ベルウッド
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クラシック音楽ファン:よい演奏会があると知れば遠征もいといません。オーディオシステムは、音楽そのものを楽しむのが本来というモットーのもとにコストパファーマンス重視で小ぶりな装置を目指します。正統オーデ…

マイルーム

メインシステム
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持ち家(戸建) / リビング兼用 / オーディオルーム / 16畳~ / 防音なし / スクリーンなし / ~2ch
スピーカー:    PSD T4 Limited Special-ネットワークレス・マルチアンプ駆動 調音パネル:    Escart Ventoスクエア パワーアンプ:   金田式DCアンプ…
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日記

M氏邸訪問記

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2013年08月24日



M氏邸初見参。

実は、Mさんとは初対面ではない。1年ほど前に水戸室内管のコンサートでお会いした。確か児玉桃さんのサンサーンスだったと思う。会場でKさんにお会いして、ご一緒だったMさんを紹介していただいた。その後、いろいろあってなかなかご縁がなかったが、今回は、Hさんのお誘いで初めての訪問が実現した。

専用のオーディオルームに、B&W N801と802Dセンター、リアが804Dという超ド級のサラウンドシステムの威容が先ず目に飛び込んでくる。オーディオファイルとしてはまさにミシュラン三つ星クラスというべきもので、別世界に足を踏み入れた緊張に脈拍が上がるのを抑えきれないという思いがする。

オーディオの王道というべきものに、シアターサウンドというものがある。ビンテージの世界ではウェスタンやアルテックなどで、現代ではいわゆるドルビー&サラウンド。個人的には、25年前にアメリカで観た「ジュラシックパーク」が忘れられない。姿の見えないティラノサウルスの足音が次第に近づき、ついにはシートから腰が浮くほどの超低音に度肝を抜かれた憶えがある。

正直に言うと、未聴のM邸サウンドには、こちらのそういう勝手な思い込みと、偏見…というのか先入観のようなものがあった。ところが、聴かせていただくと、実際の音はまったく違っていた。特に意外だったのは、2chとサラウンドと切り換えても違和感がないこと。もちろん微かな違いはあるのは判るが、その切り換えはとてもスムーズ。サラウンドにつきものの《拘束》されるような威圧感がまったくない。むしろ、センターやリアとの分担で負担が減った分だけ、低域が軽く柔らかくなり、自然な雰囲気という点では、サラウンドのほうが優る。

お話しを伺うと、このラインアップはアビーロードスタジオと同じ。なるほどまさしくメジャーのプロ・モニターサウンドなのだ。「一関ベイシー」の菅原さんが録ったという音慣らし中のエリック・ドルフィのバスクラリネットの音色も実に自然な存在感だし、白井光子も、フィッシャーディスカウも聴いただけで年来の旧友に出会えたような気がしてきて、両肩の力がすーっと抜けていくのが自分でもわかる。

弦の音も生々しさと美麗な滑らかさが両立していて、ハーゲン弦楽四重奏団の濃厚な響きのなかにアグレッシブなボウイングが熱く感じ取れる。始めにかけたモーツァルトにはバスが入っていて、後のベートーヴェンの弦楽四部だけの「大フーガ」の響きとの違いも鮮明。


ここでHさん持参のオルフェウス「パッヘルベルのカノン」をかけていただく。このCDはHさんと私の定点観測的レファランスとなっているもの。三声のヴァイオリンと通奏低音の位置が鮮やか。定位そのものというよりは、よく響き合うハーモニーのなかに個々の演奏者がいかに鮮明に聴き分けられるかという問題。


私がかけてもらったのは「市民のためのファンファーレ」。

実は、これは私の密やかな「道場破り」CD。これまでも、アンプがクリップしたり、混変調でウーファーがぶるぶると空振りしたり、逆に建家全体が共振してずしずしと揺れたりと…珍事続出のディスク。

ところがこれはものの見事に一本取られてしまった。バスドラムの強打とタムタムも加わったクライマックスであっても、何事もないようにごくごく平静に再生してしまう。この曲の編成は、実は、4本のホルン、トランペット3本、トロンボーン3本、チューバに打楽器が加わっただけというごく小さな編成なのだが、そのことをこれほどにシンプルかつ正確に表現してしまったことには心底驚いてしまった。考えてみれば、この曲は戦没者の追悼のために作曲されたもの。そういう音楽だったのに、爆音の道場破りに持ち歩いていた自分がたまらなく恥ずかしくなった瞬間だった。



さらに衝撃を受けたのは、サロネン/ロス・フィルの「春の祭典」「中国の不思議な役人」だった。

音の感覚が変わるとこれほどまでに音楽の感じ方までが変わるものなのかという驚き…。

以前に別のオフ会で聴いた印象とは別物。特に打楽器群の低域の打撃のキレのよさは、透明度の高いクールな管楽器群とも相まって、21世紀の新時代感覚のモダニズムを感じさせる。沸騰してくるような興奮で頭が真っ白になる。「中国人」ではバストロンボーンやチューバがぶううう~んと鳴り出すグロテスクなサウンドに頭がかっかと来る。その喧噪と暴力は、《土俗的》なんかではなく真反対の《都会的》なもので、《グローバル》時代の人種葛藤と倒錯の世界だったのかと気づいて、一瞬、目がくらくらとしたほど。

おそらく、このCDでのサロネン評が、しばしば「上品」「大人しい」「醒めた」となってしまうのは、ちゃんと再生できていなからなのだろう。いったい自分のシステムではどのような音楽になるのかと、あわててSACDを注文してしまった。


そのことは、マリインスキー劇場盤「鼻」を聴いても同じ。

爆発的で悪ふざけのような打楽器群が、朗々と、時としてフロアを揺らすように鳴り響くと、いままでの限界があっさりとブレイクされてしまったあっけなさに思わず笑いがこみ上げてくる。くり返すようだが、音の感覚が変わると、音楽の感じ方ががらりと変わってしまう。若き前衛時代のショスタコーヴィチやゴーゴリの魔力にぐんぐんと引き込まれてしまう。このオペラがこんなにシュールで諧謔的な批判精神に満ちた音楽だったのかとわくわくしてしまう。

私の持ち込みディスクは、ふだん聴けないサラウンドではどう鳴るのかという興味とともに、こういうオフ会ではなかなか自分のイメージで再生されたことのないCDということで持参したもの。それが、実に楽しさあふれる音で鳴った。


ガーシュインの「Fのコンチェルト(Concerto in F)」も、特大の活力あふれるリズムと活気が炸裂。こういう爆音は、じゅうぶんに「ジュラシックパーク」的な快音だが、それはそういう音楽だからだと納得する。


プーランクの「グローリア」も、本当に天にまで突き抜けていくかのような輝かしさ。ハイティンクとシカゴ響、特に合唱団の実力が遺憾なく発揮されているライブ録音だが、だからこそ大合唱の再生は難しい。拙宅の805では余裕がなくて腰高で緊張した音楽になってしまう。それが、ここではその魅力が存分に発揮されて、聴いていてもほんとうにうれしくなってしまう。

確かにモニター的といえばモニター的で、正確なバランスで、レゾナンスが少し抑え気味のサウンドだけれども、音を分解したり、図面的に展開してソフトのあらをつつくようなところはいささかもない。むしろ、個々のソフトのよいところを目一杯に引き出す「褒めて育てる」サウンド。古いモノラル音源をかけた時も魅力的に鳴った。

聴いているMさんも、大いにジコマン状態のようで(笑)、実に屈託がない。



改めて室内を見渡すと、特別に塗り込めたしっくい壁には吸音材が置かれ、ところどころには黒板や布が吊ってある。クラッセの重量級モノアンプの配置もよく吟味されている様子がありあり。じゅうたんなどの敷物、果てはスピーカー脇の可愛い縫いぐるみまでが、いかにも意味ありげ。じゅうたんをめくると、その下にも敷物がある。その端が折れ込んでいたので無意識に直そうとして、はっとしてやめた。何事にも意味が込められていそうで、すべてに触るのがためらわれるほど。

ぜいたくなリスニングルームと物量を惜しげもなく投入したハイエンド機器群は、もちろんそれだけでうらやましくもあるが、その密度の高いオーディオキャリアの積み重ねがあっても今なお細やかな調整を怠らない「日々是新たなり」の姿勢に感服した。

もちろん、私のようなリビングオーディオは生き方が違う。再生のパースペクティブも違っていて、Mさんのはかぶりつきさえも超えて、演奏者と同じステージに上がってしまったかのよう。とうてい真似できるしろものではないけれど、同じオーディオマニアとして学ぶところは多いし、音楽ファンとして大いに魅了され心の底から楽しめるオフ会だった。

Mさん、Hさん、ありがとうございました。

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  1. ベルウッドさん、こんにちは。

    素晴らしい音が聴こえてくるような日記でした。

    それぞれのソフト・曲のよいところを目一杯引き出せるのは、ハイエンドのシステムのみならず、その調整のレベルが非常に高度になされているからなんでしょうね。

    違う世界が見られそうで、うらやましい限りです・・・。

    byKYLYN(キリン) at2013-08-25 10:47

  2. ベルウッドさん、こんにちは

    M氏邸レポは読み応えのある日記でありがとうございます。

    ハイエンドのマルチチャンネル実践者は珍しいですし、かなり天井の高いオーディオルームとの相乗で、キリンさん同様素晴らしい音が聞こえそうです。

    byゆたんぽ at2013-08-25 16:16

  3. KYLYNさん

    ご一緒したHさんによれば、Mさんのサウンドは大変化だったそうです。かなりクラシックを意識した音に調整されたようです。ご本人もそれを認めておられて、一昨年の欧州三大ホール巡り以来の生音体験の賜物だと仰っていました。やはり一朝一夕ではありませんね。

    byベルウッド at2013-08-26 16:52

  4. ゆたんぽさん、レスありがとうございます。

    これは日本では最高峰のマルチチャンネルシステムだと思いました。特注のリスニングルームの天井高は確か2.4mだそうで、縦横の間取りも音響に理想の黄金律だそうです。そのままでもよい音がしそうですが、実にこまかく入念な調整がされていました。

    byベルウッド at2013-08-26 16:58

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