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日記

高調波は敵か味方か(その3)

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2019年06月09日

ようやく最終章です。

「高調波」とは、波形の歪みのことだ、というのが前回のお話しです。つまり、入力波形に対して出力波形が正確に相似形になっていない。その歪み度合いを定量的に計測することを可能にしているのがフーリエ変換によるFFT(「高速フーリエ変換」 “Fast Fourier Transformation”)という技術です。

では、電源でいう高調波と何のことのなでしょう?というのが、これからのお話しです。


まず、ひと言で言ってしまえば、電源も同じことです。やはり、波形の歪みのことなのです。

商用電源は、50Hzまたは60Hzの正弦波交流で供給されています。その波形が正弦波からどれだけ歪んでいるかが高調波として現れるということ。ここでもフーリエ変換が登場します。そのことにおいて、オーディオ信号の歪みとも、音楽楽音の倍音と同じことなのです。

オーディオ信号は様々な波形の信号を扱うので、その入力波と出力波を比較して、どれだけ歪んでいるかが問われます。入力波と出力波の差をとってそこに現れる波形のスペクトラム解析で高調波をとらえます。電源は、基準が正弦波なので、単純にそのスペクトラム(周波数成分)に基準となる周波数(すなわち50Hzまたは60Hz)以外にどんな周波数のものが含まれているかということになります。波形が歪めば、高調波が現れるということです。

なぜ高調波を含むのかという問いかけは、なぜ電源波形は歪むのかという問いと等価です。

その原因は、電源の負荷です。



さらに絞って言えば、直流負荷が原因となります。本来、負荷がそのまま交流電力を使用するならば、電源波形を歪ませることにはなりません。かつては電灯であれ電熱器であれ単純な抵抗でしたし、電動モーターも交流に同期するシンクロナスモーターなど交流モーターが主流で冷蔵庫などのコンプレッサーもそれで動いていました。それがラジオやTVなど、直流に変換(整流)して直流電源で動く機器が普及していき、さらに今世紀に入って急速に家庭電化製品が多様化しIT化し、スイッチング素子や制御技術の発達で、どんどんと高調波発生要因が増えてきました。



大きさが常に変化する交流を、常に一定の大きさの直流に変換(整流)すると、そこには電流を一方向だけに流したり、さらに、それをいったん溜めたり、放流したりする機能が必要です。その度に電源側は、供給を周期的に乱され、あるいは、逆流が起こったりして、波形が乱れることになります。電圧波形の頂点だけ電流が流れるので、そのためにそこだけ電圧降下が起こる。そのために頭がつぶれてしまいます。だから、電源で発生するのはほとんどが奇数次高調波ということになります。



電源波形の歪みですから、高周波と違って伝播するとか混入するということはありませんが、つながっていればひとつの電源ですから影響は広範囲に及びます。

いまや、鉄鋼生産で世界一の中国ですが、かつては経済的には後進国でした。もう、40年も前のことですが、ある中国の工業都市で、製鉄所の圧延機を真っ赤に焼けた鋼塊が通過する度に、巨大なロールを回すために瞬間的に大電流が流れ電圧降下が起こるため、街中の灯りが一瞬暗くなるということを目撃しました。これは大工場の電力消費による電圧変動であって、高調波ではありませんが、電力供給というものには、このように共通する領域全体に影響が及ぶという「系統」の問題がつきまといます。そのことは高調波も同じなのです。ですから、電力会社から供給されるおおもとの電源品質というよりは、同じ電柱上のトランスにつながる町工場などの機器や、各家庭のTVや冷蔵庫、クーラーなどの比較的大電流の家電機器に起因する高調波が問題となります。

オーディオのレベルで言えば、供給される商用電源の品質は、できるだけ系統につながる品質悪化要因から切り離されたクリーンな系統を確保するということになります。そういう意味では、マイ電柱(~オーディオ専用幹線)こそオーディオにとっては究極の高品質電源ということになります。

けれども、結局、一番の問題はオーディオアンプなのです。いわば自分自身が問題になっているということになります。大電流の整流回路ほど影響が大きくなりますから、常時大電流を消費している大出力のA級パワーアンプなどは最悪の高調波発生機器ということになります。

電源供給側から言えば、高調波は使用機器側に起因するので、その対策は発生原因側、すなわち使用者側に求められるということになります。大電力を消費し独自の受電設備を持つ大口契約家に対しては厳しい高調波対策の基準が課せられますし、OA機器などや家電製品には経産省のガイドラインや工業規格、JEITAなどの業界団体規格が設けられています。

電源の高調波流出抑制対策としては、結局は、フィルターによって特定の周波数の高調波を吸収・除去するということになります。正弦波の足し算に変換できるということは、引き算すれば波形を変えることができるというわけです。ここがまたフーリエ変換の妙ということになります。電源周波数はあらかじめ決まっていますから、高調波はその整数倍ということになります。それを標的にしてフィルターで除去すれば、波形は限りなくもともとの正弦波に近づくというわけです。しかし、波形に大きく影響するのは低次の高調波です。一般には5次とか7次高調波が問題となり、20次以上の高調波はほとんど対策としてはスコープ外となります。しかし、5次、7次では、250Hzとか350Hzというレベルの周波数ですから、工場規模でなくともかなり大がかりのフィルターになってしまいます。電源高調波対策というのは難しいのです。


しかし、電源高調波は、オーディオにとってどれほど問題なのでしょうか。


以下は、あくまでもオーディオファンとしての私見ですが…

そもそも、アンプなどのオーディオ機器は内部で交流電源を整流して直流電源によって機能しています。直流にしているのですから、その元となる交流は跡形もないわけで、その波形が少々歪んでいたとしても関係ないはずです。アンプにとって問題になるのは、直流電源がいかに必要とする電流電圧に瞬時に正確に対応できるかであって、それは波形というよりは、インピーダンスなど整流回路の性能の問題です。

従って、商用電源波形が少々歪んでいたとしてもほとんど問題とならないのではないでしょうか。電圧降下や電圧変動などの電源品質が安定的に保たれ、歪率も管理内に収まっていればオーディオには問題がないはずです。スペクトルをとって高調波が観察されたからと言って大騒ぎすることではありません。それを高周波ノイズと同じように問題視するのは大いなる勘違いというものです。

ただし、高周波レベルに達した高次高調波は、高周波ノイズとほぼ同じような影響を及ぼす怖れがあります。これは、可聴帯域外の倍音はほとんど高周波ノイズと判別しがたいということよく似ています。フィデリックスのハーモネーターの理屈と同じです。ノイズは、並行伝送やトランス、チョークなどのインダクタ、あるいはコンデンサなどで除去する。そのことも共通ということになるわけです。アースがとても大事だということも同じだということになります。ただし、もともとが正弦波の商用電源では高次高調波が問題となることはあまりありません。それよりも高周波領域のノイズのほうが問題なのです。



クリーン電源には、歪みを減らすということで PWM(Pulse Width Modulation)インバーターなどで、いったん直流に変換して改めて交流に変換し正弦波を再生するタイプがあります。確かに電源歪みということでは理想ですが、大電力のパワーアンプなどが負荷となればかなりの大がかりな装置が必要となりますし、かえって鮮度や活気に乏しい音になるなどの弊害も懸念されます。しかも、自身が電源供給側に高調波を発生させる原因になりかねません。商用電源は、もともとは正弦波ですから高次高調波は少ないわけですが、インバーターはかえって高周波ノイズを増やしてしまいかねません。そのことは、インバーターで交流100Vを出力するバッテリー電源も同じです。

オーディオ電源は、やはり専用幹線を設け分電盤をオーディオルームに設置し、可能ならば200Vの三線で引っ張りアンプなどはそのまま200Vを電源とする。主ブレーカーから専用分電盤までは太い導線を使用してインピーダンスを下げ、電圧降下などを出来るだけ回避するというのが王道だと思います。各機器は、分電盤から各々分岐給電としてアイソレーショントランスや優秀なクリーン電源を通じて出来るだけ独立させる。オーディオというのは、やはり、医療機器や精密計測器やデジタル機器と同じでランダムな高周波ノイズが主敵なのだと思います。その意味では、アースも大きな決め手です。


高調波は、敵でも味方でもあります。

楽器でも、フルートなどは正弦波の純音に近いのですが、ヴァイオリンなどの弦楽器は尖ったノコギリ波で高調波だらけです。倍音こそ音の深みと色彩感を創出するものですから、演奏者は必死に豊かな美音を磨き、その色彩や触感を巧みに操ってこそ名演奏家と言えるのです。

オーディオでは、出来るだけ耳障りな音を聴きたくないということで高域をカットして倍音を削いでしまった色彩や活気に乏しい音を好むこともあります。逆に、入力波を歪ませて高調波を付け加えて悦に入っていることも少なくありません。前者は、いわゆるクラシック音楽ファンや女性ボーカルファンに多く、後者は、ジャズファンや低音フェチに多いといったところでしょうか。

家庭の商用電源では、高調波はあまり大きな問題ではないはずですが、数値にこだわりメーカーやショップのいいなりになって過剰に敵視すると、かえって高周波ノイズ発生源を部屋に何台も持ち込む羽目に陥ってしまいます。矩形のパルス波は高次高調波のかたまりですから、これで電力を制御するインバーターなんてちょっとぞっとします。

高調波とは上手につき合いたいですね。


長文・駄文、失礼いたしました。

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  1. ベルウッドさん、こんばんは。

    電源の部分だけで単純に言うと、装置内の直流とグランドの質が高ければそれで良いということですね。
    自作ですとその部分の改善に色々と試せますが、自作をしない一般的な話だと、直流化の部分はアンタッチャブルなので、上流側の交流の質をよくする対策をする事になりますよね。
    交流のノイズ対策は効果的だけど、副作用が出るようなやり方でもって波形をキレイにすることは意味が無いというか、かえって悪効果なのでやめた方が良いんじゃないか。
    という理解でよろしいでしょうか?

    長いっす。。。

    byCENYA at2019-06-09 20:21

  2. CENYAさん

    長文おつき合いいただきありがとうございます。

    高調波歪みって何だろう?と考えてみたのですが、書き始めたら長くなっちゃいました。理科系であってもフーリエ変換とかスペクトル解析って便利すぎてかえって日常的な実務感に慣れちゃって誤解したイメージでとらえがちです。ノイズとごっちゃになっちゃう。

    商用電源の波形は、気にするほどではない。気にしてもしょうがない。キレイにしても自分で歪めちゃうわけですから。オーディオは、やっぱりノイズとの闘いですね。クリーン電源の類いは、出力インピーダンスとノイズ除去の具合で音の良し悪しが決まっちゃうんですよ。

    byベルウッド at2019-06-10 00:30

  3. お疲れ様です
    電源の議論をしていると、あるいは人様の議論を見ていると"多分単語の意味を取り違えてそうだなあ"と思われる節があります
    そこでこういった 一般的な教科書とも比較にならないほど分かりやすい解説があるとオーディオ業界に非常に大きな貢献となっているのではないでしょうか

    限界まで電源の実験をしてきた経験から言うと高調波よりも圧倒的に高周波の方が問題であるというのは正しいと思います 高周波ノイズ あるいはそれよりはるかに上回るいわゆる通信関係のGHz 範囲のノイズは非常に歪みとして大きな影響力がありこれは排除しないとお話になりません その上で高調波 いわゆる 低い周波数に関しては改善すると 奥行きや音場感につながりますが それはオーディオの 枝葉末節の話であり あれば良いのは確かですが それは行き過ぎた究極の音を求める求道者の話です
    シンプルなマイクセッティングの録音の良いソースを追い込まれたシステムで聞いた場合大きな影響になりますがソースの 録音方法次第ではあまり高調波を根絶することにあまり意味が見出せないことも あるはあります

    でもそもそもベルウッドさん パワーアンプをバッテリーで直接駆動していらっしゃるので いわゆる反則技 あらゆる問題を素通りしていらっしゃる
    ソース機器だけなら極限に麗しい電源を差し上げても少ないリソースで行けそうです、いいなあ

    byグルマン at2019-06-10 13:58

  4. グルマンさん

    こちらこそお疲れ様です。お付き合いいただきありがとうございます。

    電源の低次高調波はほとんど問題ありません。そのことを相当に長いテークバックで語らないと、誤解が解けないと思ったのでつい拙い長文を重ねることになってしまいました。たぶんわからない人には結局わかってもらえないでしょう。電源高調波を問題にするのなら、むしろ、電圧変動や電圧降下の問題として、整流後の直流電源の安定度が要注意といえるでしょう。ハイエンド製品は優秀な高速レギュレーター(安定化電源)をOPアンプチップ毎に設けていたりします。

    信号レベルでの低次高調波が、奥行きや音場感に影響するというのはその通りです。真空管は、電源効率が悪く、どうしても直線性が劣るので、現代的録音のそうした音場感が苦手のようです。特にビンテージアンプの愛好家は、音場よりも音色の恣意性を楽しんでおられるようです。偶数次歪みがあれば、絶対位相の違いも出るのかもしれません。

    バッテリーで直接駆動するアンプは、ノイズ面では圧倒的に優位ですが、弱点もあります。それは、大出力になると電源インピーダンスが上がり、なおかつ、交流→整流回路と同じような現象が起こるようです。つまりアンプ側の信号波によって電源が揺すぶられ、回生電流の行き場がなくなったりバッテリーに逆流したりすることです。小型の低能率スピーカーはけっこうしんどいです。この対策が、先のキャパシタ+出川式LCM回路の増設ということなのです。

    byベルウッド at2019-06-11 12:19

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