Orisuke
Orisuke
バブル世代の趣味人です。 オーディオと写真、山登りは趣味の3本柱で30年くらい下手の横好きをやっています。

マイルーム

D58ESのニアフィールドリスニング?
D58ESのニアフィールドリスニング?
借家(戸建) / 専用室 / オーディオルーム / ~10畳 / 防音なし / スクリーン~100型 / ~4ch
単身赴任をいいことに、一軒家の貸家の一室を念願のオーディオルームにしました。しかも、「ど」のつく田舎なので音は出し放題。ただ、D-58にはちょっと狭いかな・・・・。巨大なヘッドホンの中にいるような、巨…
所有製品

カレンダー

    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    

お気に入り製品

お気にいられユーザー

日記

最近の新譜から

このエントリーをはてなブックマークに追加
2020年12月21日

このところ、日本海側は毎日吹雪で、我が家もうっすらと雪のカーテンが乗るようになってきました。こうなるとS/Nがグンと良くなって、本格的なオーディオシーズンの到来です。この週末は、溜まった仕事をぶん投げて(汗)、久しぶりにじっくり聴く時間を取りました。その中から、良かったものを4枚ほど。



ブランクロシェ氏への捧げ物
ルイ・クープラン、フローベルガー、ゴーティエ、デュフォー作品集

ピエール・ガロン(Cemb.)
2019年1月録音 国立LE studio(パリ)
E: Philippe Vaidie & Mireille Faure
Encelade ECL1901

本盤はKen Yoshida関連で幾度も取り上げてきたEnceladeレーベルの最新作。題名になっている「ブランクロシェ氏」は17世紀の名リュート(シタール)奏者、ブロンクロシェ(Charles Fleury de Blancrocher 1605-1652)のこと。17世紀中頃のパリ、彼の周りにはフローベルガーやクープランなど多くの音楽家が集い、活発な音楽コミュニティが出来ていた。ところが、このブランクロシェ氏は王宮でのディナーの後で自宅の階段から転落して、駆けつけたフローベルガーの腕の中で息を引き取ってしまう。ブランクロシェの死後、フローベルガーをはじめ、仲間のリュートやチェンバロの奏者達が「ブランクロシェ氏へのトンボー(追悼曲)」を作曲した。本盤はそれらトンボーを4曲を中核に据えて、最後にブランクロシェ自身のリュート曲も加えた計25曲。当時のパリの音楽サロンを彷彿とさせる濃密な選曲になっている。

ブックレットの表紙をめくると、「ブランディーヌ・ヴェルレに」とあり、本盤が一昨年末に亡くなったヴェルレへの追悼盤で、ブロンクシェ氏へのトンボーを用いてヴェルレを追悼していることが分かる。奏者のピエール・ガロンは、晩年のヴェルレと親交(最後の愛弟子か?)のあった人とのことで、Enceladeに数枚の録音がある。ストレートな演奏スタイルにヴェルレの面影を若干感じることが出来る。

本盤はEnceladeレーベルだがKen氏は関係しておらず、チェンバロの音も同じレーベルとは思えぬほど違う。高音から最低音まで一糸乱れぬフラットでシャープなサウンド。リアリズムの権化のような音で、甘美さには乏しいが演奏のその場に居るような生々しさと力強さが凄い。ライナーノートに付けられた録音現場の写真にマイク配置が写っている。マイクはペアマイクが高さを変えて2組、計4本とシンプル。定番のDPA4006とノイマンU87だろうか。チェンバロ横1.5mくらいの位置に、同一平面上に並ぶようにセットされている。前回の日記で紹介した、同じEnceladeレーベルのKen Yoshida録音(http://community.phileweb.com/mypage/entry/4063/20201013/66205/)のマイキングとは異なるセッティングで、しかしこちらも非常に説得力のある音だ。この音は、実はヴェルレの70年代Philips録音と共通項が多く、ヴェルレに対する音でのトリビュートではないか(http://community.phileweb.com/mypage/entry/4063/20191124/63948/)とも思われる。

もはや、Ken Yoshida録音で頂点に達した感のあったチェンバロ録音に、同じレーベルから異なった手法で新たな可能性が提示されてくるところに、現代フランスの録音業界の奥深さを見る思いがする。

このDiskの「バックロー度」:★★★★★



スコルダトゥーラの技法
ビーバーからタルティーニまでのヴァイオリン作品集

ビーバー:ソナタ第6番
フィルスマイヤー:ヴァイオリン・パルティータ第5番
ロナーティ:ヴァイオリン・ソナタ第1番
カストルッチ:ソナタ第12番
タルティーニ:パストラーレ  ほか 

平崎真弓(vn)
ロレンツォ・ギエルミ(cemb)
クリストフ・ウルバネツ(ヴィオラ・ダ・ガンバ)
ミヒャエル・フライムート(リュート、テオルボ、バロック・ギター)
2019年11月録音 ドイツ放送カンマームジークザール(ケルン)
E: Christoph Rieseberg
passacaille 1080

現在、コンチェルト・ケルンのコンミスを務める平崎真弓さんが、17-18世紀に流行したヴァイオリンの変則調弦法であるスコルダトゥーラのために書かれた様々なヴァイオリン曲を、普段からデュオを組むギエルミらとまとめて録音した興味深い一枚。カメレオンの写ったクラシックらしからぬジャケット写真は、調弦法次第でくるくると音が変わるスコルダトゥーラの比喩になっている。

スコルダトゥーラで弾かれたCDはこれまで何枚も買っているけれど、私には寺神戸亮が約30年前にDENONに録音したビーバーのヴァイオリンソナタ集(COCO-78946)が特別な一枚。私が初めて買ったスコルダトゥーラの盤だったのだけれども、これが曲・演奏・音質の三拍子揃った名盤中の名盤で、寺神戸の凄さに度肝を抜かれ、それまで見向きもしなかったバロックヴァイオリンに嵌まるきっかけになった。なので、平崎さんの新譜の曲目にビーバーのソナタ第6番が入っているのを見つけて、条件反射で購入。ビーバー以外の曲はすべて聴いたことがない。ビーバーやタルティーニはエキセントリックな人だから、スコルダトゥーラの採用はさもありなんだけれど、こんなに普遍的で色々な人が作っているとは知らなかった。

冒頭のビーバーのソナタ6番で平崎さんの弾き方が寺神戸の豪快なスタイルと真逆の端正なものであるのが分かる(コンサートの宣伝インタビューとかを見るとチャーミングな人です)。まるで別の曲に聞こえる。楷書体で一点もおろそかにしない完璧なテクニック、音の線は細めで、細字で書いた美しい書道の文字を見ている感じになる。これはこれで凄い個性だ。ロナーティのソナタでは、ヴァイオリンとバロック・ギターの掛け合いが入るが、これが格好いい。タルティーニのパストラーレは聴き応えのある名曲で、この盤の白眉。「こんなバグパイプみたいな音がヴァイオリンから出るの?」という驚きは、スコルダトゥーラの使い手の面目躍如たるところだろう。

録音の感じも平崎さんの演奏の特徴に合わせた感じで、録音レベルは低めに取り、楽器の音像は細身で明快、音の品位が高い。放送スタジオ録音らしくアンビエンスは楽器の音とは綺麗に分離していて位相の暴れも全く感じない。passacailleはドイツ放送のレーベルだと思うけれど(本盤はエンジニアもドイツ放送所属)、放送録音にありがちなリミッター使用を回避するように配慮して丁寧に作り込んだ良質の音源であることが分かる。小口径フルレンジSPには特にお薦めの音。

このDiskの「バックロー度」:★★★★★



Bells
アンソニー・ロマニウク
2019年4月 アカデミー・ワン・スタジオ(ベルギー、ヘント)
E: Peter Laenger
ALPHA631

「コパチン様のお仲間」の鍵盤奏者、ロマニウクのソロ・デビューアルバム。
当然、まっとうなクラシック・アルバムになるはずもなく、本人もyoutubeで「ひとりの作曲家の作品を並べたスタンダートなクラシック・アルバムとは別の物にしたかった」と言っている。ロマニウクはオーストラリア出身で、もともとクラシック、ジャズ、ロック、ヒップホップに分け隔てなく親しんできた人らしく、結果、「Bells」と題されたこのアルバムは鍵盤奏者の可能性の限りを尽くした「鍵盤多様性アルバム」とも言えるものになった。

技術の多様性・音の多様性として、チェンバロ、フォルテピアノ、ピアノ(ファツィオリ F228)、フェンダー・ローズ(!!!)の4種類の鍵盤楽器をスタジオにずらり並べ、曲と演奏者のイマジネーションによって次々と取り替えて弾く。曲の方もラモー、バッハ、モーツァルト、ベートーヴェン、バルトーク、ショスタコ、ドビュッシー、モンポウ、バード、チック・コリアと支離滅裂。もちろん、弾く側は何らかのイマジネーションの元に選んでいるのだろうけれど、聴く側には良く分からない。

こうなると、音の見本市のようなもので、もはや理屈づけは無用。聴いて愉しくなるかどうかの一点でお金を払う価値が有ったかどうかが決まるという、原理主義的な楽しみ方に回帰する。で、どうだったかというと、面白かった。個人的には「大いに、あり」。特にバルトークをフォルテピアノで弾いたものと、イギリス組曲をフェンダー・ローズで弾いたものにグッときた。先頃コパチン様の新譜を買って、共感できず撃沈(涙)していたところなので、これは嬉しかった。

フェンダー・ローズは叩かれた音叉の振動を電磁誘導でピックアップする、エレキギター同様の仕組みの原始的な電子鍵盤で、80年代のシンセ普及によって完全絶滅したかに思われたが10年ほど前に復活したという。この古典的な音は、今となってみればアナログ的な聞こえ方をするので(実際原理的にはアナログですね)、バッハに使っても意外にしっくりくる。音は、楽器毎にマイキングが違うので一概には言えないのだけれど、ファツィオリの音はDレンジがさほど広くなく、チェンバロもKen Yoshidaの明快さにはいま一歩届かず。本盤はフォルテピアノとフェンダー・ローズの音が気持ち良いと思う。

このDiskの「バックロー度」★★★〜★★★★



フーガの技法(ベルリン自筆譜版)

アルベルト・ラージ&アッカデミア・ストゥルメンターレ・イタリアーナ
2019年9月録音
ナザレス教会(ヴェローナ)

E: Filippo Lanteri (Audio Classica)
Challenge Classics CC72842

バッハの代表作のひとつでありながら、楽器指定もなく謎多き作品であり続けるフーガの技法。出版稿とは異なる「ベルリン自筆譜」(Mus. ms. Bach P 200)というのが残されていて、本盤はこれを演奏したもの。選曲にいつも一癖あるChallenge Classicsらしい企画。「この自筆譜を詳細に検討すると、バッハの好きな「数字遊び」がさらにたくさん浮き出てきて面白いのだ」、という主旨の長ーい論文のようなのがライナーノートになっている、らしいのだけれど、私には難しすぎて敢えなく挫折。1300円高いけど、日本語訳つきにすれば良かったかなぁ・・・(涙)。

まあ、音楽の中身にはさほど関係あるまい(素人の開き直り)と聴いてみると、一聴して猛烈に高い音のクオリティに驚く。現代録音の精密さとイタリアの楽団の甘美で柔らかな弦の響きが奇跡的に組み合わさったような官能的美音。この曲は説明臭い演奏にあたると私には睡眠音楽になってしまうが、本盤は甘美な響きに身を任せているうちに、あっと言う間に聞き終えてしまう。弦の音に加えて、通奏低音にソロにと縦横無尽に活躍するポシティフオルガンの低域がまた素晴らしい。隠れ家のような小料理屋でとんでもなく美味しい料理に遭遇したときのように、自然と自分がニヤついているのが分かる。これはやばい。

アッカデミア・ストゥルメンターレ・イタリアーナ(イタリア器楽アカデミー)は、本盤ではヴァイオリンx1、ヴィオールx3(トレブル・テノール・バス各1)、ヴィオローネx1、オルガンx1の6人編制。中堅からベテランの奏者の集まりで、実力者集団なのだろう(音楽学校の講師陣?)。近年の「ピリオド系薄味バッハ」と正面対決するかのような悠揚迫らぬ有機的かつロマンチックな演奏で、それでいて古さはみじんも感じさせないのが素晴らしい。

Filippo Lanteriは初めて聴くエンジニアだが、マイキング とミキシングが非常に上手く、特に音色と音場感の表現に長けていると感じた。本盤では残響長めの教会(宣伝用動画で見るとさほど広くなさそう)の響きが素晴らしく、響きの中に各楽器の定位が溶けてしまわないのも見事。アメリカともドイツともフランスとも違う「イタリアの音」の堂々たる主張がある。Dレンジはほどほど。Fレンジは広いが、使われている楽器の性質上、中低音域が特に分厚い。再生するスピーカーは選ばないタイプの録音だ。

Audio Classicaは、Filippo Lanteriの個人経営の会社らしく、SONY、DG、Naxos、Challange Classics、CPO、Grossaなど名だたるメーカーの録音を引き受けた実績があるという(http://www.audioclassica.com/en/)。マイクはDPA、ショップス、ノイマンなど多様。ワークステーションはピラミックス、モニターSPはB&W800DとディナのBM6Aと標準的。このエンジニアには今後注目してみたい。

このDiskの「バックロー度」:★★★★★

次回の日記→

←前回の日記

レス一覧

  1. Orisukeさん、こんばんは。

    いつもながらに、よい音源の紹介をありがとうございます。
    今回の紹介Discの中にはピンと来る楽曲はなかったのですが、最後のChallenge Classicsレーベルに興味がわきました。調べてみると、以前に小編成のマタイ受難曲を買って、よかったレーベルです。

    ですので、各種アルバムをストリーミングで聴いていました。お試しでMozart: Piano QuartetsのSACDを注文しました。

    このレーベルは、マルチチャンネルのSACDも多数出しているんですね。ユーザー評価のコメントにもサラウンドが素晴らしいとのコメントが多数出て来ましたので、マルチ再生ユーザーには吉報なのではと思います。

    byヒジヤン at2020-12-21 22:52

  2. ヒジヤンさん
    こんばんは

    Challenge Classics、サラウンド再生したことはないのですが、私も音の良いレーベルだなぁと買うたびに感心しています。ステレオの段階ですでに音のたたずまいが良いと思います。

    録音・マスタリングからジャケット・ブックレットのデザインに至るまで一枚一枚に心血を注いで作っていることや、ブランドとしての統一性を大事にしていることが分かる、今どき珍しい良心的なレーベルですね。普通のCDでも充実した響きがします。

    以前に、こんなのも紹介させていただきました。
    http://community.phileweb.com/mypage/entry/4063/20160410/50892/
    ストリーミングで引っかかるようでしたら是非お試し下さい。

    byOrisuke at2020-12-21 23:40

レスを書く

レスを書くにはログインする必要があります
ログインする