のびー
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ロンドンに移り住んで25年目となりました。240V環境の恩恵に浴すも、やはりオーディオは日本がおもしろい。年に数回の帰国の際の物色を何よりの楽しみとしております。

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800D3を導入しました
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2018年3月、1986年から(32年間)一貫してJBLをメイン・スピーカーとしてきたオーディオ・ライフに別れを告げ、B&W党となりました。2015年のピアノ購入時にオーディオ部屋(約30畳)をピ…
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日記

アナログ再調整(再挑戦) その6

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2020年06月19日

前回まで5回に亘ってAcoustical SystemsのSMARTractorとAnalogMagikの Software & Test LPsを用いたアナログ・システムの調整について記しました。

前回の日記を書いた時点(6月9日)で、アンチスケーティングの調整も終了していたので、さっさと続きを書こうと思っていました。 ところが、VTA(アームの高さ)の調整をもう少し詰めようと弄ったことで幾つかの項目の測定値がガタガタになってしまいました。 その後、いくらVTAを調整しても元に戻りません。

特にアジマス測定値の左右偏差が改善しません。 右から左へのクロストークが何度測定しても有意に悪く、カートリッジが左下がりとなっていることを示唆しています。 SME Vはシェル固定式でトーンアームでのアジマス調整は困難です。プレーヤーの水平は事前に相当慎重に合わせています。

試しにカートリッジとシェルの間に片側だけ薄い紙を入れて補正してみるとアジマスの数字は一気に改善します。 紙の厚さを何度か変えると見事に左右の偏差が小さくなり、その時のVTAの歪率も大きく改善しました。

そこで気付きました。 アームの回転軸が垂直に立っておらずアームがきちんと水平回転していない?? Airforce Oneには水準器がビルトインされていますが、それは本体の左前方です。ターンテーブル上や幾つのポイントで水平を確認していましたが、アームボード上の水平確認を怠っていました。 SME Vの軸受けはナイフエッジ型ですから、アームの設置が完璧に水平でないとアームの回転面が傾きアジマスがずれてしまいます。

ということで、プレーヤーの水平調整をやり直し、アームボード周辺を特に厳密に合わせた結果、前回測定時点より全体的に特性が改善・安定しました。

その上でアンチスケーティング量を変化させて歪率の変化を見ます。
アンチスケーティングのテスト・トラックはA面の最内周、スピンドルから7cmから6cmの位置にあり、再生時間は丁度3分です。 前回触れましたが、内周に進むに従って歪率が上昇するので、アンチスケーティング量を評価するためには、同じ再生ポイントの数字で比較しないと意味がありません。

針圧は1.95g、トラックの最初から30秒、1分、2分、2分45秒の4つのポイントで測定しました。


測定結果のポイントは:

• 針圧1.95gでは、アンチスケーティング量が1.50から2.25の間なら歪率の違いは測定誤差の範囲内と言える。

• アンチスケーティング量の増加とともに内周部分での右チャンネルの歪量が減少しているので、補正も測定も機能していると思われる。

• 1.00では最内周2分45秒のポイントで右チャンネルの歪率が1%を超えるが、それでも許容範囲。 2.50では全体的に歪率が高いがこれも許容範囲。

• アンチスケーティングの目盛り通りの設定がベストに近いことから、この目盛りはラインコンタクト系の針先を前提としていると思われる。 この点に関してSMEに確認しようと照会したのですが、「The anti-skate was not designed for a specific cartridge…」という何の意味も無い答えしか返って来ませんでした。

測定結果は数字としては概ね満足のいくものです。 しかしながら、期待していたような「アンチスケーティング量の変化による歪率の明確な改善」や「最適アンチスケーティング量を特定」できるような数値は得られませんでした。 

今回の測定を通じて分かったことは、

• VTAとアジマスの調整による測定値の変化は非常に大きい。 特にアジマスの狂いは他の調整項目にも大きな悪影響がある。

• アンチスケーティングやオフセット角の変化による測定値の変化は相対的に小さい。

• アンチスケーティングの許容範囲は結構広い。

肝心の音に関しては、前回日記時点の印象と変わりません。 調整後の音の特徴は「安定感」です。 定位が定まり、響きが右や左に不必要に広がらず、音場が安定し音像が明確になります。一つの項目を調整しただけでは分かりづらいものの全体が改善すると違いが相当はっきり分かります。


あと、一連の測定過程で、レゾナンスの重要性に気付きました。
SME Vはマグネシウム・パイプとオイル・ダンプ機構でレゾナンスが極めて安定しています。 全体調整後のレゾナンス測定では、アーム・システムの固有共振周波数は8.548Hzで、推奨の8Hzから12Hzのレンジ内です。 

試しに1円玉をアームパイプの前方根元、後方根元、パイプ中央に置いて(再度針圧調整して)レゾナンスを測定しても共振周波数は0.2Hz程度しか変動せず挙動も安定しています。


ちなみにサブ・アームの3012R+光悦のレゾナンスを測定すると、固有共振周波数は10.381Hzで推奨レンジ内ながら、高域共振がはっきりと表れます(下側のグラフ)。 

また、アームが共振(共鳴)する様子が(測定値のみならず実際にも)見えるのに驚きました。世のアーム設計者がダンピング機構に凝ったり、共振モードのコントロールがし易いストレートアームに拘る理由が良く分かりました。


コロナのロックダウン中の暇潰しのつもりで始めたアナログ再調整は、予想をはるかに超える時間も手間もかかるものとなりました。しかしながら、期待以上に学んだことも多かったです。

次回の日記→

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  1. のびーさん

    これはとても面白いレポードですね。測定数値で見える化するということの凄みでしょうか。手間暇を惜しまぬ丁寧な進め方がとても論理的だったからこそかもしれません。

    得られた知見としての 3つのポイント+アーム共振 のいずれも納得です。

    以下は私のひと言感想です。

    1.VTAとアジマスの影響は大きい
     アーム高さ調整は、時に0.1g単位の針圧調整より音に影響すると感じます。特にアジマスは時折チェックしています。

    2.アンチスケーティングやオフセット角はあまり影響がない
     特に丸針は影響が少ないのではないでしょうか。ピュアストレートの利点にもつながります。

    3.アンチスケーティングの許容範囲は広い
     できるだけ小さいフォースにとどめるのかコツだと思っています。(これもピュアストレートの利点につながります)

    4.アーム材質とピボット方式の共振への影響が大きい
     SME3000シリーズやFRなどヴィンテージアームを盲信する多くのアマチュア愛好家に警鐘乱打です。


    私は、カートリッジを取っ替えひっかえすることは好みません。気に入ったカートリッジの能力を最大限に引き出すことの方がよい結果を生むし、シンプルに音楽を楽しめます。もしカートリッジを交換するのを楽しもうというのなら、毎回、よほど慎重かつ綿密に再調整をしないとだめだと思います。

    byベルウッド at2020-06-19 10:22

  2. のびーさん、

    興味深く拝見しました。

    アンチスケーティングの最適値はそんなにクリチカルではないようですね。でも内周ではアンチスケーティング量を増やしてトラック外側(Rch側)への力を増やした方が歪率が下がるということのようですね。

    内周で右chに歪を感じたらアンチスケーティング量を増やしてやった方がいいかも…。
    私の耳で聴きとれるほどの違いがでるかわかりませんが、わからなければよしとしようと思います。(笑)

    最後のダンピング機構有り無しの共振の違いは明確のようですね。
    3012Rの方の測定結果で下の図の台形状の軌跡の最後で下に向かった途中から正弦波っぽい信号が続くのが見られますが、これが共振波形なのでしょうか?
    この図がどのように測定されたものを表しているのかわからないのですが、少し解説いただけないでしょうか?

    ウチもGT-2000で出力信号を観測したとき共振周波数とみられる約12Hzの波が大きいことを確認してビックリしました。
    自分が使ってきたアームでああいう共振波形を見ることは私にとっては衝撃的でした。
    ダンピング機構のないアームをお使いの方はショックを受けるので見ない方がいいのかもしれませんが…(笑)

    その他、3012RはロングアームなのにSeries Vよりも共振周波数が高いというのはちょっと不思議に感じました。
    Series Vはダンピング機構によってピークが抑えられることで共振点がシフトして見えるのか…

    byK&K at2020-06-19 14:01

  3. のびーさん

    お疲れ様でした。 アンチスケーティングも、成る程ね、でしたが、アームの共振、共鳴に、しても、成る程。でした。
    カートリッジの性能を、引き出すには、セッティングが、いかに大切か、ヨーク分かりました‼️
    数値化されたことで 納得です‼️
    私は、我が耳を頼りに、高みに導きたいと思います‼️ 有難う御座います。

    byX1おやじ at2020-06-19 18:46

  4. ベルウッドさん、

    長いレポートにお付き合い頂きありがとうございます。
    優に100回はテスト・トラックを再生したと思います。最近は利き酒のノリで、10秒ほど測定すると傾向が分かるトラックもあります(笑い)。

    本文と重複しますが、強調したかったことは
    + VTAとアジマスは物理的に正確に合わせることが基本で、音質チューニングという名目で基準点からズラすことは極めて危険。

    + 一方、オフセット角やアンチスケーティング量は、理論的にも一点に最適点を特定出来ませんし、この調整には必ずデメリットも付随するので、ここで音質チューニングを実施してもコストは低い。

    ということです。また測定したことで、自分のシステムではどの程度まで「調整範囲」が許容できるか分かったことも良かったです。


    アナログの良いところは、緩い調整でもまずまずの音が出るところです。
    確かに、カートリッジを取っ替えひっかえしてキチンと調整しないと、期待していたような結果にはならないと思います。一方で、カートリッジを交換した時のような音質変化を他の調整やコンポーネントの入れ替えで実現することは相当難しく、「色々な音を楽しみたい」「効果的にグレードアップしたい」というニーズには極めて効果的です。

    ドグマ的に物事を捉えなくても良い「緩さ」をアナログは持っていると思います。

    byのびー at2020-06-19 20:14

  5. のびーさん、すす、凄いハイレベルです。
    かつてあの阿佐ヶ谷の匠がレコード試聴中にアンチスケーティングをいじったら、それに伴いボーカル定位がズズズと移動したことが衝撃で今でも忘れられません。それ以来うちでもシビアにやるようになったのですが、未だにあまり差異が分からずでして・・

    byにら at2020-06-19 22:48

  6. K&Kさん

    アンチスケーティングは、確かにAnalogMagikの測定基準(THD%)では最適値がクリティカルではありません。ただし、評価画面にチャンネルごとに表示される周波数スペクトラムはアンチスケーティング量の変化で結構異なります。それは左右のレベル差が一様に大きくなったり小さくなったりするのではなく、周波数帯域により偏差が拡大したり縮小したりと変化は様々です。
    アンチスケーティング量の変化は評価基準に影響が小さいだけで、測定可能な変化として観察できます。従ってご指摘の通り、アンチスケーティング量は、一定の範囲内で音質チューニングの手段として増減させて良いと思います。

    続く...

    byのびー at2020-06-20 01:10

  7. レゾナンスの測定は、7.5Hzから35Hzの周波数が連続的に高いレベルで記録されているテスト・トラックを再生して測定します。測定中は、それぞれの周波数を再生した際の再生レベルが時系列で記録されていきます。

    SME Vの測定画面は、20.123Hzを再生している瞬間です。
    画面下側のウィンドウの台形の左肩が再生レベルのピークで、固有共振周波数を示しています。
    右肩が現在再生中の周波数で、時間の経過とともに右肩がどんどん右側にシフトしていきます。固有共振周波数をピークとしてなだらかにレベルが低下し、現在再生中の周波数以上はレベルが急激に低下し無音となっています。

    SME 3012Rの測定画面は、20.121Hzを再生している瞬間です。
    8Hzから固有共振周波数である10.381Hzの間に幾つか共振を示すような小山があります。
    ちょうど固有共振周波数辺りを再生している時に、トーンアームが目で見て分かるほど左右に共振し、その時に測定画面の右端まで届く高周波振動が記録されました。
    現在再生中の周波数以上のレベルの低下もSME Vほど急峻ではないのは、ダンピングがあまり効いていないからでしょうか?

    12インチアームである3012Rの方が共振周波数が高いのですが、素材の差やダンピング機構の有無を考慮すると、あり得ると思います。3012Rの名誉のために申し上げると、アームの下ろし方次第では、高周波振動は観察されません。テスト・トラックの直前に不用意に下ろすと間違いなく共振しますが、少し前の部分に下ろせば針先着地の反動が時間の経過で落ち着くからだと思いますが共振はありません。

    通常のレコード再生でこんな低周波の高レベル再生を行うことはまず無いので、実用上問題とはならないと思います。また12インチの効果か、大して調整せずともアンチスケーティングの測定結果も優秀です。

    byのびー at2020-06-20 01:13

  8. のびーさん、

    レゾナンス測定結果についての詳細な解説ありがとうございます。
    7.5Hzから35HzまでのSweepの20Hz付近での途中経過を示したものだったのですね。

    3012R測定中「ちょうど固有共振周波数辺りを再生している時に、トーンアームが目で見て分かるほど左右に共振し、その時に測定画面の右端まで届く高周波振動が記録されました。」だとのことですが、ダンピング機構の有無の差はその辺のようですね。また、このテストレコードには相当大きな信号が刻まれているのだと理解しました。

    共振周波数でのピークが大きくてもその付近の周波数を刺激する加振源がなければそんなに振られることはないのだと思います。
    ウチのGT-2000で共振周波数の信号を観測したのは、使用したレコードのソリなどの状態の影響があったかもしれませんね。

    貴重な情報を提供いただいたこと、お時間を割いて詳細な解説をしていただいたことに感謝しております。

    byK&K at2020-06-20 14:21

  9. X1おやじさん

    こんにちは。最近はデジタルでもお忙しそうですね (笑)。
    X1邸の超弩級アナログも測定してみたい誘惑にかられます。

    測定結果は、ある意味で経験の長いオーディオ・ファイルには至極当然のものでした。
    でも、それが測定値として確認出来て、これから安心して駄耳で調整に励めます!!

    byのびー at2020-06-21 16:00

  10. にらさん、

    こんにちは。
    測定そのものは、オシロでの測定のように電気的な知識が必要という訳でもなく、大したことありません。またアナログをこのように解析することに違和感を感じている方も多いと思います。

    アンチスケーティング量は歪率としての許容範囲は相当広いですが、(当然ながら)左右のレベル偏差に相応のインパクトがあることも確認出来ました。 確かにアンチスケーティング量を変えるとボーカルが動く、と言うのはあり得ます。 でも難しいのは、ボーカルの中央定位を維持するアンチスケーティング量の幅が結構広いということだと思います。

    拙宅の例だと、1.0未満、2.5以上だと左右に分かるほど動きますが、1.0から2.5の間だとそのような変化はありません。 でも何か少し変わるんですよね。 そこが難しく面白いです。

    byのびー at2020-06-21 16:17

  11. のびーさま、

    長時間にわたる調整、お疲れ様でした。細かく記録に残してくださったこと、大変感謝しております。わたしもアームボードの水平を取り直しました。当たり前ですが、効果抜群ですね。アナログの楽しさを再認識しました。

    アジマスの調整のコツも、なるほど、と思いました。でも、私のようなSPUの場合はどうしたらよいのでしょうね?

    アンチスケーティングのデータも参考になります。K&Kさんが仰るように、右側の歪みは、ある程度アンチスケーティングを上げることによって改善できそうですね。しかし、過ぎたるは及ばざるがごとしということも、よく解りました。

    これからもいろいろ教えてください。

    byちょさん at2020-06-21 18:04

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