日記
雪の白富士まるで絵のよう (バズケロ邸再訪 後編)
2020年11月20日
バズケロさんからリベンジのお誘いがあり、再訪したというお話しの続きです。

JBL部屋で、いろいろ聴かせていただいたあとに、持参した同じ音源のCDとLPを比較試聴してみたところ…

ブラームスの協奏曲をかけていただいた辺りから、ちょっと異変が…
45回転ということもあってよりシビアになったということなのでしょうか、聴いていてちょっと違和感があります。事前にそれなりにクリーニングを済ませてきたつもりだったのですが、ノイズが大きく、ところどころで歪みます。
クリーニング後に一度も針を通していない盤面をかけてしまったことに恥じ入りました。バズケロさんも、念入りに針先をクリーニング。…それでも、思ったようには改善しません。

こちらは、事前に何度も聴いているからと、別のディスクもかけていただきました。
うーん…

傍らではバズケロさんも固まったようにじっとプレーヤーを凝視しています。
思わず「もしかして、インサイドフォースキャンセラーのかけ過ぎではないですか?」というセリフが口をついて出てしまいました。
バズケロさんは、ほとんど同時、一瞬の間合いも無く「あ、思い出した!」と即座に動き出しました。
カートリッジを交換して元に戻したときに、インサイドフォースキャンセラーの調整を戻すことをうっかりしていたそうです。調整といってもほんの目盛りひとつとかふたつとかの話しだそうです。とはいえ、針圧が違えば、微妙な調整が必要なことは確か。
かけ直してみると、針音がすっと静まるのがわかります。横で聴いておられるFuji3さんからも「あ」と小さく息を飲み込む声が聞こえます。
クラリネットとオーボエの和音が中央奥から美しく響き、右手からハープの美しいアルペジォがかき鳴らされる。やがて、ウィーン・フィルのコンマス、ヨーゼフ・シヴォーのヴァイオリンソロが左手から現れるのですが、それがようやくミュートのかかったデリケートな音色として聴こえてきて、右手のハープとバランスよく安定して定位するようになりました。ここまで追い込んだシステムですと、だからこそこういう曲の再生はかえって容易ではなくなるということ。そのことが如実にわかりました。まさに、CDとアナログLPとの一騎打ちならではのこと。一方で、このDECCA LEGENDARYシリーズは本当に秀逸なデジタル化です。いい仕事をしているというのは、このことだと思います。
CDプレーヤーが前回よりも進化したことは歴然です。どうやって改善したのかは、イモネジがどうのとかいうお話しを聞いてもちょっと理解を超えるところがあって、ただただ感心するばかり。
ひとつだけ、話しを聞いて唸ってしまったのは、dCS Pucciniの筐体に手を入れたというお話し。Pucciniは大変なハイエンド機ですが、筐体は価格レベルからすれば見かけは華奢で軽量級と言えるかもしれません。物量投入・高剛性派のESOTERICと見比べると、同じTEACのVRDSメカを搭載しているとは思えないほど。重量も3分の1ほどしかありません。

内部は見ていませんが、基板類はすべてフロートされていて、底板にはメカだけが1点で支持されているとのこと。基板回路とメカは振動的に切り離され、メカは1点メカニカルアースになっているということのようです。そのネジは、メーカーで厳密にチューニングされているということなんだそうです。アナログプレーヤーで言えば、SONDEK LP12みたいなもので、そのバランス調整はデリケートそのものということ。
バズケロさんは、そこに手を突っ込んで自分でネジを研磨したり、微妙なトルク調整を繰り返されたということなのです。よほど腕に自信がなければできないことでしょう。視点を変えると、dCSはよほど信用できる代理店を通じて、しかも、根気よく対応しないと良い音では鳴ってくれないということのようです。
LP12がまさにそうで、置いてつないだだけでは、なかなか鳴ってくれません。唯一、素晴らしい音で鳴らしている方を知っていますが、そのひともメーカーのエンジニアと死闘を演じ、辟易させるほどに食いついたという話しを、ご自身から直に聞いています。

最後に、アナログで聴かせてもらったのはマーラー。
これが驚天動地のサウンドでした。「千人の交響曲」(実際には4百人ほどのようですが)だなんて、まともに鳴るはずがないと発売当時から思っていましたし、CDではなおさら鳴るはずもないと思っていましたが、本当に腰が抜けるほどのサウンド。ショルティ/シカゴ響の面目躍如たる、まさに宇宙規模の音がして目を瞠りました。
これに対抗させられるのですからPucciniも大変です。やっぱりJBL部屋は、先ずはアナログの天下なんだとつくづく思い知らされました。
すっかり日も暮れて、真っ暗になった帰り道でしたが、往路の半分ほどの時間で家に着きました。
レス一覧
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今日は
カラヤン&ウィーン・フィルのチャイコフスキーのバレエ音楽にショルティ/シカゴ響の「千人の交響曲」、そして雪の白富士!
晴れやかな感じが読んでいる私にも伝わってくるようで、愉しく拝見しました。
あやかって上記の2枚を聞いておりました。。。
聞いていると、聞いたこともないバズケロ邸のサウンドがちょっとだけ目に浮かぶようで、お二人の見識にはまったく及びもつかない私も精進しないとな~と居ずまいを正すところもありました。
byゲオルグ at2020-11-21 13:51
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ベルウッドさん こんばんは
タイトルで思わず口ずさんでしまいました ♬
先日はありがとうございました。
カートリッジの件も含めLPvsCDの聴き比べ実に良い体験でした。
また機会があればよろしくお願いします。
byFuji3 at2020-11-21 18:30
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ベルウッドさん
こちらではレコードのお話...
インサイドフォースの戻し忘れでは流石に少し固まってしまいました(汗)
歳はとりたくないものですが、それも仕方ありませんので気付けばまだいいということですね(^^;
インサイドフォース調整はいつも聴感で決めるのですが、トレースが悪いと歪みが少し出やすいアルバムを数種類使っています。
イントロ入口で歪みやすいものが便利ですね。
インサイドフォースが整うとスッと歪みが消えてしまいます。
針圧指定でのインサイドフォース値よりもいつもほんの少し弱めになるのが面白いですが...バズケロは気にしません(爆!
今回のJBL部屋、自分でも幸せな出音になったなあと感慨深いものがあります。
振り返るのも空恐ろしい鬼どもとの饗宴が繰り広げられていましたから...
雪の白富士まるで絵のよう...そっと鬼が笑うのが見えました
そんなフレーズを加えたくなりました。
今日はマーラーのレコードを何枚か磨き直して集中的に聴いています。
千人の交響曲は、ほんとすごい音が収録されていますね。
今回は時間が限られていましたので途中まででしたが、本音ではクライマックスまでお聞かせしたかったです。
JBL部屋ではデジアナ競争はもう終わりにしたいですね。
両雄並び立つ音ということでお茶を濁す気満々(笑)
いずれにせよ、これまで脇に置いていたアルバム類が今では見違えるほど輝きを増して見えます。
オーディオって本当に奥が深くて面白い!
また気が向いた時にでも遠州まで遊びにいらしてください。
ベルウッドさんにとっても勝手知ったるバズケロ城ですから(^^)
では、では
byバズケロ at2020-11-21 22:36
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ゲオルグさん
「千人の交響曲」のLPをさっそく御茶ノ水の中古屋さんでさがしてみましたが見つかりませんでした。
このアルバムばかりか、ショルティのマーラーがぜんぜん置いていない。人気がないからかえって出物があると思ったら大間違いでした。それどころか、他のマーラーも一枚も無いんです。
ショルティのマーラー全集は、ロンドン響、コンセルトヘボウ管、シカゴ響とオーケストラは違いますが、このDECCA執念のウィーン遠征録音で完結します。LPで聴けるということで、いよいよマーラーの本格的普及の幕開けとなった録音でしょう。
ショルティ/シカゴ響の中古LPは、高音質録音とか『チューバマニア』コーナー(?)とかに、「幻想」とか「展覧会の絵」が散見されるだけでした。日本のクラシックファンの見識の低さを嘆くしかありませんでした。
byベルウッド at2020-11-22 10:32
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Fuji3さん
先日はありがとうございました。
ついついリスポジを占有してしまいまして申し訳ありませんでした。
こんな状況が続いて、いつになるかわかりませんが、次の機会にはFuji3さんのシステムで太田裕美をぜひお聴かせください。
byベルウッド at2020-11-22 10:35
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バズケロさん
LP vs CDセッションではちょっと意外な展開になってしまいました。
あのカラヤン「白鳥の湖」組曲第4曲は、トレース確認にはもってこいかもしれません。
インサイドフォースキャンセラーは、指定より弱めというのがコツですね。例え中和点であってもカンチレバーに力がかかって曲がり気味だったりします。キャンセラーは、アームの水平方向にモーメント力として加圧されますから、針先とカンチレバー根元との間に歪みを発生させてしまうからですね。私は、気がついてみるとカンチレバーを内周側に曲げてしまっていたということを何度も経験しました。カートリッジの寿命はそこから来ることが多かったです。
インサイドフォースの調整は、理屈ばかり言っていてもしょうがなくて、最後の最後は、「目で見て耳で聴いて」ですね。
ちなみにピュアストレートアームですと、この歪みが発生しません。針先とアーム支点が常に直線上にあるからです。
ピュアストレートアームは、「インサイドフォースが無い」というひとがいますが、それは間違いです。中点ではそれが成立しますが、その前後ではプラスマイナス(インサイド・アウトサイド)の滑り力が発生しています。ただし、それでも上述のとおり針先は常に前方向に引っ張られることで平衡していますので歪みません。フィデリックスは、このことを「ゼロ・サイドフォース」と呼んでいて、インサイドフォースとは区別しています。
私は、リジッドフロートアームで平穏に暮らしてます(笑)。
byベルウッド at2020-11-22 11:03
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ベルウッドさん
遅レス失礼します。
バズケロさん邸の再訪問記、とても興味深く拝見しました。
デジタル、アナログともに素晴らしいサウンドを奏でられていることが伝わってきました。
追い込みがシビアであるほど、ちょっとした調整が音に大きな影響を与えてしまうのでしょうね。
使いこなしの鬼のバズケロさんならではだのエピソードと思います。
byKYLYN(キリン) at2020-12-01 20:07
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KYLYN(キリン)さん
お引っ越しや仕事のほうは落ち着かれたでしょうか。
私はほんの一時期だけ単身赴任がありましたが、単身解消時には家族(特に当時中学生だった娘)にずいぶんとよそよそしくされてヒヤリとしました。
バズケロ邸はシビアに追い込んでいて、その結果、素晴らしいサウンドを実現されていました。広帯域にありがちなイヤな音とか高解像度にありがちな神経質な音などは全くせず、痛快爽快なサウンドです。
でもちょっとしたチューニングには敏感に反応して聴くとわかってしまうのでしょうね。アンチスケーティングは、適用範囲がある程度あるし、数値的には比較的鷹揚ですが、ここまで追い詰めたシステムだとわかっちゃうのでしょうね。最後に頼れるのは自分の耳だけです。
また、落ち着かれたらご一緒しましょう。
byベルウッド at2020-12-02 09:21
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