Orisuke
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バブル世代の趣味人です。 オーディオと写真、山登りは趣味の3本柱で30年くらい下手の横好きをやっています。

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D58ESのニアフィールドリスニング?
D58ESのニアフィールドリスニング?
借家(戸建) / 専用室 / オーディオルーム / ~10畳 / 防音なし / スクリーン~100型 / ~4ch
単身赴任をいいことに、一軒家の貸家の一室を念願のオーディオルームにしました。しかも、「ど」のつく田舎なので音は出し放題。ただ、D-58にはちょっと狭いかな・・・・。巨大なヘッドホンの中にいるような、巨…
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日記

コマンド・クラシックの35mm磁気フィルム録音

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2020年12月20日

ステレオ録音初期にEverestからMercuryへと受け継がれ「Living Presence」シリーズの録音に使われオーディオマニアを感嘆せしめた35mmフィルム録音機。マーキュリーの看板ともなった録音機材ですが、実はこの録音機で録られたマーキュリー録音の件数はさほど多くありません。多くの人が35mmフィルムのサウンドと思っている同社の優秀録音の大半は、私の日記で以前に取り上げたように、1/2インチ3トラックレコーダーによる物で、35mmフィルム録音はEverestの撤退でマーキュリーに転がり込んだ傍系の技術とも言えるものでした(http://community.phileweb.com/mypage/entry/4063/20150421/47098/)。

マーキュリーの録音データを付き合わせると、35mm録音機は1960年頃にマーキュリーのエンジニアのロバート・ファインがEverestから取得してミネアポリスで使用したあとロンドンに送られてドラティ/LSOの録音に集中的に使用され、1962年初頭にはロンドンとモスクワ(!)で使用されたあと同年4月頃にアメリカに里帰りしたようです。自動車一台分のサイズのトレーラー型録音セットが大西洋を往復して最後に送られた先はCommand Classicsという会社でした。

1962年以降は、ウィリアム・スタインバーグ指揮ピッツバーグ交響楽団の演奏がこの35mm録音機で録られていきますが、Command社ものちにMCAに吸収され、現在その大部分はCD化されないまま廃盤となっています。海賊版で出たいわゆる「板起こし」やCD初期にMCAが出した正規版CDの多くもマーキュリーに比肩できる音ではなかったようです。私も、話は聞いていたけれどもCommandの実物は持って居らず、35mm録音のミッシング・リンクになっていました。これを、あのDGがオリジナルマスターから復刻したというニュースは、マーキュリー録音中毒者の私としては、数年前のEverestのSACD復刻同様衝撃的でした。当然、即予約。



ベートーヴェン交響曲全集
ウィリアム・スタインバーグ(cond)
ピッツバーグ交響楽団

1962年4月ー1966年4月録音
ソルジャーズ&セイラーズ・メモリアル・ホール(ピッツバーグ)
E: Robert Fine

5枚組のスリムなボックスセットで、一枚ごとに紙ジャケに入っている(オリジナルADジャケではなくユニバーサル系お得意の金太郎飴タイプ)。書き下ろしの解説文も載っていて、コスパは良い。

Commandの録音エンジニアは、マーキュリーのロバート・ファインがそのまま担当(たぶん委託製作)。なので、どこにも書いていないけれども、Schopsの3本マイクが使われただろうと予想できるし、オリジナルマスターはマーキュリー同等のサウンドになっていただろう。DGによるリマスターは慎重に行われたようで、35mm録音復刻盤で聴かれる音のふらつきやテープヒスが巧妙に補正され、高域の伸びや定位の安定感は見事。ガラスのように高い透明度と分解感、Dレンジはマーキュリー復刻盤と遜色ないレベル。このアナログマスターは、保存状態も良かったのかも知れない。

マーキュリーの35mmも1/2inchテープに比べると中高域が強い傾向があるが、本録音でもFレンジ自体は充分広いものの低域は締め上げられ、中高域成分が前に出てくる。その中高音は現代基準でお化粧直しした感もあり、35mm録音機特有の問答無用のエネルギー感や浸透力はやや後退している。このあたりは、マスタリング・エンジニアの感性の問題だと思うけれど、「アメリカの音」ではなくて現代基準の「DGの音」に寄せた感じ。音の力や勢いを最大限重視し野性味たっぷりのウィルマ・コザート&ロバート・ファイン夫妻の開放的な音作りとはやはり思想が違い、相対的に綺麗に整っている様に聞こえるところが個人的には気になる。ただ、録音オタク的先入観や変な思い入れを持たなければ、充分に楽しめるレベルの音であることも確か。

演奏は、トスカニーニを師と仰ぎNBC響の副指揮者も務めたことがあるスタインバーグだけに直球勝負で、2・4・7・8というリズムが重視される曲が特に素晴らしく、聴き応えあり。トスカニーニからデモーニッシュさを引き算した感じかもしれない。スタインバーグはヒトラーに人生を翻弄され亡命したユダヤ系ドイツ人の一人で、イスラエルPOの創始者でもあるが、演奏傾向としては、独墺系というより名オーケストラトレーナーを多数輩出したハンガリー系の人達に近い演奏に聞こえる。オケも当時のドラティ/ミネアポリス響と互角で弦の切れが気持ち良い。ブラームスなどもユニバーサルの倉庫からマスターテープが見つかるなら続編で出して欲しい。

このDiskの「バックロー度」★★★★

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