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日記

ピエール・ブーレーズ・ザール (ドイツ音楽三昧 その2)

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2018年07月04日

ベルリン到着の当日、私たちはホテルに荷物を預けると、さっそく市内視察に出かけました。ベルリン大聖堂の大オルガンの音を体験し、博物館巡りをそそくさと済ませてから私たちが向かったのはウンター・デン・リンデンに面したベルリン国立歌劇場付近のベーベル広場です。



その夜のコンサート会場を確認のために向かった私たちのお目当ては、国立歌劇場ではなくて、昨年の3月に新しくオープンした《ピエール・ブーレーズ・ザール》です。



このホールは、指揮者のダニエル・バレンボイムが尽力して創設したバレンボイム・ザイードアカデミーと併設されたもの。アカデミーはパレスチナ系アメリカ人の文学研究者のエドワード・サイード (故人) とバレンボイムが、アラブ諸国とイスラエルの双方の若い音楽学生を集めて創設したウェスト・イースタン・ディヴァン・オーケストラが基盤となっています。その建物はベルリン国立歌劇場の舞台装置収納庫だった建物を改築したものです。



コンサート会場は、楕円形の客席が中央のステージフロアを取り囲むとても斬新なもの。

設計には、ロサンゼルスのディズニー・コンサートホールを設計したフランク・O・ゲーリーが無償で参画し、そのホール部分の音響設計は、ゲーリーからの依頼により日本の永田音響設計が担当しています。



楕円形というアイデアは、初めてバレンボイムと会ったときにゲーリーが提案したもの。ナプキンに描いたスケッチを見たバレンボイムはすぐに「フランク、楕円形は面白い!是非、是非!」と賛同したそうです。でも、最初のアイデアでは、ステージをホールの一端に配置した従来型のレイアウト。客席だけが楕円形状でステージとは向き合うように配置されていました。楕円形状にレイアウトした客席の中央にステージを配置し、ステージ周辺の客席を可動可変型にして自由度を持たせたのは、故ブーレーズが提唱していた "モジュール可変ホール”(Salle modulable)を実現したいという意図があったそうです。



この630席の室内楽用ホールは、さらには隣接するアカデミーのオーケストラのリハーサル会場も兼ねています。フルオーケストラのリハーサルを行っても音が飽和しないように天井高を最大限とりたいということも、建物の最下層中央にステージを設けるという発想のきっかけだったようです。客席のうち100席はステージと同じフロアにありますが、これを撤去すれば大編成のオーケストラの演奏も可能となるわけです。

懸念されるのは、客席にとっての楽器の方向性、音響の指向性です。席によっては演奏者や楽器の背面に位置することになります。

ところが、意外なことに、実際、聴いてみるとそのような懸念は全くありませんでした。



このホールは既存の歴史的な建造物の中にコンサート用のスペースを新しく設置するという珍しいケースです。歌劇場の収納庫だったこの建物は外観は味も素っ気もない四角四面の建物。実は、ホールの音響スペースもよく見てみると四角四面の壁に取り囲まれています。視覚的には楕円ですが、音響的にはシューボックス型の平行壁で囲まれた空間となっています。ウィーンのムジークフェラインなど素晴らしい音響を誇る幾多の名ホールがこのシューボックス型であることはよく知られています。



ムジークフェラインは、音が空間全体を満たし、場所の違いによってその音響バランスが少しずつ違いがあるものの、どの席でも同じように素晴らしい音響が楽しめる素晴らしいホールです。そういう特長はアムステルダムのコンセルトヘボウのP席でも体験しました。人間が感知する音響のほとんどは間接音だと言われています。その間接音効果でまんべんなく音が回るのはむしろ平面壁に取り囲まれたシューボックス型のホールなのです。

しかも、このホールでは、音源が中央に配置されることで、そういうシューボックス型空間での音の響きが理想的になっているのだと想像されます。逆に、シューボックス型の大きな欠点は、視覚面で公平さを欠くこと。ベルリンのフィルハーモニー・ザールは、そういう客席のパースペクティブを改善するためにアリーナ型が実現し画期的なホールとなりました。このブーレーズ・ザールは、音響的にはシューボックス、視覚的にはアリーナ型のそれぞれの利点をいいとこ取りしたようなもの。聴衆と演奏者との親密度がとても高く、その間に隔てる距離をほとんど感じません。逆に上層のバルコニー席に演奏者を配置させることも可能。いわゆるバンダのようなものですが、こうすれば逆に聴く側が演奏者に囲まれるようになります。

20世紀音楽では、聴き手と演奏者との立体的な相対的な関係が強く意識された楽曲が多く生まれています。個人的には、武満徹の『フロム・ミー・フローズ・ホワット・ユー・コール・タイム』を聴いたときに、これじゃあ面白さ半減だとオペラシティ大ホールのバルコニー席で恨めしく思ったことがあります。逆に、バッハの教会音楽などを実際に教会で聴いてみると同じように聴き手と演奏者との位置は様々で、聴衆が演奏者に取り囲まれるような配置こそ本来のものであったことに気づかされます。BSプレミアムで放送された、このブーレーズ・ザールのこけら落としコンサートの映像を思い出しながら、ここでいろいろな曲を聴いてみたいと思いました。

さその夜のリサイタルコンサートでは、まさに、このホールならではのそういう演奏者との親密な関係を体験することになったのです。


(続く)

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  1. ベルウッドさん
    このようなリノベーションが可能なのは、元の建物の構造がシッカリしていたからでしょうね?
    なにせホールの中に柱が見えないのですから。

    日本のように地震が多発する国では無理かな?

    by椀方 at2018-07-05 21:41

  2. 椀方さん

    もともと倉庫だったのでこのような大スパンのスペースが確保されたのでしょうか。日本家屋のように大黒柱とか骨組みで支えるのではなくて壁で支える構造になっているのですね。

    模型を見ると、バルコニーはまるで宙に浮いているようですし、若干のらせん状になっていて3Dデザインです。ちょっと日本人には発想できないような大胆なリノベーションです。

    byベルウッド at2018-07-07 11:19

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