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DACのライントランス出力化について

みなさま、明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いします。

(修正履歴)1/5 回路図のアースポイント誤りを修正

昨年の秋頃になりますが、天から「DACのライントランス出力化について公表せよ」
という声が聞こえたような気がしました。

遅くなってしまいましたが、少し時間ができたのでまとめてみました。



新年早々から重たい話ですみませんが、回路自体はシンプルで音質面も期待できる
ので、自作される方の参考になれば幸いです。



①DACチップの出力特性を把握
 DACチップの規格表等で、最大出力電圧と出力インピーダンスを把握します。

ES9038PRO-Dualの例では、以下のようになります。
  最大出力電圧:約1.0V(rms)
 ・出力インピーダンス:約25Ω(出力回路8パラ)

②ライントランスの選定
 ライントランスは、一次側インピーダンス、昇圧比、電力レベルを以下のように
 決定して選定します。

 ・一次側インピーダンス
   ライントランスの一次側インピーダンスは、伝送ロスや特性を考慮して、
   DACチップの出力インピーダンスの6~12倍程度のものを選定するのが良い
   ようです。

   ES9038PRO-Dualの例では、出力インピーダンスは8パラで約25Ωですが、
   実際にはは+OUTと‐OUTが直列なので二倍の50Ω程度になります。

   そのため、一次側インピーダンスが300~600程度のライントランスを
   選定します。
      

   ES9038PRO-Singleの例では、DACチップの出力インピーダンスは約100Ωに
   なります。

   そのため、一次側インピーダンスが600~1.2kΩ程度のライントランスを
   選定します。
      

 ・昇圧比(または二次側インピーダンス)
   ライントランス二次側出力は2~3V(rms)程度が使いやすいので、①の最大
   出力電圧を考慮して昇圧比を決めます。

   ES9038PROの例では、①の最大出力電圧は約1.0V(rms)ですが、+OUTと
   -OUTの合成で出力は二倍の約2.0Vになるようです。
   念のため600Ω負荷で実測すると1.64V(rms)になったので、昇圧比は1.5~
   2倍程度のものを選定します。
  
   ライントランスの昇圧比が不明のときは、一次側と二次側のインピーダンス
   比の平方根が昇圧比になります。

    600Ω:10kΩ  →約4倍
    600Ω:2.5kΩ →約2倍
    600Ω:1.2kΩ →約1.4倍 

 ・電力レベル
   ライントランスは小型なので、扱える電力はdBm(デシベルミリワット)で
   表示されています。

   タムラのライントランスで、よくある例を以下に示します。      
    
     5dBm= 3.2mW(600Ωでは約1.4Vまで)
     7dBm= 5mW (600Ωでは約1.7Vまで)
    10dBm=10mW (600Ωでは約2.5Vまで)
    20dBm=100mW (600Ωでは約7.8Vまで)

   したがってES9038PROの例では、①の出力電圧が1.64V(rms)なので、一次側
   インピーダンスが600Ωのライントランスでは7dBmでギリギリになり、少し
   余裕を見て10dBm以上のものを使うことにします。

   ただし、あまりに大きな電力レベルのもの(ドライバートランス等)は、
   ローレベルの直線性に問題が出そうなので避けたほうが良さそうです。

③二次側負荷抵抗の設定
  ライントランスの二次側負荷抵抗は、プリアンプ等の入力抵抗と並列になる
  ので、この並列値が二次側インピーダンスと同じ値にするのが基本です。  

  600Ω:2.5kΩのトランスでは、プリアンプの入力インピーダンスが50kΩと
  すると二次側負荷抵抗は2.7kΩ程度のものを使えばよいことになります。

  この二次側負荷抵抗の値をわざと大きくして、一次側のインピーダンスを上
  げて上記「電力レベル」の項で述べた入力電圧を大きくすることが可能です。

  しかし、このような使い方をするときは、周波数特性や音質の悪化を考慮
  して2倍以上に設定しないほうが良いようです。  

④ローパスフィルターの設定
  ローパスフィルターをライントランス一次側に入れますが、カットオフは
  100kHz前後に調整します。

  ES9038PRO-Dualの例では、DACチップの出力インピーダンスが約50Ωなので
  ライントランスの一次側に0.033μF程度のコンデンサーをパラに入れます。

  ES9038PRO-Singleの例では、DACチップの出力インピーダンスが約100Ωに
  なるので、ライントランスの一次側に0.015μF程度のコンデンサーをパラ
  に入れます。

⑤結線
 DACチップ側の「+出力」と「‐出力」を、ライントランスの一次側に接続し、
 ライントランスの一次側中点には何も接続しません。

 DACチップにもよりますが、グランド側出力をライントランスの中点に接続
 すると、直流バイアス電圧がライントランスに掛かって大電流(100mA程度)
 が流れてしまう可能性があります。

 ライントランスは直流電流の重畳を許容しないものが多いので、特に注意して
 ください。

 それから、この回路ではライントランスの一次側配線はアースに接続されて
 いないのでできるだけ短くし、信号のループ面積が最小になるように2本の線を
 密着させてください。


⑥参考(音質調整)
 ・DACチップ出力回路のパラ数調整
  ライントランスは、一次側に接続されるDACチップ出力回路の内部インピー
  ダンスが低いほど低域の特性が良くなり厚みが増す傾向があります。

  そのため、DACチップ出力回路のパラ数を調整することで、低域の量感や質感
  の調整ができます。

 ・二次側負荷抵抗の調整
  ライントランスは、二次側の負荷インピーダンスが高いほど超高域にピーク
  ができて音がザラついたりキツくなる傾向があります。

  そのため、二次側負荷抵抗を調整することで、高域の質感を調整できます。

 ・ローパスフィルターの調整
  ライントランス一次側に入れるローパスフィルターはカットオフを100kHz
  前後に調整しますが、これを高くして150kHz程度にすると、高域の伸びが
  期待できますがザラつきやノイズ感が出やすくなります。

  逆に80kHz程度にすると、高域が大人しくなって聴きやすくなりますが、
  音が詰まり気味になることがあります。

 ・一次側ローパスフィルター用コンデンサーの品種変更  
  コンデンサーの種類を変えることで音質を調整できますが、とりあえず癖の
  少ないポリプロピレンフィルム系(ASC、ニッセイAPS等)を使ってみること
  をお勧めします。

 ・二次側負荷抵抗の品種変更
  ライントランスの二次側負荷抵抗は、その種類によって音質が激変します。
  ここは少し高価ですが、VisheyのVSRやZ201を使われることを推奨します。

                                 以上

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