Orisuke
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バブル世代の趣味人です。 オーディオと写真、山登りは趣味の3本柱で30年くらい下手の横好きをやっています。

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D58ESのニアフィールドリスニング?
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借家(戸建) / 専用室 / オーディオルーム / ~10畳 / 防音なし / スクリーン~100型 / ~4ch
単身赴任をいいことに、一軒家の貸家の一室を念願のオーディオルームにしました。しかも、「ど」のつく田舎なので音は出し放題。ただ、D-58にはちょっと狭いかな・・・・。巨大なヘッドホンの中にいるような、巨…
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日記

Ken Yoshida録音を聴く【13】

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2020年07月16日

新潟では、チラホラとりゅーとぴあでのコンサートが行われるようになりました。野球の入場5000名と同じで、ガラガラのホールで人数限定ですが。先日、松田華音を聴いてきました。やっぱり、生音はありがたいモンです(しみじみ)。

で、気をよくして買ってみたのが、9月のイブラギモヴァ/東響(りゅーとぴあ)とクリストフ・ルセ(王子ホール)のチケット。しかし、ダブル中止だな、こりゃ。東響はすでに中止の連絡が来ました。ルセも、もれなく知らせが来るでしょう。仕方なく、手持ちのルセのアルバムをまとめ聴きです。

クリストフ・ルセは、オワゾリールやエラート、HMFなどで90年代初頭から活躍してきたチェンバリスト兼指揮者ですが、近年は、アパルテの看板アーティストとして以前にも増して活発な活動をしています。古楽第一世代の有名奏者たちがあらかた鬼籍に入ってしまったので、今ではニュー・リーダー格の一人。エキセントリックなところは少ないけれど、演奏の安定感は抜群で懐の深い曲の解釈をするので、この人の盤でガッカリする演奏にはまず当たらないという安心感があります。録音も全体的に出来が良いものが多く、演奏者自身が録音に関心を持っているタイプかも。アパルテではKenYoshidaと組んだ録音も数点出ていて、アルファからも指揮者として新譜が登場。色々な意味で見逃せない。


バルバトル
クラヴサン作品集第1巻
ヴァイオリン伴奏付きのクラヴサンのための作品(ソナタ第1番)
クリストフ・ルセ(cemb)
ジローヌ・ゴーベル=ジャック(vn)

2017年9月 シテ・ド・ラ・ミュージック(パリ)
E: Ken Yoshida、ニコラス・バルトロメイ
Aparte AP163

チェンバリストとしてのルセの最新盤。クロード=ベニーニュ・バルバトルはラモーのお弟子さんにあたり、デュフリやロワイエと同世代のフランスの鍵盤奏者兼作曲家。この盤を買うまでは全く知らなかった作曲家だが、18世紀中半にパリで非常に人気のあった人だという。クラヴサン作品集は1759年、ヘンデルの没年の出版。一聴して、「あ、確かにラモーの弟子と言われればその通りだわ」と感じる曲調。技巧的で華やか、情熱的なフレーズもあり飽きさせない手練れの曲作り。ルセのような腕の立つ人が弾くので滑らかに聴こえるが、弾く側にとっては相当な難曲なのではないか。チェンバロ界のパガニーニの様な人だったのかもしれない。

それにしても、ルセは上手い。鍵盤を端から端まで飛び回るような手の動きになっているはずだけれども、テンポ感は微動だにせず格調高く、更に曲の流れを見計らってエナジーを注入してくるので聞き飽きる事がない。ルセが本盤で使用した楽器はジャン=クロード・グジョン1749年以前製作のチェンバロ。ヒストリカル・チェンバロとしては成熟期に作られた一台であり、それ以前のフランスのチェンバロの華やかに飛び散るような音色は後退し、骨っぽいドイツ音楽でも対応出来るような厚みのある低音、重心の低さを持っている。最後に入っている、「ヴァイオリン伴奏付きのクラヴサンのための作品、ソナタ第1番」という本末転倒した様な名前の曲が面白い。最初は誤訳かと思ったが、聴いてみるとまさに題名の如し。

本盤はKenYoshidaと師匠バルトロメイの合作。Yoshidaがファーストの位置に来ているので、師匠は実質監修役かもしれない。低音の太いこのチェンバロはYoshida録音としてはソフトな音作りであり、録音会場の床のせいか低音の量は出ているが若干締まりに欠ける。高音の響きの歪みのなさは、さすがのYoshida録音だが、いつものようなハッとさせられるスリリングさは少ない。最後のソナタはマイクセッティングがだいぶ変わって、チェンバロ・ソロの時の中低音のふくらみが後退してスッキリした音になる。

このDiskの「バックロー度」★★★★


バッハ
平均律クラヴィーア曲集 第1巻、第2巻
クリストフ・ルセ(cemb)

2015年4月録音(第1巻)、2013年6月(第2巻)
ヴェルサイユ宮殿 王太子の居室(第1巻)、ドゥーファン宮(第2番)
P & E: ニコラス・バルトロメイ
Mixing & mastering: ニコラス・バルトロメイ、マキシミリアン・シウプ、エミリー・ルビー、イグナーツ・ハウヴィル
Aparte AP169

ヴェルサイユ宮殿所蔵の1628年製リュッカース・チェンバロによる演奏。ライナーノートに写真が出ているが、8本足でグランドピアノサイズの大型機。凝った装飾で非常に美しい古楽器の女王のような一台。音は華やかだが、力もある。ライナーノートには、幾度ものメカのモディファイを経て現在に至るが、現在は1706年当時のコンフィギュレーションに近い状態でレストアされている、とある。メンテナンスが行き届いているらしく、木製フレームの強度低下から来る低音の弛みは一切感じられない。

最近のルセは、中堅と言うよりも大家の域に達した感じで、ゆったりしたスケールで懐の非常に深い演奏をする。一音一音が緻密に計算され、無駄な装飾音も一切無いのだがテンポの動かし方が巧みで音の流れは良く、チェンバロの典雅な響きも手伝って堅苦しさを感じることは全く無い。これは、若手には出来ない円熟の技。見事と言うしかない。現代のスタンダードと言うべき名演。第1巻と第2巻は当初は分売だったが、一昨年にワンパッケージ版が出て買いやすくなった。

録音は、バルトロメイ率いるLittle Tribecaのメンバーが役割分担しながら録っているが、この盤ではKen Yoshidaは入っていない。第2巻が2013年、第1巻が2015年の録音。ヴェルサイユ宮殿内でも1巻と2巻で場所を変えている。同じ第1巻の中でも、微妙にサウンドが違うのが面白い。第1巻の後半の音が特に良く、音像は実物大。弦の一本一本が引っ掻かれるのが見えるような解像度で超リアル。第2巻は帯域バランスがやや低域寄りで音像が少しこじんまりするが、その分音のまとまりは良い。バルトロメイの録音としては第1巻はかなり攻めた音。この方向で更に攻めたのが今のKen Yoshidaサウンドだが、土台はやはりこの師匠が作ったのかと思わせる。第2巻は以前に紹介したブランディーヌ・ヴェルレのラストレコーディングと方向性が似ている。バルトロメイの自身の音の特徴が出ているのはこちらの方。

過渡特性命の高能率フルレンジ・バックロード御用達の鮮度抜群の録音。特にFE系の20cmユニットでは弦がブンと空気を震わせる感じが良く出るので、D55やD58ESを使われている方にぜひ試して欲しい録音。第1巻は中高音のエネルギーが特に強いので機材の準備運動が完了していないと悲惨な音になるが、ツボにハマると最高の響きがする。

このDiskの「バックロー度」★★★★★


バッハ
ゴルドベルク変奏曲
クリストフ・ルセ(cemb)
1991年9月
DG The All-Baroque Box
(原盤オワゾリールUCCD2022)

91年録音 デッカ/オワゾリール原盤。単売は現在廃盤。DG/アールヒーフのAll Baroque Box(50枚組)になぜか3枚だけ混入していたオワゾリール原盤のうちの一枚。このボックス、パッケージングは超手抜きだし(内部ジャケットは黒の厚紙の袋に文字が入っているだけ)、ユニバーサル帝国の商業的思惑が先行してDG/アールヒーフの「レーベルの矜持」はないがしろにされた選盤ではあるけれども、若き日のルセのゴルドベルクは意外な掘り出し物だった。音はシャープでダイナミック、音像は実物大で情報量大。オワゾリールのデジタルのチェンバロ・ソロ録音でもトップクラスだと思う。録音エンジニアは不明。

演奏は最近のルセの演奏より更にキレが良く、若々しい。とは言っても、テンポはグールドの遺作の方に近く、落ち着きはある。睡眠のための音楽にはならないが、丁度良い感じ。この際、廃番中のルセの90年代のバッハやラモーの演奏をまとめて復活させてもらいたい。AparteでバルトロメイとKen氏に円熟の演奏を全部再録してもらうというのももちろん希望したいけれど、この若かりし頃の溌剌とした演奏も捨てがたい。

このDiskの「バックロー度」★★★★★



ペルゴレージ: スターバート・マーテル
ニコラ・ポルポラ: サルベ・レジーナ
レオナルド・レーオ: ベアトゥス・ヴィル

クリストフ・ルセ(cond)
ル・タラン・リリーク
サンドリーヌ ・ピオー(soprano)
クリストファー・ローリー(countertenor)
2018年7月
P&E Laure Casenave, Vincent Mons
Alpha 449

ルセの指揮者としての最新盤が思いがけずアルファから出てきた。ペルゴレージ のスターバート・マーテルはルセにとっては再録になるが、オワゾリールの旧録(1995)は廃盤で聴いた事がない。本盤はゆとりのあるテンポ運びだが決して甘すぎず、非常に完成度が高い大人の音楽。テンポをゆったり取っても一定の音の締まりは維持されるピリオド演奏の特徴を逆手にとった感じで、この曲の特徴である耽美性と清楚な感じが両立している。定評のあるアバド盤が甘過ぎてピンとこなかった私にはこのバランス感がツボにはまった。それに本盤は何よりもピオーの透明感のある声が魅力的。カウンターテナーのローリーの声は、ソプラノと聞き違えるくらい女性的な声。ピオーとハモると女声の二重唱にしか聴こえない。併録のナポリ楽派2人の秘曲ではポルポラの曲がペルゴレージに引けを取らない美しさ。ここでのピオーも良い。最後のレーオの曲は、どことなくヴィヴァルディとの繋がりを感じさせる曲想で、明るく聴きやすい。

音質は、アルファとしては高域の鋭さが少なく、ニュートラルな音調で聴きやすい。ペルゴレージの音像定位はライナーノートの録音風景の写真の様子がそのまま再現されている。指揮台の左横にソロ用のお立ち台があって、センター寄りにピオー、左側にローリー、オケはソロの足元の低い位置に広がる。分解能は充分高く、音場は比較的広く高さもよく出ている。特に再生条件は選ばないタイプの録音だと思うが、質の良いフルレンジで鳴らすピオーの声の透明感には一度聴いたら戻れない魅力がある。

このDiskの「バックロー度」★★★★


リュリ
音楽悲劇「アルミード」

クリストフ・ルセ(cond)
ル・タラン・リリーク
マリー=アデリーヌ・アンリ(アルミード)
アントニオ・フィゲロア(ルノー)
ナミュール室内合奏団
2015年12月 ピエール・ブーレーズ大ホール(フィルハーモニー・ド・パリ)、ライヴ
E: Ken Yoshida、ニコラス・バルトロメイ
Aparte AP135

Ken Yoshidaとルセ、ル・タラン・リリークは、2014年にラモーの歌劇「ツァイス」、翌年にリュリの「アルミード」(本盤)と続けて歌劇を録音している。アルミードは、リュリがフィリップ・キノーの台本(タッソの叙事詩「解放されたエルサレム」による)に曲をつけたもので、キリスト教徒の十字軍騎士達を誘惑して骨抜きにする(実際には惚れてしまう)魔女アルミードと骨抜きにされる騎士ルノーを主人公とする、「禁断の色恋物」の元祖とも言えるもので、ゴダールが1987年に短編映画化している。「解放されたエルサレム」は他にも幾度もオペラやバレエの題材になってきた有名なものらしい。

古い作品なのであまり期待していなかったのだけれど、人によってはリュリの最高傑作というだけあって、この音楽は素晴らしい。特に、有名なパッサカリアを含む第五幕の音楽の力強さは感動的。この盤はルノーのフィゲロアの声が良い。アルミードのアンリは、画像があるとまた違う感想になるのだろうけれど、声だけだとパワフル過ぎて少しヒステリックにも聴こえる。

ライヴ録音との記載はあるが、耳障りな会場ノイズや咳払いは聴こえず、拍手もなし。ライヴ的な響きはあるものの音はセッションにかなり近い。演奏会形式の一発録りなのだろう。歌手の音像は大きめで動かないので、固定マイクの前での歌唱だろう。音場は横方向に広く、各パートの音像は明快。Ken Yoshida録音としてはやや音が粗めでソリッドだが、現場で聴いているようなリアルさがあり、ルセの本気ぶりが伝わってくる熱い音になっている。

このDiskの「バックロー度」★★★★

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レス一覧

  1. Orisukeさん、こんばんは。

    いつも音源紹介をありがとうございます。
    興味がわいたのが、Alphaのペルゴレージ: スターバート・マーテルとAparteのリュリ音楽悲劇「アルミード」でした。

    1、ペルゴレージ: スターバート・マーテルは、自分の中の決定盤として、チャンネルクラシックスの盤ですが、それを超えるかどうかと。。。今のところ買ってみるか悩み中です。

    2、リュリ音楽悲劇「アルミード」は、試聴してみてよい感じでしたが、大作の2時間27分を映像なしで聴ききれるか心配で悩み中です。

    軽く試聴した感じだと、演奏も音もよさげでお宝Discになりそうな気配が漂っているのですが、上に書いたことが気になりもう少し悩んでみます。多分ポチッとすると思いますが。。。

    byヒジヤン at2020-07-17 21:17

  2. ヒジヤンさん

    こんばんは

    スターバト・マーテルもアルミードも、味のある良いディスクだと思います。最近のルセの音楽には、熱さと同時にどこかホッとさせる落ち着きもあって、「なんか、良いもの聴いちゃったなー」という感じになることが多いです。これから、大家の域に入っていくんでしょうね。

    アルミード、私は終幕のヘビーローテーションです(汗)。

    byOrisuke at2020-07-17 22:15

  3. Orisukeさん
    おはようございます!

    音源紹介の日記が少なくて寂しい感じでしたので、今回の日記は嬉しかったです!

    ひととおりですが、配信で聞いてきました。スターバト・マーテルがいちばん心に残りました。ピオーとローリーの声の平仄が合っているのでしょうか、けっこう盛り上がって聞けました。旧録と思われるものも聞いてきましたが、バーバラ・ボニーとアンドレアス・ショルのマッチングがもうひとつの感がありました。お互いの個性が活きていない感じ。。。今回の再録の意図がなんとなく推し量れたように思います。

    >フランスのチェンバロの華やかに飛び散るような音色は後退し、骨っぽいドイツ音楽でも対応出来るような厚みのある低音、重心の低さを持っている

    ルセのチェンバロも、おっしゃる通りだな~と思いました。派手な感じがするロンドーなんかと比べると、安定感がある音だと感じました。

    byゲオルグ at2020-07-18 08:05

  4. ゲオルグさん

    こんにちは

    スターバト・マーテル、良い演奏ですよね。旧盤はまだ聴けていないのですが、マッチングに難ありだったのですね。新版は全体の質感に細かく目配せがされた繊細な演奏に聞こえましたし、ルセ自身が還暦近くになって、目指す方向が明確になってきたが故の再録なのだと思いました。個人的には決定盤クラスの名演だと思います。

    チェンバロの方は、エスハファニ、ロンドー、テイラーあたりの勢い丸出しの演奏も大変魅力的で大好きですが、彼らのお父さん世代のルセの演奏は一線画した「大人っ!」と言いたくなる滋味がありますね。私も同世代なので、応援してしまいます。

    byOrisuke at2020-07-18 14:58

  5. Orisukeさん、やはりポチりました。

    今日は時間が出来たので、1、ペルゴレージ: スターバート・マーテルと2、リュリ音楽悲劇「アルミード」をじっくり聴きました。両盤ともよかったです。

    1、ペルゴレージ: スターバート・マーテルは自分の中の決定盤であるチャンネルクラシックのフロリレジウム盤を深みのある演奏とすると、ルセ&ル・タラン・リリーク盤は繊細な演奏と感じました。音質もよくて、自分の中で両方が決定盤となりました。

    2、リュリ音楽悲劇「アルミード」は、全曲聴きましたが心配していた通りに途中でウトウトと(笑)ですが、激情の終幕だけでも充分楽しめますね。何を言っているのかまったくわかりませんが、男女の機微を感じます。音質もとてもよかったです。

    よいDiscを紹介していただきありがとうございました。

    byヒジヤン at2020-08-02 20:26

  6. ヒジヤンさん

    2枚とも気に入って頂けて良かったです!
    ルセの演奏の繊細さと安定感、これからも期待できそうですね。
    マイナーな曲にもしっかりと光を当ててくれるのも嬉しいところです。

    byOrisuke at2020-08-02 21:23

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