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日記

ブッフビンダーのベートーヴェン

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2019年10月06日

ブッフビンダーの良さとはどう言ったらいいのだろう。そしてそのベートーヴェンの楽しみとは…?



ブッフビンダーを聴くのは二度目。前回は、ミュンヘンのヘルクレスザールでのバイエルン放送響とのブラームスでした。それは、ひと言で言えばブラームスの誠実な人柄そのままの音楽。そして聴衆からとても愛されているということをひしひしと感じさせる、息の長い暖かい拍手が印象的でした。ブッフビンダー大好きと公言してはばからない家人の言によると、地元ウィーンでの聴衆の熱狂ぶりは、実際、大変なものらしいのです。

そのブッフビンダーのベートーヴェンは、やはり、誠実で愛と喜びに満ちたベートーヴェン。

しかめつらしく、厳めしい、いかにも世界中の悲劇を背負っているとでも言わんばかりの音楽でもなく、比類無い英雄的な人道主義者という大げさなものでもない。普通に生活している市井の人のさりげない人生のなかに込められた情感そのものをとても濃やかに映し出す。そういうベートーヴェンなのだと思います。そのことはミュンヘンで聴いたブラームスと同じ。

「悲愴」のあのハ短調の主和音も、ことさらに悲壮感を出すというのではなくて、何かを切実に求めているかのような和音。足らざるをひたすら満たそうとする希求のソナタ。そのことが物憂いアダージオで一炊の夢を見る。とても息の長いレガートが美しく、それを細かく刻む左指の細動が心地よい。そして一転してロンドでは劇的な疾走が始まります。希求することの決着をつけるかのように。

「ワルトシュタイン」が、秀逸でした。

ベートーヴェンのピアノ技法は、ここで一気に機能を拡大してスケールが大きくなります。ブッフビンダーのピアノも、高速の和音連打や左手の低域の重量感などパワーが全開となるのですが、技巧を押し出してくるという押しつけがましさがないのです。そういう低音の重量感は続くアダージオでも持続して、情感の深みがあります。



私たちの席は、2階右バルコニーの前列。ほぼステージ前縁の真横になっていてブッフビンダーの顔が、ピアノの大きな屋根板に見え隠れしながらも、その表情がとても間近に感じられます。そういう位置取りのせいか、あるいは、ピアノのコンディションなのか、少し低音が混濁気味なのですが、執拗で疾駆疾走がやまない音楽に没入していくとそういうことも少しも気にならなくなってどんどんと引き込まれていきます。

次から次へと技術的難所を跳び越えていくピアノはほとんど暴走的熱狂でついには最後には最速のギアに入れてしまう。それでも、その堂々とした風格と誠実さが保たれているのがまさにブッフビンダーのベートーヴェンだと思うのです。

休憩後の後半は「熱情」。

こういう曲の開始を、もったいぶらずさりげなく始めてしまうのがブッフビンダーの音楽のようです。会場の気持ちもまだ収まっていない雰囲気での開始は、ちょっと肩すかしを食らったような物足りなさを感じてしまうのですが、ここでも情熱の高まりをずっと長大なまでに引き延ばされた劇的な音楽にしています。荒れ狂うような展開にしばしば現れる「運命動機」にはっと目が醒めて、そこで最初の開始が記憶としてよみがえってくる…。そういう激情の起伏に本当に翻弄されました。

アンコールで弾かれたのは「テンペスト」の第3楽章。まさに愛のベートーヴェンでした。
 
 
 
 
 
 
ルドルフ・ブッフビンダー ピアノ・リサイタル

2019年9月23日(月・祝) 19:00
東京・初台 東京オペラシティ コンサートホール
(2階 R1列12番)

オール・ベートーヴェン・プログラム
ピアノ・ソナタ 第8番 ハ短調 「悲愴」 作品13
ピアノ・ソナタ 第21番 ハ長調 「ワルトシュタイン」 作品53

ピアノ・ソナタ 第23番 ヘ短調 「熱情」 作品57

(アンコール)
ピアノ・ソナタ 第17番 ニ短調 「テンペスト」 作品31-2より 第3楽章
J.S.バッハ:パルティータ第1番BWV825より“ジーグ”

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  1. ベルウッド様

    ご無沙汰いたしております。
    この公演,私も妻と二人で出かけてまいりました。

    残念ながら1階最前列中央の席は取れなかったのですが,1階2列目中央隣の席から右側へ2席並びで聴くことができました。

    素敵な演奏だったと思います。
    反射板から直に響いてくる音の輪郭はとても丸く,優しく,そしてずば抜けた技巧の冴えがあったように感じてございます。
    ユンディ・リのガンガン弾くピアノとは違いますね。(笑)

    アンコールのテンペスト。
    美しかった。

    次回来日の際にはまた頑張って席取りしようと思います。

    しろくま

    byPolarBear at2019-10-06 05:08

  2. しろくまさんも行かれたのですね!

    このホールでのピアノ・ソロリサイタルで聴いたなかで音響面でのベストは意外にもステージ左真横の3階バルコニーでした。ピアニストの背中越しに鍵盤を見る位置ですが、ピアノがはるか下方なのにとても良い音でした。

    ホールの音響面での評価基準のひとつとして、どこで聴いてもよい音がする(座席位置の差別性)ということに着目すると、残念ながらこのオペラシティ大ホールは平均点以下となります。特に、客席中央通路から後方はほぼ全滅です。音が遠く届きにくいからです。ステージ上の巨大な反射板と高い三角天井の反射・吸音面の配置のせいだと思います。

    ピアノは、あまり前列ではないほうが良いです。基準として、ピアノ底面の白木が目に入らなくなる位置より後ろがベターです。ここのホールはステージと客席フロアとの段差が比較的大きいので、あまり前列は好ましくないと思っています。

    そうなると、ピアノリサイタルでは1階席の良い席というのはかなり限られてきてしまい、入手が難しそうです。やっぱり、ステージ左のバルコニー席が入手性も考慮すると狙い目かなぁ。

    byベルウッド at2019-10-06 10:30

  3. ベルウッド様

    なるほどーーーー。
    感服致しました。(o^^o)

    席の位置を変えて楽しみを増やしてみますね。
    ご教示、感謝致します。

    しろくま

    byPolarBear at2019-10-06 10:37

  4. 今日は。

    ブッフビンダーは、何かの機会に聴こえて来るたびに良いなぁって思うのですが、何故か積極的に聴こうという姿勢にならない不思議な存在です。レパートリーや演奏スタイルも自分にとってど真ん中のはずなんですが、、、。今度、真剣に向き合ってみようかと思い立ちました。こういう演奏家っていませんか?

    byパグ太郎 at2019-10-06 17:26

  5. パグ太郎さん

    知らないがゆえに積極的に聴こうとしない音楽家や音楽作品というのは、数知れずあると思います。

    若い頃こそ感受性に富んでいて、それは年をとるほど失われていくということは否定できない現実ですが、逆に年齢や経験を重ねることで得ることも多くあると思います。

    こんなによい音楽だったのかと気づいて、それまで聞こうとしなかった自分を一瞬は恥じる気持ちはありますが、新たな出会いにためらいもなく良いものを良いと感じ取り、自分の楽しみに新たに付け加えることができる自分に幸せを感じてもいます。

    それもこれも加齢ということの功なのだと感じています。

    byベルウッド at2019-10-07 00:22

  6. ベルウッドさん
    毎月のように来るホールからのDMから来日公演の予定を知り、ぶろぐらを見て興味と日程が合えばチケットを購入するのが、小生のパターンですが、今までCDで演奏を聞いたことがないアーティストでもFMやBS放送をきっかけにして興味が湧くこともありますね。

    最近は室内楽の比率が高まってきましたが、コレは加齢のせいでしようか?

    by椀方 at2019-10-07 12:30

  7. 椀方さん

    >最近は室内楽の比率が高まってきましたが、コレは加齢のせいでしようか?


    座布団一枚です(笑)。


    やっぱり室内楽というのは《渋い》と言われそうですね。オーケストラというと客も多いし、若い人も多いのに、室内楽は小さいホールでもなかなか客が呼べないし年寄りばかり…というのは、何となく本当のように思えます。

    そういえば、先日の、fukuさん、パグ太郎さんをお招きしての拙宅オフ会では、古いモノーラルLPの弦楽四重奏曲やヴァイオリンソナタも含めて、ほぼ全てが室内楽でした(汗)。

    とはいえ、私の場合は、おかけした古いアナログ音源は中学・高校の頃にしきりに聴いていた愛聴盤ですし、CDやハイレゾはお二人に教えてもらったり刺激を受けて知ったような音源が多かったので、加齢のせいとは言えないのですが。

    まあ、オーディオ仲間のオフ会だとしたら、相当に変なプログラムでしたでしょうね。室内楽に重点を置いた音作りをしているかもしれません。

    byベルウッド at2019-10-07 13:13

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