パグ太郎
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クラシック中心に聴いています。オーディオは手段と考えてはいるものの、気がつくと手段の魔力に取り付かれてしまうことも多く、日々修行をしております。

マイルーム

パグ太郎の部屋
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持ち家(戸建) / リビング兼用 / その他 / 16畳~ / 防音あり / スクリーンなし / ~2ch
Phileweb登録後1年、気が付くとスピーカー導入していました(2018/6)。所有製品はHRS130ですが、製品DBに登録がないので、一番近いもので代替しています。 10数年愛用したアン…
所有製品
  • スピーカーシステム
    GERMAN PHYSIKS HRS120 Carbon
  • プリメインアンプ
    OCTAVE V110SE
  • ハードラック
    QUADRASPIRE QAVM
  • RCA/BNCオーディオケーブル
    KIMBER KABLE KS-1020
  • 電源ケーブル

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オフェリアとExiles、あるいは世界の行く末への不安について

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2017年12月12日

先月の日記に、東欧の民俗音楽、ユダヤ人居住区の音楽、ロマの音楽が世界中に広がっているということ、その系列の音楽と聴いた感じでそっくりな日本のチンドン屋のテーマ曲は関係があるのか?、あるとしたらどうやってつながったのか?という空想譚を書きました。その中で、チェコ出身のユダヤ系音楽家がアメリカ移住して作曲したミュージカルの中の一曲が、太平洋を渡り、日本の有名な映画の主題曲になっているというネタを仕込んだのですが、ひと月経過しましたので種明かしです。答えは、『蒲田行進曲』です。この誰でも知っている、「銀幕の映画小屋への呼び込みメロディ」というのがぴったりなメロディは日本の音楽ではなく、チェコ系ユダヤ移民 ルドルフ・フリムルの『Song of the Vagabonds』という人の作品なのです。
<1956年のVagabond Kingと1982年の蒲田行進曲>

このことを今回、初めて知り、どこで何がどうつながるのか予想もできない現代において、文化の伝播・混交を追いかけるのは本当に難しいことだと痛感しました。(もしかすると有名な話なのかもしれませんが)

という様な遊びをしていた所、こういうCDに出会いました。Exiles、つまり亡命者・追放者・流浪の民をテーマにした、オフェリー・ガイヤールの今年の夏にリリースされた新盤です。彼女のレパートリーは、バッハの無伴奏ソナタから、シューマン・ブラームスというロマン派、そしてフォーレ作品集へという王道の部分がある一方で、イベリア半島・中南米の民俗性・舞踏性の強い楽曲のアンソロジーや、ボッケリーニのイベリア半島色満載の舞踏作品集などにも広がっていました。そして、今回は、後者の路線を更に進めて、ユダヤ系亡命・移民音楽家の作品や、そのベースにある東欧ユダヤ音楽である「クレズマー」をテーマにした作品となっています。

これまでの彼女の作品で正統派のレパートリーも良かったのですが、そうでない路線においても、彼女のチェロのロマンティックで艶かしい側面が、民俗的舞踏音楽の猥雑さや、したたかな明るさとマッチしていて好きでした。その方向を突き詰めており、協演者として、パリのクレズマー楽団、シルバ オクテットを選ぶという意気込みですし、彼女の演奏も、「ロマンティックで艶かしく、したたかな明るさ」では括りきれない次元に突入している印象を持ちました。

一曲目、ブロッホ(スイス生まれのユダヤ系作曲家で、母国と米国の間を行ったり来たりしていましたが、ナチスの台頭の中、最終的に米国に移住して1959年に亡くなっています)の、ヘブライ狂詩曲「ソロモン」。タイトルからして自己の民族的アイデンティティを宣言しているような曲から始まります。序奏のチェロのソロからして重く暗い響きで、これまでのガイヤールの印象とは異なりますが、自分の人生を苦い思いで振り返るソロモン王の心の声をチェロが謳うという設定にはしっかりと応えています。

2、3曲目はコルンゴルド(オーストリア生まれのユダヤ人でナチに追われて1938年に米国に亡命、ハリウッド映画音楽で成功)のチェロ協奏曲と、代表作『死の都』からの1曲。そして4曲目プロコフィエフ(ユダヤ系ではありませんが、ロシア革命後、一時期米国に亡命していた)が、亡命ロシア系ユダヤ人の音楽仲間から素材を提供されて作曲した『ヘブライの主題による序曲』と続きます。まるで、前にNHKでやっていた『映像の世紀』のワン・シーンのような背景を持つ曲ばかりですね。あのコマが飛んで動きのぎこちない、傷の多いモノクロフィルムの映像にのせるとぴったりと思うのは先入観が強すぎるせいかもしれません。

後半は、クレズマー楽団との協演で、より土着性の強い楽曲が続きます。ブロッホの『ユダヤ人の生活』から3曲、そしてユダヤの婚礼ダンス(伝承曲)、子守唄などで、『映像の世紀』というよりも、より日常の庶民の生活を髣髴とさせる選曲になっています。

全編を通じて感じることは、Exilesたちの望郷の念と、自己の生活・文化に対する強い信念(そこにアイデンティティを投影するしかない状況にある民族にとっては必然なのかもしれませんが)です。ガイヤールのバックグラウンドは解りませんが、これまでの正統的クラシック音楽とも、娯楽性を根底に維持していたアンソロジー作品という、これまでの彼女の演奏のどちらとも異なる、切実さを感じます。もしかすると、近年更に深刻さを増している、欧州の難民問題と対立構造の先鋭化という時代の動きが、影が落としているのではないかと心配になったりします。歴史のひずみを真っ先に敏感に感じ取る「炭鉱のカナリア」が、何かの予兆を歌に託しているのではないことを願うばかりです。

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  1. こんばんは

    ガイヤールのチェロはとても好きで、こちらでレビューまで書いたぐらいです。。。バロック以外のものがけっこう私にはフィットします。ボッケリーニのアルバムも好きです。しかし最新作はCDを買いそびれてました(spotifyでは聞いていたのですが。。。)

    1曲目のダークで重くて、でも美しい佇まいの演奏というのが、当時の自分にフィットしなかったからかな~。今聞きなおしてみるといいですね。汗。。。このアルバムのハイライトといってもいいんじゃないでしょうか。アルバムの後半は『アウボラーダ』のムードがあって、けっこういつものロマンティックモードで聞けたのですが。。。これを機会にしっかり聞いてみます。

    この人は、けっこう「弾けちゃう」人なんだとも私は思っているのですが、勘がいい人のようにも思うので、パグ太郎さんがおっしゃるような懸念も理解できるような気がいたしました。1曲目の「切実さ」は、単なる「炭鉱のカナリヤ」ではないのかもしれないと思わせるものがありますものね。。。このかたのエルサレムの法律の成立が上院で全員一致だったというのは私も驚きましたので。。。

    byゲオルグ at2017-12-13 19:29

  2. ゲオルグさん 今晩は、レス有難うございます。

    ガイヤールのAlvoradaについての貴レビュー拝見しました。同感で、Alvoradaの路線も彼女に凄く合っていると思いました。でもバッハも良いし、ボッケリーニも良い。少しづつ表情・表現が変って、「勘が良い」というのは言いえて妙ですね。

    byパグ太郎 at2017-12-13 21:37

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