パグ太郎
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クラシック中心に聴いています。オーディオは手段と考えてはいるものの、気がつくと手段の魔力に取り付かれてしまうことも多く、日々修行をしております。

マイルーム

パグ太郎の部屋
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持ち家(戸建) / リビング兼用 / その他 / 16畳~ / 防音あり / スクリーンなし / ~2ch
10数年愛用したアンプが逝ってしまったので、久々の機器更新をしました。
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  • 電源ケーブル
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日記

ディリュカのシューベルト、磨き上げられた人工美で世界の広がりを覗き見る

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2018年05月08日

今日のテーマは、ゲオルグさん一押しの(?)ピアニスト、シャニ ディリュカのシューベルト作品集です。実はこのCD、今年の1月にネットで発注して直ぐに届いていたはずなのに、広くもない部屋のどこかにまぎれて紛失(というか、届いていたことも失念)していたのです。先月、シューベルトのピアノ トリオについての日記を書いたところ、ゲオルグさんから、ディリュカの演奏についてレスを頂き、そいうえば・・・・・と探し始めて、やっと見つけ出しました。


前半のワルツやドイツ舞曲などが10数曲の小品の美しさから、心を奪われてしまいました。副題の『星々にまつわる断章』という言葉の通り、一つひとつは、2分にも満たない本当に短い断片ですが、静かに優しく煌きながら宇宙の広がりを物語っているようです。

親しみやすく身近な小さなものが、無限の広がりを感じさせる、この不思議な感覚の秘密を、ブックレットの中で、ディリュカは次の詩を引用することで、明らかにしています。

一粒の砂にも世界を
一輪の野の花にも天国を見、
君の掌のうちに無限を
一時(ひととき)のうちに永遠を握る。
      (W.ブレーク、『無垢の予兆』 松島正一訳)


社交の集いでの実用的なダンスの曲といわれるこ小品を、一粒の砂・一輪の野の花になぞらえ、その親しみやすい旋律とリズムを、極限まで磨き上げることにより、広大で永遠の世界を連想させることもできる、そのことをディリュカは示しているのです。これには本当に驚きました。

ワルツや舞曲としては、あまりにゆったりと、メリハリを落としたテンポ。シューベルトならではの甘美なメロディーが、一音一音を確かめながら、磨き上げ、滑るように連ねられていきます。そして連なりのために選び取られたような、どこまでも柔らかく暖かいピアノの音色。素材の質感・手触り感を残した、どこか素朴な風合いのある通常のシューベルト演奏とは対極的な、極めて人工的な美しさです。ただ、そこから見えてくるメランコリックな深淵は、それはまたシューベルトそのものなのです。不思議です。

そして、この美しい断章を再構築することで、シューベルトが究極的にどこまで広大な世界を描くに至ったのか、それを示すために、ディリュカがプログラムの後半に選んだのが、作曲者がその死の直前に残した最後のピアノ・ソナタ第21番なのです。やはり、前半の小品集と同じく、ひたすら美しく、静かに輝きながら、無限の広がりを感じさせる演奏になっています。こちらは実時間で40分を超える長大で、下手な弾き方では全体の構成を見失ってしまいがちな作品です。それを、詩句の通り、一粒の砂・一輪の野の花を積み上げていくような繊細さで組み立てているのです。言葉がありません。

シューベルトの最後の3つのピアノ・ソナタは、様々な感情移入の仕方があり、激情型の絵の具を叩きつけるような演奏も多くあります。その中にあって、どこまでも甘美で、究極まで磨き上げられた肌触り、それによって描き出される穏やかで、内省的で、気品さえ感じさせるこの表現は、やはり独特のものです。それは、演奏家の独自のフィルターを通じて見られた、ある意味、極めて人工的な世界と言えるのかもしれません。

ジャケットやブックレットに使われているポートレート写真は、画像処理の結果、筆跡を消し去った陶質の古典絵画のような非現実的な仕上がりになっています。そして、ポートレートの中に描きこまれた時代の古色を感じさせる品々も、今回使われているピアノの柔らかく弾むような響きも、全てが一つの強い意図を持って選び抜かれたもののように思えます。
(今回使われた、ベヒシュタインD.282)

この素晴らしい作品を、手に入れたまま眠らしてしまうところだったとは、全くお恥ずかしい限りです。思い出す切っ掛けを頂いた(というより、この奏者そのものを教えていただいた)ゲオルグさんに、この場をお借りして、改めて感謝申し上げます。そして、コメントいただいた、シューベルトのピアノ三重奏曲を演じるディリュカをどうしても聴きたくなってしまいました。

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  1. こんばんは

    このアルバムはずいぶん前に日記でもご紹介したのですが、ブックレットにまったく目を通しておりませんでした。。。

    >親しみやすく身近な小さなものが、無限の広がりを感じさせる、この不思議な感覚の秘密

    「貝殻に耳をあてて聞こえてくる音が広大な海鳴りのように聞こえる」というような比喩も使われていましたね。まさにそんな印象のアルバムなんだな~とあらためて感嘆しております。コンセプトが音としてよく結実してるんだな~、すごいな~と。。。そう考えてみると、あんまりクリアな録音もどうかと思いましたし、この音の感じがコンセプト的にはジャストなんだな~と。

    またエルベンがあんな長文のライナーノーツを書いていたことも初めて知りました。。。「大正デモクラシー」っぽい時代のウィーンに生まれ育ち、音楽やダンスを愉しむブルジョアが増えていき、そのなかでシューベルトがその流れを謳歌するようにどんどん作曲(即興)をしていったというような話から説き始め、音楽の構造の分析(もうひとつ私は理解できておりませんが。。。)を通じて、ウィーン古典派でいたかったけれど、そこからはみだしてロマン派になっていかざるを得なかったシューベルトの音楽の特徴を解説しているのかな。。。という感じがいたしました。

    エルベンとディリュカが共演のレコーディング先にウィーンを選んだのには、このような伏線があったのかも。。。と夢想してしまいました。

    とにかくこういうレビューを書いて下さる方がいて、なんだかとても感激しております。ありがとうございました!

    byゲオルグ at2018-05-09 21:30

  2. ゲオルグさん

    レス有難うございます。

    私もブックレットは滅多に読まないし、アルバムのタイトルなんて殆ど気にしないのです。どういうわけか、今回は副題の意味が気になって(輸入元の訳が気になって)、ブックレット開いてみたところ、面白くなってしまいました。ここまで意識して、作りこんでいるのかと。

    メンデルスゾーンは全く違うアプローチで、幅の広さが、また魅力ですね。

    byパグ太郎 at2018-05-09 23:21

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