日記
FAPS訪問記
2015年07月01日
茨城県日立市のFAPSさんを久しぶりにお訪ねしました。
今回の訪問の目的は、805の「サイドプレス」スタンドへの新しいセッティング法を実地にご指導いただこうというもの。もうひとつは、ニューモデルの「Air」スタンドの試聴です。実は現在休眠中のN805をサブシステムとして復活させる構想があって、それで新たにまたサイドプレススタンドの購入を思い立ったというわけです。
駅にはFAPS店主・志賀さんが笑顔で迎えてくれました。ほんとうに7年ぶりの訪問で、この駅は、仕事でお客さんを訪ねてよく通った時期もありましたが、すっかり新しくなっています。駅前のロータリーにはかつての面影がありますが、周辺には新しくホテルも建ってずいぶんと新しくなりました。そちらとは反対側の海岸沿いには新しくバイパスが通っていて雰囲気は激変。2階の改札から海側にそのまま進むとぽっかりと空中に浮かんだようなカフェに続いていて、そこからの海の眺めは晴れの日は絶景だそうです。

まずは、ご自宅のラボ(試聴室)で、セッティングをその場で実演。その手順や要領のようなものを教えていただきます。
B&W805は水滴型なので側面が曲面になっています。そのためにサイドプレススタンドにとってはちょっとやっかい。従来は、前後を逆向きにセットする必要があり、見た目のバランスがあまりよくなかったのです。ところが新しいセッティングではバランスもよく、側面押し座の位置も側面の後寄りが使えるので音質的に優位です。一方で、押し座全体が当たるわけではないので、見た目はちょっとアクロバチックで不安な印象を与えます。私はメインシステムを805からT4に換えてからセッティング精度にはかなり神経質になっていますので、なおのこと、きちんとしたセッティングをする自信がありません。そこで、久々の訪問試聴を兼ねて実地講習を受けてみようということにしたわけです。

実際に、805本体をスタンドからすっかり外した状態にして、初めからセッティングを再現していただきました。あっけないほど簡単で、左右二本をスタンドに組み付けるまでにおよそ20分程度でしたでしょうか。完成時の側面押し座のボルト位置の数値があらかじめ頭に入っていればもっと早いでしょう。

側面押し座は、ゴム部分がほんのちょっと触れているだけですがとてもしっかりとグリップできています。スタンドをかなり乱暴に揺らして、スタンドを踊らせてみてもびくともしません。重心がかなり高いにもかかわらずスピーカーとスタンド全体が一体となっているのでヤジロベエのような回復力があって、地震の揺れによる転倒にはかなりの耐性を示すようです。また、セッティング精度も、手でねじったり、とんとんと叩く程度でミリ単位での微妙な調整も可能。

むしろ側面押し座は、あまり強く締め付けないほうがよいそうです。自重そのものは本体底部のネジに直結した受け座で受けていて、側面は左右に動かないようにはさんで固定するだけ。締め付け過ぎると、曲面なので接線方向に力が働いてスピーカーを前方へと押し出す応力が作用します。そのため、自重受けをスパイクにするのはリスクが高い。標準であるネジ込み式を守ったほうが仕上がりの精度と安定度もよいようです。

次に、スタンドの比較試聴。最新の「Air(エア)」スタンドと従来のメインモデル「RB(Round Base)」とのガチンコ比較です。
「Air」に805をセット、「RB」にアコースティック・エナジーの「AE1」をセットして、スピーカーコードを瞬時につなぎ換えての比較です。これは、一聴して「Air」に軍配が上がりました。音の繊細さ、透明感に大きな差があって音楽のニュアンスの表現力が俄然違ってきます。空間の大きさにも一目瞭然というべき差がありました。低音の量感にも差があって、高域の質感も含めて「AE1」とB&W805の格の違いというべきものを見せつけてくれたというふうに思ったのです。
ところがそうではなかった…
次に、同じ805を「Air」と「RB」とそれぞれに組み付けての比較。組み替えるので瞬時の比較ではありません。組み替えに要する時間は10分程度でしょうか。「Air」→「RB」→「Air」と二度組み替えていただきました。頻繁なセッティング作業の連続で、さすがに志賀さんの額には汗が浮かびます。そうやって切り換えには間がありましたが、それでも音の違いは瞭然。
違うスピーカーを聴いているかと思うほどの差があります。しかも、その違いの傾向は先ほど805とAE1で比較したものと寸分違わない。つまり、スタンドの音の違いだったのです。「Air」は限定モデルで、現時点では新たに「Sky(スカイ)」モデルがリリースされています。部分的なコスト対策のための改良を加えた本格的な量産モデルだそうです。素材の剛性を高めてフレームをスリム化し、設計を徹底的に見直してサイドの支柱フレームもコンパクトにしたことで、スタンドの鳴きを従来以上に徹底して排除しほとんど皆無になったとか。
実は「RB」の音を聴いた瞬間に、この音は身に覚えがあると感じました。
「高域」に付帯音のようなものがあって、それが輪郭をくっきりさせ明瞭で明るい色調にしてくれる一方で、ストリングスの高域の強奏などでは刺すような刺激となったり、女性ボーカルなどにも無用なテンションがかかってしまう。中高域にあくまでもメリハリや活気とかエネルギー感を求めるのか、それとも高域に透明感や爽やかさを求めるかで好みが分かれるところです。けれども、私のようなクラシック派の「高音フェチ」にとっては、何としても音楽としての活気、高い分解能を損なうことなしに、高域にとりついていた不自然な刺すような刺激や濁りを取り除こうと悪戦苦闘してきたわけです。
こうして「Air」の音を聴いてしまうと「RB」の高域にとりついている付帯音のようなものがはっきりとわかってしまいます。「Air」(「Sky」)には、まさに青天の空の高みにまで伸び伸びと突き抜けていくような爽快な抜けのよさがあって、どこまでも見通せるかのように空間が大きく拡がり、奥行き、前後感がくっきりと浮かび上がってくるのです。これは「RB」が重く、支柱余長が大きいことが影響しているとのことです。「Air」の質量は半分、支柱フレーム長さもその設計を見直したそうでかなり短くなっています。
私自身は、電源やケーブルの見直しなどで上流で発生する付帯音や歪みを徹底的に追い込んできました。また、サイズが大きいT4では805よりもたまたま側面押し座の位置が高くて支柱の余りがほとんど無くなっていたことも幸いしているようです。そうやって上流段階で歪みを取ってしまうことによって高域の強奏のストレスも改善できるのですが、それでも「RB」では取り切れていない不要共振や反射音があったというわけです。取り切れていないと、どうしても機器やケーブルなどの個性との「相性」のようなものが生じてしまい、個々の性能を発揮しきれないということになります。そのことでオーディオをかえって難しくしてしまっているのです。
これには、ちょっとショックでした。
いま使っているサイドプレススタンドにすっかり満足していた自分は、いったい何だったのだろうという思いがしてしまいます。底板がなく、外観が太く複雑な構造の重いスタンドとは別次元の開放された音場を作り出すサイドプレスに惚れ込んでいただけに、それ以上のものがあるだなんて…。
気持ちは千々に揺れ動きます。この「Air」「Sky」のミニスタンド版は今のところ考えておられないそうです。そうなると、またしても、ボード置きという今の「お茶の間オーディオ」の根幹にあるライフスタイルも考え直す必要に迫られることになります。また、現行メインのT4は、この軽量化サイドプレスにとっては、サイズ、重量の点でぎりぎりのところになりそうです。
サイドプレスというのは、小型スピーカーの点音源的な特長をそのままに、サイズの大きな据え置き型をはるかに凌駕させてしまうような脅威があります。それを極限にまで高めたのが「Air」「Sky」ということ。それは、周囲の壁をすっかり取り払ったような開放的な空間感覚とどこまでも抜けきったような空気感と立体感の実現です。
時間の過ぎるのはあっという間。名残惜しい気持ちでいっぱいでしたが、すでに時間もすっかり回ってしまっていました。駅まで車で送っていただき、駅の階段口から最後のご挨拶をとふり返ると、再びあのカフェの姿が。夕光に映える《天空のカフェ》は、新スタンド「Air」「Sky」のサウンドイメージにぴったりと重なります。

サブシステムの構築と復活805のセッティングに向けて、気持ちが高まるばかりです。
レス一覧
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ベルウッドさん
いよいよ復活しますか!
このスタンドは、以前から情報は眺めていたのですが、ニューモデルが出て来たのですね〜
制作者から実地でレクチャーを受けられるのはありがたい!
それにしても最後の《天空のカフェ》からの長めは「絶景!」
これからのベルウッドさんの展開も「絶景!」だと良いですね。
もっぱら良い景色の足元というのは「断崖絶壁!」が定番でしょう(爆!
ガラスの向こう側にはきっと「素敵な世界が」待っている!
さっさと「バンジー」決めて下さいね〜〜〜
今後の展開が楽しみです
では、では
byバズケロ at2015-07-01 21:39
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ベルウッドさん、こんばんは。
いよいよ、新型Air or Skyの導入ですか?
個人的には、AirユーザーとしてSkyとの違いが知りたいところです。RBの評価に関しては、ナルホドという感じでその刺激的な部分が気に入って導入したところがあります。空間表現はartistの方が上でしたから。その点Airはどこがスゴイとかではなく、全体的に改善してくれるので、好みの差が出難いと感じています。
bymizu at2015-07-01 23:02
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バズケロさん
>もっぱら良い景色の足元というのは「断崖絶壁!」が定番でしょう
がははは!オチが強烈ですね。私もオチないように気をつけなければ(笑)。
バンジージャンプというのは高所恐怖症の私にはあり得ない選択ですね(笑)。それだけにこの開放感、壁がなくなったようなバーチャルな空間感覚は魅力なんです。
byベルウッド at2015-07-02 13:27
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mizuさん こんにちは
あれ…? mizuさんは、Airを選択されたのだとばかり思っていましたがArtistのほうでしたか。
確かにRBの方が、高域が刺激的というのかシステムの他の機材によっては華やかに聴かせてくれるのだと思います。例えばシンバルなどがメリハリが出てきてガッツを感じさせてくれるのでしょう。あるいはストリングスなどでは厚みのあるムーディな雰囲気をかもし出してくれるのだと思います。
先鋭な分解能やキレを求め、そこにAirを組み合わせると、ストリングスの弦一本一本が分離して精緻なアンサンブルが見えてきますが、雰囲気のようなものは後退するかもしれませんね。ソフトや上流側の欠点を補ったり、固有のクセにうまく合わせてくれるということは無いのでしょうね。真面目すぎて不器用だと言われちゃうのかなぁ~(笑)。
byベルウッド at2015-07-02 13:46
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ストラさん
私のスタンドは「ミニ」と言って、こちらのほうが変則型なんです。本来の標準型「サイドプレス」はフロア置きが前提で、スピーカーを受けるフレームまでの高さが670mmです。小型SP用のスタンドとしてはやや高めかもしれません。
安定性は、全く問題ありません。外れるということはありませんので一般のスタンド置きとの比較は問題になりませんが、トール型スピーカーと較べても耐転倒性能は上回ると思います。重心が高いとかえって倒れにくいというのは自転車と同じですね。わが家の805+ミニも、あの大震災では転倒しませんでしたが、右スピーカーだけはボード上を手前側に走って足を踏み外して落ちてしまったのです。
音の出方は、通常のスタンドのように天板がないので底板の振動が抑え込まれないので音が開放的で定位がよく、低音も音程が明瞭でかつ沈み込むような深さがあります。スタンド自身の箱鳴りで聞かせたり、逆に重量で音を抑え込むような鈍重さが皆無というのが特長です。人によってはそういう箱鳴りや鈍さを「豊かな中低音」と受け取るので、そこが評価の分かれ目かもしれません。
今のところは、まずサブシステムへの導入ということです。その結果次第では…? う~む(笑)。
byベルウッド at2015-07-02 16:07
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書き方が悪かったようで、食い違いを訂正しておきます。
前コメントで、Airユーザーと書きました通り、現用のスタンドはAirで合ってます!サイドプレス初購入時に、RBとArtistを比較して、RBの方が良かったという話と一緒になってしまったようですね。申し訳ないです。
bymizu at2015-07-02 23:07
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mizuさん
こちらこそ早とちりで失礼しました。RBとArtistとの比較だったのですね。Artistとの比較は体験していませんが、軽量化ということではAirの先駆けとなったモデルと言えるのでしょう。Airではさらに軽量化が計られ、サイズも見直されていますがなかでもサイド押し座支柱が短くコンパクトになっているのが大きな違いでしょうか。
その意味では、RBとArtistとは好みの違いですが、Airでは本質的な改善・進歩があるということなのでしょうね。
byベルウッド at2015-07-03 09:19
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ベルウッド様
こんばんは 小型SPにSkyを導入してみました。
PIEGAの内側に並べて小型SPを設置したところ、PIEGAの音場が乱れ再生音が平面的になったように感じましたが、志賀様の言ではSPの特性を認識しやすくなったことが主因であり小型SPを外して元に戻しても傾向は変わらないのでは、試してみるのもよい経験になりますよとのこと。
夜、小音量で、グラスを手に女性ヴォカールを楽しみたい、と気取って導入した小型2waySPですが、音場感や自然な雰囲気など項目によってはメインのPIEGAを凌駕する勢いにやや焦っております。
また志賀様からは丁寧なアドバイスを頂戴しましたので、試してみようと思案中です。
byそねさん at2015-08-17 00:11
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そねさん
Sky導入されましたか!?サイドプレスにセットした小型スピーカーの音場感、自然な雰囲気は経験されるとあらためて驚かれると思います。
PIEGAの音が平面的に感じられたのは、志賀さんの言うようにそういう音を知ってしまったのでそう感じてしまったのだと思います。今までは音色中心で聴いておられたのでしょう。
だからPIEGAのせいではありません。音場感覚を知ったところで、PIEGAのセッティングも見直してみてはいかがでしょう。最後はミリ単位でがらりと変わるのがわかってきます。焦点が合ってくるとPIEGAからも音場感が出てきて、PIEGAがさらにPIEGAらしくなると思いますよ。
byベルウッド at2015-08-17 09:10
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