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日記

「旅人の夜の歌――ゲーテとワイマル」(小塩節著)読了

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2018年03月14日



パグ太郎さんが紹介された本を読んでみました。

私自身、ワイマールは一昨年6月のドイツ旅行の時にライプツィヒから日帰りで行きましたので親しみを覚えます。

パグ太郎さんの日記とは重複してしまいますが、ゲーテは20台の若さでヨーロッパ文壇の新星としてもてはやされます。そして、ワイマル公国の宮廷に懇請されて同国の行政官となり長くこれに関わりワイマールの街に骨を埋めることになるのですが、本書は、その任官当時から約10年間、政治家の選択に悩み、保守的な貴族領主の抵抗に悩みながらの奮闘に明け暮れるなかで、多感な30台を駆け抜けていくゲーテを、ワイマールの街とその近郊の自然とともに飾り気のない筆致で描く私的エッセイです。

その若きゲーテが、そういう繁忙と喧噪の日々のなかで、その思いを託した二編の同名の詩「旅人の夜の歌」をめぐって、日独交流に尽力してきた著者のゲーテとワイマールの街への深い愛着と洞察を書き綴っています。そこには領邦に分封されていた時代から、ナチスの強制収容所へと至るドイツ文化深層の心象をもみずみずしく描き出しているのです。

行間から、著者のゲーテやワイマールにまつわる私的な体験を愛おしむ気持ちがあふれでてきます。それだけに同じテーマやエピソードがくり返し現れ、論考としてのまとまりには欠けるのですが、かえってそういうことのディテールやことの真否がどうしても気になってしまう気持ちが直截に伝わってきます。

ワイマールとゲーテの話は、19世紀当時のことにとどまりません。特に、最終章の「ブーヘンヴァルト収容所」は、衝撃的なものです。実は、あのヒトラーもワイマールが大好きだったというのです。

そのワイマールには、ナチによって強制収容所が建設されるのです。ワイマールの強制収容所には「ゲーテの槲(かしわ=オーク)と呼ばれる樹齢500年の古木の切り株が今も残っているというのです。ゲーテは、ドイツ文化の象徴であり、ナチスにも一目置かれていました。だからゲーテにまつわる大木は収容所の片隅にそのまま残されました。火事で燃えてしまい切り株だけが残されたとか。著者はその切り株にも思いを馳せます。

もちろんその強制収容所ではおぞましい非人間的な所業が行われていました。ドイツ内外の各地に設立された強制収容所では、ユダヤ人約600万人、非ユダヤ人が少なくとも50万人が虐殺されたと言われています。著者は、生き残った人により戦後間もない頃に公刊された証言などを丹念に掘り起こしていきます。そこで人々が地獄の底でうめくようにささやいたのはゲーテの詩『気高い人間よ 人を助け、善良であれ…(「人間の限界」より)』だったといいます。



気の毒なことにゲーテからは冷遇されたシューベルトは、この2つの『旅人の夜の歌』にも曲をつけています。著者は、文学者らしい詩の韻律など言語学的な分析に続けてシューベルトの作曲解読も行ってくれています。歌というのは、詩の持つ文学的な意義とともに子音や母音という音の質感やイントネーションと旋律、アクセントとリズム、心情に呼応する強弱なども感じ取っていく必要があると思いますが、著者はそれらについてきめ細かく分析をおしえてくれています。



これまた、パグ太郎さんにおしえていただいた、フィッシャー=ディスカウのCDを聴きました。この2つの『旅人の夜の歌』などゲーテの詩に作曲されたシューベルトのリート集として手頃なCDですし、もちろんジェラルド・ムーアのピアノ伴奏とともに名演中の名演です。ちなみにこのCDにも納められている『魔王』について、晩年のゲーテがあるソプラノ歌手が歌うのを聴いて「この歌は前にも聴いたことがある。その時は気に入らなかったのだが…」と最終的には高く評価したそうです。著者は、ゲーテもシューベルトを最後には評価していたと満更でもない様子で語っています。

何よりも著者のゲートとワイマールへの愛着が強く伝わってくる好著だと思いました。





旅人の夜の歌――ゲーテとワイマル
小塩 節 (著)
岩波書店

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  1. ベルウッドさん

    今晩は。返し歌としての日記ありがとうございます。

    ドイツの人の話を聞くと、彼らは本当に真摯に、ナチスドイツの歴史と向き合っているということを痛感します。あれもまた一つの国民性なのでしょうか。ワイマールという土地は、そういう精神が生み出した光と闇の双方を象徴する場所として、彼らは決して記憶し続けるのだと思います。

    日本人には、中々理解し難い所ですが、小塩さんは日独の文化をつないできたご自身の体験と心の動きを通じて、それを語っておられて、素晴らしいと思いました。

    byパグ太郎 at2018-03-15 00:16

  2. パグ太郎さん

    今のドイツには、歴史に向き合うすがすがしいまでの真摯な姿とともにとても危ういものも感じます。実際に旅行してみると我々のようなドイツ語もわからない東洋人に対してとても親切で気さくに英語で話しに応じてくれます。その一方で、移民問題は深刻な治安悪化をもたらしています。ネオナチのようなものは見かけませんが、逆に深夜に大声で叫び暴れる移民の酔漢のグループを何度か目撃しました。あの過激なまでに自由主義的な移民受け入れはメルケル首相の勇み足だったと思っています。

    ドイツ人は、日本人以上にローカリズムのメンタリティが強いですね。日本は、すでに16世紀以降の織豊政権や江戸幕藩体制で支配層が全国的にシャッフルされ、経済交通の自由往来ができていましが、ドイツは19世紀になってようやくそれまでの領邦体制を越えた統一が達成されたからです。本書でもそういう小国分割をよく描いていますね。

    byベルウッド at2018-03-15 11:07

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