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日記

コンスタンチン・リフシッツ バッハ ピアノ協奏曲全曲演奏会 Ⅰ

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2018年04月07日

リフシッツがバッハのピアノ協奏曲全曲を演奏するというので行ってきた。



リフシッツは、今回のツアーで、バッハのピアノのための組曲集の3つ(イギリス組曲、フランス組曲、パルティータ)の全てを演奏している。さらに、東京春音楽祭へと場を映してピアノ協奏曲7曲(+ブランデンブルク協奏曲第5番)を演奏する。《バッハ弾き》との異名をとるリフシッツだが、とてつもなく勢力な活動ふりだ。



会場の東京文化会館小ホールには、中央に向こう向きにベヒシュタインがセットされる。リフシッツがその前に陣取っての指揮振り。その両翼に、7-4-3-1の弦楽オーケストラが展開する。オーケストラは、三鷹市芸術文化センター“風のホール”を本拠に活動する“トウキョウ・ミタカ・フィルハーモニア”。リフシッツのピアノによく応えて活き活きとした爽快な演奏で、聴いていても幸せだった。

先の「パルティータ」全曲では、情感たっぷりの濃密なロマンチシズムのバッハに耽溺したリフシッツだが、協奏曲では打って変わったように闊達で多彩、色彩豊かで躍動感あふれるバッハを弾いた。



譜面台に置かれた分厚いスコアを自分で素早くめくりながら、視線でオーケストラを繰り、左手はオーケストラの低域にしっかりと溶け込み跳ねるようなリズムとコード進行を奏で、右手は時として哀感極まりないカンティナーレを切々と歌い華麗な技巧で流麗に舞う。さながら千手観音のよう。



バッハ弾きの才人たちは、やはり、先ずこの協奏曲を弾く。私にとっては、その皮切りはN響の定期に登場した高橋悠治だった。70年代初め、高校生だった私はG.グールドのバッハがマイブーム。そのただなかに突入してきたのが高橋で、このアルバムでは中間の緩徐楽章を電子ピアノで弾いて、独自の演奏美学を披瀝している。

第1番は、バッハには珍しい全楽章を短調で押し通すという情感の扇動度が高い。リフシッツは、レガートを極度に抑制しながらビート感豊かに疾走しながら、アダージョ楽章では、右手の旋律を見事に浮かび上がらせて歌い上げる。その左右の質感のコントラストが見事。もっとも左手はほとんどオーケストラと同調して沈み込んでいる。高橋悠治がここで電子ピアノを使うというのは冴えたアイデアだったといまさらながら思う。



アンドラーシ・シフも、二度にわたって協奏曲集を録音している。イギリス室内管との演奏は、むしろ明るい色調でピアノの音色のひとつひとつが濃密で滑らかな艶を持っていて美しい。オーケストラも知的でピアノを包みながら活き活きと対話する。このCDは、デノン(日本コロンビア)で、今聴いても録音が素晴らしい。私はなぜかこれをアメリカで買った。ディスクもメイドインUSA。この時よほどバッハが聴きたかったのだと思うが、よく覚えていない。

第2番は、伸びやかで雅びな音楽。音の跳躍とコロコロと転がるような装飾が心地よい。ピアノの音楽のメカニズムがとてもしっくりする。バッハの鍵盤のための協奏曲はいずれもが他の器楽のために書かれたものを自らが編曲したもの。

一連の協奏曲は、ライプツィヒ時代のものだが、その多くはチェンバロ(クラヴィール)のために書き直されたもので、その原曲はケーテン時代のもの。

ケーテン時代は、領主が音楽を重んずるルター派ではなくカルヴァン派を信奉していたために教会音楽の作曲に追われることがなく、また、その宮廷には数多くの優れた器楽奏者がいたことからバッハは多くの世俗音楽を作曲し、ヴァイオリンやチェロの無伴奏曲集など優れた器楽音楽を作曲した。いくつもの器楽のための協奏曲が作曲されたのもそういう恵まれた環境のたまものだった。

ではなぜライプツィヒ時代にそれが鍵盤協奏曲として蘇ったのだろうか。



その背景には、現代のオーケストラの源泉につながっていく《コレギウム・ムジクム》の存在がある。いわゆる《市民オーケストラ》のこと。バッハは、ライプツィヒのトーマスカントールの任にあった。カントールは聖トーマス教会の音楽監督であると同時にライプツィヒ市全体の音楽監督であり、教会の音楽学校の校長でもあり、街のさまざまな行事にも音楽を作曲し、演奏した。学生を初めとする市民音楽家が集うコレギウム・ムジクムは、街のコーヒーハウスで定期的に演奏会を催し、バッハは前任のテレマンに引き続きこの演奏団体、市民の音楽愛好家の演奏会の監督を務めた。市民階級の自由な音楽の集いを指導するということは、宮仕えのバッハにとってケーテン時代を思い出させるような楽しいひとときでもあったに違いない。

一連の協奏曲は、このコレギウム・ムジクムのために書かれたもの。けれどもバッハは教会の仕事で多忙だったので、ケーテン時代に書いた自分の器楽協奏曲をチェンバロ用に編曲し、自分が独奏者兼指揮者となって演奏していた。そういう演奏を彷彿とさせる。



むしろ、失われた原曲が、こうした鍵盤協奏曲の譜面から復元されることも少なくない。この第2番は、原曲が不明だが、消失したオーボエ協奏曲変ホ長調だと考えられ復元の試みがなされてきた。ハインツ・ホリガーは、アルノルト・メールが復元したものを用いて、それをオーボエ・ダモーレで演奏している。穏やかだけれども、とても充実した音楽。



第3番は、あまり演奏されることがなく、アルバムに取り上げられることも少ない。というのもオリジナルのヴァイオリン協奏曲(ホ長調 BWV1042)が有名ではるかにこちらのほうが親しまれているからだろう。ポッジャーのヴァイオリン協奏曲集は古楽アンサンブルによるもので、この曲本来の典雅で無邪気な喜遊に満ちた演奏でしっくりくる。

けれどもピアノによる演奏は、それはそれで独自の音楽的なテクスチュアがあって魅力的。特にリフシッツの演奏はここに至って素晴らしいグルーヴィなわくわくするような推進感があって、ここにはバッハがジャズやロックに編曲されてもそういうビート感覚になじんでしまうということの原点を感じさせるほど。

第4番も、オーボエ・ダモーレ協奏曲として復元されている。



けれども、この曲もピアノで演奏されるとほんとうにいかにもピアノこそがオリジナルだと思いたくなるほど。明るく祝典的な楽しさでひとつひとつの音がよく転がる。そういうピアノらしさということでは、マリー・ペライアのアルバムはいかにもピアノの魅力にあふれている。ラルゲットの高雅な魅力は、アカデミー室内管のバランスのよい美しいアンサンブルによって一層引き立っている。

ペライアに較べると、リフシッツのベヒシュタインはもっと骨が太く一音一音の質感がもっと重い。オーケストラの高域は、同じ高弦の美しさと魅力に溢れているが、文化会館小ホールのややデッドな響きもあって凜としてたくましい。

あらかじめアンコールを予定していなかったのか、熱い拍手の嵐のなかで、はにかむような笑みをたたえたリフシッツが何やら指示をだすが、なかなかオーケストラメンバーに伝わらない。第3番のアレグロが始まっても、最後列のコントラバスがチェロが開いた譜面を覗き込んでやっと合点して合流。そういう和気あいあいとした雰囲気は、まさにライプツィヒのコーヒーハウスを思い起こさせてくれて楽しいものだった。






コンスタンチン・リフシッツ (ピアノ・指揮)
~J.S.バッハ ピアノ協奏曲全曲演奏会 I

2018年3月30日  19:00
東京・上野 東京文化会館 小ホール
(H列25番)


ピアノ・指揮:コンスタンチン・リフシッツ
管弦楽:トウキョウ・ミタカ・フィルハーモニア


J.S.バッハ:
 ピアノ協奏曲 第1番 ニ短調 BWV1052
  I. Allegro
  II. Adagio
  III. Allegro
 ピアノ協奏曲 第2番 ホ長調 BWV1053
  I. [Allegro]
  II. Siciliano
  III. Allegro
 ピアノ協奏曲 第3番 ニ長調 BWV1054
  I. [Allegro]
  II. Adagio e piano sempre
  III. Allegro
 ピアノ協奏曲 第4番 イ長調 BWV1055
  I. Allegro
  II. Larghetto
  III. Allegro ma non tanto

[アンコール]
J.S.バッハ:ピアノ協奏曲 第3番 ニ長調 BWV1054 より 第3楽章 Allegro

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  1. ベルウッドさん

    今度はピアノ協奏曲全曲と伺って、また1日で弾き通したのかと思いましたが、流石にI/IIの二日に分けたのですね。

    ピアノ協奏曲はペライアが愛聴盤で、半年に一回くらいの頻度で無性に聴きたくなるのが不思議です。なのですが、色々な楽器のバージョンがある中で、どれが原曲でどれが編曲か、何故か未だに混乱します。

    byパグ太郎 at2018-04-07 22:52

  2. パグ太郎さん

    ペライア盤は、ピアノの音色が魅力的ですね。とても気持ちが華やぐのに同時に柔らかで暖かみを感じて安らぎます。バックのアカデミー室内管のバランスがとてもよいからでしょう。

    リフシッツは、もうちょっと人の心を覚醒するようなタイプで心が浮き立ちます。ベヒシュタインの音もこの協奏曲ではとてもよかった。コンディションの問題ではないかと思っています。

    byベルウッド at2018-04-08 09:54

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