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日記

山田和樹の20年 (横浜シンフォニエッタ第13回演奏会)

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2018年02月23日

今もっとも注目される若手指揮者・山田和樹。1979年生まれだから、今年で39歳ということになる。横浜シンフォニエッタは、その山田のもとに山田によって設立されたオーケストラ。そのちょうど20周年のコンサート。



もともとは山田が東京芸大在学中に、新入生歓迎演奏会のために有志で結成された「ヤマカズオケ」という学生オケが前身。これがきっかけとなって、山田もその仲間たちがもっとちゃんとオーケストラをやりたいと定期的に集まってリハーサルを重ね同じ年の秋に二回目の演奏会を開く。これが「TOMATOフィルハーモニー」の始まり。そのネーミングは山田の苦手なプチトマトに由来するそうだ。



やがて、その活動の拠点が横浜に移り、山田の留学中の留守を預かった仲間たちの尽力により学生オケから飛躍して自立し、音楽監督・山田の「音楽界の魁、オピニオンリーダー」という志のもとに「イノベーションオケストラ」を標榜する室内オーケストラとして法人化へと発展する。ちょうど10年目の2008年のことだったという。

その後、当時の「山田和樹と一緒にオーケストラをやろう」と集まった芸大同窓の若者たちは、いまや内外の第一線で活躍するようになったが、いまでもまるで「故郷に帰ってくるように」年に一度の横浜シンフォニエッタに参加してくる。そういう充実感と親密さがぎっしり詰まったような濃密なコンサートだった。

プログラムも、ストラヴィンスキー、ショスタコーヴィチ、ラヴェルと、いずれも意欲的な内容で、個人技とアンサンブルのいずれもが高い濃度で統合されたもの。そのサウンドが、500席ほどしかないフィリアホールの空間に濃厚に響きわたる。



1曲目は、ストラヴィンスキーの新古典主義時代の傑作にひとつ「ダンバートン・オークス協奏曲」。15人の室内オーケストラのためのコンチェルト・グロッソを模した擬古典的な編成で活発で技巧的な合奏協奏曲。まさに個人技とアンサンブルの錯綜する闊達な音楽で、全席かぶりつきのようにホールに展開するサウンドは鮮烈。その仲間同士の自由闊達さと合奏の合一感覚は、むしろ指揮者なしのオルフェウス管の名演を連想させる。

ソリストは、クニャーゼフ。



この協奏曲は、心臓を病み著しい健康悪化の状態にあった時期に完成している。事実、作曲者が心臓発作で生死をさまよったのはこの曲が完成した1ヶ月後のことだったという。曲はそういう死や生のなみなみならぬ恐怖とはりつめたような緊張とから成立している。曲の終末はショスタコーヴィチの最後の交響曲第15番の終結に酷似していて、作曲者の自身の「末期死」というものへの達観がある。クニャーゼフ自身、モスクワ音楽院時代の難病や交通事故の後遺症からの再起などによって“奇跡のチェリスト”と呼ばれている。その仄暗い音色と深い内省的な表現は、彼のメジャーレーベルへのデビューとなったバッハの無伴奏組曲でよく現れているが、それはこの曲にはいかにもふさわしく、この日の演奏に立ち会えたことはほんとうに幸せだった。



山田和樹は、おそらく小澤征爾にもっとも目をかけられている若手日本人指揮者だと思う。その小澤がボストン響の音楽監督に就任したのが、今の山田と同じ年齢だった1973年のこと。DGから次々と新録音をリリースすることになるがその一枚がロストロポーヴィチとの初共演となるこのショスタコーヴィチの協奏曲第2番だった。ふたりは晩年に至るまで長く友情を結び続けるが、山田とクニャーゼフの関係もそうなりそうな予感がする。



オーケストラと指揮者の闊達な交歓ということでは、最後のラヴェルも圧巻だった。

8-6-4-4-3の弦五部と2管編成の「マ・メール・ロワ」は、ストラヴィンスキー以上にかぶりつき的サウンドで音楽的にもオーディオ的な音響の愉悦に満ちた演奏だった。おとぎ話の前触れのようなホルンは、逆相成分たっぷりの反射音で遠いこだまのように聞こえてきたのはリサイタルでは気づかないこのホール音響の美質でもあり、同じように低音域たっぷりのこの曲の音造りも効果的に響く。ショスタコーヴィチでも大活躍だった打楽器群の巧さも光るし、あそこでは運命の一撃のように衝撃的なグランカッサも、ここでは深く沈み込むような超低域を伴って響く。入れ替わり立ち替わり部署を替える打楽器群とは対照的だったのが「美女と野獣の対話」で活躍するコントラファゴット。譜面上は持ち替えになるが、奏者はここだけの登場であとはじっとしているだけ。それでもユーモアと多少のペーソスを伴うソロを好演していた。こういうメンバリングも山田とともにオーケストラをやりたいという仲間で考え抜いたことなのだろう。



小澤が、同窓の仲間達と始めたサイトウキネンの中心メンバーを中核として編成した水戸室内管を指揮して録音した初めてのCDにちょうどこの「マ・メール・ロワ」が収録されている。この曲は、多彩な楽器で編成される室内オーケストラ用の曲としてかっこうのレパートリーなのかもしれない。

オーケストラのアンコールは、ジョージアの作曲家・アザラシヴィリの“ノクターン”。

なんとも美しい曲。私は読響のコンサートで遠藤真理のアンコールでこの作曲家の「無言歌」をすでに聴いている。いまちょっとした小ブームなのかもしれないが、いまだに楽譜もなかなかみつからない幻の巨匠であることは変わらないらしい。プログラムにはゼネラルマネージャー碓井俊樹の思い入れたっぷりの現地訪問記がある。

思いもかけないほどに充実したコンサートだった。寒い夜に遠い青葉台にまでやってきたことは十分に報われて、それ以上の幸福感があった。








横浜シンフォニエッタ 第13回演奏会
2018年2月17日(土) 19:00
横浜市青葉区 青葉区民文化センター フィリアホール
(1階11列6番)

横浜シンフォニエッタ
山田和樹 [指揮]
アレクサンドル・クニャーゼフ [チェロ]

ストラヴィンスキー/協奏曲「ダンバードン・オークス」
ショスタコーヴィチ/チェロ協奏曲 第2番
(アンコール)
バッハ:無伴奏組曲第3番よりジーグ
      〃  第1番よりプレリュード

ラヴェル/「マ・メール・ロワ」バレエ全曲版

(アンコール)
アザラシヴィリ:ノクターン

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