パグ太郎
パグ太郎
クラシック中心に聴いています。オーディオは手段と考えてはいるものの、気がつくと手段の魔力に取り付かれてしまうことも多く、日々修行をしております。

マイルーム

パグ太郎の部屋
パグ太郎の部屋
持ち家(戸建) / リビング兼用 / その他 / 16畳~ / 防音あり / スクリーンなし / ~2ch
Phileweb登録後1年、気が付くとスピーカー導入していました(2018/6) 10数年愛用したアンプが逝ってしまったので、久々の機器更新をしました(2017/6)。
所有製品
  • スピーカーシステム
    GERMAN PHYSIKS HRS120 Carbon
  • プリメインアンプ
    OCTAVE V110SE
  • ハードラック
    QUADRASPIRE QAVM
  • RCA/BNCオーディオケーブル
    KIMBER KABLE KS-1020
  • 電源ケーブル

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日記

ワーグナー・ベルリオーズ・マーラー、或いは、歌手と歌詞でつながる連想ゲームの楽しさについて

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2018年05月16日

『ヴェーゼンドンク歌曲集』から第三曲『温室にて』
ワーグナーのこの歌曲は、色々な逸話が盛りだくさんで、雑音にあふれています。作詞は、作曲者の後援者となっていた実業家の妻、マチルダ・ヴェーゼンドンクによるもの。マチルダとワーグナーは不倫関係にあって、この曲の旋律は、これまた大不倫劇『トリスタンとイゾルデ』の三幕前奏曲に、そのまま流用されています。
(マチルダ・ヴェーゼンドンク)

こんなゴシップは無視して音楽に集中しようと思っても、そもそも無理です。というのも、『温室にて』で歌われている情景はいけません。異国から連れてこられて、本来の場所ではない所に閉じ込められた植物、その重苦しい芳香が、宵闇の高湿・高音の空気の中に香る様子なのです。自由にならない重い空気の中で、愛情に溺れる苦しさをそのままに表現しています。その事情は他国からつれてこられた王妃イゾルデと、秘薬により自分の意思とは無関係に恋に落ちた王の甥トリスタンとの恋物語と相似形で、その有名な伝説の上に、己の恋愛を歌った音楽が、あからさまな形で投影されているのです。いやはや・・・・。

この歌を聴いて、この濃密な世界に浸っていると、トリスタン以外に、もう一つの曲を連想してしまいます。それはベルリオーズの『夏の夜』から第二曲『薔薇の精』。

昼の熱気の残っている暑い夏の空気に、薫りたつ立つ薔薇の精という、温度と湿度感、むせかえるような色気。若い歌手ではだめ、華やかで可憐過ぎる声であったり、清潔感あふれる明るいだけの声では物足りない。陰りのあるメゾソプラノでもいいのですが、中性的になってもだめ。中盤のクライマックスでは、強い輝く声もそれなりに必要。そう考えると、なかなか難しい注文ですが、クレスパンとノーマンは、その我が侭な要求に、完璧に応えてくれています。
(クレスパンとノーマン)

そういえば、この二人の歌手、フランスの歌曲やオペラを得意としつつ、ワーグナー楽劇でも名録音を残しています(クレスパンはショルティやカラヤンの指揮の下、指輪の主役級を歌っていますし、ノーマンはこれもカラヤン指揮でイゾルデを歌ったザルツブルグ・ライブがあります)。

そう思って振り返ってみると、ベルリオーズとワーグナー、ある意味、似ているのかもしれません。大編成の管絃楽曲の名手、そして常に実験的で同時代人の理解を超えた存在、そして古典的な純粋音楽を、文学的な標題音楽でひっくり返した破壊者。クレスパンやノーマンの歌う『温室にて』は無かったのかなと思って探すと、やはり有りました。そして、予想を上回る適合性です。クレスパンは流石の色っぽさと気だるさで、くるくらして来ます。ノーマンはピアノ伴奏とオーケストラ伴奏の2版があって、どちらも秀逸。色気というよりも孤独感を切々と歌い上げています。二人の、夫々の個性的な美質が発揮されています。こういう連想ゲームで聞き逃していた録音を聴きなおしてみるのも楽しいものです。


では、この二つの曲集を録音している、最近の歌手は誰かいないのかな? などと、更に好奇心が刺激されます。検索すると納得の歌手が出てきました。マリー=ニコル・ルミュー、フランス系カナダ人のソプラノ。以前、アーンの歌曲集を取上げた時に、「陰りの中に、色気を交えたい場合には、マリー=ニコル ルミューですね。下手な近づき方をすると危なそうな雰囲気」と紹介しています。ここまで判っていて、この録音を見逃してしまうというのは、やはり迂闊以外の何者でもありませんね。


でも、ここで終わりではありません。更なる連想ゲームがつながります。ルミューが、この録音で『夏の夜』『ヴェーゼンドンク歌曲』とカップリングしていたのが、マーラーの『リュッケルトの5つの歌』です。マーラーの数多い歌曲集には、悲劇・皮肉・暴力・民謡などの要素が複雑に散りばめられることが多いのですが、この歌曲集は、一番その要素が薄く、ロマンティックで濃密な愛と死、喪失感に焦点があたっています。そのことが良く判るルミューの演奏でした。この選曲の流れの中で、この歌手に歌われると、この歌集からも、より暗く濃密な夜の香りが漂って来る、そういう独特の表現です。これは面白い。

こんな遊びを続けているとキリがありません。今度は、『リュッケルト歌曲集』の名演奏しているあの歌手は、ワーグナーやベルリオーズを歌っていないだろうか・・・などと、連想の輪が無限に広がってしまいそうです。夜もふけてきましたので、このあたりで止めておきましょう。

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  1. はじめまして。

    レジーヌ・クレスパンいいですよねー。

    ショルティ指揮のジークリンデ、カラヤン指揮のブリュンヒルデの歌声に魅せられてCD10枚組のトリビュートまで手に入れました。

    クラシックは苦手ですが彼女が歌えば蝶々夫人やカルメンも楽しめます。

    byVOTTA7 at2018-05-17 23:01

  2. VOTTA7さん

    はじめまして。レス有難うございます。

    クレスパン ファンの方が、想定以上にいらっしゃるのは、このコミュニティで日記書き出して初めて知りました。

    軽い明るい声から、重く暗い声まで、幅広く綺麗に出せて、役柄に応じた歌の表現力も完璧という意味では最高! おまけにドイツ、イタリア、フランス、どこでもOK。ブリュンヒルデと、蝶々さんと、カルメン、どれでも行けるなんて信じられないですよね。

    byパグ太郎 at2018-05-18 05:14

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