黒川鍵司
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日記

過ギニシソノ薔薇ハタダ名ノミ、虚シキソノ名ゾ今ニ残レル

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2009年12月18日

 ウンベルト・エーコ著「薔薇の名前」は、まさに彼の碩学ぶりを知らしめる作品でした。


 中世の陰鬱な修道院で起こる連続殺人。それを解決するのはフリードリヒ美王の特使として派遣された修道士、バスカヴィルのウィリアム。この作品は言うまでもなく推理小説として読むこともできますが、信仰への純粋さゆえに犯される殺人というプロットに、日本人であれば、あのオウム事件を、アメリカ人であれば9・11を思い浮かべることが可能でしょう。清貧とはなんなのか、キリスト教と笑いとはなんなのか、そしてエーコの専門である記号論といったものも見え隠れします。各所にちりばめられた符丁にも、気がつけばにやりとさせられることしきりです。私自身、盲目のホルヘ師がホルヘ・ルイス・ボルヘスだと気がついたときは、それこそ飛び上がらんばかりにうれしかったのもです(余談ですが、ボルヘス失明の原因はブエノスアイレス大学図書館所蔵の「ネクロノミコン」閲覧だという噂が......)。

 ジャン=ジャック・アノー監督による映画化では、ウィリアムをショーン・コネリーが演じました。


 冒頭、初めて訪れた修道院の重要な場所を観察力と推理力で特定する場面、そして、現場検証で彼が発した「elementary」という言葉。これだけで、彼が何者なのかは明らかでしょう。その元ネタと同じく、この「薔薇の名前」は探偵本人ではなく、その助手が記述した手記となっています。この小説でのワトソン君の名はアドソ。メルク男爵の末子で、見聞を広めよという父にしたがってウィリアムの弟子となっています。映画では若き日のクリスチャン・スレーターが演じました。


 彼が手記として残してくれたおかげで、この「薔薇の名前」を我々は手にすることができました。もし、メルクのアドソがいなければ、ウィリアムの活躍に、純粋すぎることの恐ろしさに、名前、そして記号というものと実在との関係に思いを馳せることもできなかったわけです。

 そして、私のところにもメルクの一員が。といっても、こちらはMelkでなくて、Mørchですが。


 このメルクは、私に何を伝えてくれるのでしょうね。 

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  1. またしても1番レス失礼します(笑)

    「薔薇の名前」と来ましたか。
    何年前か忘れましたが強烈な印象があります。
    1回観た時は殆ど理解できず、2回目で少し理解できましたが(2回ともTV放映で)、ウンベルト・エーコの伝えたいことはきっと1割も理解できていないんだろうなぁ。
    ただ、おどろおどろしい中世の修道院の生活や修行の様子に驚き、キリスト教なのにアリストテレスの哲学とかがテーマになって「?」となったり、ラストの「笑い」を蔑む長老に戦慄した記憶があります。この長老がホルヘだったのでしょうね。

    もう一人のホルヘ・ルイス・ボルヘスなる人物は全く知らなかったのですが、盲目でボルヘスと聞いて思い出したドラマがありました。黒川さんは観られているかどうか…
    1990年にNHKで「ニューウェィブドラマ」と言う実験的なドラマ作品をいくつか放映した際に第1作として「エデンの街」と言う作品が上映されました。
    その中の登場人物で天本英世演じるボルヘス老人と言うやはり盲目で街の長老と言うか生き字引的な老人がいました。主人公の女の子に音楽を失った世界が昔は音楽に満ち溢れていた…というようなメッセージを伝えて息絶える役だったのですが、今回の日記を読んでボルヘス老人=ホルヘ・ルイス・ボルヘス=ホルヘだったのかも知れないと思い当たりました。

    それにしても黒川さん、博識ですね!
    「薔薇の名前」もう1回観て、小説も読んでみたくなりました。

    byFCA at2009-12-19 00:29

  2. おはようございます、黒川さん。

    これの原作の論評ですばらしいとおもうのは松岡正剛さんの記事かなとおもいます。茶目っ気たっぷりな構造で読者をひっかける著者、その背景と手口が短い文章でよくまとめられていて、原作の衒学的な構造にノックアウトされがちな読者に明快な全体仕様を手渡しています。記事を読んだあとに読みなおしてまた唸る、そんな作品だったと思います。

    こういうランダムアクセス可能な紙ならではの利点を生かした小説相手では、シーケンシャルアクセスに縛られざるをえない映画は完敗だなとおもいます(笑)。

    Blu-ray化されればBD Javaでなんとか…しないよな(笑)。

    bysiro at2009-12-19 07:43

  3. >FCAさん
     今回導入したアナログプレイヤーのアームのメーカー名と、この作品の登場人物の名前の表記が(日本語では)同じなので思いついた内容だったのですが、多少なりともお楽しみいただけたでしょうか?
     小説は多少読みづらいのですが、映画はきちんとエンターテイメントしていますね。どの役者さんも良いのですが、ロン・パールマンの怪演は「本当にこういう人を連れてきたんじゃないか?」と思わされるほどでした。DVDであれば比較的容易に手に入ると思いますので、ご覧になってはいかがでしょう?

     そして、天本英世さんがボルヘスとは! 確かに天本英世さんといえば、ロルカ、そしてスペイン。ボルヘスは名前でわかるとおり、ラテン世界の作家でアルゼンチン生まれですが、スペインに住んでいたこともありました。そういう意味でも天本英世さんは適役であったといえるのかもしれませんね。
     天本英世さんといえば、wikiにも書かれていますが、街中で「あ! 死神博士」と言われたのに対し、「左様」と答えて、何処ともなく去っていったというエピソードが大好きです。


    >siroさん
     小説も、映画もその世界に入り込むことさえ出来れば、それほど難解さを感じさせずに、するっと読めて、観れてしまうのですよね。その意味ではピンク・フロイドの「狂気」にも似ている気がします。よくよく確認していけば、凄まじいことが行われているのに、気がつかなければ、普通にさらりの通り過ぎてしまうという......。本当の化け物というのは、来るぞ! 来るぞ! と脅かしながら近づいてくるものではなく、気がつけば傍らに立っているものだという気がします。
     衒学的ということであれば同じ作者の「フーコーの振り子」の方が、その傾向が強かったように思います。といっても「黒死館殺人事件」ほど無茶は感じませんでしたが(笑)。

     そして、本のランダムアクセス性。確かに他のメディアに比べても高いですね。雑誌なら特定のページから読むなんてことは日常茶飯事だし、ドゥルーズ、ガタリの「アンチ・オイディプス」や「ミル・プラトー」はそれを念頭に書かれているし......おっと、いけない。「本の本」たる「薔薇の名前」の呪縛がここにも現れてしまったようです......。

    by黒川鍵司 at2009-12-19 09:43

  4.  傍らに在る化け物もそうですが、サム・ライミの近作のように、気づいてみれば実は自分が化け物であったという展開もなかなか怖いところです。何気ない日常の行動の「狂気」に気がつかずに加担(行動)すれば責められず、気がついていながら加担(行動)すれば責められる。不条理のようですが、化け物の定義、現れ方はホラー映画の愉しみのひとつですね。

     黒川さんとレスを交わすような知識は私にはなく、下世話な発想しかできないのですが、「フーコーの振り子」は「薔薇の名前」でイケたので柳の下にドジョウがという奴ではないかとおもいます。より衒学的な傾向というご指摘も読者サービスの一つでしょう。同じ形式である「ダビンチ・コード」のほうがウケたのはご愛嬌か。

     「黒死館殺人事件」とは懐かしいというか、30年くらい前に読んだっきりです。どんな内容だったかもう覚えていないのですが、衒学的だったかなァ…すいません。昨今では京極夏彦ものが近い形式なのでしょうかね?あれも妖怪が現れるわけですが(笑)。

     以下、精神分析の領域の話は手においかねまする(笑)。
     また、肝心のアナログレコードプレーヤーネタには知識皆無ゆえ反応できず失礼いたしました。

    bysiro at2009-12-19 16:15

  5.  自分が化け物だったというので浮かぶのはラブクラフトの「アウトサイダー」と「インスマスの影」でしょうか。双方とも彼自身の容貌嫌悪があっての作品だとは思いますが、思春期には前者に漂うセンチメンタリズムにやられたものでした。

     確かにそうだと思います。<二匹目のドジョウ
     エーコ本人が望んだものか、出版社望んだものかわかりませんが、「薔薇の名前」の成功がなければかかれなかったでしょうね。作品の中に出版というものへの皮肉が込められている点からすると、後者が望んだもの言うことかもしれませんね。たしかにペダンティックではあるのですが、知識の確かさと、それを作品に生かす手法(特に生命の樹を章立て、文章の形態にまで反映させている)には舌を巻かざるを得ませんでした。一般受けするには、やり過ぎというところなのでしょうね。

     黒死館というよりも、小栗虫太郎の作品は、道具立てが先にあって、筋書きが書かれている気がします。ちょうど、特定の殺人シーンが撮りたいばかりに作品をでっち上げるアルジェントと似たような破綻ぶりを感じる次第です。

     と、こんなことを書いていてはいけませんね。でも、この記事自体、日本語でのつづりが同じということにかこつけて、本題よりも、前置きが長いというペダントリー。こういう帰結も当然のことかもしれません。

    by黒川鍵司 at2009-12-19 22:54

  6.  はい、これになりました。SYSTEM AMAZON 2(iはつきません)になります。ただちょっとだけ違っているのはベルトが付属のゴムではなくて、リファレンス用の糸になっています。

     GT-2000とくらべると、やはり、ベルトドライブ故なのでしょうが、滑らかですね。楽器でいえば、フレットレスになったような変化といいますか......。

     メルクのアームとGLIDERとの組み合わせでは、お互い軽量であるが故なのか、拾えるものが多くなったようで、今までよりも音数が増えました。見た目からは減ると思っていた低域の力感が、むしろ若干増えたのは予想外の嬉しい結果でした。

    by黒川鍵司 at2009-12-20 13:03

  7. 文末まで辿って 何が起こっていたのかは理解しました が
    アナログプレーヤについては皆目分からず デス

    ご自身で「ペダントリー」と仰っては 反則ですョ~(^^;
    何か 手品の種明かしをしてください マセ^^;

    byそねさん at2009-12-20 17:10

  8. >ログさん
     静けさ、その通りです。GT-2000でも十分静かに思えていたのですが、AMAZON2を聴いてみると、確かにベルトドライブ型の利点を感じます。
     AMAZON2標準のゴムベルトは糸のようなゴムなのですが、汚れが目立ちまして、新しい糸も注文したら上位機種の糸(細いテグスすみたいな感じ)を用意してくれたという次第です。普通のLP12や、ザクシーズに使われるようなベルトだと、家具用のジョンソンワックスで磨くとスリップがなくなっていいと聞いたことがありますが、どうなのでしょうね。


    >そねさん
     種明かしも何もないのですよ。もうすでに書いていますが、今回、導入したAMAZON2にはメルク(Mørch)のUP-4(http://www.moerch.dk/UP4.htm)というアームがついていて、私の中でメルクというと、メルク(Melk)のアドソでして、そんな駄洒落みたいな連想から書いた記事です。この貧相な想像力を、どうぞ、哀れんでやってください。

    by黒川鍵司 at2009-12-20 18:34

  9. 以前書いたとおり、もう1回観て(3回目)、読み(2回目)ました。
    少し理解は深まったと思っていますが、まだわからないことばかりです。
    今回、小説と比べると、映画は相当に端折っていることが分かりました。
    小説を読まないとEcoの意図は分からないでしょう。
    では小説だけを読めば良いか?…となると、それも違うような。
    よっぽど前提知識がある人以外は映画も観ないと情景や雰囲気など理解不能でしょうね。
    理想は映画〜小説〜映画〜小説…を繰り返すことか。
    暫くしたらまた挑戦しましょう。

    byFCA at2016-04-30 00:13

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