パグ太郎
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クラシック中心に聴いています。オーディオは手段と考えてはいるものの、気がつくと手段の魔力に取り付かれてしまうことも多く、日々修行をしております。

マイルーム

パグ太郎の部屋
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持ち家(戸建) / リビング兼用 / その他 / 16畳~ / 防音あり / スクリーンなし / ~2ch
Phileweb登録後1年、気が付くとスピーカー導入していました(2018/6)。所有製品はHRS130ですが、製品DBに登録がないので、一番近いもので代替しています。 10数年愛用したアン…
所有製品
  • スピーカーシステム
    GERMAN PHYSIKS HRS120 Carbon
  • プリメインアンプ
    OCTAVE V110SE
  • ハードラック
    QUADRASPIRE QAVM
  • RCA/BNCオーディオケーブル
    KIMBER KABLE KS-1020
  • 電源ケーブル

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日記

S.キューブリックの迷路に誘い込まれて知る、シューベルトのピアノ・トリオの多彩な魅力について

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2018年04月04日

シューベルトの室内楽曲の人気のある作品というと、ピアノ五重奏の「鱒」、弦楽四重奏の「死と乙女」「ロザムンデ」等、何故か標題がついているものが多いです。人気があるから「あだ名」が付いて、それが標題になるのか、逆に標題が付いていると親しみやすいので人気が出るのか?なんてことを考えたりします。

でも、今日のテーマは、あだ名が付くまでの人気もない、『ピアノ三重奏曲第2番 変ホ長調 作品100、D.292』です。そう、こう書いただけで、小難しい印象ですね。では、こうしましょう。

映画監督 スタンリー・キューブリックの『2001年宇宙の旅』。その冒頭シーンで『ツァラツーストラ』や『美しき青きドナウ』を、あの度肝を抜くような使い方をしたことで有名でもあります。
(帝王もDGも完全にキューブリックのイメージを利用したマーケティングですね)
そのキューブリック監督の傑作『バリー・リンドン』で、主人公が美貌の人妻を籠絡するシーンで使われた曲、それも、音楽だけで若者が人妻を見初め、誘惑し、物にする危うい関係を表現しきっていると言われる使われ方をした、その隠れた名曲が今日のテーマです。


映画で使われたのは、この作品の第二楽章。ピアノの刻む、ゆっくりとしたリズムに乗って歌い出される、チェロの情緒的旋律、この導入部分を聴いただけで、あの映像が目に浮かびます。が、そもそもこの曲は、病に犯されたシューベルトが亡くなる前年の、『冬の旅』や最後の三大ピアノソナタと同時期に作曲され、暗い死の影を感じさせる陰鬱さと、どこか天国的な明るさの共存するシューベルトの美質が凝縮されている音楽なのです。これを、あのシーンに持ってくるキューブリックの感性は何なんでしょう? 驚かされると同時に、一度、映像と音楽を合わせて体験してしまうと、それ以外の組み合わせが考えられなくなってしまうのは、『2001年』の「原人とR.シュトラウス」、「宇宙船とウィンナ・ワルツ」と同じです。

さて、この曲、ピアノ・トリオにとっては重要なレパートリーであるらしく、名演奏の録音が沢山あります。で、今回、改めて、バリー・リンドンに似合う演奏はどれだったのか、この二楽章を聴き直して見ました(流石に全部自前という訳にも行かず、AppleMusicのサポートを受けつつです)。

昔から良く聴いているのは、アシュケナージ(ピアノ:P)、ハレル(チェロ:Vc)、ズッカーマン(ヴァイオリン:Vn)のこれです(1997年録音)。

まるで歌曲を聴いているよう。三人が夫々に表情豊かに、嘆き悲しむ。ピアノが刻み、さらに絃に渡されていくリズムは歩くというより、彷徨うように揺らいでいます。死の予感に震える作曲家の心情を率直に表現しているとも思えます。

それが普通の姿と思っていたら、ちょっと違うようです。ルービンシュタイン(P)、フルニエ(Vc)、シェリング(Vn)という大御所三人(1974年)を聴いて驚きました。
堂々として大柄な演奏です。哀しみに沈んでよろめき歩くアシュケナージ版とは正反対で、威厳を示しつつ、静々と進みます。そのしっかりとした歩みに乗って歌われるのは、嘆きというよりも支配者の孤独な内なる声のようです。

昔の巨匠はやはり偉いものだと思っていましたが、大きく遡ってオイストラフ(Vn)、クヌシェヴィツキー(Vc)、オボーリン(P)の録音が、これまた対照的(1947年)。
このゆっくりとしたリズムでは、歩みを止めているようです。そして、どこまでも静かな歌いぶり、歌うというより語り合うようです。嘆くこともせず、威圧することもなく、噛み締めるように思いを親しく語り合うその姿は、この曲の別の姿を示しています。

こうなると、他の演奏も気になりだしました。村上春樹が『ダンス・ダンス・ダンス』で小道具にした、スターン(Vn)、イストミン(P)、ローズ(Vc)(1969年)はどうでしょう。
これまた違って、嘆きも、威圧も、立ち止まることもなく、颯爽としてスマート。シューベルトの哀愁を大袈裟に表現することが重荷になると感じて回避している、その力の抜き方は村上の当時の作風に通じるものを感じます。

こういう変化球があるなら、コラール(P)、デュメイ(Vn)、ロデオン(Vc)だと、どうなるのかと聴いてみました(1986年)。
]やはり、フランス人です。声高に嘆いたり、肩に力がはいるような野暮なことはしません。肩の力の抜けた所はスターン版とは共通ですが、柔らかく歌うロマンティックな姿は、スターン版の颯爽とした切れ味とは対照的。

このフランス人の伝統を受け継いだ最近の録音とえいば、ブラレイ(P)、カピュソン兄弟(Vn・Vc)の録音(2006年)でしょうか。
やはり、柔らかく美しい響きと、決して声高に語ることはせず、心に染みいるように優しく語り合いながら、手を取り合って歩むカップルの姿を思い浮かべてしまいます。

最近の録音で感心したのは、ヘッカー(Vc)、ヴァイトハース(Vn)、ヘルムヒェン(P)という若手のこの録音(2014-17)。
3人とも初めて聴くのですが、最近ヒットの多いαレコードからのリリースでしたので手を出してみました。これまでのどれとも違います。山奥の渓流を眺めているような清涼感のある演奏といいたくなるような、不思議な感覚に囚われます。その流れは静かに落ち着いていますが、手を触れれば痺れるような冷たさがあることを感じます。

これ以外にも、「カザルス、コルトー、ティボー」「ゼルキン、A.ブッシュ、H.ブッシュ」「スコダ・フルニエ・ヤニグロ」「ボザール・トリオ」などなど、顔ぶれを見るだけでも個性的ですが、これくらいにしておきましょう。

1950年代から今日までの各年代のどの演奏を聴いても、どれも極めて個性的。それでも何故か説得力があります。どんな形で演奏しても飲み込んでしまう、これがシューベルトの不思議な魅力であり、一方で、捉えどころのなさなのかもしれません。さて、お題である「バリー・リンドンに似合う演奏はどれだったのか?」ですが、流石、キューブリックは一筋縄ではいきません。実は、映画に合わせた編曲版を使っていたという情報に、最後の最後になってたどり着きました。出口の無い迷路の探索(そういえば、この迷路というものも、これまた、キューブリックの名作ホラー映画『シャイニング』に登場する重要な舞台でしたね)というわけです。

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  1. こんばんわ~♪
    呼ばれたような気がしたので出てきました~(笑)

    シューベルトのピアノトリオ2番はイイですね!!!
    パグ太郎さんとは曲の好みが近いかな~と思う反面、好みの演奏が違って面白いです。

    私的には、、、

    ボザールトリオ(PHILIPS 412620)が一押しです。
    次点がアリオントリオ(BIS-CD-521/524)

    、、、といったところです。

    でもね、、、

    実は2番より1番が好きです(爆)

    1番はぶっちぎりで、、、

    レンブラントトリオ(DOR-90130)です。

    映画は詳しくないので分かりません、ごめんなさいm(_ _;)m

    byspcjpnorg at2018-04-04 22:06

  2. パグ太郎さん

    キューブリック映画は好きです。

    「バリー・リンドン」はなかでもその映像美ということでは彼の最良の作品ではないかと思っています。

    シューベルトのピアノトリオは、私もアシュケナージ/ハレル/ズッカーマン盤を溺愛しています。

    この映画でもうひとつ忘れられない音楽は、ヘンデルのチェンバロ組曲第1巻第4番ニ短調からのサラバンドです。

    レディー・リンドンとの間に生まれた子供ブライアンをバリーは溺愛するのですが死んでしまいます。その葬儀のシーンで使われた曲。映画では確か弦楽オーケストラに編曲されていたと思いますが、原曲はハープシコードの曲。私は、ソフィー・イエイツによる「ヘンデル・ハープシコード作品集」(シャンドス)で愛聴しています。

    byベルウッド at2018-04-05 01:12

  3. jpcjoorgさん

    こんにちは。

    はい、お呼びしましたよ(笑)。呼びかけにお答え頂きありがとうございます!

    私も、曲の好みは近いかなと感じていました。演奏の好みの差というより、追いかけているアーティスト、或いはレーベルがちょっと違っている印象で(何故か、私はBISを拾いそこなっていることが多い)、紹介頂いた録音にびっくりすることがしばしば。

    今回もアリオン、レンブラントともに未聴です。(後者は何とdorianレーベル) これから楽しみで、情報有難うございます。

    1番は2番以上にドラマテッィクで、良い曲ですね。今回、2番を取上げたのはキューブリックに話をよせたというだけで、両方、よく聴きます。

    byパグ太郎 at2018-04-05 13:01

  4. ベルウッドさん

    レス有難うございます。

    キューブリックでのご反応頂き、嬉しいです。

    ヘンデルのサラバンドも印象深い使われ方をしていましたが、この曲、多分、グールドのハープシコードでしか持っていなかった様な気がします。(一度、ピアノ版と書きましたが、これがグールド唯一のハープシコード録音だったのを思い出しました。訂正です)

    byパグ太郎 at2018-04-05 15:52

  5. パグ太郎さん

    おはようございます。
    シューベルトのピアノトリオは私も聞き比べをしたことがあります。
    おっしゃるように、多様な魅力があって、どれもなかなかに個性的ですよね。
    聞き比べるきっかけになったのは、ディリュカ・エルベン・マガデュールの演奏を某所で見たことでした。ここでもディリュカのピアノが全体をよくひっぱっていて、いい演奏だな~と思い、他のトリオも聞いてみたかったからなのですが、結果的にディリュカ・トリオへの偏愛の度合いが上がってしまいました。。。汗。
    2番の第2楽章のみCDで聞けるようなので、昨日注文したところです。Les Salons de Musiqueで検索されると、ほんの一部だけですが試聴もできます。

    byゲオルグ at2018-04-07 08:31

  6. ゲオルグさん

    今晩は。レス有難うございます。

    ディリュカ・エルベン・マガデュールは知りませんでした。ゲオルグさんのディリュカ愛は流石ですね。情報有難うございます。

    Les Salons de Musiqueでもう一つ気になったのが、彼女とEbeneの協演です。

    byパグ太郎 at2018-04-07 23:38

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