条件を揃えるべきである。

KH-07Nとの比較が気になるが、
価格差云々以前にこれは全く異なる音調のアンプである。
KH-07Nの音は主観的に音楽を奏でるアンプであり
DCHP100は客観的に音楽を見るアンプである。
またKH-07Nの音は
バランス対応の高級なヘッドホンアンプの音調を意識させる、
ダイナミックで立体的な鳴りを指向しているようにも思うが、
DCHP100はあくまでも
シングルエンドのヘッドホンアンプの素性を大切にし、
その枠をあえて越えようとしない
フラットな音調=慎ましさがあるようだ。
これは日本人の軽妙で中庸な感性が生きたアンプで、
KH-07Nとはやや異なる性質を持つモノであるから、
並列しての使用は不可能ではないはずだ。
個人的な印象では、上流機器を調整して絶好調の状態で鳴らせば、
DCHP-100の方が、
アニソンをそれらしく聞かせてくれる確率は高いかもしれない。
もちろん、KH-07Nを買うのもよいが、
DCHP100をあえて選んで、
差額で高級なインターコネクトケーブルを買って、
同等以上の音質を狙うのも面白いのではないか。

個人的な印象では
ASUKAのマスターラインフィルターとの相性が良さそうに思う。
このアンプはクリーン電源を積んでおり、
電源部が弱いということはないが、
もっと強烈な音質的なインパクトが欲しいな
と思わせる瞬間はないこともない。
そこにASUKAのマスターラインフィルターがあれば、ということである。
もうすぐ出る廉価版のラインフィルターでもよいかも知れない。
どなたか試してみてくださらないだろうか。
これらがタッグを組めば、
この上なく清冽な音がほとばしるのではないかと予想するのだが。

まとめ:
このアンプは二回、自宅で試聴しており、
合計すると、2ヶ月間ほど毎日聞いていた。
特徴があると言えばある、ないと言えばない音で、
レビューをまとめるのに、大変、骨が折れるアンプだった。
ここまで使い込んでしまうと、
今、いつもの場所にDCHP100がないのが、どうも物足りない。
音の素性の良さは本物に思えたので、借り物でなければ、
電源や置き方をさらに工夫し、
自分風に磨き上げたいと思わせるアンプだった。

音楽には様々な聞き方があり、好みは分かれている。
レビューを読んで興味をもったら、
やはり試聴してみるのが一番だと思う。
オーディオでは、ある人にとって最高の音が、
他の人にとっては最悪な音でありうる世界である。
普遍性など、あるようでない。
例えば、だいたい、
普遍的なアニソンのあるべき鳴り方などというものがあるとは思えない。
私個人がこうあって欲しいと思っているに過ぎない。
普遍性というのはオーディオにとって、音楽にとって常に難題だが、
DCHP100はオリジナリティという鍵を用いて、
無謀にもそこへ近づこうとした形跡はある。
それが完全に成功したかどうかは、リスナーが判断すること。
ただ、私はその努力と、理想へのピュアな憧れに払う対価として、
22万円ちょっとの価格は十分に釣り合うもののように思っている。

追伸:
上奉書屋は2012年度より万策堂として独立しました。ご興味のある方はどうぞ。

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No32L

MARK LEVINSON

No32L

¥3,360,000(税込)

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Mark levinson No.32L

Marklevinson No.32Lの私的レビュー

なにを今更、と思うかもしれない。
なにしろ、もうデビューから10年ほど経過したプリアンプである。
この10年間にオーディオの世界はずいぶん変わったように思う。
PCオーディオとコンパクトで高性能なデジタルアンプの出現、アナログの復権など。
このアンプが発売された当時の私には思いもかけないことであった。
しかし、プリアンプの世界に関して言えば、根本的な変化はほとんどないのではないか。
まだまだ、このプリアンプの存在意義は大きいと思う。
高価にもかかわらず、かなりの台数が売れたせいで、
このプリアンプは中古で時々見る。
それらは新品の半額近い価格で購入可能である。
一方、この9年間につぎつぎと他社の高級プリが市場投入され、かなり役者が出揃った感もあるし、(特にジェフのクライテリオンのオンステージなど)
またマークレビンソン本社でも次期フラッグシッププリの開発が進んでいる。
プリアンプ好きを自認する私には幸せな時代かもしれない。
そういう今、この時だからこそNo.32Lのインプレを述べ、他の高級プリと比較し、
その存在意義を確かめてみたい。
外観:
大掛かりな二筐体構造を持つプリアンプである。
コントロール部+電源部の筐体は真っ黒で、やや薄く、重たい。
こちらの筐体、夏は結構熱くなるし、トランスの唸りもかすかに聞こえる。
オーディオ回路を収めたもう一つの筐体は、
コントロール部+電源部よりやや軽くグレーのフロントパネルがあしらわれている。
デザインは一目でマークレビンソンと分かるものである。
足は金属とゴムを組み合わせた四足で
一度置くとピタッと棚板に吸い付いて、まるで動かしにくくなる。
大きいとは言っても、ひとつひとつの筐体の背は低いので、
ラックへの格納は難しくない。
これらを左右二本のDCケーブル(ベルデン製)でつないでいる。
非常に豊富な入出力があるが、
各入力ごとのネーミング、ゲインなど、
実に多くの設定が可能で、左右のバランス調整、位相反転はもちろん、
その数々の機能は多すぎて書くのが面倒でさえある。
とにかく、トーンコントロール以外は何でもできるといってよいでほど、多機能である。
ボリュウムコントロールは後期型では速度感応式であり、なめらかで使いやすい。

音質:
ノイズは非常に低く抑えられ、
左右のチャンネルセパレーションが非常に良く、
非常にピュアで歪みが少なく、
そしてパワーアンプドライバーの異名をとるほどの力に溢れた、
超優秀なプリアンプである。
このプリの前段機器の能力をロスせず、
極限まで引き出した状態でパワーアンプに渡す、
そういう意識が強烈に感じられる。
このアンプを使うと38cmウーファーの動きが明らかに良くなる。
このプリアンプがパワーアンプに働きかける力の強さの現われである。
バランス入力とアンバランス入力の音質差がほとんどないこと、
二系統同時出力を行っても音質的に全く変化がないことも特筆できる。
弱点があるとすると、やや音が暗いというか、
若干落ち着いたトーンに感じられることがあることぐらいである。
これは現代のマークレビンソン製品全体に言えることでもある。
このNo.32Lの最も優れた特徴は、
どんなパワーアンプとあわせても、
そのメーカーの純正ペアであるプリアンプ以上の能力を発揮して、
潜在能力を十二分に引き出すことであろう。
この特徴はこのアンプの強力かつクリーンな電源部によるところが大きい。
このアンプを使い始めてから、
ハイエンドプリを見るときは、
必ずその電源の充実度を確かめるようになった。
いかに優れたボリュウムを持っていようとも、
その後に控える電源が十分に高性能でなくては、
No.32Lと肩を並べるようなゆとり感を得ることはできないのではないか。

比較:
各社のフラッグシッププリアンプが対抗馬となる。
私見では、現在でも、総合的な視点から考えると、
このNo.32Lに、単体のプリとして、明らかに勝るものは出現していない。
逆に言えばこれ以上なにがプリアンプに必要なのか、
私個人はなかなか思いつかない。

LINN KLIMAX Kontrol SE
KLIMAX twinとともに試聴。
このプリアンプ、外観は滅法カッコよい。
本当に美しい。
このシャープでシンプルなデザインは大好きである。
ボタンも押しやすい。
音もただのデザインコンシャスな製品とは一線を画する。
高級プリアンプが満たすべき基本性能は押さえている。
SNも良くなったし、レンジも広いし、設定も豊富。
しかし、音質そのものについては、ちょっと考え込む。
やはり、こぢんまりと、まとまり過ぎじゃないのか。
リンの製品のラインアップを見ていると
送り出し、プレーヤーまずありきの姿勢を感じる。
CD12、LP12、DSである。
プリアンプはプレーヤーの信号を受けて
ボリュウムコントロールするだけの機器と映る。
システムの主役のひとりとして、
大きな顔をすることが許されていない気もする。
No.32Lはシステム全体を統括する総元締めの貫禄を持っている。

Accuphase C2810
Accuphase M6000とともに試聴。
この価格でこの音響性能と使いやすさが手に入るとは驚きである。
No.32Lのような凄味のある静けさではないものの、
SNは十二分に高く、極めて広いレンジで、素早いレスポンスが得られている。
解像度がとても高いので、微視的な聴き方をしても全く不満がない。
音数が極めて多く、それらの音ひとつひとつのコントラストが明確に示される。
どんな音楽もアキュフェーズ流に律儀に正しい音楽にしてしまうとも言えるが、
このモデルは音楽のジャンルごとの得手、不得手は少なく、それなりに聴ける。
No.32Lのようなパワーアンプドライバーとしての力は兼備えていない。
M6000とは常に対等の立場で協力している印象を受けた。

Luxman C1000f
B1000fとともに試聴。
このプリアンプは基本的にはAccuphase C2810に近い性能を持つのだが、
いい意味でより甘口の音調を持つものだと思う。
よって律儀さよりも艶やかさやしなやかさが前面に立つ。
しかし、この組み合わせで聴くと
やはり主役は超弩級パワーアンプB1000fという気がする。
C1000fはB1000fの手綱を握ってはいるものの、
やはり馬であるB1000fが勝手に突っ走っている印象が強い。
単体の性能でNo.32Lほどの存在感があるわけではない。

ハルクロ dm8
dm38とともに試聴。
異星人の宇宙船のような特異な外観。
一聴して非常に柔らかい音出しと思ったのだが、
時間をかけて聴き進んでいくと、
どんな音でも新鮮なまま素通しするような側面もあることに気づく。
柔らかい音が基調となっているようなのだが、
非常に冴えわたった音、
剛直な重たい音でもそのまま出せる。
恐ろしくスピードのある音でもあり、
音の立ち上がり、立下りがまるで瞬間移動のようにキマる。
音の上がり下がりの途中の過程を感じさせないのだ。
なにか聞いたことのない独特の世界である。
これと比べるとNo.32Lはあくまでオーソドックスなプリアンプである。

Viola Cadenza
Symphonyとともに試聴。
力強さよりも繊細さ。
濃厚さではなく淡白な素直さ。
動的ではなく静的な美しさ。
普通のプリアンプが、ややもすればないがしろにしがちなニュアンスに
耳を向けさせる個性的なプリアンプ。
当然、得意な音楽ジャンルは小編成のクラシック、
女性ジャズボーカルということになる。
音質もボリュウムつまみの操作感も
往年のチェロのアンプを意識しすぎのような気もするが、
こういうアンプは最近なかなかない。
個人的にはリモコンがないのは困るが。
No.32Lはこれほど特定の傾向は持たないプリアンプである。

dartzeel NHB18NS
NHB108 model oneとともに試聴。
このルックスは微妙である。
容姿についてあまり多くは言うまい。
リモコンもかなり近寄らないと効かない。
その音は、
鮮度感が凄い、というのが第一印象である。
最高の刺身を食べさせてもらっているような、
なんともいえない美味しい音である。
しかし、どうしてそんなに美味しいのか説明ができない。
音楽を素のままで出してくるのは確かであるのだが、
それがなにか音作りのうまさとか、
物理特性の高さによって裏打ちされているだけではない印象である。
音楽の躍動感、熱さを十二分に伝えてくる。つまり音楽性は高い。
どんな音楽にでも対応し、その音楽の旨みの部分を的確に引き出すのである。
背景にノイズは結構あるのだが、なぜかそれが煩わしくない。
それほどワイドレンジ感はないし、
スピード感も適正という程度なのだが、
音は不思議な魅力に満ち満ちており、
一度聞いたら忘れられないアンプである。
物理的な特性ではNo.32Lには及ばないであろうが、
この不可思議な音世界は唯一無二である。

Soulution720
スイス製の、例によって高価なアンプである。
全くシンプルな外観であるが、中身はギッシリ詰まっており、かなり重たい。
Soulution710とともにじっくり試聴した。
このプリはソウリューションの純正のパワーをあわせて聴くべきものだと強く思うので、
あえて、このペアのインプレを書きたい。
つまり、今回はソウリューションのプリアンプのみのインプレにはなっていない。
それほどこのペアは魅力的であったのでご容赦願いたい。
結論から言えば、このプリとパワーの組み合わせは、
いままで聴いたベストの組み合わせである。
ウィルソンのシステム8で聞いたのだが、
この聴きなれたウィルソンのスピーカーシステムがはじめて「踊っている」状態となった。
スピーカーのすべてのユニットが完全にアンプのコントロール下に入り、
縦横無尽に鳴らされ、
潜在能力をすべてさらけ出していく様が目の前で手に取るようにわかったのである。
いつもはどんな音楽もどこかクールに鳴らしてしまうシステム8なのだが、
ノリノリでご機嫌に鳴っていた。
非常にワイドレンジでスピード感があり、
全帯域での解像度が高いのは、このクラスのアンプでは珍しくないのだが、
それが、うねるような、または粘るような、時として吹き上がるような
とてつもないパワー感と一体となっていることが、他と異なる点である。
優秀なプリアンプと強力なパワーアンプがガッチリと緊密に協調し、
次から次へと難曲をこなしていく様は聴いていて爽快である。
強奏と弱奏が激しい落差をもって連続する場面でも全く余裕で通過してゆく。
音量をかなり上げても、スピーカーの能力さえ高ければ全く腰砕けなく、混濁もなく、
明確な音像とサウンドステージを保持し続ける。
恐ろしいのは、プリの電源が別筐体であったり、
モノラルパワーであったりするわけではないのに、
素晴らしいチャンネルセパレーション、
底なしのパワー感が出てくるところである。
これも私の常識ではありえないことであった。
(このソウリューションはモノラルパワーも出しているが、
そのパワーで、一体どんなスピーカーを鳴らすつもりなのだろうか。)
プリアンプ単体では、その物理的性能はおそらくNo.32Lとほぼ同等かもしてれない。
少なくともNo.32Lが大幅に劣るとは思えない。
また、No.32Lは、いろいろなパワーアンプと無理なく
組み合わせることができるという意味では上であるとは思う。
しかし、このソウリューションの純正組み合わせと比較すれば、
No.32Lとどんなパワーアンプを組み合わせても、おそらく勝てない。
このペアほど同一メーカーのシステムコンポのメリットを感じたことはなかった。
買いたいのは山々であるが、
あまりにも高価であり、
かつパワーアンプは、私の部屋には大きすぎる。
それにしても、
FMアコースティックといい、ゴールドムンドといい、ダールジールといい
スイスのアンプはなぜこんなに能力も価格も凄いアンプばかりなのか。
いつかスイスのアンプを集めて比較試聴しつつそのワケを探りたい、そういう願望はある。

Ayre KX-R
最近まで買う気満々であったので、MX-Rとともにじっくり試聴してきた。
このアンプのルックスや操作感は素晴らしい。
というかユニークで実に面白い。
ガタンガタンとボリュウムを変えるたびに表示が上下する仕掛けは最高だ。
削り出しの筐体の美しさも満点。
そこらへんはNo.32Lではとてもかなわない。
音は反応が素早く、純粋で音楽のパッションを鋭く伝える。
虚飾のない純粋さが身上である。
このアンプにはNo.32Lに感じられる余裕、ゆとり感は強くは感じられない。
またパワーアンプを豪快にフルスイングさせる印象でもない。
いわば直結感重視という感じがある。
ストレートワイヤーウィズゲイン系のアンプであるとも言える。
プリアンプに余裕綽々の懐の深さを求める私には惜しいことに合わなかった。
もちろん、これはかなり高次元での比較であり、微妙な選択であった。
しかし、この機械はただ眺めたり触ったりするためだけでも
購入したいと思うほど好みの容姿をしている。

ジェフローランド クライテリオン
Model301とともに試聴。
これはNo.32Lにかなり近い印象のプリである。
開発開始から発売まで長期間かかっただけあって、
恐ろしいほど、よく練りこまれた充実のサウンドである。
バッテリー駆動だと非常にノイズ感が低く、この点ではNo.32Lを上回る。
チャンネルセパレーションもかなり良いし、ゆとり感も十分である。
解像度も高く、スピード感もずば抜けているが、
それをことさらに主張するアンプではない。
特徴として、出音が全てしなやかで優しい印象がある。
柔らかいというイメージはないのだが、どこか女性的である。
No.32Lが男とするとクライテリオンは女性であると思う。
総じて非常に優秀であり、
No.32Lとのはっきりした違いは、
SNの高さと音の優しさではないかと思う。
もし、No.32Lが使えなくなったら、
このクライテリオンを導入するかもしれない。

まとめて言うと:
とにかく凄いプリアンプです。
No.32Lは。

【SPEC】●入力端子:XLRバランス×3ペア、RCAアンバランス×5ペア ●出力端子:プリアウト→XLRバランス×2ペア、RCAアンバランス×2ペア、レコード出力→XLRバランス×1ペア、RCAアンバランス×2ペア ●ゲイン:0/6/12/18dB、フォノモジュールゲイン→+40dB/+60dB(オプション) ●最大入力:+18dBゲイン 2V(バランス)/1V(アンバランス)+12dBゲイン 4V(バランス)/2V(アンバランス)+6dBゲイン 8V(バランス)/4V(アンバランス)0dBゲイン 16V(バランス)/8V(アンバランス) ●最大出力:16V(バランス)/8V(アンバランス) ●入力インピーダンス:100kΩ ●出力インピーダンス 10Ω以下(バランス)、20Ω以下(アンバランス) ●周波数レスポンス:10Hz〜40kHz±0.1dB ●歪率(THD+N):0.001%以下 ●電源:AC100V(50/60Hz) ●消費電力:150W(最大) ●外形寸法:オーディオサーキット部→495W×106H×289Dmm、電源/コントローラ部→495W×77H×329Dmm ●重量:オーディオサーキット部→12.4kg、電源/コントローラ部→17.7kg

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