日記
常識破りの良識(CENYA邸再訪)
2018年04月27日
CENYAさんのお部屋をお訪ねしました。前回は、1月のことでしたから、3ヶ月前のことです。そのたった3ヶ月でCENYAサウンドは大きな変貌を遂げていました。
《激変》と言ってもよいほどの変化ですが、そういう言葉を使うとちょっと誤解を招くかもしれません。その進化は、決して方向転換のようなものではなくて、CENYAさんの世界とでもいうようなしっかりしたサウンドポリシーとオーディオ追究の確かな方向性があって、そこのところはいささかも揺らいでいないのです。そして、そういう確かな幹線道路が敷かれているなかでの進歩であり、進化の過程で生じたイレギュラーがきちんと修正され、正統性がどんどんと明確になってきたという感覚です。

いろいろと細かい変更点はあるのだと思いますが、主要な変更点としては、
(1) 2way チャンネルデバイダの完成(3.4KHzクロス 6dB/oct パッシブ型)
(2) 全段バランス伝送&BTL接続によるアンプ直結ドライブ化
(3) ツイターユニットの変更(→VIFA(peerless)社XT19TD00-04)
(4) サブウーファーのステレオ化
(5) 三角コーナー等の拡散・吸音調音処理
というところでしょう。その完成形での検聴役を仰せつかっての訪問でした。

まず、とてもルックスが整いました。とてもシンプルでコンパクトな面持ちです。AVアンプの多チャンネル多機能を活かした、改造派としての常識破りの回路構成ですが、その仕上がりはとても良識的。ツッコミどころは、「え?なんでAVアンプが2台あるの?」というところでしょうが、外観がとてもシンプルなのでそういうマニアックな面持ちがありません。そのことは、サウンドを聴いてもそうなのです。鬼のようにマニアックな改造があるのに、音はとてもバランスがよくナチュラルです。

一聴すると、とても解像度が高く、すっと高音が抜けるように伸びていて線が明瞭。全体的にどこにも誇張がないナチュラルバランスです。何よりも定位がとても正確で明瞭。前後の奥行きなど立体感は相変わらず。リスポジに過敏なところはなくて立体音場がとても安定しています。これはKYLYN師匠訪問後の熱狂的ルームチューニングの成果なのだと思いました。チューニングパネルはどこかで見た覚えがあるものばかりですが、すべて手作り!

さて…
とは言え、あくまでも検聴役ですので、心を鬼にしてアラ探しです(笑)。
気になったのは、中域が薄く高音域の線が単調で触感やリアリティに乏しく、言ってみれば国民的美少女風…なところ。

ここは、ツィターとウーファーのレベル調整だというのが第一感。お伺いすると、ツィターは-4dBとなっているそうです。一般論としてウーファーよりツィターの方が能率が高いので、これは常識的にはハイ上がりかなという感じです。ちなみに私のT4では-6dBとしています。CENYAさんの場合、このレベル調整はチャンデバのアッテネーターではなくてAVアンプでコントロールできるので変更は簡単。さすが多機能アンプです。上げたり下げたりしながら、その都度、CENYAさん自身に確認していただきながら調整した結果、-6~8dBというところ。調整後は、-8dBで試聴継続しました。
この調整は、けっこう微妙でコツが必要です。どちらかといえば高域をはっきりさせたいと思うとハイを上げたくなり、高域がうるさいと思うと下げるという風にしてしまいますが、実は真反対であることがほとんどです。直感的にやると逆方向に行ってしまい、そのうちわけがわからなくなってドロ沼化するというのが私の経験です。今回の、CENYAさんも事前にはツイターレベルを上げた方が良いかもしれないと仰っていましたが、結果は私の直感どおり真逆でした。クロスオーバー3.4KHzというのは、楽音の周波数帯域範囲内(ピアノの最高音C8=4.2KHz)ですので、耳で直感する《高域》の基音は実はほとんどがウーファーが発している音だからです。
次に気になったのは、低域の解像度が甘く、中低域も何となくぼけてはっきりしないところです。
これは、サブウーファーとメインウーファーの帯域が被っていてバッティングしているというのが第一感。お伺いすると、サブウーファーのカットは40Hzとかなり高めです。サブウーファーに聴感上の低域を求めてしまうのはお門違いです。受け持ちはあくまでも超低域で、部屋の空気を制動するのが役目です。まず、そのことをサブウーファーをオフにすることで確認していただきます。音が静かになり、ピアノなどの自然な明瞭感が向上します。サブウーファーがあるとかえって音が悪くなっていたのです。
サブウーファーのパラメーターの変更は、デジタルチャンネルデバイダーで行うそうです。カット周波数をいったん最低限界の20Hzまで下げて、スロープも-24dB/octから-48dB/octと急峻なカットに変更してもらいます。Eベースの音程や触感がぐっと増して、何よりも音場の広がりが増しました。ここからカットポイントを上げていって、サブウーファーの悪弊が出ないと感じる26Hzでストップ。以降はこれで試聴を継続しました。
中低域に厚みが増し、ボーカルにも身体の内側が共鳴するような厚みと芯が出ます。これがサブウーファーの効果です。そして何よりも音が部屋に充満するような広がりが圧倒的に進化し、なおかつ定位が極めて安定しているのは、左右チャネルをミックスしてしまう《スーパーウーファー》ではなく、左右ステレオ化された《サブウーファー》の威力だと思いました。
再び、試聴モードに入ります。CENYAさんお得意の頭ぐるぐるソフトは、まるでサラウンドのように音が頭の後ろまで回り込みます。ボーカルは正面のスピーカー中央よりやや奥目のところにぽっかりと浮かぶ感覚。前回は音場が天井近くまで上昇していましたが、今回は視線より高めのところでバランスがとても良い。見事です。

私のチェックソフトでも、音像定位がとても正確。調整前はかえって音像がはっきりし過ぎてカノンのハーモニー感がちょっと削がれていましたが、調整後は3声の旋律が分離しつつお互いに溶け込みとても気持ちがよい。このソフトでこれだけ見事な定位感が得られるセッティングは希なこと。スピーカーのセッティングには指一本触れていません。

音像定位の実験もしてみましたが、どうもこれは個人差があるようです。脳内合成があるので、楽器音の認識や余韻の取り方など経験とか慣れとかがあるようです。体調のようなものもあって、この日のCENYAさんは全体的にやや右寄りにバイアスがあるようです。私は、逆に、脳内に刷り込みがあって思い込みがあったかもしれません。音像定位感をあまりにも細かく云々するのはちょっと無理があるかもしれないと実感しました。
それやこれやで時間はあっという間に過ぎてしまいました。
この後は、駅近くの串焼き屋で、反省会。ちょっとした裏話の連続で大いに盛り上がり楽しいお酒タイムとなりました。
レス一覧
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ベルウッドさん、おはようございます。
過分なお褒めの言葉に恐縮と感激を行ったり来たりです。(笑)
一生懸命に製作した楽器を凄腕の調律師にチューニングして頂いた様な心境でございます。
自分としては「どうだ!」位に満足していたのですが、調律後には更に気持ち良くて見通しが良くなりました。
本文中に書かれているベルウッドさんによるバランス調整については、
マルチを経験した人じゃ無いとピンと来ないと言いますか、凄さが伝わらないかも知れませんね。
いつも聴いている自分のシステムではなく他人のシステムなのにできる事自体がそもそもの驚きです。
コレはかなりのノウハウでして経験の蓄積がなし得る技ですので、充分にお金を取れると思います。(笑)
K&Kさんに頂いていた低域の解像度の宿題についてもほぼ解決できた様に思います。
私が考えていたサブウーファーユニットのAVアンプBTL直ドライブ化は様子見という事でちょっと延期します。
ベルウッドさんから最後に頂戴した振動と響の宿題については取り組んでいきます。
マラソンオフ会時に何らかの報告ができると良いのですが。
飲み会での楽しくも熱い議論も含めてとても楽しい時間を頂戴しました、有難うございました!
byCENYA at2018-04-28 09:09
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ベルウッドさんこんにちは。
私が来た時よりも短期間で遙かに洗練されて来たと写真から見てもそう思います。
音のバランスはやはり長年の演奏会経験とオーディオ経験をお持ちのベルウッドさんならではですね。普通はチャンデバやネットワーク類の
調整は迷路に脚踏み入れる様なものですから。
CENYAさんへ、
弄るところが無くなったら是非アナログを弄りに私を弄りに来て下さい。
ウチはヤ○セのディーラーではないのでベンツは取り扱っておりません。その代わり、国産車とアメ車はありますよ(笑)
byニッキー at2018-04-28 16:58
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ベルウッドさん こんばんは。
CENYAさん邸の再訪問記、とても興味深く拝見しました。
私がお邪魔してからも大きく進化されている様ですが、方向性は変わらないということですから、そのサウンドのご感想には共感いたします。
壁コーナーの自作ルームチューニングパーツも凄いですね!拙宅で確認されたものを、自分なりに構想を描いて形にする・・・いつもながらお見事です。
そのご経験からのSPユニット間のレベル調整のお話も参考になりました。AVアンプの調整機能で簡単に試せるところがいいですよね。おかげで早く経験値を上げられそうです。
CENYAさん邸はお金をかけるだけでは無く、着眼点と創意工夫でシステムのクオリティを高められているところが素晴らしいです。是非これからSPでオーディオをやろうと思っている若い方にも体験して頂きたいシステムです。
byKYLYN(キリン) at2018-04-28 20:35
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ベルウッドさん
今晩は
CENYAさんのアジトへ突入ですね!
全く羨ましい...
バズケロも行きたい(笑)
SPユニットを交換されているので、既にSENYAオリジナルサウンドでは無いのでしょうが、マルチをされているので、その時点で別物。
この手のアプローチをされている方々のサウンドは鮮度が高くて、ピントが合ってくるレベルが高いという感想を持っています。
ベルウッドさんもマルチをされているので、あまり違和感がなかったのではないでしょうか?!
こうして変更点を整理して見ると、止まる所を知らない感じ。
目標と手法が具体的に見えているからこそ、止まる必要もないのでしょうね。
チェックしながらの音楽鑑賞も緊張して疲れるものですが、時に無意識に気が行きますね。
このところバズケロもハーベス部屋でアナログをいじり倒していたらいつの間にかチェック脳が活性化してしまいまして、いつまで経っても落ち着かないのに反省しています。
ちなみに最後のカリオンの1tr出足の声、拙宅ではハーベス部屋もJBL部屋も、ボーカルはきっちりセンターですね。
セッティングが落ち着いていないときは少し左寄りからボーカルは出ていましたが、バイアスや思い込みもありますので、本当のところはどうなのかしら?!
何れにせよCENYAサウンド、聞いて見たいです。
では、では
byバズケロ at2018-04-29 22:29
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ベルウッドさん、こんにちは。
今、一番聞いてみたいCENYA邸サウンド。訪問記、興味深く拝見させて頂きました。
どうも一人でチューニングしていると、どこか強調されたところが良い音と勘違いすることって、よくありますね。
特にマルチの場合は、正解が無い中を試行錯誤で追い込んで行く様なもので一方間違えると泥沼ですね。
オーディオ駆け出しの頃、マルチやってみましたが、泥沼化してしまい、すぐ諦めました。
ピントの合ったマルチのBTL駆動、聞いてみたいです。
あと、夜の越谷、良さそうですね。
>国民的美少女
良いじゃないですか。昭和歌謡アイドルとか聞いてみたいです。
byいたちょう at2018-04-30 10:51
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ベルウッドさ〜ん、放置しないで〜、
という訳で横レス失礼致します。
ニッキーさん
凄い針を買ったのですね〜、6月位にはセッティングが落ち着きますか?
その頃にお伺いさせて頂きます!
KYLYNさん
に、めちゃくちゃ影響を受けました!
部屋の角(90°)を無くそうとして約半分が45°になりまして、
45°の内、50%が反射で、残り50%が拡散を狙っています。
四隅だけはちょっと反抗して吸音にしました。(笑)
バズケロさん
この日の私は脳内定位がちょっとだけ右に寄っていたので、
例のアップサンプリング違いでの定位の差異の検証をやれる能力が無かったのです。。。
私の体調が悪かったという事にしておいて下さいませ。
ベルウッドさんいわくは実定位は真ん中だったようです。
いたちょうさん
バランス調整が0.5dB単位で出来るので、聞き慣れてくると刺激が欲しくてジワジワと突出方向でセッティングしていまいがちです。(泣)
これで良いんかなといつも自信が無いです。
5月3日は暇人なので、ご都合が良ければ遊びに来られませんか?
byCENYA at2018-04-30 16:07
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CENYAさん 皆さん
ここのところまるまる3日間、諸事情が重なって「電波の届かない場所にいるか電源が入っていない」状況が続き、レスが遅れてしまいました。
本日もこれからHarubaruさんのマラソンオフ会に参上することになっています。Harubaru邸に向かう電車の中からでもぼちぼちレスいたしますのでよろしくお願いします。
byベルウッド at2018-05-01 10:42
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CENYAさん
遅レス申し訳ありません。しかも、留守役の横レスまでしていただき痛み入ります(笑)。
AVアンプの多チャンネル、多機能を活かして2ウェイマルチ&BTLドライブというにはピュアオーディオとしては型破りでユニークですが、実際に聴かせていただくととても合理的ですし、まとまりがよいので感心してしまいました。システムとしてもコンパクトで操作性も悪くないですね。
サブウーファーもステレオ化で格段に進化しましたね。前回は、スピーカーに近づくとドカンと落とし穴に落ちるような音像落下がありましたが、今回は見事なまでに音場のユニティが確保されました。サブウーファーのBTLドライブも逝ってみたいですね(笑)。
byベルウッド at2018-05-01 12:43
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ニッキーさん
AVアンプを2台さりげなく並べて、ラック高さの低いレイアウトにさらりとまとめたのでスッキリした完成度の高い外観です。実は、サブウーファー用の薄型デジチャンを縦にして中央に挟むようにして立てているのも気がつきにくいのですがとてもスタイリッシュ。自作でラックも作ってしまうという自作派ならではのアイデアが満載です。
byベルウッド at2018-05-01 12:49
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KYLYNさん
お金とかブランドじゃなくて、着眼点と創意工夫というのはその通りですね。そしてKYLYNさんのルームチューニングから学ぶことに謙虚でありしかも貪欲。そしてそれを自分の手で作っちゃうところが素晴らしい。そして結果的にはあまりお金をかけない(笑)。
それにしても、外観的な見映えの良さはご覧のとおりで、その工作能力がちょっとうらやましいです。
byベルウッド at2018-05-02 12:12
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バズケロさん
前回は、クロスオーバーが7KHzとかなり高かったんです。こんな高いクロスでもけっこうまとまっているように聴けるんだなぁという不思議さと、やっぱりどこか綺麗すぎるかなぁという疑問とが半ばするという感覚でした。今回は、3.4KHzというオーソドックスなクロスでしかも最もシンプルで原理的な1次フィルターということで、私にはとてもしっくり来ました。
「カリオン」の幸田浩子さんは普通にセンターボーカルです。でも、クラシックのボーカルはかなり離れたマイクで、アンビエンスマイクとともに同じ空間でマイク録りされているので、焦点が合っていないと左右に揺れたり、奥へ行ったりとなかなか合わせるのが難しいですね。だから、調整用、検聴用として愛用しているという次第です。しかも、バックがストリングスで高域から低域まで混在するアンサンブルなので、超難関です。幸田浩子さんは可愛らしいお顔をしていますが、オーディオ的には鬼のようなソフトです。
byベルウッド at2018-05-02 12:21
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いたちょうさん
BTLの効果は、これじゃぁ~!というようなポイントがあるのかどうかよくわかりませんが、CENYAさんのシステムを聴くと迫力よりも余裕、爆音よりも美音…という感じがします。ノイズがないですね。
だからチューニングによっては「国民的美少女」…つまり、あまり整いすぎていてちょっと単調というのか、肉感的なものが欠落してしまうのです。多分、おいしい中低域のところにバランス的にディップを持ってきてしまう。ドンシャリではないですが、パンチ不足で、すべすべとのっぺりとしちゃいます。やっぱり好みは大人の熟女ですかね(爆)。
byベルウッド at2018-05-02 12:28
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