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日記

若さと老いと  アルテミス・カルテット

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2018年06月10日

アルテミスを聴くのは初めて。

アルバン・ベルク四重奏団、トウキョウ・カルテットと次々とトップ団体が引退・解散し、次世代のトップ・カルテットはどこなのか。いささか視界不明に陥っていました。アルテミスは、そうした次世代というのか、若手のひとつと思い込んでいましたが、結成してすでに30年目を迎えようとしているとのこと。オリジナルメンバーはチェロのエッカート・ルンゲだけ。



ふと気がつくと、ウィーン・コンツェルトハウスの常連で、レオンスカヤなどとも共演を重ねているという。それであわててチケットを買い込んで初の対面ということになりました。2015年にヴィオラのフリーデマン・ヴァイグレが急逝。新たに第2ヴァイオリンにアンシア・クレストンが参加、それまでそのポジションを占めていたグレゴール・ジーグルがヴァイグレの後のヴィオラに回っての新メンバーでの初来日ということでした。

その響きはまろやかで、四つの楽器がよく融け合い、ことさらに緻密さを感じさせない一体となったアンサンブルは、まさに円熟の境地を感じさせるもので、何も知らなかった私は、自分の無知さ加減に少々狼狽させられたほどです。

プログラムは、ベートーヴェンのこのジャンルの初作となった第3番、そのベートーヴェンの名作「クロイツェル・ソナタ」に題材を得たトルストイの名作に着想を借りたヤナーチェクの晩年作品、そして、ベートーヴェンの晩年の四重奏曲に心酔したシューマンが満を持して取り組み一気に書き上げた連作から第3番を取り上げるというもの。楽聖の音楽が文学を触発し、その文学が新たな音楽へと手がかりを与えるという音楽と文学の連環とともに、楽聖の若年と老境が二人の作曲家の若年と老境と連環を生む二重螺旋のような因縁の四重奏になっています。

最初のベートーヴェンは、正直言って、あまりしっくりしませんでした。

初作への気負いが形式的なたたずまいに沈潜したような曲であることも確かですが、ベートヴェンらしいsf(スフォルツァンド)があまり感じられず、とても穏やか。第2ヴァイオリンのクレストンの音色はとても地味で第1ヴァイオリンの陰となり、ヴィオラへの橋渡しとなりあまり自己主張がありません。それが彼女の持ち味なのかと思えたほど。

ところが、ヤナーチェクを聴いて、そのことはとんでもない誤解だったことがわかりました。

いわば老いらくの恋にあったヤナーチェク。肉体関係はなかったと言われますが、38歳年下の人妻カミラ・シュテスロヴァーに恋した彼は、晩年にいたる11年にわたって熱烈なラブレターを数百通も残しています。いわば二重不倫。トルストイの小説では、主人公が妻の不倫を知って苦悩、苦悶の日々を送り、終には妻を殺害する破局へと突き進むのですが、ヤナーチェクの曲を聴いているとそういう苦悶は、生々しいまでに恋に悶々とする恋の病であり、破局はむしろ老年の恋の成就のようにさえ思えてきます。

弱音器の着脱を頻繁に繰り返したり、スルポンティでの激しいノイズは、そういう老いらくの恋の焦燥そのもの。ベートーヴェンでは単調とさえ思えたクレストンの音色は実に変幻自在で多彩な音色を繰り出して、そうした心理描写の中軸となっていきます。第1ヴァイオリンのサレイカは、ヒロインとしての魅力と凜としたたたずまいを崩しませんが、クレストンはそういう主役と対峙する名脇役のよう。このヤナーチェクが圧巻で、この夜の白眉でした。

シューマンの曲は、クララとの恋も成就し充実した結婚生活と作曲活動を送っていた、いわゆる「室内楽の年」の代表作であり、バッハやベートーヴェンの研究に没頭したことの成果でもあったわけです。アルテミスの音色は、一転して、とても融合的でしなやかなものに一変します。そういうビロードのように滑らかで充実した響きは、ヴィオラのジーグルの巧みな色彩コントロールによるブレンドのバランスとともに、チェロのルンゲの明るくしかも深みのある音色のたまものなのだと思いました。

そのことをあらためて痛感したのが、アンコールのバッハ。



アルテミスは、いわゆる起立型のカルテット。立って演奏するスタイルで、チェロだけが高めの台の上に座って演奏します。ステージ斜め上から見下ろす二階バルコニーの席は、直接音と間接音の最良のバランスをもたらしてくれますが、たった四人のアンサンブルが何十人もの弦楽オーケストラにも匹敵するような豊かな響きでホールを満たし、融合して混然と一体となった敬虔なハーモニーに陶然とするほどの感動を与えてくれました。








クァルテットの饗宴2018
アルテミス・カルテット

2018年6月8日(金) 19:00
東京・四ッ谷 紀尾井ホール
(2階BR 1列17番)

アルテミス・カルテット Artemis Quartett
ヴィネタ・サレイカ(第1ヴァイオリン)Vineta Sareika, 1st Vn
アンシア・クレストン(第2ヴァイオリン)Anthea Kreston ,2nd Vn
グレゴール・ジーグル (ヴィオラ)Gregor Sigl,Vla
エッカート・ルンゲ (チェロ)Eckart Runge, Vc


ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第3番ニ長調Op. 18-3
ヤナーチェク:弦楽四重奏曲第1番ホ短調「クロイツェル・ソナタ」

シューマン:弦楽四重奏曲第3番イ長調Op. 41-3

(アンコール)
J.S.バッハ:コラール「聖霊の豊かなる恵みを」BWV.295
モーツァルト:弦楽四重奏曲第19番ハ長調「不協和音」K465より
                      第2楽章Andante cantabile

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  1. アルテミスQはPAC小ホールで本日演奏しています。
    小生は帰省の日程と重なったためマイミクのCさんに譲ったですが、良い演奏団体だった様ですね。

    プログラムは1~2曲目は同じですがPACでは3曲めがモーツァルトのK.465「不協和音」でした。

    by椀方 at2018-06-10 20:35

  2. 今晩は。アルテミスのこのコンサート、狙っていたのですが見事に予定がぶつかり断念しました。ヤナーチェクは良かったと伺い、ますます残念。

    ミュンヘン国際で優勝したのが96年、レコード会社と契約したのが05年という、ゆっくりとした展開でしたので、いつも、若手、アルバンベルクSQの後継という印象が続いていたのではないでしょうか。でも30年なのですね。

    対抗馬、ベルーチャは是非聴きに行きたいと思います。

    byパグ太郎 at2018-06-10 22:39

  3. 椀方さん

    よいカルテットでした。演奏の円熟味はもはや若手ではないですね。

    プログラム違ってましたか。こちらではアンコールの二曲目でやったモーツァルトなのですね。一曲目のバッハは想定内だったはずですが、拍手が鳴り止まずずっと続いたので二曲目は想定外だったのでしょう。

    byベルウッド at2018-06-10 23:42

  4. パグ太郎さん

    結成は、リューベック音楽大学時代の1989年にさかのぼるそうです。

    新メンバーのアンシア・クレストンは、募集を知って米国西海岸から駆けつけたそうです。チェロのルンゲとはジュリアード四重奏団のマスタークラスで共に学び20年来の知り合いだったとか。

    ベルチャも来年2月に紀尾井ホールのこのシリーズに出演します。ウィーン・コンチェルトハウスのモーツァルトホールと紀尾井は客席数700席で同じような規模。室内楽には最適です。

    byベルウッド at2018-06-10 23:54

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