パグ太郎
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クラシック中心に聴いています。オーディオは手段と考えてはいるものの、気がつくと手段の魔力に取り付かれてしまうことも多く、日々修行をしております。

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夏休み明けの映画音楽鑑賞会? 或いは、同世代の元天才少女の思いがけない姿に惚れ直す嬉しさについて

日々の雑事に追われるのと、亜熱帯化しつつある気候と真空管の熱にエアコンが負けているのと、CDPの不調という三重苦により、拙日記は二か月ほどの夏休みに突入しておりましたが、虫の声も騒がしくなり秋の風情も出てまいりましたので、ゆるゆるとペースを戻してまいりたいと考えております。

さて、本日の作品はこれ。
ムター演じる、ジョン・ウィリアムズ(JW)の映画音楽選です。オリジナルの楽曲を作曲者自身が、ヴァイオリンを主役にしたオーケストラ伴奏曲に編曲。オーケストラの指揮も作曲者自身です。言わずと知れたハリウッド映画音楽の巨匠で、この曲集にも『スターウォーズ』、『ハリーポッター』、『シンドラーのリスト』など超有名曲が並んでいます。またまた、ドイツ・グラモフォン得意のクラシック演奏家の異ジャンル・コラボの企画モノだろうと舐めていたのですが、配信で聴いてみて(配信先行でCDは9月末にならないと出て来ません)、これはムターの代表作と言っても良いのではという出来栄えに驚いてしまいました。

いや、ムターの代表作って、自分はムターをそんなに評価していたかしら。

アンネ・ゾフィー・ムター。1963年、ドイツ生まれのヴァイオリニスト。13歳で帝王カラヤンに見出された天才少女として、ザルツブルグ音楽祭でベルリンフィルと共演。それ以降、カラヤンを初め著名指揮者・名オーケストラと共演。バロックから現代音楽まで幅広いレパートリーを誇る、ヴァイオリン界のスーパースター、女王と言っても良いのでしょう。
(1978年のレコードデビューはカラヤンと)

その演奏は、自分にとっては「艶めかしい」の一言。弦を大きく震わせるその歌いっぷりは、弱音の時は耳元に吐息がかかる様に囁き、強奏の時は身をくねらせるように迫ってきます。これでモーツァルトなど演じられると、「マダム、パフュームがきつ過ぎますよ」と客の選り好みをするレストランのメートルみたいな想い(という実経験は無いのですが)をすることがしばしば。

逆にシベリウスやチャイコフスキーの協奏曲を聴くと抒情的な部分は艶っぽくて、婀娜っぽくて良いのですが、北欧やロシアの冬の冷たい陰りがもう少しあっても・・・・。ツィガーヌとか、チゴイネルワイゼンも「ジプシー風」の妖艶さはあっても、それが微妙に明るいのです。そういう意味では、メンデルスゾーンの都会風の甘いロマンティックさが最高の組み合わせかも。逆に現代音楽の先鋭的でドライな楽曲に彼女が向かうのは、曲自身の無機質さが、自分の不足分を補い、過剰分を和らげてくれることを無意識に知っているからなのかもしれません
(1980年録音のメンデルスゾーン協奏曲)

などという勝手な感想を持っている人間が言う「代表作」なので、相当バイアスのかかった意見とお考え下さい。で、どこが良かったのか。

いや、やはり上手い(当たり前ですが)。映画音楽をクラシック演奏家が演じるのをテレビ等で見聞きしますが、「こんなのは余技の小遣い稼ぎでやってます」風な演奏とは大違い。やはり格が違う上手さ。そして嬉しいことに真剣勝負です。

当然、彼女の美点である艶めかしさ全開で、歌い、囁き、涙ぐみ、恋を語り、訴えかけてきます。そうであっても、それは過剰とは感じさせない所で留まっていて、甘ったるい映画音楽の「愛のテーマ」編曲特集にはなっていません。流石、JWが彼女を前提に、何年もかけて編曲しただけのことはあります。独奏者の能力を最大限に引き出しつつ、オーケストラと競わせる、そして元々の映画の世界をより強烈に表現する、その作曲・編曲は、ハリウッド映画という厳しい世界に半世紀以上、君臨し続けられた彼の才能が飛んでもないものであることを示しています。

もう一つは、ムターに感じる「冷たさとか陰りが足りない」という想いを抱かずに済むということです。そう、ハリウッド映画です! エンドロールと共にすべての悲劇は解決を見ている(あるいは、次作に向けてそれが予告されている)予定調和の世界。その中では、彼女は思う存分に演じていて何の不足も感じさることはない、そういう幸せな組み合わせ。

こういう彼女の演奏を聴いたのは初めてです。そう、ムターの演奏家としての素の姿が、ストレートに花開いている気がします。

ムターはインタビューでJWの音楽との出会いを語っています。「ドイツ・フランス・スイスの国境が接する森の中の田舎町で、刺激のあることと言えば映画館ぐらい。そこにやって来たのが1978年のスターウォーズで、ちょうどカラヤンとのデビュー直後だったの。その音楽にぶっ飛んだわ。映像も凄かったけれど、登場人物毎につけられた主題で性格描写する素晴らしい音楽の虜よ。」 

まさしく私自身も同世代で、天才少女としてのデビュー以来、何のかんの文句を言いながら聴き続けて来たのですが、リアルタイムで同じ映画に触れて「ぶっ飛んだ」経験を共有していたとは。そして、そういう演奏家の遮るものが全くない素の美質を感じさせる演奏に、こういう形で出会えたというのは嬉しい驚きだったのです。

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Phileweb登録後1年、気が付くとスピーカー導入していました(2018/6)。所有製品はHRS130ですが、製品DBに登録がないので、一番近いもので代替しています。 10数年愛用したアンプが逝ってしまったので、久々の機器更新をしました(2017/6)。

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