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日記

クレーメルのバッハ新旧聴き比べ

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2019年08月29日

ギドン・クレーメルは、バッハの無伴奏を2度録音しています。ひとつは、1980年のアナログ録音。もうひとつは2001年から02年にかけた再録音。前者は、フィリップスで、後者はECMによる録音です。



この新旧両盤を聴き較べてみました。

きっかけはtomoken1962さんの日記

tomoken1962さんは、クレーメルの無伴奏のCDをシステム評価用に使っておられるという。たまたま私はクレーメルの新盤しか所有しておらず、一方、tomoken1962さんは旧盤しか持っておられない。私がレスしたことでtomoken1962さんは新しいECM盤も入手して聴いてみたそうで、その印象をコメントされています。

そのことに触発されて、私も旧盤を入手してみました。

届いた中古CDは、状態が最悪。

2枚組のケースは、ところどころ欠けていて、開いた途端にバラバラ。



レーベル側は明らかに、クッションの発泡ウレタンの加水分解がこびりついた痕跡が。信号側は無事のようだがカビのような点状の汚れ。

超アルカリ電解水をスプレーして汚れを念入りに拭き取り、仕上げにHCLレンズクリーナーを滴らして磨きあげた。



…すると

素晴らしい音にに思わずのけぞった。

とても生々しく蠱惑的な音色。クレーメルの激しいぶつけるような重音のストロークと繊細極まりない単音の色彩の綾、胴鳴りを伴った豊かな中低音がとてもリアル。オリジナルの西独製のCDならではの音。ケースが傷んでようが、少々、盤面が汚れていようが気にすることはない。やっぱりオリジナル盤はよい。結果的に、いちばん安い中古盤でよかった。



録音はアナログで、デジタルリマスターしたもの。いわゆる“ADD”盤。CD初期で、この“ADD”盤には意外によい音のものが多い。CD発売初期は、CDの音の良さをアピールすることにメーカーも必死だったし、アナログ盤と並行発売だから互いにリファレンスも可能で切磋琢磨があったからだろう。CDが市場を席巻してしまうと、たちまちにして音質は落ちた。いわゆるベスト盤といった再発CDだ。


一方、ECMの新盤のほうはどうだろう。

tomoken1962さんの日記を見て、久しぶりにかけてみると、こちらもなかなかの音質だ。実は、これを買った当初はあまり好きになれなかったのです。

クレーメルの斬新な解釈は、切実で真摯な音楽になっていて、無伴奏の独奏であることの制約と不自由さをあえて逆転させたような自在さと自由さを感じました。一方で、ヴァイオリン特有の擦れたような音のかすれをあえてそのままにさらけだした泥臭さがあって、聴いているとあえて緊張感や集中力を強いられるようで、気持ちがあまり休まらない。繰り返し聴いたのは最初だけで、だんだんと遠ざかってしまったのです。

いま聴き直してみると、最初に耳につくのは残響の多さです。記憶にある印象としてはこれほど残響があるとは思ってはいませんでした。けれども、改めていま聴いてみると、こちらも完成度の高い音質です。何よりも解像度が高い。20年の月日を経て、クレーメルもだいぶ丸くなっていますが、まるでピアノ編曲のように音符をひとつひとつ置いていき、ゴッホの筆致のようにストローク各々の音色や強弱、感触を弾き分けて細かく対比させ全体のイメージを作り上げていく、その強靱なテクニックに驚嘆させられます。

思えば、このCDを買ったのはもう20年近く前のことになります。その頃のシステムは、いまより、はるかにお粗末で、使いこなしも稚拙でした。電源もたいした工夫もしていなかったし、ノイズだらけだったのでしょう。そういう環境では、エコーはエコーとして立体的に聞こえず、リバーブとして直接音に埋もれてしまいますし解像度も上がりません。特に高域はキーキー聞こえていたのだと思います。

興味深いのは、この新盤では録音会場が、ソナタ3曲とパルティータ3曲で違っています。よく聴くと、その微妙な違いも聞こえてきます。面白いのは両者の比較では残響が少なめのパルティータがロッケンハウス(オーストリア)の地区教会の収録で、残響が多めなソナタがリガのスタジオ収録と、常識ちょっと逆になっていること。ちなみに、近接的で残響がほとんどカットされている旧盤は、ハーレム(オランダ)の教会での収録です。

話しは横道に逸れますが、クレーメルの旧盤の当時、ソナタはソナタ、パルティータはパルティータと別々に並べるのは珍しいことでした。ソナタとパルティータを番号毎にセットにする考え方が主流だからです。事実、1843年に発見された自筆譜もこのようにセットに並べられていました。クレーメルは、あえて、それに逆らったわけですが、新盤では、ソナタ/パルティータと交互になりました。それでも、収録はソナタとパルティータと別々で、そんなところにクレーメルのこだわりが垣間見えます。


さて、新旧両者の印象比較を私なりにまとめてみると…


■ECM録音
 残響音が多い
 近接音も直接的にとらえられていて、弱音の消え入る際が美しい
 スタジオ録音のソナタの方が残響レベルがわずかに高く、反射時間が短い
 直接音と間接音の分離が微妙で、直接音の強弱が大きい
 システムのSN、DRともにシビアさが求められる
 
■フィリップス録音
 残響音はカットされている
 マイクは、アナログ的な近接セッティングで音楽的な解像度が高い
 音は伸びやかで、柔らかでふくよかなアナログ味がよく出ている
 帯域バランスは中低音が厚めで、高域は適当なところでカットされている
 ビンテージや美音系にチューニングされたシステムにはよくマッチする


バッハの無伴奏は、ヴァイオリン独奏ということで高域のチェックや解像度や音の焦点の検聴用にはかっこうのソフトだと思います。優秀録音も目白押し。

事実、オフ会やショップでのデモでも必ず用意されているのでよくリクエストします。システムの素性や個性がよくわかるからです。人気があるのは、ファウスト、ハーン、ムローヴァなどでしょうか。

よくかけていただくのは、パルティータ第3番のガヴォットや同第2番のジーグ。本当はソナタ第2番のフーガが検聴用として好みなのですが、長いのでその前後のグレーヴやアンダンテをかけてもらうこともあります。

私の結論を言えば、自分のシステムに自己満足するデモ用なら、うまく鳴らせると極上の美感と生々しい存在感を感じさせてくれるフィリップスの旧盤、システムのアラ探し、検聴用なら、SNやDR、高域の歪みにシビアなECM新盤というところでしょうか。

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  1. 昨年10月にcenyaさんにお越しいただいた時に、バッハ無伴奏の演奏家違い6種聴き比べというマニアックなことをしてしまったのを思い出しました。クレーメル のECM盤を含め挙げておられた人気の4名が全部入っていました。cenyaさんのすご耳は、ヴァイオリニストの性別を聞き分けるようで、クレーメル を含めおじさんはお気に召さなかったようです。

    私もECM盤はレーベル独特の残響音と音色が気になって遠ざかっているのですが、ちゃんとしたシステムだと良さがわかるのですね。今度再挑戦してみます。

    byパグ太郎 at2019-08-29 23:33

  2. パグ太郎さん

    6種聴き比べというのは、確かにマニアックでしょうねぇ。

    CENYAさんなら、お好みは、さしずめ一番若いハーンあたりでしょうね。逆に、クレーメルなんて一番人気がないんじゃないでしょうか。CENYAさんも、いい加減に「おっさんずラブ」に目覚めてほしいですね。

    byベルウッド at2019-08-30 12:44

  3. ベルウッドさん
    パグ太郎さん
    こんばんは。

    男女の差は明らかですね!
    ハーンはエモーショナルでジェットコースターの様な緩急で楽しかったのですが、弓が長くて音の息継ぎが少ない女性のが一番好きだったような気がします。

    おっさんずラブ?
    死んでもお断りします。
    でも好かれちゃったりするんよね〜。

    byCENYA at2019-08-30 21:32

  4. CENYAさん

    ハーンは弓使いが長くて均質な上に、左手のポジションが正確でピタリと決まり、しかも、弦から弦への飛びつきが速くて途切れを感じさせないんです。だから、すごく息が長く感じられて気持ちがいいですね。やっぱり若さだと思うんです。

    パグ太郎さんは、そういうハーンの最新の追加録音に、どうやらダメ出しをしているようです。10代の頃のハーンも今やオバさんだと言わんばかりです。つれないですね〜。

    今度お会いするときは、ハダカになります(キッパリ)!
    おっさんのクレーメルをお忘れなく!

    byベルウッド at2019-08-30 21:51

  5. CENYAさんへの横レス失礼いたします。
    無理やり引っ張り出してしまってすみませんでした。

    CENYAさんの一番のお好みは、演奏ではイザベル ファウストでしたね。見た目はアンナ ゴッケルだったかも。それにしても弦楽奏者の性別がわかるなんて。

    なお、ベルウッドさんとのオフ会はご遠慮しますので、お二人で仲良くお過ごし下さいませ。

    byパグ太郎 at2019-08-30 22:23

  6. 想い人がいるので、お気持ちは有り難いのですが
    私も遠慮させて頂きます。。。

    byCENYA at2019-08-30 22:30

  7. パグ太郎さん、CENYAさん

    CENYAさんの想い人ってファウストの方でしたか。意外に年増好みなんですねぇ。じゃあ、おっさんのクレーメルは潔いからだのまま身を引きましょう。クレーメルも40年前は若くてヒゲもかっこよかったですけどねぇ。

    byベルウッド at2019-09-01 08:22

  8. ベルウッドさん、こんばんは。
    レスが遅くなってすみません。

    クレーメルの1980年録音盤は、私も愛聴しています。

    ヴァイオリン一挺だけで、どうしてあれだけ多彩で強い音が出せるのか不思議でした。

    クレーメルがこの曲を演奏している動画を偶然youtubeで見て、まるで体操でもしているかのように体を大きく動かしながら演奏していることが分かって納得しました。

    心に響く演奏をするには、テクニックだけではなくて相当な体力も必要なんですね。

    それはそうと、この盤はシステム全体やアンプの調整でも使っていますが、高音が耳障りにならないようにするのが難しいですね。

    あまり高音が出しゃばらないATCでも、キーキーというのを押さるのは大変でした。

    今度のオフ会では、このあたりが上手く調整できているか聞いてみてください。

    よろしくお願いします。

    byED at2019-09-01 20:09

  9. ベルウッドさん&みなさま。reviathです。

    私もフィリップスの旧盤を所有しています。

    無伴奏ソナタ&パルティータの私的な愛聴盤は、定番ですが

    シゲッティ、シェリングの旧盤(ソニーのモノラル/グラモフォン盤は装飾過多で×)、

    そしてパルティータ2番に限れば、アドルフ・ブッシュ盤です。

    言わば「じーさんずラヴ」ですね(f^^;;)。

    byReviath at2019-09-01 20:35

  10. Reviathさん

    「じーさんずラブ」ですか、いいですね(笑)。

    バッハの無伴奏といえば、かつては巨匠たちが円熟の極みに達してようやく取り上げて挑むという峻峰の高嶺という感がありました。峻厳な技巧と精神性を好む日本人には、特に、シゲティが高く評価されるようです。

    現代ではむしろ若手がどんどんと弾きこなし、デビューの挨拶代わりのように弾いています。しかも、とても自由闊達に自らの個性をぶつけてくる。バッハの音楽にはそういう自由があるからです。巷には、全曲盤やイザイなどと組み合わせた企画盤などが各種あふれかえり、まさに百花斉放の観があります。

    そういうことの先駆けとなったのが、このクレーメルのような気がします。それまでの厳格な枠組みをあえて壊すかのような、自由でしかも挑戦的な演奏です。

    けれども、流麗さや表面的な美音を排し、バッハの精神性の深みをつかみとろうとする。時に汚い音だって辞さない。ヴァイオリン独特の雑音的な擦過音やかすれなどもあえて隠そうとしない。そういうところは、クレーメルとシゲティは共通するところがあるような気もします。もちろんクレーメルの技術ははるかに上で、その技巧をあえて超越させているところが加わっています。

    そういうところが、なるほど、システムの厳しい検聴用に向いているのだと思いました。

    byベルウッド at2019-09-03 13:24

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