Orisuke
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バブル世代の趣味人です。 オーディオと写真、山登りは趣味の3本柱で30年くらい下手の横好きをやっています。

マイルーム

D58ESのニアフィールドリスニング?
D58ESのニアフィールドリスニング?
借家(戸建) / 専用室 / オーディオルーム / ~10畳 / 防音なし / スクリーン~100型 / ~4ch
単身赴任をいいことに、一軒家の貸家の一室を念願のオーディオルームにしました。しかも、「ど」のつく田舎なので音は出し放題。ただ、D-58にはちょっと狭いかな・・・・。巨大なヘッドホンの中にいるような、巨…
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日記

ブクステフーデと北ドイツ楽派の最近のディスク

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2020年06月11日

先日、NHKのクラシック倶楽部を録画したものをまとめて見ていたら、トン・コープマンがミューザ川崎でブクステフーデを弾いていました。前からブクステフーデは気になる作曲家だったのだけれど、この映像を見て、にわかに聴きたくなり、深夜にワンクリック攻撃が炸裂。二日後にお約束の段ボールを持った配達員が・・・。

ブクステフーデは、現在はバロック期の北ドイツ楽派の最も有名な作曲家として知られる人だが青年時代まではデンマークで過ごしていたので、デンマーク人も彼を自国の人と思っているという。伝統的にドイツ・デンマーク・オランダのレーベルで録音が多く、近年は日本の鍵盤奏者にも人気があるので国内盤もたくさん出ている。ブクステフーデを有名にしたのは他ならぬコープマンで、彼がChallenge Classics に録音したブクステフーデ全作品集(30CD+DVD)でその全貌が初めて明らかにされた。これは凄い業績で、それまでは一般のクラシックファンは見向きもしなかったように思う(ただ、この全集は高価でまだ買う勇気がない)。

北ドイツ楽派の音楽は、特にオルガン曲に顕著な個性が出る。足鍵盤による低音部の動きがバッハの曲に比べると複雑で忙しく、足が中心で音楽が出来上がっているのだ。ミューザ川崎でのコープマンのリサイタルでは、コープマンがブクステフーデの曲を弾く時に、両足、両手を同時にあまりに激しく動かすので、あたかもクレージーな老人がオルガンの前でブレイクダンスを踊っているが如き衝撃映像が赤裸々(?)に放送された。あんなに激しいとは・・・もはやスポーツの域だ。御歳75才のコープマンがこれを嬉々としてやるのだから恐れ入る。時代的にはほぼ同じでありながら、バッハとは異質のもう一つのドイツ音楽が存在していたわけで(バッハはブクステフーデの演奏を実際に聴いて参考にしていたらしいので繋がりはある)、コープマンはその面白さを再発見して生涯かけてのめり込んだのだろう。



MONUMENTUM
ブクステフーデ 前奏曲嬰へ短調
スウェーリンク 「緑の菩提樹の元で」
バッハ 前奏曲とフーガBWV552ほか
廣野嗣雄(org)
2018年5月 日本聖公会 聖パウロ教会(東京)
E: 小島幸雄
コジマ録音 ALM ALCD-1183

作曲だけではなく、オルガンの構造にも、スペイン式とか北ドイツ式というのがあるようで、スペイン式は水平方向のトランペット管というのが特徴(りゅーとぴあのグレンツィング・オルガンなど)、北ドイツ式は足鍵盤のストップの多さだろうか。本盤は北ドイツ様式のオルガンを日本で初めて自ら製作し、全国に80台を建造した稀代の日本人オルガンビルダー、辻宏(1933ー2005)がそのキャリアの初期1976年に祐天寺の聖パウロ教会に建造したものを弾いたもの。

演奏は廣野嗣雄氏(東京芸大名誉教授)。コープマンと同世代か。演奏は年齢を感じさせない豪快・勇壮なもので、とにかく立派。現在の若手ではなかなか出せなさそうなスケール感が素敵だ。廣野自身の解説によれば、辻宏は日本のオルガン製作者として傑出した存在であり、そのキャリアの中でも祐天寺のオルガンは記念碑的一台なのだと言う。

音は、コジマ録音のカチッとした輪郭とソリッドな倍音の出方が過去の録音との一貫性を感じさせる。音場の広さはほどほど(オルガン本体がさほど大きくない)。穏やかな曲が多いこともあり、Dレンジはオルガン録音としては控えめで機材を問わず鳴らしやすい。北ドイツ様式の足鍵盤多用は、この盤では思ったほどは表面には出てこない。

このDiskの「バックロー度」:★★★★



ERINNERUNG
ブクステフーデ トッカータニ短調
ディストラー シャコンヌ
バッハ 半音階的幻想曲とフーガ ほか
大木麻里(Org)
2016年9月 聖ヤコブ教会(リューベック)
E:ハンス・キプファー
NAXOS / Armadillo Record NYCC13002

現在のミューザ川崎専属オルガニストであり、第3回ブクステフーデ音楽コンクールの覇者、大木麻里による演奏。ブクステフーデとバッハの間に、ディストラーという人の1931年の現代曲を挟み込んだ今風のプログラム。若手トップレベルの奏者が聖ヤコブ教会の有名な2台の北ドイツ様式オルガンを曲に応じて使い分けていること(どの曲でどのオルガンを使ったかが書かれていないのが玉に瑕)、録音をBIS録音陣(Take5 music)のエース、ハンス・キプファーが担当している事など最先端のオルガン録音として大注目の一枚。

大木麻里はスマートかつ感性に富んだ演奏をする素晴らしい奏者だ。彼女は、バッハやブクステフーデを現在の音楽として解釈しているのだろう。オルガン曲で最もポピュラーなはずのバッハの幻想曲とフーガが、これまでとは違うメッセージを持った現代曲として、スピード感と強烈な説得力を持って立ち現れる。この曲で早弾きや弾き崩しをするオルガニストは沢山いるけれど、オリジナリティを履き違えているところを感じて個人的にはあまり好きではない。けれども、この演奏はバッハがコンテンポラリー・アートとして現代に再生しているのであって、全く次元が違う。グールドを初めて聴いた時の驚きに近い。ライナーノートの冒頭で日本オルガン界の大姐御、松居直美が激賞するのもむべなるかな。規格外の才能だ。コロナが明けたら実演を聴きに行かねば。

キプファーによる録音は、D・fレンジの広さ、音色の自然さ、低音のキレなどオーディオマニアとしてオルガンに求めるたくさんの要素を卓越したバランス感覚でバッチリ抑えており、「流石っ!」と唸る。この人の録音にはおよそ失敗作が無いのではないかと思えるほどで、ヒット率の高さはイチロー並だ。大型スピーカーにタップリとパワーを流し込んで聴きたい一枚。

このDiskの「バックロー度」:★★★★★



ブクステフーデ:オルガン作品集
ブクステフーデ: プレルーディウム ト短調 BuxWV 149
パッサカリア ニ短調 BuxWV 161
テ・デウム BuxWV 218 ほか21曲
松居直美(オルガン)
エルゼ・トルプ(ソプラノ)
2018年5月録音、ロスキレ大聖堂メイン・オルガン(デンマーク)
E:高島靖久
カメラータ・トウキョウ CMCD-15151

ブクステフーデはバッハほどではないにしろ多作な人で、オルガン曲だけでも全曲録音すればCD6枚以上になってしまうが、そこまで本気にならずに代表曲だけをまとめて聴きたいという私のような初心者にとって、大御所、松居直美の盤はCD2枚組で主要曲を網羅しているので非常にありがたい。エンジニアはカメラータの高島靖久。録音はショップスCMC52SUx2本のみ(歌手は別にマイク1本)という、超ストイックなワンポイント録音。A/DコンバーターはRME FirefaceUFXで24/192、録音と編集はピラミックス。これも、尖ったオルガン録音として大木/キプファー盤と共に聴き逃せない一枚だ。

選目は、5曲のプレルーディウム(前奏曲)、有名なパッサカリア、トッカータ、テ・デウムに加えて多数のオルガンコーラルが入った計22曲と充実。曲順も良く練られていて飽きさせない。ブクステフーデのプレルーディウムは、バッハの前奏曲とフーガなどと同等のスケールと奥深さを持った曲で、長いものは9分以上もあり、曲内にドラマチックな盛り上がりや叙情的な部分が散りばめられて非常に聞きごたえがある。松居の演奏は奇をてらわない正攻法で、比較的ゆったりしたテンポの中で、ストップを幾度も切り替えながら音色の小宇宙を作っていく。これは素晴らしい。対照的に、オルガンコーラルは元々の人声パートを編曲してオルガンに移し替えているので、主旋律は中音域が中心で柔らかな曲になっている。ソプラノが実際に入る曲が1枚目の真ん中に、ポツンとひとつだけあるが、これはほとんど足鍵盤だけで伴奏しているのではと思うほど低音の豊かな演奏で、原曲のコーラルのスタイルがどの様なものだったか直感的に分かるように構成されいる。

ロスキレ大聖堂メインオルガンは1555年建造の歴史的名器で、手鍵盤3段+足鍵盤、ストップ合計33個の大型バロックオルガン。建造後4世紀半の間に様々な補修や改造が行われてきたが、今でもパイプの半数は16世紀から17世紀製造のものらしい。北ドイツオルガンの肝である低音部は量が多いのに輪郭がボケず、芯がある充実した良い音だ。高音側の華やかさはスペインやフランスの楽器に分があるが、ブクステフーデやバッハのシリアスな大曲には最高のオルガンだと思う。

ワンポイント・ペアマイクのみでのオルガン収録は、相手が巨大なだけに現場でのマイキングが相当難しそうだが、音場の自然さ、高音から最低音までの音色のシームレスな繋がりに良さがあり、本盤でも教会らしさや臨場感がよく出ている。大木/キプファーの録音はマルチマイクの音がするが、大型のオルガンの場合、パイプの近くにマイクを複数持っていけるメリットやアンビエンス・マイクを好きなところに立てられる強みもあるので、Dレンジの広さや音の輪郭のシャープさ、ホールトーンの分離の良さなどはマルチマイクの圧勝だと思う。多くのオーディオマニアは聴き比べたらマルチの音を支持するのではないだろうか。本盤の様なペアマイクやマーキュリーの3本マイクによるワンポイント収録は、オルガンの音が教会の強い響きの中に溶けてしまうリスクが常にあり、エンジニアの腕がよほど良くないとマルチに伍する魅力を出せない様に思うけれど、その意味で本盤は見事。D58も良いけれど、モアやレアの様な大型の音場型バックロードで鳴らしてみたい一枚。

このDiskの「バックロー度」:★★★★★



ブクステフーデ ハープシコード作品集
ウラ・カペル(cemb)

1986年2月録音、オッドフェロー・パレス・ホール(コペンハーゲン)
Danacord DACOCD 852

これは、曲や演奏内容もさることながら、音に強い興味が湧いて購入した盤。ほぼ直感買い。

Danacord というレーベルは、1980年代からニールセンなど自国の音楽家の作品を中心に自社録音を始めたデンマークのレーベル。ブクステフーデは同レーベルで最重要クラスの作曲家でオルガンは全曲録音が有る(CD6枚分売)。80年代はアナログテープで録ってLPで出していたが、ほどなくCDにシフトして、結果、少なからぬ数のアナログマスターテープが30年ほど死蔵されることになったらしい。それを現代のマスタリング技術を駆使してリメイクしたのが、同社の‘From The LP Years’シリーズで、1950年以前の78rpmの歴史的音源数点も含めて今年は10点ほどが発売される。タワレコなどの購入ページにはCDーRの表示があるが、我が家では通常のCDとして問題なくかかるし、FLACファイルがCDに焼いてあるものではない。

チェンバロ録音は私も大好きな楽器なのでこれまでもたくさん紹介してきたけれども、私個人としては音質的にKenYoshidaとバルトロメイの師弟コンビのアルファ・アパルテ録音や、エラートの「名器の響」が打ち止めで、これらを超えるのは難しかろうと勝手に思っていたところもあった。そこに思わぬ伏兵が現れた感じ。この盤は元のアナログマスターが良かったのだろうし、デジタルマスター製作も相当な執念で行ったのだろう。高い解像度と柔らかい倍音の共存が理想的な形で達成されており、フェザータッチの軽い中高音が部屋中に放射されて非常に気持ち良い。音像は実物大でリアル。音場は広くデジタル臭は一切無し。この録音は、高能率・トランジェント優先で作ったネットワークレスの自作フルレンジスピーカーでこそ真価を発揮する。ボーナス・トラックのオルガン曲以外は低音の量はさほど多くないので、小口径から大口径まで幅広いユニットでそれぞれの良さが楽しめると思う。

なお、ボーナス・トラックには、パイプオルガンでマルティニやバッハの曲が別の奏者(ヤーノシュ・シェベシュチェーン)の演奏で入っているが、これはこれでオーディオ・チェックに使える非常に質の高い録音。DanacordのADD盤、侮れない。

このDiskの「バックロー度」:★★★★★

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