Orisuke
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バブル世代の趣味人です。 オーディオと写真、山登りは趣味の3本柱で30年くらい下手の横好きをやっています。

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D58ESのニアフィールドリスニング?
D58ESのニアフィールドリスニング?
借家(戸建) / 専用室 / オーディオルーム / ~10畳 / 防音なし / スクリーン~100型 / ~4ch
単身赴任をいいことに、一軒家の貸家の一室を念願のオーディオルームにしました。しかも、「ど」のつく田舎なので音は出し放題。ただ、D-58にはちょっと狭いかな・・・・。巨大なヘッドホンの中にいるような、巨…
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日記

Ken Yoshida録音を聴く【10】

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2020年01月25日

Ken Yoshida(吉田研)ウォッチングをはじめてかれこれ一年ほど経過しましたが、このところの彼の録音ペースは尋常ではなく、半月ぐらいボーッとしていると彼のHP (http://www.kenyoshida.fr/#)に新譜の写真が一枚増えていると言った具合。レーベル、奏者も様々で、若手によるチャレンジングな演目が多いので飽きることがありません。現代フランス楽壇における新進気鋭のプロデューサーとしてポジションをしっかり確保したようです。ただ、最近はどこまで彼自身が録音・編集工程に関われたか、どのくらいひとつの録音に手間をかけられたかで音のクオリティは玉石混淆になってきている気もして、ちょっと心配。今回は、5枚一挙にご紹介です。


モテッティと技巧的なカンツォーニ
ラ・ギルド・デ・メルスネール
アドリアン マビール(cond., コルネット)
2017年7月 サンタマン=ド=ポワ寺院、シャラント、フランス
E: Ken Yoshida
Encelade ECL1703

Ken氏がAlpha、Aparteと並んでCDへの落とし込みまで全工程で関与していると思われる第三のレーベル、Encelade。音は抜群だが入手性は悪く、国内では限られたタイトルしか扱いが無いが、本盤は現在HMVなどで入手可能。早い者勝ち。

本盤は技巧的な管楽器と声楽の組み合わせよる17世紀イタリアの知られざる音楽を集成。パレストリーナ以外は名前すら聞いたことのない作曲家のオンパレード、全14曲。演奏はコルネット奏者アドリアン・マービルをリーダーとするラ・ギルド・デ・メルスネール。本盤が2枚目の録音。本盤は総勢6名が参加。女声、フルート、リコーダー、ボンバルディーノ、コルネット、バスーン、ヴァイオリン、オルガンなどを2名から5名の編成で曲ごとに組み合わせている。

本盤では、この手の小編成の古楽で多用されるポジティフ・オルガンを使用せず、敢えてルネサンス期のパイプオルガンで録音することにこだわったとリーダーのマービルは強調している。写真を見る限り、バロック期の物よりずっと小さく、ペダルは多いが鍵盤は一段でストップの種類も少ない質素なもの。そのパイプオルガンを弾くのは、Enceladeレーベルのエース格鍵盤奏者、ジャン・リュック・オー。まだ若手だと思うが、楷書体のストイックな演奏をする今時珍しいオルガニスト兼チェンバリスト。派手さはないが燻し銀の凄みがある好みのタイプ。

曲は総じて聴きやすいものが選ばれており、音楽史的堅苦しさとは無縁。6、8、9トラック目のパレストリーナと11、12トラック目のローレがヴォーカルやフルートの高域の突き抜け感、ルネサンスオルガンの素朴な音色、エコー感など素晴らしい。残響の長い教会だがエコーがスッキリして乱れない。丁寧なマイキングと編集、CDへのダウンコンバートが行われている。管楽器類、ヴォーカルなどの音像は小さく締まっており、背景にパイプオルガンが大き目の音像で定位。中域から高域が素直に伸びた中口径フルレンジに適した音。低音も量は多くないがかなり伸びているので、モアイなどで最も実力を発揮するソフトだと思う。

このDiskの「バックロー度」:★★★★★


モンテヴェルディ 聖母マリアの夕べの祈り
ラ・タンペート
シモン・ピエール・ベスティオン
2018年11月 Norte Dame du Liban, Paris
E: Ken Yoshida
Alpha552

KenYoshida とベスティオン&ラ・タンペートの3作目。
あまりの奇抜さに、「これ本当にモンテヴェルディの晩祷なの?」(最初の曲は作者不詳の「ファルソボルドーネによる聖歌」というものらしい)、「これ、もはやコンテンポラリーだよね」と言いたくなる一枚。私のような初心者はともかく、音楽史や宗教曲のベテランリスナーの方は一曲目で目を剥いてひっくり返ると思うので、聴かない方がいいかも。そのくらい、従来の「聖母マリアの夕べの祈り」の既成概念を破壊した怪演。

私自身は、この曲は一枚買って(シュナイト盤)、全く楽しむことも理解することも出来ず敗退した暗い過去(?)を持っているので、これまでの2枚の録音ですでにやりたい放題状態であったベスティオンがこのガチガチの宗教曲で何をするのだろうと逆に気になっていた。子供時代に聖歌隊でこの曲を歌いながら、ベスティオンは「晩祷というのは異教徒との神聖で親密なつながりを伴なう呪術的儀式」と認識していたという(スゲー子供もあったもんだ)。そのイマジネーションを形にしたらしく、確かにその言葉通りの演奏になっている。独特の楽器の選択、間奏曲風に繰り返し登場するファルソボルドーネ、ビザンチン歌謡的な歌唱法など、晩祷という儀式の事は横に置いておいて(というか、私には全然分かりませんが)、単純に音楽として楽しい。

歌手22名、合奏14名とそこそこ大きめの編成。ソロの歌手、ソロ楽器の数も多く、音としてそれらが混濁なく分離しているので、相当な数のマイクを使ったのだろうし、タイムアライメントも駆使したのだろう。マルチマイクの嫌なところは徹底的に抑えて、自然な分解感とエコーで破綻なくまとめるKen Yoshidaの手腕が発揮されている。ソロヴォーカルの自然な声はさすが。音場感も複雑なマルチマイクを感じさせず長いホールトーンが美しい。Fレンジは広く、Dレンジはさほど広くなく録音レベルは高め。トータルではなかなかの優秀録音。D58など大型BHに好適。

このDiskの「バックロー度」:★★★★


ダンドリュー&コレッリ ソナタ集
ジュスタン・テイラー(cemb. & organ)
ル・コンソート
2018年10月 Malandrerie Saint-Lazard, Beauvais, France
E: Ken Yoshida
Alpha 542

後期バロックの忘れられた作曲家の一人であるジャン・フランソワ・ダンドリュー の作品の魅力を、コレッリのソナタを撒きエサ(?)として織り交ぜながら紹介しようという企画。演奏は、もはやKen Yoshidaの弟分ではないか、と言いたくなるジュスタン・テイラー率いるル・コンソート。今回はバロックヴァイオリン2、ヴィオラ・ダ・ガンバとチェロ各1、チェンバロ又はオルガンの編成。

ダンドリューのソナタははじめて聴くものばかりだけれど、先輩の天才コレッリと並べても斬新さで引けを取らず面白い。ディスク中盤の作品1-5はコレッリ作と見まごうばかりの曲想の飛躍を伴うし、続く作品1-6にはバッハに至る道筋が見え隠れする。ル・コンソートの演奏は、若さハツラツという感じの勢いの良さと余裕不足の双方を感じる。

録音はDPAの楽器直付けマイクを多用したと思われる高解像度録音。ただ、この盤は録音レベルがかなり高く、中高域のエネルギーが強いので、高能率バックロードではハイ上がりでうるさく感じる。ソフトドームツーイーターなどを使ったピラミッドバランスの市販2wayの方が気持ち良く聴けるだろう。各楽器は超オンマイクだがホールトーンも豊かに入っており、Pylamixによる超絶編集の賜物か、破綻スレスレで調和させている感じ。弦楽器の音像は極小だが、楽器直付けマイクの成分が強いのでモノラル的定位で動かない。Ken Yoshidaサウンドの特徴は満載だが、彼にしてはやや未消化のサウンドという感じで多少ゴチャゴチャ感が残るのは否めない。

このDiskの「バックロー度」:★★★


Something between
Trio Zadig
バーンスタイン キャンディード序曲、ウェストサイド物語より
バンジャマン・アタイール Asfar
ラヴェル ピアノ三重奏曲
2018年8月 エリザベート音楽院ホール
E: Ken Yoshida
Fuga Libera FUG748

ジャケット写真を見る限り、3人とも濃い眉毛に髭面でイスラム系の血を引いているように見える若手ピアノトリオ。ヴァイオリンとチェロはフランス国籍でピアノがアメリカの混成部隊。本盤がデビュー盤。バーンスタインの編曲ものとラヴェルのトリオ、それにアタイールという作曲家の書き下ろしという組み合わせで、本当にSomething betweenが存在するのか、よく分からない組み合わせ。

最初のバーンスタイン2曲は、ジャズ的な演奏でノリはいいのだけれど、「ピアノトリオでやるとこうなります」という以上でも以下でもない気もする。デビュー盤としてのウォーミングアップの様なものか。面白いのは彼らのために書かれたアタイールという人の新作。この3人の現代曲に対する能力の高さがはっきりと出ている。ラヴェルのトリオも手の内に入った良い演奏。ただ、ラヴェルならではの色気には欠ける。

本盤はフーガ・リベラというOuthere系レーベル。同じOuthereなのだから、AparteやAlphaと似たような音だろうと思っていたら、さにあらず。いつものKen Yoshidaの音色とは全然違う。かといって、これまで指摘してきた製盤プロセスの違いでも無く、録り方が根本的に違っているようだ。高解像度なのはいつも通りだが、使っているマイクの一部にビンテージが入っているのか、高域の響きにいつものDPAマイクのリニアリティや情報量が無く、妙にスッキリしている。Yoshida録音としては、Dレンジ、fレンジ共にあまり広くない。情報量も並。マイク配置はオフマイクでワンポイント的な録り方。今回のような選曲ならむしろジャズ的なセッティングで録ってほしかった。エリザベート音楽院ホールの録音環境に制約が多いのかも知れない。

このDiskの「バックロー度」:★★


Souvenirs
チャイコフスキー 弦楽四重奏曲第1番、子供のアルバムより、弦楽六重奏曲
ロルストン弦楽四重奏団
ミゲル・デ・シルビア(va)、ゲイリー・ホフマン(vc)
2019年1月、6月 エリザベート音楽院ホール
E: Ken Yoshida
Fuga Libera FUG757

カナダ、トロントの若手カルテット、ロルストンQのデビュー盤。ヴァイオリン2名が女性、ヴィオラとチェロが男性。ジャケットとメンバー名を見る限り、第1ヴァイオリンは韓国系、ヴィオラとチェロは中国系の二世だろうか。全員20代に見える。さあ、若さ溢れる弾けた演奏を、と思ったら、このカルテットは叙情性が高く、よく歌う。デビューにオール・チャイコフスキー・プログラムを選んだのは、彼らの特徴を最もよく出す曲ということなのだろう。朗々と響く旋律の美しさにハッとする感覚は、このところ聴いてきたヨーロッパの若手カルテットとも一味違う。特に第1ヴァイオリンのLuri LeeとチェロのJonathan Loが素晴らしい。テクニックも抜群。速いパッセージでも縦の線は完璧に揃っており、音の重なりが潰れるところもなく4本の楽器が独自性を保ちながら綺麗にシンクロする。毛羽立ったキツい音が無く、とにかく音が綺麗で濡れた感じが良い。Luri Leeはトロントの音楽院出身だが、ジュリアード出身の東洋系の奏者が出す音と似ている。チャイコフスキー、ドヴォルザークなどはもちろんのこと、シューベルト、ブラームスも適性があると思う。是非、実演を聴きたい。

本録音も、アルファのヴァン・カイックQの音とは同じエンジニアの作とは思えないくらい違う。楽器個々にオンマイクで肉薄しジャズ的な編集で迫力を出した「Yosidaマジック」ともいえるヴァン・カイック盤に対し、こちらはオフマイクのワンポイント的収録でDレンジは広くないが音場感は自然という真逆のタイプ。Yoshida録音の特徴も無い代わりに癖もなく、至ってオーソドックスな音。チェロの低音は控えめでヴァイオリンは細身だがキツさはなく美しい。演奏内容とはあっていると思う。前掲のTrio Zadigと類似した録音手法だがこちらの方が結果は良い方に出ている。いずれにしても、Fuga LiberaではマイキングでのKen氏の関与は限られているのではなかろうか。スピーカーを選ばない録音ではあるが、細部が潰れやすいので解像感とトランジェント重視の機材で鳴らしたい。

このDiskの「バックロー度」:★★★

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  1. 知らない作品が半数です。それだけ数が増えているということなのかもしれません。 モンテベルディは以前お話を伺っただけで恐れをなして止まっています。
    Kenさんらしく無いものが散見されるとのこと、自分のスタイルを確立していながら、それを崩すことに躊躇しない柔軟性には感心します。同時に、そこからまた何かが生まれるのかもという期待もありますね。 それが、より自然で成熟した方向に行くのか、より技巧的な世界を拓くのか⁇ 聴いていないながらも、ご紹介文を読んで色々と考えてしまいました。

    byパグ太郎 at2020-01-25 21:54

  2. パグ太郎さん

    今回の5枚は、アルファとEnceladeの3枚の音は予想の範囲内で、Fuga Liberaの2枚だけが異質なんです。このレーベル、2004年にミシェル・ストッケムというプロデューサーがベルギーで立ち上げたマイナーレーベルだったそうで、本盤もベルギー録音ですが、ストッケムが勇退、一時ダウンロード販売のみとなり、2016年頃にouthere傘下になって本拠地もパリに移しているようです。現在の輸入元であるnaxosジャパンのHPを見ると、outhere傘下になってもベルギーのレーベルとしての独自性は保っている感じですし、録音についても「好きなようにやって」と丸投げするスタイルではないのかも。フリーのプロデューサーやエンジニアが、生き残りのためにレーベルの要請を受けて変幻自在に録音形態を変えているところを見ているのかも知れません。このレーベルの他のエンジニアの録音を聴くと答えが見えるかな、とちょっと検証作業をしたくなってきています。

    byOrisuke at2020-01-26 09:38

  3. Orisukeさん
    こんにちは

    たくさんのKen Yoshida作品のご紹介、ありがとうございます!

    ロルストン弦楽四重奏団のアルバムは先日少し聞いていましたが、確かにKen Yoshidaらしさを感じるかというと、それほどでもないという感想を私も持ちました。関与の度合いは絶対あるんでしょう。あるいはパグ太郎さんのおっしゃる試行錯誤をしているって部分もあるのかな。

    個人的な好みで言えば「モテッティと技巧的なカンツォーニ」、やはりよかったです!特にオルガンの音色は管楽器と混じり合って聞こえてくるとき、いい効果をあげている感じがしました。

    byゲオルグ at2020-01-26 15:06

  4. ゲオルグさん
    こんにちは

    Fuga Liberaの盤、私はこの2枚が初めてでレーベルの特徴が強いのか、広すぎるホールの影響なのか、それともYoshidaの新境地開拓なのか、なんとも判断が付きません。これまでは、不調だった盤でもマイキングや直接/間接音の比率は似ていたので、ハイレゾマスターまではよく出来ているはずなのに、CD落とし込み段階で音質が低下したと推測していました。ところが今回は、マイキング自体が全然違っている感じで、チェロの胴鳴りもヴァイオリンの強い直接音も入っていないんですよね。本気でワンポイントマイキングをやるならば、彼ならもっと録りようがあるでしょうし・・・。謎です。

    「モテッティと技巧的なカンツォーニ」は従来路線で良いですね。ホッとします。控えめながら存在感のあるオルガンの音がこの盤のチャームポイントかなと思っています。

    byOrisuke at2020-01-26 17:10

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