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東京都在住のオーディオマニアです。リビングオーディオです。狭いスペースを与えられてやっています。MPS-5,Marklevinson No32Lなどを愛用中。クラシックはほとんど聞かず、ポップス、ラッ…

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日記

Fostex TH900の私的ファーストインプレッション

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2011年10月30日



リファレンスクラスの
密閉型ヘッドホンのリリースが途絶えて久しい気がする。
実際、最近、発表される高級ヘッドホンは
開放型、半開放型が多いようだ。
どうだろう、さすがにここらで、
最新の技術の投入で進化した
密閉型ヘッドホンを聞きたいところではないか。

2011年10月29日の午後、
もちろん、私は青山のヘッドホン祭りの熱気の中に居た。
狙いは一つしかなかった。
新開発1.5テスラのドライバーを搭載する、
Fostexの密閉型ヘッドホンTH900の音を確かめることだ。
プロトタイプは、過去の「祭り」にたびたび登場してきたが、
ついに製品版のオンステージとなる。
スケジュールとしては10月29日発表、
2012年1月31日発売、価格157000円と決まった。
フジヤさんですでに予約受付している。

今回の試聴は
いつもとちがって、ごく短い時間であったし、
まだエージングが済んでいない機体による
デモでもあったかもしれない。
また、若干、周囲もあわただしかったかもしれない。
ヘッドホンアンプも完全なマッチングがあるかどうか、
疑問はある。
しかし、それらを差し引いても、
1.5テスラで武装した密閉型ヘッドホンのサウンドに
私がしばし酔ったという事実は残る。
TH900は
構想から製品発売まで随分と時間がかかっただけあって、
初聞きの時点にしては
まずまず完成度の高い音を聞かせたのだ。
あげく、私は図々しくも「おかわり」してしまったほどだ。
もう夜遅いが、帰りの電車に座れたので、
スマートフォンから試聴内容を打ち込んでいく。
興奮冷めやらぬうちに形にしておきたいというわけだ。
つまみ聞きの不十分さは重々承知の上なので、
とりあえず正式なレビューではなく、
私的ファーストインプレッションとして
この素晴らしいヘッドホンのサウンドについて
記載しておきたい。

外観:
朱の拭き漆調のボルドー仕上げが美しい、大型ハウジングが目立つ、
ジャパネスクなルックスだ。
色みが非常に深く輝きがある。
世界のヘッドホンのハウジングの中でも
その美しさは1、2を争うであろう。
それにしてもこの拭き漆の透き通る朱色は深いね。
先日のORB KAMAKURAではないが
さてもさても工芸品的なたたずまいで魅せるヤツだ。
全体の形として
ビクターのフラッグシップ密閉型ヘッドホンHP-DX1000ほど
盛り上がったハウジングではないので、
装着したときのルックスは十分にスマートである。
ハウジングとヘッドバンドを結合する可動パーツは、
黒くペイントされているが、
デノンに供給していた
DENON AH-D7000のパーツに似ている。
これらのパーツの信頼性が高いことは
AH-D7000を以前使っていた時に知っているので好感度が高い。
しっかりしたヘッドバンドも革張りで高級感あり、
頭頂へのアタリもよい。
イヤーパッドは特殊な合成皮革を
丹念に縫い合わせたもののようであり、
耳回りをソフトに包みこみ心地よい。
全体の重さもDENON AH-D7000よりわずかに重いくらいだろうか。
装着しても頭重感はほぼ全く感じなかった。
長時間のリスニングも問題なかろう。
配線材が7N無酸素銅と謳っているが
これは実質AH-D7000と変わらないではないかと思う。
振動板もバイオダイナという特殊材質だが、
これもDENONで使用済みでないだろうか。
したがって、それらの点では、実はそれほど新味はないわけで。
このヘッドホンの新機軸は
1.5テスラの磁束密度を持つドライバーそのものにある。
1.5テスラとはヘッドホン用としては
おそらく世界最初ではないか。
ドライバーはヘッドホンの心臓部であることから、
大幅な音質の向上が予想される。

音質:
今回は
FOSTEXの新型DACヘッドホンアンプでドライブする
TH900の音を聞いている。
そのアンプとはFOSTEXのHP-A8 32bit DACヘッドホンアンプ。
DSDファイルをデコードしアナログ出力できる、
FOSTEXの新たなる力である。
今回はこれでDSDファイルを演奏して聞くという新趣向である。
すなわち、以下の記述は事実上、
ヘッドホンとアンプ、DSDファイルのセットでのインプレとなっている。

TH900の第一声は、
音楽が一気に耳の方へ溢れ出てくるような強い流れを感じさせた。
この力感、音圧がありながら透明度、純度の極めて高い音調が
このヘッドホンのハイライトだろう。
TH900の音像は色濃く、熱く、厚いのではない。
むしろ透明でわずかにクール、スピードが速い音だ。
帯域で言えば、
中域、つまり人の歌声などの音楽の根幹を成すメインの帯域に
音圧の重心があるようだ。
密閉型らしく音場感はやや抑えられ、
音像が前にせり出して迫ってくるように聞こえる。
克明で彫りの深い音の輪郭であり、
ハウジングが木製である場合にありがちな、
一種のウォーム感、暖かみは前景にでていない。
このニュートラルに近い温度感は
全体の音調における脚色の少なさにつながっている。
TH900に正確さを期した音づくりが基調にあり、
ルックスから想像されるまろやかさ、
ゆとり感等の独特の味わいで聞かせるパターンではない。
ただ、このような場合、
小音量だと往々にして暗く躍動感に乏しい音になりがちであり、
十分にボリュウムを上げて聞くのが吉だ。

一回目の試聴では以上のことが分かったが
全体に素晴らしいという印象はあまりなく、
ヘッドホンアンプの癖や
DSDファイルの傾向が前に出る印象が強かった。
多くの方が似たような印象を抱かれただろう。
しかし、私はそれで片づけていいような気はしなかった。
なにかいいところがもっとあるはずだ。
二回、三回、四回と並んで聞くと、
冷静になって
ヘッドホンアンプの影響を
ある程度分離して聞くことができるようになったようだ。

解像度は中域では特に高い。
歌詞のカツゼツがとてもよく、声のハリもあり
実にみずみずしく響く。
(ここらへんはヘッドホンアンプの特性も手伝っているようだが)
解像度自体は低域に行くにしたがって、ほの甘くなるようだが、
そのかわり、様々な低音の低さの違い、
つまり音程が開放型のヘッドホンよりも正確に聞き取れる。
また、
さすが1.5テスラ、ズドンと来る時は来るなぁ、
という瞬間もある。
ベース、ドラムの風圧を肌で受ける錯覚を覚える。
低域はそういう角度から見ていくとやはり、
まずまず充実はしている。
高域は、これまた密閉型らしく抜け切ることを拒否している。
金属的な響きは控えめでサ行は刺さらない。
そのかわり明確でしっかりした高域が聞ける。
また色彩感というか、音の彩度の高さも中域で際立ち、
高域、低域ではモノクローム調の表現にやや傾く。
倍音成分の表現はやや控えめだが、
響きの美しさはきちんと正確に伝えてくる。

このヘッドホンの出音のスピードはどの帯域でも速く感じる。
各帯域のスピード感を比べると
やはり中域のスピードが最も速い印象だが。
ある音が発音されたのち、
どれくらい素早く正確に収束するか。
「立つ鳥あとを濁さず」と言うが
次に来る音をどれくらい濁さないで収束できるか。
そういう問題に対して
FOSTEXの1.5テスラのドライバーは
ヘッドホン界では現在のところは
最高の答えを出している気がする。
TH900の音の純度の高さと力感の両立は
この音のスピードの速さから来ているのだろう。
こうして聞いていると
やはり中域で素晴らしい性能が発揮され、
むしろ、その他の帯域では
他のヘッドホンに対してのアドバンテージに乏しい気もする。
ただ、高域、低域の表現は
エージングにより変わってくる可能性があるので
期待して待つ価値はある。

もっと他のヘッドホンにも視野を広げて比較してみよう。
TH900は
「先代」とも言えるDENON AH-D7000のサウンドを
単純に進化させたものというより、
音を別な方向性に振りつつ、
さらに深化したものという印象である。
実際、TH900はAH-D7000とは別物に仕上がっている。
AH-D7000はもっとマッタリした音だったように思う。
DSDファイルの再生での試聴であることを差し引いても
より鮮烈な音になっている。
特に中域の透明感とダイナミズム、
力感、純度の高さには明らかな違いが見出せる。
HD800との違いは
空間表現を得意とする開放型ヘッドホンと
音像の克明な提示を第一義とする
密閉型ヘッドホンの違いに尽きる。
これらは全く別な方針の音がするヘッドホンであり、
二つは並列して持つことが十分可能だろう。
また半開放型のベイヤーのT1は
HD800とTH900を合わせたような音とも言える。
HD800の空間性とTH900の音像を併せ持つのがT1だ。

もっとも、これらの音調はやはりHP-A8の影響、
DSDファイルの影響である部分がかなりあるはずだ。
この影響の度合いは
他のヘッドホンを
このアンプで鳴らしてみないと完全には分かるまい。

私個人の願望としては
このTH900は、ほかのヘッドホンアンプとつないでみたい。
このヘッドホンはパワフルなヘッドホンアンプが似合う。
またもっとクセの少ないヘッドホンアンプで試聴してみたい。
KH-07Nはもちろん、
バランス化して
ブロッサムの新型バランスヘッドホンアンプで聞く、
それも面白いだろう。
力感がプラスされ、
ダイナミックな表現に磨きがかかるかもしれない。
(ブロッサムの最新鋭のヘッドホンアンプは
価格を考えるとかなり素晴らしい!
私物のMBA1platinum editionと遜色ない音が出ていた。
さすがにプロ畑から出てきたモノで
とてもバランスのいい音が印象的だった。)
またMANLEYのStingray iTUBEでドライブしても意外性がありそうだ。

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  1. おはようございます。TH900の濃いインプレッション、ありがとうございます。今回も人の熱気が凄かったですね。このイベントのために、遙々関西から来ている知人も多いです。これからマラソン視聴会行ってきますので、祭りのレポは今晩あたりあげられるかと。

    byKIRINN at2011-10-30 10:59

  2. 毎回読み応えのある記事には感謝しています。

    私もヘッドホンを何個か買ったのですが、
    全て密閉型です。

    私の自宅の周囲は夜になるとクルマの台数が
    数えるほどまで減るうえに住宅が密集していない
    ため、別の意味で音漏れに注意しなければなり
    ません。そのためヘッドホンの出番は多く、
    夜はヘッドホンで聴く場合が多いです。

    Web配信のアニメやラジオをUSBインター
    フェースのヘッドホン端子からヘッドホンをつなげて
    聴くこともしばしばあります。

    それにヘッドホンで聴くと、単にスピーカーから
    聴いたときでは気がつかなかったことが見えてくる
    ことがよくありますからね。特にニュアンスは
    ダイレクトに伝わりますから。

    by8050A at2011-10-30 11:04

  3. KIRINN様、レスありがとうございます。祭りは随分なにぎわいでしたね。マラソン試聴会は都合により出席不可能なのですが、面白そうなものが出てますね。最近とても素晴らしく、また珍しいDACを聞いたのでそのうちレビューでも書こうと思います。それでは。

    by上奉書屋 at2011-10-30 11:13

  4. 8050A様レスありがとうございます。TH900は現行の密閉型ヘッドホンの最高峰に位置するものと考えます。ぜひお聞きになってみてください。私はなかなか気に入りました。それでは。

    by上奉書屋 at2011-10-30 11:17

  5. こんにちは。
    そして、ありがとうございます。

    いつもながら、タイムリー、スピーディー、それでいて的確なレポートには、一方的に感謝しております。

    AH-D7000はお気に入りの一つなので、Fostex TH900は完全に購入予定です。

    ヘッドフォン祭りには、未だに参加したことがなく、今回こそは行ってみようと思っていましたが、野暮用で今回も行けなかったので、とてもありがたかったです。

    他にも面白そうなものが新製品の発表があったみたいなので、しばらくは、いろいろと楽しみです。

    bytakeuchi at2011-10-30 23:03

  6. takeuchi様、Fostex TH900はなかなかいいと思います。ぜひご予約を。ヘッドホン祭りはかつて元気だった菅野沖彦先生もその熱気に驚いたそうですが、そんなところです。ハイエンドはないですが本当のオーディオの今を確かに映しています。

    by上奉書屋 at2011-10-31 00:07

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