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フリューガル・オペラ (オペラ研修所修了公演「ドン・ジョヴァンニ」)

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2019年03月09日

新国立劇場には、座席数1000席ほどの中劇場があることをご存知ですか。

いろいろな舞台公演にも対応できる柔軟な構造と設備を備えた中規模の劇場で、額縁型のプロセニウム型と舞台面を客席にせり出したオープン型のどちらにも対応できて、しかも、舞台前には床機構でオーケストラピットも作れるので、オーケストラの入るちょっとしたオペラやバレエの公演も可能になっています。



ここでの公演は、目立たないのですがちょっと面白い企画があって、親密で濃密な距離感と音響の公演が楽しめます。しかも、新国立劇場ならではの、いわば、産地直送、蔵出しの直売店とかアウトレット的なところがあって、チケットプライスもお財布に優しい。

過去にも、故・若杉弘監督(当時)の肝いりのドビュッシー「ペレアスとメリザンド」、鈴木雅明/BCJのモンテヴェルディ「ポッペイアの戴冠」、あるいは、リゲティ「ル・グラン・マカーブル」日本初演などなど…と、多士済々。カヴァー歌手によるオペラ公演というのもあって、中味は一流、値段はお得という、まさに、倹約・質素のエンタテインメントのアウトレットなのです。




さて…

久々に足を運んだのは、新国立劇場所属のオペラ研修所の研修生による修了公演。

研修所というのは、プロのオペラ歌手の養成所。いずれも音楽大学卒で厳しい選考を経た15人ほどの歌手たちが、3年課程で研修に励むというもの。国内外の一流講師陣による歌唱レッスンはもとより、演技や発声法の実践的な演習、諸外国語習得のための授業など、オペラ歌手に不可欠な知識と教養を身につけるための多様な研修を行っているとのこと。

今回は、その19期~21期生によるキャスティングによるモーツァルト「ドン・ジョヴァンニ」の公演。てっきりピアノ連弾で簡単な演技や振付による演奏会形式と思い込んでいたのですが、劇場内に入ってみるとフルオーケストラと舞台装置による本格公演。もちろん出演者は、これからプロとして本場へとチャレンジしていく若手実力者ばかり。これで、お一人様《4000円+消費税》と超お得。

演出も、一線で活躍する粟国氏によるものですが、オーソドックスな演出でシンプル。この劇場の回り舞台など多機能な機構をうまく活用した合理的で、わかりやすくなじみやすい舞台デザイン。

モーツァルトのオペラは、アリアだけではなく、二重唱、四重唱…とアンサンブルが多様に展開する面白さがあります。客寄せのための大スターをもともと想定しているわけでもないので、修了生がリハーサルを重ねて磨きあげた演技とアンサンブルによるバランスのとれた公演だと、観客にとってもオペラそのものに集中できてわかりやすく、音楽も楽しめます。

騎士長の亡霊のおどろおどろしい冒頭に引きずられたのか、序曲がちょっと重く、第1幕前半は全体に軽快さに欠け、歌とオーケストラのフレーズがうまくかみ合いません。初日ということもあってやっぱり皆さん硬くなっていたのでしょうか。

そういう重さを振り払ったのは、大勢の村人たちを宴席に招待しジョヴァンニが「シャンパンの歌」を歌う辺りから。群衆の場面で、研修に励んできた仲間意識が、気持ちの硬さをほぐすきっかけになったのかもしれません。ジョヴァンニの狙いは、新婚ほやほやの村娘ツェルリーナというわけですが、彼女の軽妙浮薄さが研修生カンパニー全体をも軽快にさせたというこもあるかもしれません。

不実な好色のジョヴァンニを大悪党に仕立てて、あとは悪党にはなりきれない男性諸氏の自己戯画的なところのある、このオペラですが、そういう殿方にとっては、何ともしたたかなくすぐりに長けて、危ないギリギリさにハラハラさせられ、それでいてコケティッシュな《小悪魔ちゃん》のツェルリーナがある種のピヴォット(支点)になってステージ全体に生命感が生まれるということを、今回ほど痛切に感じたことはありません。これで、技巧にもっとキレが出せたら、すぐにでもヨーロッパ一流の舞台でも通用するだろうと思えたほど。

これで、すっかり息を吹き返しました。後半の第二幕は、ジョヴァンニの不実極まりないセレナードの「立派さ」や、エルヴィーラのアリアの切ない逡巡、ドンナ・アンナのお堅いアリアなど、モーツァルトらしい音楽の虚々実々に生命が吹き込まれたよう。そこから、それぞれの歌手の実力が浮き上がってきます。エルヴィーラは、これまでは『悪女の深情け』のように思い込んでいましたが、実のところ『悪女(=醜女)』どころかとても気高い美女という役どころなのだということに初めて気がつきました。それがアンナ役の貫禄なのだと言うべきなのでしょうか。

もちろんジョヴァンニ役も立派。レポレッロ役も熱演。マゼットもオッターヴィオも好演。最後の騎士長の声量には度肝を抜かれました。さすが、センパイです。

最終場の一同による合唱は本当に晴れ晴れとした達成感に満ちたもの。

もちろん、応援する側の私自身もたいそうな得をしたという満ち足りた気分で家路につきました。





新国立劇場オペラ研修所修了公演
オペラ「ドン・ジョヴァンニ」/ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト

2019年3月8日(金) 18:00
東京・初台 新国立劇場中劇場
(1階14列31番)

■台本:ロレンツォ・ダ・ポンテ
■作曲:ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト

■指揮:河原忠之(オペラ研修所音楽主任講師)
■演出・演技指導:粟國 淳(オペラ研修所演出主任講師)
■装置:横田あつみ
■衣裳コーディネーター:加藤寿子
■照明:稲葉直人(ASG)
■舞台監督:須藤清香
■オペラ研修所長:永井和子
■主催:文化庁、新国立劇場

■出演
新国立劇場オペラ研修所 第19期生、第20期生、第21期生
賛助出演
松中哲平(16期修了)

(3/8 初日)
【ドン・ジョヴァンニ】    高橋正尚
【ドンナ・アンナ】      平野柚香
【ドン・オッターヴィオ】   荏原孝弥
【ドンナ・エルヴィーラ】   十合翔子
【レポレッロ】        伊良波良真
【マゼット】         井上大聞
【ツェルリーナ】       斉藤真歩
【騎士長】          松中哲平

■合唱:東京音楽大学 国立音楽大学 東京芸術大学 有志 ほか
■管弦楽:新国立アカデミーアンサンブル

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  1. ドン ジョバンニはやはりツェリーナを中心に回っていますよね。お手をどうぞのの二重唱は、ドン・ジョバンニとの接触により、彼女が誘惑されるものから誘惑するものに転換する最大の見所だと思っています。
    それを演じることができているツェリーナには滅多におめにかかれないのですが、粟國さんの演出が良かったのでしょうね。

    byパグ太郎 at2019-03-10 13:55

  2. パグ太郎さん

    ツェルリーナの役どころが、見ている側だけでなく、演ずる側にとってもピヴォタルなところがあるのですね。

    気がついてみると、アンサンブルらしいアンサンブルが最初に現れるのは、ツェルリーナが登場してからなのです。それまでは、「カタログの歌」などソロの聴かせどころや、レチタティーヴォ的な絡みはあってもアンサンブルはありません。それが、村人のコーラスが入って、あのジョヴァンニがツェルリーナを誘惑するデュエットで初めてアンサンブルが来る。

    今回は、明らかにこの場面から、ステージ上が伸び伸びとした活気が生まれました。このオペラではツェルリーナが大事ですね。

    しかも、どうしても体格が小柄で軽めの日本人にとっては、この役どころは実力を発揮すれば、ぐっと存在感を示せるニッチなのだと思いました。

    byベルウッド at2019-03-13 13:36

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