2012年11月25日

LINN DS(AKURATE)とMYTEKで、DSD再生
AKURATE DS/KとMYTEK DIGITAL Stereo192 DSD DACをデジタル同軸ケーブルで直結して、WAVパックしたDSFファイルの再生を確認しました。
この方式は、曲の出だしが少し欠けてしまうようで、その症状が出てしまっているので、実用上は気になる方も多いでしょうが、報告しておきます。
もう少し細かく説明します。
●LINN DSではDSD再生は無理?
ネット上で、スフォルツァート社のトランスポートとDoP対応DACで、DSDファイルの再生が可能とお見かけしました。
どうやら、WAVパックを使うようなので、それなら条件を満たせば他でもできるはずと確信して試しました。
LINN DSは、根本的に、DSDの実質的な標準ファイル形式であるDSFに対応していません。
本体DACとして再生可能ファイル形式に無いだけでなく、そもそもNAS上のファイルを探す際に、DLNAに規定のないDSF等のファイル自体、見つけてもくれないのです。
DLNAの規定に無くても、他の拡張子を見つけ出す追加機能は装備できるようですが、現時点では対応していません。
つまり、内蔵DACの未対応とNAS検索の未対応の2点から、通常は無理なのです。
●外部DACとWAV偽装
では、どうするかと言うと、まず内蔵DACを使わない方法は簡単です。
デジタルアウトを利用して、外部のDSD対応DACを使うだけ。
ただ、このDACも、入力がDoPという形式に対応しているという絶対条件がありますが、ここは後述します。
なお、KLIMAX DSはデジタルアウトがないので、残念ながら、どうやっても無理です。
次いで、NAS上の拡張子がdsfというファイルはDSが見つけられないのですが、これにも回避策があります。
最近新製品が多く出てきたDSD対応USB DACの利用方法として、DoPと言って、DSD信号をPCMに似せてUSB経由で送信することができる規格があります。
これは、リアルタイムにDSFファイルをPCMに見せかける加工をするのですが、似た方法で、事前にファイルそのものをPCMっぽく加工しておくWAVパックという方法もあります。
このシンプルなDoPの再生ファイルはdsf拡張子ですが、WAVパックすると176.4/24のWAV拡張子になります。
このファイルなら、DLNAに乗るので、DSからも見つけることができます。
NAS上のWAVパックされたWAV(中身はDSF)を見つけ、デジタル出力でDSD(DoP)対応DACに送るとDSD再生ができる理屈です。
●実験内容
DSFファイルをAudioGateで176.4/24のWAVに変換したファイル。
DSFファイルを『DSD to PCM Converter』というソフトを使わせていただきWAVに偽装してパックしたファイル。
サイズの差はわずかです。
この2つと元のdsfの計3ファイルをNASに入れ、DS(Kinsky)で見に行くと、当然dsfは見えず、2ファイルだけが表示されます。
どちらも表面的にはWAVなので、176.4/24対応だけのDACで再生すると、通常のWAVは鳴り、偽装WAVはノイズです。
KLIMAX DS/Kで、隠し機能がないかと淡い期待をして偽装WAVを鳴らしてみましたが、ノイズでした。
ADSの同軸デジタルアウトをMYTEKに繋ぎます。
この機種は、DoPが、FireWire、USB2.0、AES、SPDIFの各入力端子で対応しているようなので問題なし。
176.4/24WAVは、本体に『176.4』と表示され、再生されます。(あたりまえ体操)
偽装WAVは、本体に『DSD』と表示され、きれいに鳴っています。(大成功)
●他の機器では?
予想通りとはいえ、あまりにあっけなかったので、他の機器も調べてみました。
まずは、出力をYAMAHA NP-S2000から出力。
コントロールアプリはWAVの2ファイル見つけるものの、同軸でも光でも、どの組み合わせもすべてダメ。
調べたら、デジタルは176.4以上の出力自体が不可だったので無理。
今度は受け側のDoP対応DACをテストするため、ADSの同軸をそれぞれに直結。
TEAC UD-501とFOSTEX HP-A8は、176.4/24WAVは鳴るものの、DoP対応入力がUSBオンリーなのか、同軸ではさすがにダメでした。
話題のKORG DS-DAC-10は、DoP対応ではなく、USB以外の入力もないので当然不可です。
●動作条件の整理
実は、今までは、ADSのデジタル出力は同軸のみなので、G-25UとAntelope Isochrone 10Mのセットを経由してデジタル信号を高精度クロックで打ち直して、4種類のDACに切り替え可能にしていました。
MYTEKでは、AES/EBUに変換して入れていたのですが、この方法では、WAVパックしたファイルも同一周波数のまま出力しているのに単なるノイズになっています。
直結ならDSDとして認識し、G-25U経由ならノイズなのです。
つまり、G-25Uがリクロックだけでなく、なんらかの加工か変更をしていたと想像できます。
要するに、WAVパック方式での再生は、まず176.4/24以上に対応するのが必須ですが、さらに出力のデジタル信号は無改造でなくてはならない点が、判りづらいものの最重要なのです。
仮に安価なネットワークプレーヤーからでも、デジタル出力が正確なら条件は満たすとも言えます。
また、受け側のDACも、まだかなり限定的です。
前述したように、USB入力オンリーでは、今回の方法は実現できません。
現状でUSB以外に対応しているのは、知る限り、CHORD社、MYTEK社くらいでしょうか?
もっとも、実際、ADSクラスの出力なら、高性能とはいえわざわざ他のDACを経由するのは、利用形態としては考えにくいかなとは思います。
●PCとオーディオ
PCを利用したDSD再生が盛り上がっていますし、実際、私も楽しんでいます。
ただ、再生時にPCを必要としない今回の方法には、やはり従来のオーディオ的な楽しみ方も感じました。
これを発展させるには、ネットワークプレーヤー側がDSD再生機能を持ってくれると何より簡単な話です。
まだまだ過渡期ですし、いろいろな問題もあるのは承知していますが、対応ハードがある程度売れないとソフトも揃えようがないので、各社の意欲的な機能搭載や画期的な価格戦略などに期待しています。