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日記

サックスはフランスのエスプリ (本堂 誠 サクソフォン・リサイタル)

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2019年09月19日

新進演奏家の魅力を紹介する紀尾井ホールの「明日への扉」シリーズ。そういう登竜門ともいうべきシリーズで、過去、これほど面白いと思った音楽体験はありませんでした。

本堂さんは、東京芸大音楽学部、同大学院を経て、パリ国立高等音楽院に学び、2017年にサクソフォン科と室内楽科を修了したばかり、文字通りの俊英。この間、数々の国際コンクールで優勝を果たしています。

そもそもサクソフォンというのは、クラシック音楽の世界ではあまりポピュラーではありません。19世紀半ばにベルギー人サックスによって考案された新しい楽器だからですが、一方で、吹奏楽やビッグバンドでは、むしろ、主役を担う楽器で、モダン・ジャズの世界では最もポピュラーな楽器だといえるほど。

最近になってクラシックの世界でも、サクソフォン(クラシカル・サクソフォン)を楽しむ機会が増えてきましたし、新進の日本人演奏家も次々と登場しています。それでも、個人的に、サクソフォンのソロ・リサイタルというのは初めての体験。それだけに、新鮮な衝撃を受けても当然とは思いつつも、どこかで希少生物でも眺めにでかける気分があったのは確かです。



本堂さんは、一曲ごとにトークを交えての演奏。

このこと自体も、クラシック界では異色のこと。しかも、そのトークはどちらかといえば私的なエピソードや感想が中心の「とりとめない系」です。そんな雰囲気が、実は、曲目のフランス的エスプリをたっぷりと発散させていて、実に的を得ているのが不思議。

けれども、音楽が始まると、その技巧の確かさ、音の愉悦と多様性、音楽性の豊かさに目を瞠る思いがしました。

最初の曲は、ラヴェルのソナチネ。もちろんピアノの名曲のひとつですが、フルートやオーボエなど高音の木管楽器でもよく演奏されるので、ある意味では、わかりやすい口開け。ところが、そのソプラノ(Sp)サクソフォンの峻烈な音色の魅力に打ちのめされるほどです。ソプラノ・サックスと言えば、コルトレーンの『マイ・フェイヴァリット・シングス』を想起させますが、このラヴェルは、フランス的な妖気を存分にはらんだ見事な音色の綾織りです。

次のアタイールという若い作曲家のエチュードでは、バリトンに持ち替えての演奏。ソロ曲ですが、作曲家の指定なのか演奏家のアイデアなのかピアノの響板に相対して反響や弦の幽かな共鳴を誘い出す。そこから休む間もなくフォーレの「エレジー」へと進む。バリトンという雄弁無双の音色を目眩く運動性で描くフランス的妖艶な情感には圧倒される思いでした。

前半最後は、パリで学んだ坂田直樹という、新進偉才の邦人作曲家の作品。

どこか夕陽に染まる瀬戸内の海とその光に黒々と影を落とす島々を眺めるような静的な瞑想的な音楽でありまがら、アルトという最も運動性と技巧的多義性を駆使した音楽は、一方でオーボエのハインツ・ホリガーの若かりし頃の圧倒的な重音奏法による前衛を思わせながら、一方で、60年代に盛んだったジャズの前衛を強く想起させるのです。このことは、ご一緒したジャズにお詳しいUNICORNさんが“NEW JAZZ”が現代に蘇ったようだと仰っていたから、あながち的外れではないようです。何だか、音楽のスピリッツとかスタイルとかの転生輪廻を思わせるようで、私たち二人ともちょっとした興奮状態で同調してしまいました。

後半の最初は、やはり、アタイールのソロのためのエチュードからドビュッシーに移行するという趣向。その曲想の流れが実に見事で、エチュードの「眠りを誘うように」という副題と眠りから醒めた「牧神」の茫漠とした曖昧な覚醒が浮き彫りにされていて実に見事。

次のマントヴァーニも、現在のパリ音楽院院長ながら、とても若い作曲家の若書きの曲。ほとんど音階は上下せずメロディらしいメロディはないのですが、多様なタンギング技法と漂泊するように四分音の間を揺らぎ、ピアノの同音と重ね合い同調したり音節をずらしたりと、ある種の妄執的な放浪を描くかのような不思議な音楽。



二十世紀フランス音楽から最先端の現代音楽まで、機敏に冷静、なおかつ、存分な雰囲気感でもって本堂に合わせたピアニストの羽石道代さんも素晴らしい。日本体育大学の非常勤講師という、ちょっと異色のタイトルをお持ちのピアニスト。想像するに、アンサンブルの職人的名人なのだろうと思う。

最後も、やはり二十世紀前半のフランス人作曲家の作品で、濃厚なフランスの田園的音楽。気がついてみれば、フランスで学んだ坂田直樹の作品も含めてオール・フレンチ。クラシック・サクソフォンとは、まさにフランスの馥郁とした知性と情感をたっぷりと含んだフランスの楽器だということを、どっぷりと浸りきって知らされた充実感が残りました。




紀尾井 明日への扉25
本堂 誠(サクソフォン)
2019年9月12日(木) 19:00
東京・四ッ谷 紀尾井ホール
(1階 14列14番)

本堂 誠(サクソフォン)
羽石道代(ピアノ)

ラヴェル:ピアノのためのソナチネ(Sp)
B.アタイール:エチュード・オプスティネ より(ソロ・バリトン・サックス) (Br)
フォーレ:エレジー (Br)
坂田直樹:陽炎に沈む (At)

B.アタイール:エチュード・オプスティネ より(ソロ・ソプラノ・サックス) (Sp)
ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲 (Sp)
B.マントヴァーニ:霧雨の白熱(Sp)
R.コルニオ:エグローグとダンス・パストラル (At)

(アンコール)
ドビュッシー:「夢」(Br)

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  1. ベルウッドさま

    こんにちは♪

    YouTubeでですが、初めてこの方の演奏を観てみました。
    激しく、かつ正確、というのが第一印象でした。
    聴いていくうちに、秘める物?を表現できるようになると、
    こうなるのかな、なんて漠然と思いました。

    別として驚いたのは、
    この方、アルト、バリトン、そのほかにも?
    マウスピースの大きさが違うのに、
    いずれもマスターなされてる?

    ご紹介いただきありがとうございました♬

    byMotoko at2019-09-20 13:12

  2. 今晩は。大変興味深いプログラムですね。

    私にとって、アルトサックスは子供の時から親が繰り返しかけていた、ビゼーのアルルの女の間奏曲の、田園風景を思い起こさせてくれる優しい旋律の音でしたので、ジャズなどで聴くと今でも「もっと優しく」という妙な感覚が抜けきれません。

    でも、そういうサックスの楽曲や演奏は稀なのですよね。という所で、ソナチネ、エレジー、牧神のサックス版とは是非聴いてみたいですね。編曲はどなたなのかも気になり、興味津々です。

    byパグ太郎 at2019-09-20 19:49

  3. Motokoさん

    レスありがとうございます。

    マウスピースは、私も気になったのですが、クラリネットのように共通なのかと思うほど違和感はありませんでした。アンコールの時だけは少し気にしているようでしたけど。それにしても口唇のコントロールは驚異的です。

    それよりも気になったのは、肺活量です。本堂さんは、どちらかといえば華奢な体格なのでバリトンが一番得意というのは意外なほどです。それでも時には豪快な音を出していました。ソプラノは、吹気抵抗がバリトンよりも大きく違うのではないかと想像しますが、その音量や音色のコントロールは見事でした。

    byベルウッド at2019-09-21 09:33

  4. パグ太郎さん

    「アルルの女」!

    懐かしいです。

    高校の時に吹きました。当時の公立高校のクラブ活動なんて貧乏でろくな楽器もなくみんな持ち込みでしたから、なかなかサクソフォンなんて手に入りません。所有している人がいるというので、試奏してみましたが、相当に練習しないと吹きこなせない。…ということで結局クラリネットでやることになりました。フルートの奴と必死に練習したのもよき思い出です。

    編曲は、特にクレジットはなかったと思います。ラヴェルは、よく吹かれるフルートへの編曲版があるので、その流用。フォーレは、オリジナルのチェロ版の流用ではないでしょうか。「牧神」は、もしかしたら本堂さんのオリジナルかもしれません。あれは興味津々でした。

    byベルウッド at2019-09-21 09:55

  5. こんにちは。

    サックスというと、最初に意識(素敵と思ったのは)したのは「アルルの女」のメヌエットのオブリガードです。

    でもサックスでは有りませんが、空前絶後のオブリガードは第九の終楽章、弦楽器が歓喜の主題を奏しているバックでのファゴットだと思います。
    この時ベートーヴェンは心の中で鳴っている音を聴きながら作曲したのでしょうか。

    byジュン at2019-09-21 14:56

  6. パグ太郎さん

    追レスです。

    編曲についての私の憶測はおおむね当たっていると思っています。

    ただ、念のために、もう一度よくプログラム解説を読んでみました。解説は、音楽評論家の木幡一誠氏によるものです。

    以下は、その解説による編曲の説明です。


    ラヴェル:ピアノのためのソナチネ
    「…このピアノ曲からアレンジされたオーボエとピアノのためのデュオ版は近年とみに演奏の機会が多く、本日のステージも、それを踏まえながら独自の手を加えた形での演奏となる。」

    フォーレ:エレジー
    特にコメントなし

    ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
    「フルートとピアノのデュオ用にアレンジされた各種の編曲譜も古くからポピュラーであり、本日はそれを参照した上でのサクソフォン版でお聴きいただく。」

    byベルウッド at2019-09-22 09:58

  7. ジュンさん

    コメントありがとうございます。

    ベートーヴェンのファゴットによるオブリガートは、ちょっと独自性が傑出したところがありますね。私も昔から何だか不思議な気がしてきましたが、今でもその謎が解けないという気分です。

    壮絶なファゴットのオブリガートということでは、先日、このホールのレジデンス・オーケストラの紀尾井ホール室内管弦楽団によるストラヴィンスキーの「プルチネルラ」の「ガヴォッタとヴァリアツィオニ(ガヴォットとヴァリアシオン)」でした。福士マリ子さん(東響)のファゴットに客席は沸きに沸きました。

    http://community.phileweb.com/mypage/entry/2408/20190709/62933/

    byベルウッド at2019-09-22 10:06

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