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日記

紀尾井 明日への扉5 岡本侑也(チェロ)

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2014年08月01日

紀尾井ホールが、有望な新人を紹介するリサイタルシリーズ「明日への扉」。新人の登竜門として無料公開コンサートの歴史に区切りをつけてから、早、5回目。有料といっても一般2500円。その内容の高さからすれば格安。だから、一向に客足は衰えることがない。私自身は友の会会員だから、以前通り無料招待が受けられるので都合がつく限り足を運ぶことにしている。




チェリストの岡本侑也は、弱冠二十歳。

その技術の高さにまず舌を巻いた。伸びやかで滑らか。飴色の心地よい中音域、高音の音程も驚くほど安定していて間違いがない。そういう技巧の高さにもかかわらず身のこなしはとても穏やかで柔らかい。

これでいきなりベートーヴェンの傑作の森、大曲中の大曲から始めてしまうのだから恐れ入ってしまう。そのレベルの高さは疑いようもない。そのチェロは、雄渾というのでもないし、瞑想に満ちた内省的なものというものとも違う。むしろ、優美で若く爽やかな貴公子然としたところがある。

シューマンを聴くと、歌い方も存分だし色彩表現も巧みで、その音色の光沢が実に美しく気品がある。同じドイツの作曲家で時代も近接するが、ベートーヴェンとシューマンとでは歌い方が違う。その違いが明確でないところに岡本のアプローチへの不満が残る。それでも、岡本のチェロというものには普遍的で瑕疵のない色艶の魅力があると感じた。

前半の19世紀ドイツから、後半は一転して20世紀フランスの知的で洒脱な遊興の世界。

デュティユーは、20世紀後半に活躍した現代作曲家。曲はスイスの指揮者ザッハーの古希を祝ってロストロポーヴィッチから委嘱されて作曲された。ザッハーSACHERの音名主題による音列音楽だが、こういう音楽でも岡本は実に耳当たりのよい美音の世界にしてしまう。高音のフラジオレットの精妙さが見事だった。

最後のプーランクが快心の演奏。

軽妙洒脱で機知あふれる音楽で、快活と憂鬱、純情と皮肉、乾いた叙情がひんぱんに交代し、飛躍、遷移する。第一楽章は、多様多彩で複雑で息もつかせぬ。第2楽章は、ミュートをつけた静かな祈りのような叙情がそのまま抑制された音色で高まっていく。第3楽章は小粋な舞踏風。第4楽章は、まがまがしいほどの重厚な和声の序で始まりながら、闊達な自由の謳歌。再び冒頭の重音が戻って静かに曲を閉じる。岡本は、この曲にはひとかたならぬ思い入れがあったのではないか。実に愉しそうで、指遣いと弓の感触に綺羅のごとく生気が漂う。

芸大付属高在学中の17歳で日本音楽コンクールを制して、昨年からミュンヘン音大の留学中とのことだが、ドイツ的なロマンを熱く語るというよりはこういうラテン的な気質に感度が高いのではないか。それもデュティユーのような高邁な知性と教養よりは、だんぜんプーランクの悪戯っぽい奔放さのほうが活き活きとする。

ピアノ伴奏の寺嶋も、後半に冴えを発揮した。ベートーヴェンなどチェロとのバランスの良さももちろん特筆すべきことだが、互いに手を組んだのは後半の二十世紀音楽にこそふたり共通の企みがあったに違いない。

アンコールは、案の定、二十世紀のラテン系となった。ヴィラ・ロボスの「黒鳥の歌(黒い白鳥の歌)」。

その後のサン=サーンスの「白鳥」は余計。そんな常道的な口上はやめて、そのまま、はじけてしまえばよかったのに。







紀尾井 明日への扉5
岡本侑也(チェロ)
2014年7月30日(水) 19:00
東京・四ッ谷 紀尾井ホール

岡本侑也(チェロ)
寺嶋陸也(ピアノPf)

ベートーヴェン:ソナタ第3番 イ長調 Op.69
シューマン:幻想小曲集 Op.73
デュティユー:ザッハーの名による3つのストローフェ
プーランク:チェロ・ソナタ FP143

(アンコール)
ヴィラ=ロボス:黒鳥の歌、サン=サーンス:白鳥

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