裏庭の英雄
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裏庭の英雄と申します。クラシック音楽を愛好しております。 10代の頃にオーディオの世界に触れ、憧れること数年。その間、ショップやオーディオショウに出向いては、試聴や知識の吸収に努めました。 …

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我が愛しのタンノイ
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日記

現代におけるフルトヴェングラーの意義とは

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2013年03月22日

先日、当コミュのメールにて或る方に、フルトヴェングラーのベートーヴェン「英雄」を初めとした交響曲は推奨されていますか?との相談を受けました。少し値の張るアナログ盤に手を出すかどうか迷われていたようです。

これは、私のハンドルネームを考慮して相談頂いたことだと想像しますw。

もしかしたら気になっていた方もいらっしゃるかも知れませんが、私のハンドルネーム「裏庭の英雄」、これは確かに「ウラニアの英雄(エロイカ)」のオマージュですw。
ハンドルネームを見ただけで、分かる人には、私がクラシックファンだということが伝わるような名前にしようと思い名付けました。
今回の相談者様初め、この名前につっこんで下さった方も何名かいらっしゃって、今では「裏庭の英雄」という響きも気に入っておりますww。

さて、それはさておき、メールにて返信の筆を進めていたところ、いつもの私の悪い癖でだらだらと長文になってしまいましたww。
何通かのやり取りを経たところで、相談者様が「日記にアップされては?」と仰って下さったため、(最近、日記をサボリがちでしたのでww)手抜きではありますがお言葉に甘えさせて頂き、加筆修正し、こちらに転載させて頂きました。




 
フルトヴェングラーの録音に、歴史的価値以上のものを見い出さない方は結構いらっしゃいます。全てモノラル録音である上、音質面でも決して優れているとは言えないために、わざわざこんなカビの生えた演奏を聴かなくても、他にいくらでも良い演奏はある、という考えです。
しかし、私が思うに、ことベートーヴェンに関しては必聴と感じる演奏が幾つも存在します。
これはベートーヴェンの理解という意味以上に、20世紀中盤におけるドイツ音楽のロマン的解釈の頂点がフルトヴェングラーであるといえるためです。

前回私が「交響曲の王」というタイトルの日記で、現在のドイツ人が、大時代的な音楽解釈の片鱗を見せるクリスティアン・ティーレマンに対して、古き良き時代の巨匠の姿を重ねている…うんぬんと書きましたが、これはフルトヴェングラーの姿を重ねていると解釈して頂いてほぼかまいません。
それほどまでに、ドイツ人の心の奥底にある純ドイツ音楽を体現した指揮者がフルトヴェングラー、そして当時のベルリンフィル(以下BPO)だったのです。
(尚、私はティーレマンを全く評価していません。彼がフルトヴェングラー的だとも思いません。)

フルトヴェングラーはウィーンフィル(以下VPO)や北ドイツ放送響などでも指揮を行っておりますが、ドイツ的音楽の極致を体現しているのはやはり当時のBPOです。
フルトヴェングラー&BPOの音楽を言葉で表すなら、「男性的な雄々しさ」ではないでしょうか。ドイツ人が深層で求めているドイツ音楽は、この「雄々しさ」にこそあると私は考えます。

カラヤン以降、BPOの音はインターナショナルなものへと変化していきました。現在ではその「雄々しさ」を表現できる楽団は今のBPOを含めても、どこにも見当たらないのが現実です。

であるからして、今を生きる我々がドイツ人の根底にある純ドイツ音楽を理解するために、フルトヴェングラー&BPO(楽曲によっては勿論VPOなどの他の楽団も含みますが…)の録音。それもベートーヴェンという雄々しさを表現するためにこれ以上ない音楽を体験することは必須だと考えるのです。

しかし実際、フルトヴェングラーの録音に初めて手を出される方は、少々戸惑われるかも知れません。
なぜなら、彼のベートーヴェンは「同曲異演」があまりに多く、1つの曲を取ってしてもどの演奏を選べばよいか分からないのではないでしょうか。
加えて、さらに難しくしているのが「同演異盤」も多いという点です。フルトヴェングラーの録音は既にパブリックドメインに帰しておりますので、マスター音源を抱えるレコード会社以外のレーベルでも彼のCDを出したい放題なのです。そこで、1つの曲をどの盤で購入すればよいのか(どの盤の音質が優れているのか)という問題が生じるわけです。




そこで、先ずは盤選びについて話してみたいと思います。「同演異盤」の対処を考えましょう。

フルトヴェングラーの録音をCDで購入する場合、EMIやDGGといったマスターテープを音源とするものは、音が貧弱に感じられるかも知れません。

フルトヴェングラーの多くの録音は、マグネットフォンというテープ録音方式で当時としては高音質の録音がなされておりましたが、このマスターテープは、戦後、東ドイツを占領していた旧ソ連軍に拿捕されモスクワに持ち帰られてしまいます。
そして、このマスターテープからソ連国営レーベルのメロディアが起こしたLPが発売され、それは段階的に様々な国を経てコピーされて行くことになりました。日本でも東芝EMIからLPが発売されております。
一方、ソ連軍が接収したマスターテープのデジタルコピーも後にベルリンへ送られ、それをもとにDGGからCDが発売されます。しかし、DGGは以前より同曲を、西ドイツ国内の放送局に残されていたコピーテープを用いてLP化し販売しておりました。
さらには、1991年、ソ連に接収されていた戦時中のマグネットフォン録音のマスターテープがモスクワからベルリンに返還され、これをもとにしたCDも販売されるようになりました。

そろそろ頭が痛くなって来たのではないでしょうかww?

この辺りのお話は、イギリスのユニコーンレーベル(←気にしないで下さいww)の話なども含めると、それだけで長~くなってしまいそうですのでwwこのくらいにさせて頂きますが、分かって欲しいことは一つ。

要は「同じ曲のCD(LP)でも様々なマスターが存在し、それによって音質もバラバラ」だということです。

しかも現在では、最も上流であるはずのマグネットフォン録音のマスターテープの保存状態が非常に悪く、そこから作られるCDも音が死んでいることが多いのです。

例外的に、2002年に発売された「イタリアEMI」によるVPO他によるベートーヴェンの交響曲全集のCDは、テープ音源にもかかわらずリマスタリングが最高で、テープ音源の決定盤ともいえる高音質を誇るらしいです。今後このレベルのリマスター盤は出てこないだろうと言われています。
(当時私も噂を聞いて、HMVのお気に入りリストに入れて購入を考えていたのですが、あっさり廃盤のため未聴ですww。今でもオークションなどでは、結構高額で取引されている模様です。)

最近は、テープ音源が駄目なら…ということで、状態の良いメロディアVSGレーベルなどの初期盤LPをマスターとしたCD、いわゆる「板起こし」が専らの主流になりつつあります。
「板起こしCD」についてはアナログを真剣にやられている方ほど、手厳しい意見を述べられる傾向も見られますが、個人的には気にしないで買っていただきたいと思っていますww。
なんせ、フルトヴェングラーの状態の良い初期盤LPなんて数十万円はしますからw。板起こしにより、そのお零れを預かれるならどんどん利用するべきでしょう!

個人的にオススメの板起こしレーベルはMYTHOS(ミソス)とDELTA(デルタ)です。

MYTHOSは、針のスクラッチノイズは大きいですが、聴感に優れた音圧が高めの音で、年代故にモヤモヤした音がデフォルトであるフルトヴェングラーの録音を、生きた音として聴ける唯一のレーベルです。また、圧倒的な迫力が楽しめるという良さもあります。
しかし、人為的に音を弄っているため、少しの不自然さはどうしても付きまといます。さらに最大の欠点として、音の強弱のピークが均一化されており、強弱の細かいニュアンスを聴きとることは難しくなっております。

DELTAはLPから起こしたデータを、手作業にて、針のスクラッチノイズだけ丁寧に取り除くという方法で、アナログの良さをそのままに非常に耳触りの良い音を作り上げています。
音を直接弄ってはおりませんので、オリジナルの良さを楽しめるという長所はありますが、モヤモヤとした霞がかかった音のままなのはどうしようもありません。

CDでフルトヴェングラーの録音を購入される場合は、この2つのレーベルから好みで選んで頂ければよろしいのではないかと思います。
私は両方購入して、気分によって聴き分けて楽しんでおりますw。




では、ここからはフルトヴェングラーのベートーヴェンの交響曲を1つずつ見ていきたいと思います。「同曲異演」の対処を考えましょう。


■交響曲第1番ですが、これ関しては1952.11.24-28のVPOとのものが傑作です。(1952.11.29と1952.11.30にもVPOと同曲の録音が残されていますので区別には注意して下さい。)
非常にスケールの大きな演奏で、50年代のフルトヴェングラーらしい一つ一つのフレーズを丁寧に扱った理知的なスタイルが楽しめます。
楽曲的にモーツァルトやハイドンの影響が色濃いため、ベートーヴェンに求めがちなドラマ性には欠けますが、当時のVPOの持つまろやかさを上手く活かした名演といえるでしょう。
(ちなみにこの演奏はMYTHOS、DELTAともに復刻を行っておりません。私は現在、国内ハイブリッドSACD盤で聴いておりますが、やはりイタリアEMI盤のほうが評判は良さそうです。)

(左)交響曲第1番 1952.11.24-28,VPO 国内EMI盤 (右)同録音 イタリアEMI盤 


■第2番は1948.10.3のVPOとの録音しか残されておりません。
こちらに関してはさすがに録音音質が酷いため、フルトヴェングラーのファン以外は必聴とまでは言えないかも知れません。


■第3番「英雄」ですが、先ずはやはり「ウラニアの英雄」として有名な1944.12.19のVPOとの録音は必聴でしょうね。
この盤はご存知かも知れませんが、米レーベルのウラニアがフルトヴェングラーの許可を得ずにLPを発売したため海賊版扱いとなっております。後にフルトヴェングラー自身が販売差し止めを行ったため、LPの流通枚数が非常に少なく希少価値が上がりました。
ちなみにこのLPはピッチが少々狂っていて(少し高い)、復刻CDなどはピッチを修正したものか、オリジナルのままのものかなどもレーベルごとに違っていて、なかなかどれを購入すればよいか迷われると思います。
個人的には、音質面で有利なオリジナルのままのピッチ未修正盤をオススメします。

緩急自在の音のうねりと大胆なアッチェレランドは、これぞフルトヴェングラーだという演奏です。2楽章の葬送行進曲の怨念と深淵さなどは、戦中録音という極限状態だからこそ成し遂げられたものではないでしょうか。しかも、ただ猛進するだけではないのがVPOである所以であり、気迫と緊張感の中にも流麗な響きを聴かせてくれる、まさに奇跡的な演奏であると思います。

「ウラニアの英雄」のオリジナル盤は、私もいつか収集したいと思ってオークションなどを見ていた時期がありますが20万円前後が相場でした!!(現在の相場がどうなっているかは知りませんがw)

ちなみに下の写真(右)のDELTA復刻盤はオリジナルLPジャケットを忠実に再現した紙ジャケット仕様です。この「ウラニアの英雄」オリジナルジャケットは、皆さんどこかで見たことがあるはずですよね~ww。

「英雄」の他の録音としましては、1952.11.30のVPOとの演奏も良いですね。こちらはウラニア盤とは異なり、巨大なスケールによる楽曲内容の深みをより内省的に追求したアプローチです。

(左)交響曲第3番 1944.12.19,VPO MYTHOS盤 (右)同録音 DELTA盤



■第4番に関しては1943.6.27-30のBPOとの放送用録音(これがまた本当にややこしいのですが、全く同じ日付1943.6.27-30のBPOとのライブ録音もありまして、これとは別のもですので区別に注意が必要です。)が凄い演奏です。
一瞬、演奏が止まってしまったのかと勘違いする程のw、フルトヴェングラー的なテンポの揺れを最大限に生かした演奏です。

「ウラニアの英雄」の項でも触れましたが、戦中録音というのは緊泊感と狂気に満ちています。ベルリン空襲による砲弾が飛び交う中(実際に演奏中に停電が起こったこともありましたし、BPOの本拠地であったフィルハーモニー楽堂は空襲で破壊されています)すぐ隣で爆撃音が殺到し人殺しが行われている横で、音楽という芸術活動を行うという精神状態は私には想像も出来ません。しかし、録音にはその狂気と理性の平衡が克明に刻まれているように感じます。

(左)交響曲第4番 1943.6.27-30,BPO 放送用録音 DELTA盤 (右)同曲 1943.6.27-30,BPO ライブ録音 DELTA盤



■第5番の録音ですが、これは1943.6.27-30のBPOとの演奏と、同じくBPOとの1947.5.27の演奏が双璧です。(この数日前の1947.5.25のBPO盤もありますので注意して下さい。)

先ず43年盤ですが、これも戦時下における偉大な録音です。第1楽章第2主題のレガートの妙。終楽章の強弱のコントラストの大きさ。そしてテンポの揺れが大きいにもかかわらず抜群にコントロールが効いているという奇跡的名演です。またフルトヴェングラーの「雄々しさ」の頂点でもあると思います。

戦中のフルトヴェングラーは、ナチ政権下のドイツ第三帝国の宣伝塔として利用されていたために、戦後は音楽界から排斥させられておりました。1946年、非ナチ化審理で無罪が言い渡されたフルトヴェングラーでしたが、連合国側が承認しなかったため演奏活動への復帰はすぐには実現しなかったようです。結局、フルトヴェングラーが戦後初めてコンサートに立ったのは1947.5.25。これが有名な戦後復帰演奏会です。
1947.5.27盤の第5番はこの戦後復帰演奏会3日目のものですが、フルトヴェングラーや彼の手兵BPOの歓喜にあふれる演奏です。多少の「運命の動機」のズレやアンサンブルの乱れなどもありますが、そんなことは全く気にならないくらいに凄まじい音楽が繰り広げられています。
他のどの演奏よりも上回るフルトヴェングラーとBPO、そして観客の一体感は実に見事であり、必聴にあたいします。
第1楽章第2主題のヴィブラートなど、43年盤との聴き比べは、個人的にライフワークにしても良い位だと思っておりますww。

他にも1937.10.8,11.3のBPOとの録音もいつかは聴いて欲しい録音です。実際BPOの黄金期は1930年代と言われています。これはナチスによるユダヤ人奏者排斥によりBPOの実力がグッと下がったことに起因するようです。
BPOの真の絶頂期の音を知ることも、また純ドイツ音楽へ至る道ではないでしょうか?

(左)交響曲第5番 1943.6.27-30,BPO MYTHOS盤 (右)同録音 DELTA盤

(左)交響曲第5番 1947.5.27,BPO MYTHOS盤 (右)同録音 DELTA盤



■第6番「田園」ですが、1952.11.24-25のVPOとのムジークフェラインでのスタジオ録音は、ブルーノ・ワルター&VPOとは全く違う田園風景を描きあげております。
非常にゆったりとしたテンポで導入される1楽章冒頭から、雄大な規模ではありますが、力強く引き締まった感覚の中に鄙びた空気を融合させた、フルトヴェングラー独自の原風景が素晴らしい演奏です。

1954.5.23のBPOとの「ティタニア・パラストの田園」も名演です。こちらはVPOとは異なるBPOの低弦の重厚さがすぐに耳につきますが、本当に素晴らしいのは木管群の上手さでしょう。

この頃のBPOを良く聴いてみると、木管の個人技が光っていることに気付かされます。こういう個人技は指揮者の指定ではなく楽団の伝統として自発的に行われていたらしいです。
カラヤン以降こういった個人技は封印されて行きますが、このような箇所に嘗てのBPOが垣間見えるところも、フルトヴェングラーの録音を聴く醍醐味と言えるのではないでしょうか。

(左)交響曲第6番 1952.11.24-25,VPO MYTHOS盤 (右)同曲 1954.5.23,BPO DELTA盤


■第7番は1943.10.31-11.3のBPOとの演奏が最高でしょう。第2楽章の抑鬱された進行や、終楽章の狂気ともいえるテンポにより、鬼気迫る戦中録音となっております。また、緩急強弱のコントラストの大きさや強烈な金管によるBPOの雄々しさと、ベートーヴェンの楽曲が持つドラマ性の融合が、高いレベルで昇華されているように感じます。

(左)交響曲第7番 1943.10.31-11.3,BPO DELTA盤 (右)珍しいのでテキトーに載せたww、フサフサのフルトヴェングラーの写真



■第8番に関してはいくつか録音が存在しますが、私の聴いた1954.8.30のVPO盤は音質に問題があるように感じます。私は未聴ですが1948.11.13のストックホルムフィルとの録音も音が死んでいると聞きました。


■第9番については、やはり「バイロイトの第九」こと1951.7.29のバイロイト祝祭管との録音は必聴でしょう。(バイロイト音楽祭の第九は51年盤以外にも、54年盤など複数存在しますので注意して下さい。)
バイロイト祝祭管は常設オケでないこともあって、演奏の安定性に欠ける側面もありますが、戦後のバイロイト音楽祭の復活という会場の興奮と喜びも相まって、フルトヴェングラーもオケを崩壊寸前まで走らせておりますw。終楽章終部の強烈なアッチェレランドを聴かずして、第九を語ることはできないでしょうねw。
無茶苦茶な演奏のように書いておりますが、実際は熱狂と崩壊の境界線を実に巧みに渡り歩いた絶妙な演奏です。数ある第九の中でも不屈の名演といえるでしょう。

他のフルトヴェングラーの第九としましては、1942.3.22-24のBPOとの録音「ベルリンの第九」があります。
「ベルリンの第九」はブルーノ・キッテル合唱団創立40周年記念演奏会のもので、手兵であるBPOの実力を遺憾なく発揮した壮絶な戦中演奏です。音楽的完成度では51年のバイロイト盤など比べ物になりません。
フルトヴェングラー&BPOで聴ける最高の第九という意味でも、是非聴いて欲しい演奏です。

1954.8.22ルツェルン音楽祭で行った、フィルハーモニア管との「ルツェルンの第九」も素晴らしい演奏です。
この演奏は第一に録音が良いです。マイクセッティングの関係で少し金管が突出しているのは残念ですが、フルトヴェングラーの録音としては最高レベルの音質を誇ります。
フルトヴェングラーが亡くなる3か月前の演奏ということもあって、最晩年故の落ち着きが感じられます。彼が至った集大成という意味でも聴いて欲しい演奏です。

(左)交響曲第9番 1951.7.29,バイロイト祝祭管 MYTHOS盤 (右)同録音 DELTA盤

(左)交響曲第9番 1942.3.22-24,BPO DELTA盤 (右)同曲 1954.8.22,フィルハーモニア管 DELTA盤






以上ざっと、フルトヴェングラーによるベートーヴェンの9つの交響曲のオススメ録音を紹介させて頂きました。

そろそろお気付きかも知れませんが、私は一時期、狂ったようにフルトヴェングラーの音源を収集していた時期がありましたw。しかし、何もここまでフルトヴェングラーのベートーヴェンばかり聴く必要も無いと思いますww。

ですが、「ウラニアの英雄」「戦後復帰演奏会3日目の運命」「バイロイトの第九」などは、歴史的録音ですし、それ以上に当時から現在に至るドイツ音楽の深層を覗くという意味においても、聴いておいて損はないと思われます。

この3つの録音以外にもチャレンジされたい方は、今回の記事を参照し、ご自身の好みに合いそうなものを選んで聴いて頂ければ、白紙の状態で突貫するよりは取っ付きやすいのではないでしょうか。

今までフルトヴェングラーを食わず嫌いしてきた方、この機会に純ドイツ音楽の精神的根底に触れてみるのは如何でしょうか?

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レス一覧

  1. 裏庭の英雄さん今晩は。そして初めまして。

    超長文の日記、書くのも大変でしたでしょうし、様々な資料を集めてそれらを並び替えて文章化するのも大変だったと思います。

    全部にはコメント出来ないので、第九だけについて書きます。
    1951年のバイロイト盤ですが、私はデルタ復刻盤(CD)とDacapoの何故かステレオLP盤と、東芝EMIのCD、Orfeo盤(CD)を所有しています。

    この中でOrfeo盤は元々公開が禁止されている、放送用の録音が限定で発売されたものの様で、どうも前日にあったリハーサルの録音のようです。

    私は過去に一度だけEMIオリジナルのLPを聞きましたが、特に第4楽章の合唱の部分は、戦後6年目と言うこともあって、平和に音楽が出来る事への喜びに溢れている感じが、素晴らしい演奏になっていて、もっと録音の良い演奏は数多くありますが、これ以上のものは無かろうと思っています。

    1954年のルツェルン盤はオタケン(CD)の復刻ですが、これは録音も演奏も素晴らしいです。これのTAHRA盤(SACD)を持っていますが、こちらは全くお勧め出来ません。

    2008年版のフルトヴェングラー完全ディスコグラフィーと言う小冊子を持っていますが、確かに大変な枚数です。

    by山田野案山子 at2013-03-22 22:09

  2. 裏庭の英雄さん、こんばんは。

    いつもながらの素晴らしい知識ですね。
    本当に私より年下なのか、といつも驚き怪しんでいます(失礼
    フルトヴェングラーはあまりにCDの枚数が多く、なかなか手を付けれていないので今回の日記は大変有難いものでした。
    オススメ盤をボチボチ漁って行くことにします。

    次回も楽しみにしております(^^)

    bykanata at2013-03-22 23:25

  3. 山田野案山子さん、初めまして。レスありがとうございます。

    資料に関しては、演奏内容はある程度頭に残っているのですが、それが何年の録音だったかまでは忘れているので、それらを整合させるのに苦労しましたw。
    フルトヴェングラーにハマって聴きまくっていた頃はよかったのですが、今となっては「ルガーノの田園」や「ヒットラーの第九」などあだ名付きもの以外の、普通のスタジオ録音とかだと「どれだっけー??」って感じですww。
    (でもそれ以上に、今回は画像編集が大変だったりしてw)
    こうやって、記事にまとめることで頭の中も整理できますので、私自身も恩恵を受けております。


    「バイロイトの第九」バイエルン放送局のOrfeo盤ですが、これが出た時は、やれどっちがゲネプロだの、やれEMI盤はウォルター・レッグの意志が効きすぎているだの、お祭り騒ぎでしたねw。
    各楽器群の全体調和と声楽ソロパートの明瞭さで、私は従来のEMI盤の方がやはり好きですが。
    EMI盤が本番ライブ編集でバイエルン盤がゲネプロとか、EMI盤はゲネプロ+ライブの編集でバイエルン盤が本番ライブとか、様々な見解があるようですね。
    私としましては、あまり気にせず別物として聴くスタイルがベストかと、問題を放棄しておりますww。


    復刻レーベルに関しては、私も初めはTAHRA、オタケン、オーパス蔵など色々試した時期もありましたが、印象の良かったMYTHOSとDELTAに絞ろうと決めてからは、さすがに同演異盤の聴き比べは止めました。
    昨今でも次から次に出てきますからねw。

    by裏庭の英雄 at2013-03-23 00:45

  4. kanataさん、こんばんは。

    年齢に関しては、一応本当のことを書いておりますww。

    親によると、初めてハマった音楽は光GENJIとのこと。
    初めて自分でレンタルしたCDは広瀬香美の「ロマンスの神様」。
    初めて自分で買ったアルバムはL'Arc-en-Cielの「HEART」。

    と言えば当コミュの皆様なら信じて頂けるでしょうかww?初めっからクラシックどっぷりだった訳ではありませんw。


    やはりフルトヴェングラーの録音は、どれを聴いたらよいのか、という所からしてハードルが高いのかも知れませんね。
    ベートーヴェン以外にも、シューベルト、シューマン、ブラームス、ワーグナーなんかも面白いですので、少しずつ挑戦してみては如何でしょうか?

    by裏庭の英雄 at2013-03-23 01:11

  5. 裏庭の英雄さん、お早うございます。

    いつもながら、深い見識と知識量ですね。
    助言いただいたメッセージを参考に、
    行きつけのショップに行って参りました!

    いただいた情報どおり、フルトヴェングラーのLPは、
    MYTHOSによるLPからの盤起こし版とのことで、
    その音作りの説明とかもしていただきました。

    「URANIAの英雄(ジャケットがなぜか懐かしいw)」「ベルリンの第九」は当初から購入するつもりでしたが、第5番は1943年6月27-30日放送用録音、第7番は1943年10月31日-11月3日のライブ録音と、いずれも裏庭の英雄さんのオススメ録音でしたので、併せて購入してしまいました。

    お財布には優しくないシリーズですが、針を落とす日が楽しみです。
    ちなみに私が所有しているCD「RIRSアーカイブス」には注意の必要な「数日前の1947.5.25のBPO盤」が収録されておりましたw。
    比較もしてみたいですし、違いの分かる男になりたいですww。

    今回は、大変お世話になりました。

    by矢切亭主人 at2013-03-23 10:35

  6. 裏庭の英雄さん、こんにちは。

    今回も、中身の非常に濃いレポートを有難うございます。

    >しかも現在では、最も上流であるはずのマグネットフォン録音のマスターテープの保存状態が非常に悪く、そこから作られるCDも音が死んでいることが多いのです。

    ようやくCDグルグルライフを再開できる見通しがついた私といたしましては、今回のレポートを読み進めるうちに、だんだん気分が落ち込んできてしまいましたが(笑)

    >「板起こしCD」についてはアナログを真剣にやられている方ほど、手厳しい意見を述べられる傾向も見られますが、個人的には気にしないで買っていただきたいと思っていますww。
    >個人的におすすめの板起こしレーベルはMYTHOS(ミソス)とDELTA(デルタ)です。

    このお言葉を頼りに、少しずつ揃えていきたいと考えております。

    それでは、今後とも宜しくお願い致します。

    byカイ at2013-03-23 13:16

  7. 裏庭の英雄さん、こんにちは

    超長文、おつかれさまです。
    (読むのも2日にわけました 笑)

    「ウラニアの英雄」でググるとコダワリのとーっても濃い内容に
    行き着きますね。
    当方全くこういう情報に疎いもので感心するばかりです。

    針のブチッとかバチッていう音にとっても弱いのでアナログ
    ならびに板起こしには全く食指が動きません。

    次回はぜひ現代録音でお願いします m(__)m

    byKurashiki at2013-03-23 13:29

  8. 裏庭の英雄さん
    今晩は。

    超長文素晴らしい文才ですね!。
    いやー見習いたいものです。

    クラシックの知識もスゴイですねー。関係ないですが、とりあえず最新クラシックの
    SACDカタログ&ガイドブックなる本買って来ました^^;

    byはやぶさ at2013-03-23 19:03

  9. 矢切亭主人さん、こんばんは。

    やはりMYTHOSの復刻LPでしたかー。MYTHOSの音作りなんかも聞けたようでよかったですね!

    MYTHOSはCDやLPの他に、実はCD-R盤なるものもあります。
    というより、もともとMYTHOSはアメリカのフォスターという実業家が、プライベートで主催する音楽愛好家のクラブで配布していたCD-Rが発端となって誕生したレーベルだそうです。

    現在販売されているCD-R盤には「マスターグレード」や「グローリアスヘリテージ」といったバージョンがあり、記録メディアにも三菱化学の「Green Tune」やTDKの「THEORY」といったバージョン違いがあるようです。
    これら全てが微妙に異なる音質で、真のフルトヴェングラーマニアは、これが良い…あれが良い…と色々聴き比べているようですww。

    プレス盤CDよりCD-R盤の方が押しなべて評価は良いみたいですが、さすがに私にはそこまでの情熱はないので、プレス盤のみ購入させて頂いておりますw。


    LPの方も確かにお財布には優しくないシリーズですが、現在において、新品の盤でアナログのフルトヴェングラーを楽しめるのですから、少々の難は吹っ飛んでしまいますよねw。
    購入された盤の感想など、また聴かせて下さいね。

    by裏庭の英雄 at2013-03-23 19:55

  10. カイさん、こんばんは。

    D-08を購入されたばかりのカイさんに、フルトヴェングラーを勧めるのはナンセンスですねww。

    ですが、確かにオーディオの楽しみは、より高音質で音を聴くという側面もありますが、やはり、音楽(演奏)の楽しみという意味においては録音状態の良くないものにも存在意義は十分にあると思います。
    1930年代にだって40年代にだって、その時代にしかない良さ、現代には失われた良さ、があると思います。

    高音質録音を十分に楽しまれた後に、過去の演奏に立ち返るのも面白いかも知れません。


    私は、ヒラリー・ハーンの演奏を高音質で聴くことと、ブロニスラフ・フーベルマンの演奏を低音質で聴くことに、優劣は存在しないと考えておりますw。

    by裏庭の英雄 at2013-03-23 20:24

  11. Kurashikiさん、こんばんは。
    とりあえず長文失礼しましたww、何日かかっても読んで頂けただけで十分ですw。


    音に関しては皆さんそれぞれに、これ以上悪い音質では音楽を楽しめない、という基準はあると思います。
    勿論私も強要するつもりはありませんww。
    かくいう私だって、ニキシュ(←フルトヴェングラーの前のBPOの主席指揮者)の「運命」は限界でしたしww。


    >次回はぜひ現代録音でお願いします

    了解しましたw。
    どの時代の録音の紹介になるかは分かりませんが、次回は、一般的に普通に聴けるレベルのものをチョイスしたいと思います。

    by裏庭の英雄 at2013-03-23 20:39

  12. はやぶささん、こんばんは。

    私は文章を書くと夢中になって止まらなくなる癖があるようですww。
    ただ、当コミュの日記にしてもそうですが、文章を書き始めるまでは結構面倒臭がったりして、筆を揮うという行為が好きなのか嫌いなのか自分でもよく分かっておりませんww。


    >最新クラシックのSACDカタログ&ガイドブックなる本買って来ました

    名盤100選みたいな本は良く見かけますが、SACDガイドブックというのはあまり読んだことがありませんね。高音質盤が載っているのでしょうか。

    こうやって話していると、私は他の皆さんに比べて、録音における音質のプライオリティが低いような気もしますのでw、この本なんかは良い参考書になるかも知れませんね。

    by裏庭の英雄 at2013-03-23 22:50

  13. 裏庭の英雄さん、こんばんは。

    いつもながら、読み応えのある文章で面白く読ませてもらっております。
    私自身はフルトヴェングラーのディスクはあまり持っていません。
    (バイロイトの第九はアナログとSACDで持っていますが)
    名演目白押しなのは分かっているのですが…
    録音が、と言うよりは曲目の面であまり聴かないモノが多いので…(汗)

    それでも、50年代後半のBPOの演奏を聴くと、随所にフルトヴェングラーの薫陶を受けた奏者によるフルトヴェングラー的な音楽の残照を感じる時があります。
    60年代になると失われてしまいますが…


    現在、もてはやされている演奏のスタイルと比較するならフルトヴェングラー的な演奏は前時代的と言わざるを得ないのかもしれません。
    ただ、今のスタイルでない事が演奏の価値を減ずるものでないことは当然ですし、現在の聴衆がフルトヴェングラーの演奏に対して憧憬を抱き、後継者を探している事も間違いの無い事実ですね。
    (ティーレマンについてはここまでの所は同意見です。今後変わっていくのかもしれませんけれど。)

    まあ、オーディオ的な見地からすれば良い録音で良い曲の良い演奏を聴くとなるのでしょうが、繰り返し聴くとなるとやはり良い演奏を第一に考慮したいです。


    次回を楽しみにしております。

    byfuku at2013-03-24 05:34

  14. fukuさん、こんばんは。

    何かまた長文になりますが…ww

    >50年代後半のBPOの演奏を聴くと、随所にフルトヴェングラーの薫陶を受けた奏者によるフルトヴェングラー的な音楽の残照を感じる時があります。

    これは確かに私も感じています。
    真っ先に頭をよぎったのは、フリッチャイやクリュイタンスによるBPOの演奏でしょうか。
    フリッチャイのドヴォルザークの9番やクリュイタンスのベートーヴェンの交響曲では、そのBPOサウンドからフルトヴェングラー的な「雄々しさ」が十分に感じられます。


    >60年代になると失われてしまいますが…

    勿論カラヤンがBPOを自分色に染めて行ったのは間違い無いでしょう。しかし、彼が1957年にBPOと残したEMIのブルックナーの8番からは、非常に「雄々しい」BPOサウンドが聴き取れます。
    個人的には、この57年のブル8はカラヤンのブルックナーの最高の演奏だと思っております。まぁ、私が真のカラヤンのファンでは無い事の証明になってしまうわけですがww。

    恐らくこの50年代後半という時代は、フルトヴェングラーの残滓とカラヤンの新しい音楽の戦いだったのでしょうね。
    60年代のBPOには、もうフルトヴェングラー的「雄々しさ」が感じられないというのも、全く同意見です。


    >ティーレマンについてはここまでの所は同意見です。今後変わっていくのかもしれませんけれど。

    ティーレマン自身、歌劇場からの叩き上げみたいなところがありますが、そう見た場合、ファビオ・ルイージも同様に語ることが可能だと思います。
    R.シュトラウスやワーグナーは良いが………wwという辺り、この2人は実は似たような悩みを抱えているのではないかと思います。

    ルイージのSKD就任時、先任のハイティンクが、「オペラは良いが、シンフォニーがあまりに振れない」と、ルイージをけちょんけちょんに言いましたが、今となってはティーレマンのSKD就任についても一言欲しいところですねww。

    ラトルのBPO退任時期が決まった今となっては、その後任の第一候補としてティーレマンの名前が挙がるのは、まず間違いは無いでしょう。

    ティーレマンはそのレパートリーがドイツ系に偏り過ぎていると批判されがちですが、私に言わせればそのドイツ系にさえ説得力が無さ過ぎます。
    BPOを率いるならせめて、ベートーヴェン、ブラームス、ブルックナーの腕をもっと上げないと、ラトルの後任としての意味が無いですからね。
    大編成オケを、ヴァイオリン両翼配置で、ルバートをかけながら振れば、フルトヴェングラー的だという訳では決してありません!

    ラトルが拡大したBPOの非ドイツ系レパートリーを引き継ぎ、ティーレマン自身がドイツ系レパートリーを充実させる。

    これが現在の彼に求められている仕事であり、今後のBPOの理想像である気も致します。
    そこまでティーレマンが育っていくのかが、今後の彼の見所でしょうね。

    by裏庭の英雄 at2013-03-24 18:29

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