日記
目には見えなくとも、耳にはわかる (KOTOBUKI「音快速」導入記)
2019年12月03日
専用PCによるファイルオーディオ再生も落ち着き、しばらく手をかけていなかったルームアコースティックに取り組んでいます。そこへきてfoQの再ブームで振動対策に目覚めてしまい、さらには、サテライトアースのブームまで巻き起こってしまいました。
上流の質が上がると、いろいろバランスの再調整が必要となってきます。そこで、ルームアコースティックということだったのですが、それに被るように、振動問題やサテライトアース効果がちょっとしたマイブームになってしまったといわけです。いずれも、上流のSNや解像度が各段に上がることが、ひとつのきっかけだったということなんだと思っています。ということで、忘れないうちにという備忘録です。
ルームアコースティック調整の目玉は、低域バランスの調整でした。
私の部屋では、リスニングポジションより後方の右後ろ隅の壁際の方が低域が気持ちよく体感できます。低域バランスがよいといえばそうなのですが、悪く言えばコーナーの低域の“吹きだまり”です。
ひるがえって言えば、リスポジでは低音が寂しい。それもこれも定在波の影響だと考えられます。
上流の質が上がると、不思議なことに低域の質もがぜん向上します。有り体に言えば「低音の量感・質感が増す」のです。おそらく低域の位相が正確になり、左右の音の焦点が絞られエネルギー感が増すのだと思われます。
それなら低音の不足感は解消されるのかと言えば、そこは人情で、小型スピーカーでこれだけ低音が出るのなら、ますます後方コーナーの低域バランスをリスポジでも聴きたいという気持ちが増してきてしまいます。
そういう心のスキ(笑)に飛び込んできたのが、グルマン理論。
『音の凹みを解決するには"逆に吸うこと"!』
『打ち消しあって凹むわけなら、吸ってしまえばむしろ凸る』
これだ!と思いました。

矢も楯もたまらずグルマンさんの戸を叩き、KOTOBUKIを紹介していただき、くだんの音響パネルを貸し出してもらいました。125Hz以下を吸音するKP-02「音快速 極低」と50Hz以下吸音のKP-05「音快速 極烈」の各2枚2セットです。
おおよその評価が定まったところで、ちょうどヒジヤンさんとの相互検聴オフ会となったのでヒジヤンさんにもご評価いただきました。聴感上の効果など、全く感想は同じでしたので心強い限りでした。

設置場所は、お茶の間オーディオなので、限られてきますが、やはりツボは《コーナー》でした。最終的な納めどころは、前方(すなわちスピーカー背面)の両コーナーです。ここですとリスニングポジションからはほとんど置いてあることが目につかず目立ちません。左コーナーは、何とローボードと壁の間のすき間。それでも効果はあります。こんなことが通用するのは、波長の長い低周波領域だから。もちろん同居の嫁からも文句は一切出ません。

では、後方コーナーの低音吹きだまり(?)は解消したのでしょうか?
答えは「ノー」です(笑)。
スマホでの簡易測定ですが、スペアナでの特性を見るとまったく変化ありません。テストCDでピンポイントで再生し、騒音計で計測した方がわかりやすいのですが、51Hzのテスト信号ですと、リスポジより1.5mほど後方の左コーナーのほうがおよそ5dB高い。距離が遠い方が何とレベルが高いのです。100Hz以上のテスト信号では、いずれもだいたい1~2dBほど低い。つまり、50~70Hzの音の吹きだまりが確かに存在する。逆にリスポジでは、そこが谷になっている。これは聴感と一致します。
このことは、音快速パネルをどこに置こうが変わりません。左後ろコーナー部にじかに置いてもまったく変化ありません。
ちょっとガッカリです。
しかし、驚くほど音はよくなる。低音がクリアで明快になり、音像が締まってなおかつ量感バランスは上がる。低音域の流速が上がるという感覚。
つまり…
《定在波》は、無くならない。…でも、その影響は軽減できる。
いくらドンピシャの周波数を吸っても、それは、事後的に吸音するので定在波そのものは無くならない。でも、その後の共鳴残留を急減衰していて、残留時間を劇的に縮小させているのです。FFT解析では一定の窓時間での積分値を示すし、騒音計は、窓時間内のピーク値(または平均値)を示すので、減衰効果までを計測し示すことはできないということでしょう。
何ごとも目に見えないと効果は実感しにくいものです。計測結果だけを見て、それだけで判断しがちなのもオーディオの世界。けれども、音響の世界は、必ずしもそういうものではない。私も、なかなか決断がつきませんでしたが、最終的には「音快速」は我が家に定在することになりました。

我が家の場合は、125Hzバージョンの方が、50Hzバージョンよりも明らかによかったです。見栄をはりたがるのもオーディオです。でも何ごとも最適値があるもの。音快速は、周波数によって数種類のパネルが用意されています。やはり実地に試してから、決定してよかったなぁと思いました。
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ベルウッドさん
Room Acousticsの改善努力が実ってなによりです。「音快速」は先月のInterBEEで展示デモがあったので体験してきました。狭い視聴Boothなのに効果抜群でビックリ!
当方は、未だエスカートのVento 8枚を使ってあれこれ挑戦している所です。良い参考になりました。今後とも進展などありましたら情報Upお願いします。
byゼロdb at2019-12-04 14:28
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ベルウッドさん、めでたく導入となったのですね。
1ヶ月ほど前に聴かせてもらった印象では確かに効きますね。その時のことを思い出すと、125Hzバージョンは「低音がスッキリする」という印象を持ちました。コーナーの低域の音圧が上がる場所が効果的でした。
その時のお試しの時には、何でこんなもので、波長の長い低音が吸収出来るんだ?との疑問もわきましたが、確かに聴感上の効果がありました。
>でも、その後の共鳴残留を急減衰していて、残留時間を劇的に縮小させているのです。
⇒これは測定されたのですか?
自分も以前にお手製の定在波吸収用の吸音処置を実施したことがあるのですが、その時は失敗に終わりまして、定在波とは仲良くするしかないかな・・・と思っていました。ですが、この日記を読んで、金属たわし活用で学んだノウハウを活用して試してみようというアイデアが浮かびましたので試してみたいと思います。
byヒジヤン at2019-12-04 19:10
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ゼロdbさん
「音快速」は小さいのに低域に効果があるのがびっくりです。比較的狭い部屋(一般家庭リビングルーム程度のスペース)の定在波対策はたいへんなので、このパネルはそこに独自性がありますね。
中高域は、Ventoのような拡散系のほうがよいですね。私も8枚使っています。
byベルウッド at2019-12-05 09:22
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ヒジヤンさん
問題は、特定周波数の収束特性ということだと思います。やはり、サイン波の持続音やホワイトノイズの、一般的なスペアナや騒音計での測定では無理ですね。バーストディケイ(BurstDecai)など、本格的な測定ソフトと高性能のマイクが必要ですし、それなりの専門的な知識が必要でしょうね。
定在波対策に、金属たわしのノウハウ?何がどこでつながるのか私には皆目見当がつきません。レポート楽しみにお待ちしております。
byベルウッド at2019-12-05 09:45
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