パグ太郎
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クラシック中心に聴いています。オーディオは手段と考えてはいるものの、気がつくと手段の魔力に取り付かれてしまうことも多く、日々修行をしております。

日記

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最新の日記

『蜜蜂と遠雷』を読んで、音楽への思いを新たにする

このコミュニティに登録したのが今年の6月中旬ですので、早くも半年が経ってしまいました。その間に書き連ねた駄文の本数を数えて見ましたら、丁度、この記事が50本目となるようです。初めは、購入した新しい機器での音楽の聴こえ方が変ったのが面白くて、そのメモとして投稿していたのですが、次第に音楽をどう聴いてどう楽しんでいるかに主旨が変り、最近では音楽に留まらず舞台演出や小説、絵画についての妄想にまでさ迷い出しております。コミュニティの趣旨に反するというお叱りが、何時飛んで来ても当然なのですが、心優しい皆様の暖かいコメントに励まされここまで来てしまいました。

また、単なる自分の聴き方の振り返りの備忘録・自己満足のためのメモのための登録だったのですが、思いがけずも、お近くの皆様のお宅にお邪魔するとか、逆に拙宅にお越しいただくなど、新たな交流を持つことが出来ましたのも望外の喜びでした。これも振り返りますと、お邪魔させていただいたのが4名様、お越しいただいたのが7名様と、半年の間とは思えぬ数のお付き合いになっております。(完全に入超ですので、不均衡を是正せねばなりませんね) また、多くの方々に日記にコメント頂き、自分の気がつかなかった音楽の聴き方や、録音を教えていただくことも多々あり、これが楽しみでツイツイ、日記をアップしてしまっています。

これからも、駄文にてお目汚しをするかとは存じますが、引き続きご指導のほど、よろしくお願い申し上げます。

さて、50本目の日記ではありますが、特別なことは何もなく、通常通りの展開となります。今日のお題は、昨年の直木賞と本屋大賞のダブル受賞作品のこれです。<恩田 陸作 『蜜蜂と遠雷』>

タイトルだけでは何のことかさっぱりわかりませんが、ピアノの国際コンクールを舞台とする若い音楽家達の成長の物語です。と言ってしまうと、いかにも、ありきたりのテーマで、時々テレビのドキュメンタリ番組にもなるあれかと思って、私自身も手を出していなかったのですが、出張の移動時間の読み物として駅の書店で購入して読み始めたら、想定以上に引き込まれてしまいました。

PhileWebコミュでのご紹介ですから、先ずは、オーディオのセッティング、ルームチューニングにも関わるような逸話から入りましょう。主要人物の一人として、防音のピアノ練習室の外からでも音を聞き分けられる凄耳の少年が登場します。彼はコンクールの調律師に、自分のピアノの調律だけでなく、ステージ脇においてある他の演奏家用のピアノの位置を変えることを依頼します。それも、客席の埋まり方による吸音の違いに応じて、それを変更することまでです。さらに、協奏曲のリハーサルでは、各楽器の立ち位置につき細かい注文を出し、楽団員を面食らわせます。チューバ奏者が場所を変えることに不満を漏らすと、そのポイントは、床が修理か何かで密度が変ってしまって歪んでおり音が伸びないと言ってのけます。少年の注文どおりに、半信半疑で移動したオーケストラの響きが伸びやかになり、出てくる音量大きくなって、今までの演奏はなんだったのかと思うほど激変(いえ、この単語は使われません)するということになります。このコミュニティでしばしば話題になる、スピーカーの設置場所や部屋のチューニングのお話と全く同じです。

今のエピソードは、この作品の本筋ではなく、本当に素晴らしいのは、文章による音楽の表現の多彩さです。それも演奏者本人、競争している他の演者、観客、審査員、調律師、ステージマネージャー、関係する多種多様な人々の視点から、夫々にとって音楽は何をもたらしてくれるものなのかを明らかにするという深さで、個々の楽曲と、演奏の特徴を描き分けていることです。音楽・演奏を素材にした小説や漫画、さらには評論家による演奏評は多々ありますが、この質の高さはこれまで体験したことがないレベルです。これは、聴き手、あるいは弾き手の人物造形と、その人がおかれた状況を丁寧に書き込んでおり、それと曲と演奏の表現が表裏一体になっていることがポイントなのかもしれません。一つ一つの音楽によって、個々の登場人物にもたらされる心の動きが、読み手にも我が事のように切実に迫ってきて、自分がその演奏を聴いて、登場人物と同じ様に感じているような錯覚を持つシーンが何度もありました。構想5年執筆7年という長い時間をかけた中で、作者が一番苦しんだ所だというのもうなづけます。そして、作者は映画化の話に慎重になっていると聞きましたが、これを実際の音として再現されると、却って現実味が薄れる様な気がします。

<作品もモデルとなったという浜松国際ピアノコンクール、3年に一度開催で来年が10回目だそうです。>

でも、この小説の本質は、そこではないかもしれません。この作品にとって音楽を文字で表現することは、もっと重要なことをリアリティを持って伝えるための必要な技術ではあっても、目的にはなっていません。主要なコンクール参加者としての登場人物の4人が、エントリ、3次にわたる予選、そして本選という5つの段階を進む過程で体験する自己との葛藤、そして互いの演奏を聴くことによって受ける影響のなかで成長していく姿を、何のために演奏をするのか、音楽を演奏することは自分にとって何か、そもそも音楽とは何かということを次々に見出していきます。そのことが本当に丁寧に、納得感を持って語られているのは驚きです。4人が5段階ですから20通りの発見(課題曲毎にということもありますし、全員が5段階を踏むわけでもないので、正確には20通りではないですが)があるわけですが、その一つ一つを通じて、音楽を演奏すること、聴くことの素晴らしさを、段階を追うごとに深みを増して行く登場人物の体験として、読者にも追体験できる形で提示されています。

読んでいるだけで、音楽の素晴らしさを感じさせてくれる、そして音楽を届けてくれる作曲家・奏者、それ以外の人たちに思わず有難うと言いたくなるような貴重な読書体験でした。

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マイルーム

パグ太郎の部屋
パグ太郎の部屋
持ち家(戸建) / リビング兼用 / その他 / 16畳~ / 防音あり / スクリーンなし / ~2ch

10数年愛用したアンプが逝ってしまったので、久々の機器更新をしました。

所有製品

  • プリメインアンプ OCTAVE V110SE
  • ハードラック QUADRASPIRE QAVM
  • RCA/BNCオーディオケーブル KIMBER KABLE KS-1020
  • 電源ケーブル STEALTH Cloude 99 Full
  • 電源ケーブル KIMBER KABLE PK-10Gold
  • オーディオボード ILUNGO grandezzaSTD
  • SACDプレーヤー/トランスポート LUXMAN D-08u
  • 電源機器 CSE TXR-650
  • スピーカーシステム B&W Signature805