パグ太郎
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クラシック中心に聴いています。オーディオは手段と考えてはいるものの、気がつくと手段の魔力に取り付かれてしまうことも多く、日々修行をしております。

マイルーム

パグ太郎の部屋
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持ち家(戸建) / リビング兼用 / その他 / 16畳~ / 防音あり / スクリーンなし / ~2ch
10数年愛用したアンプが逝ってしまったので、久々の機器更新をしました。
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  • プリメインアンプ
    OCTAVE V110SE
  • ハードラック
    QUADRASPIRE QAVM
  • RCA/BNCオーディオケーブル
    KIMBER KABLE KS-1020
  • 電源ケーブル
  • 電源ケーブル
    KIMBER KABLE PK-10Gold

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日記

トリオ カレニーヌのラヴェル三重奏曲、あるいは音楽と映像の記憶の繋がる瞬間

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2018年06月01日

今日のお題は、カレニーヌ三重奏団のラヴェル、フォーレ、タイユフェールというフランス人作曲家のピアノ三重奏曲集です。

以前、ファニー ロビヤール(ヴァイオリン)、パロマ クイデル(ピアノ)の若手二人が録音したラベル・ドビュッシーなどのヴァイオリン・ソナタ集をご紹介したことがあります。http://community.phileweb.com/mypage/entry/4831/20180306/58739/


ラヴェルを聴く時、各国の土地に根ざした民俗的な匂いや、非定住民の色合いを強調するスタイルであったり、東欧・ユダヤ系音楽の流れの中に置いて解釈する流儀にも心惹かれますが、そういう暑苦しさを避けて、フランスの都市的な洗練された文化の香りのする演奏も良いという主旨のことを書いたのです。そして、後者の典型例としてご紹介したのが、ロビヤールとクイデルというデュオの、育ち良さそうなエレガントな演奏だったのです。

さて、この二人にチェロのルイ・ロッドが加わったピアノ三重奏団、トリオ・カレニーヌが、ラヴェル・フォーレの作品集を出すというので、予約が始まる前から待ち構えておりました。が、世界最大のネット通販サービスでも納期延期で、発売日からひと月たとうとしているのに出荷日未定、AppleMusicでは配信開始という状況がまたまた発生。以下は、AppleMusic+iPhone+イヤフォンという環境での感想です(最近、こういう、CDの退潮を感じさせる悲しい事態が多いです)。

が、気を取り直して聴いてみると、そんな悲しい事態を一瞬で忘れさせてくれます。明るくて、爽やかで、おしゃれで、でも、近代フランスの室内楽曲をしっかりと歌い切っていて、満ち足りた時間を作り出しています。2013年のミュンヘン国際音楽コンクールで優勝したグループだけのことはあります(当時からヴァイオリニストがゲッケルからロビヤールに代わっていますが←この部分、間違えていました)。

特に、気に入ったのがラヴェルのピアノ三重奏。作曲家の生まれ故郷のバスク地方で作曲され、地域固有の民俗的素材があちこちに顔を覗かせている曲。そして第一次世界大戦の影(ララヴェルはこの曲を急いで書き上げて、志願兵として出征しています)。ラヴェルの振幅の大きなこの作品を、民俗的な仄暗い情念と社会的葛藤の表現として受け止める、冒頭申し上げた「暑苦しい」演奏も楽しそうです。が、この演奏はそうではありません。先にご紹介したヴァイオリン・ソナタの時と同様、都会的な洗練された軽やかさが前面に出た演奏になっています。

第一楽章のバスクの飛び跳ねるような民俗的踊りは避暑地で出会った旅芸人の思い出、第二楽章のエキゾチックな不思議な響きは異国への憧れ、第三楽章の古風で静かな語り口は森の中で見つけた古い教会の秘密、第四楽章のダイナミックで華やかな終幕はおもちゃ箱を引っくり返したお祭り騒ぎ、そんな情景が思い浮かべて遊びたくなるような、全てが夢の世界のように非現実的な美しさを湛えています。

この感覚、どこかで昔、体験したことがあると思いながら、それが何なのか思い出せずにいました。大人たちの情念や戦争の不安を敏感に感じながら、幼い少女の夢見るような仄暗い幻想の世界が静かに続いていく、そこにスペインかどこかの土地の薫り・・・・。音楽を聴きながら、その音楽に繋がるイメージをどこかで見たという既視感に囚われることが時々有ります。

そういう既視感は、それが何に繋がっているのか未解決のまま忘れてしまうこともあれば、その答えが突然蘇ってくることもあります。その蘇ってきたイメージと音楽は、ほんの一点で繋がっていただけで、全体で見れば関係性など無い別物で拍子抜け、ということも多いのです。逆に、ピッタリとパズルのように全体が嵌ることもあります。そういう時、その蘇ったイメージによって、今度は元の音楽の聴き方が膨らんでいくこともあるのです。そういう体験は滅多にありませんが、忘れられない、とても大切な体験となります。

そう、今回は、そういう良い方のケースだった様です。一週間以上、悶々としていたのですが、突然それが繋がったのです。ビクトル・リセ監督の『ミツバチのささやき』(73年)です。
舞台は内戦直後、第二次世界大戦前夜の1940年のスペイン。全体として重苦しい大人たちの世界(分断、両親の不仲、圧制、戦争・・・)が背景としてあり、その中で6歳の少女が映画『フランケンシュタイン』を観て紡ぎ出した幻想と現実の境を越えた世界が美しかった、そういう断片的記憶だけが残っています。

どんな音楽が使われていたのかは全く覚えていません。でも、トリオ・カレニーヌのラヴェルの音楽は、この映像世界にも響いている、そういう風に頭の中でこの二つが繋がったのです。その瞬間に、この演奏がさらに豊かな広がりを持って聴こえはじめました。この可憐さの裏に隠れた、秘められた思いが見えてくるのです

(昔から聴いていた三枚)
ボザール・トリオのサロン風の世慣れた大人の色気漂う演奏でも、パスキエ・トリオの情熱あふれる熱い演奏も、ルヴィエ・カントロフ・ミューラーの世界中の民俗的リズムがあふれ出すような迫力の演奏でも、このような体験は出来ませんでした。それをこの若い三人の演奏が引き起こしてくれる、音楽を聴く不思議さを体験した美しい一枚でした。

P.S. 昨年6月にPhilewebに登録して、早1年となりました。グダグダ書き連ねて、本日記が100本目でした。これからもよろしくお願い申し上げます。

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レス一覧

  1. おはようございます。

    100本目の投稿お祝い申し上げます!
    それも1年間で。。。すごいな~。そして100本を記念するに相応しい素敵なアルバムのご紹介ありがとうございます。

    さっそくDL版を聞いております。けっこういろいろな感想があるのですが、まずはエリセ作品の『ミツバチのささやき』でしょうか。
    最近、新しい日記のインスピレーションを得たいと思い、『エル・スール』を見ようと考えていたので、またまた奇遇なことでございました。。。闇の中から光が湧き出て、物語が進行していくその感触というか、呼吸のようなものがエリセ・タッチといわれるゆえんでしょうが、そう言われるとこの演奏に似たものを感じるかな~

    クイデル(ピアノ)に交代したのは大正解。ほんとにこの人のピアノは、演奏全体をヴィヴィッドにしますね。ロビヤール(ヴァイオリン)のこともよく理解してるのだろうな~と思い、とても好感が持てました。

    タイユフェールのトリオ。初めて聞きましたが、かわいい曲だなと感じました。アルバムの解説に3人へのインタビューが掲載されていて、1930年代のフランス・モダニズムのタッチがパッチワークのように盛り込まれているというようなコメントがあり、なるほどと思わされました。

    パグ太郎さんには、いろいろな音楽の観点を教えていただいているように思います。これからも変わらずに音楽の魅力をお伝えくださると嬉しいです。

    byゲオルグ at2018-06-02 08:54

  2. ゲオルグさん

    レス有難うございます。お祝いいただく様なことではなく、恐縮です。皆さんの反応を頂いたお陰で、なんとか続いていましたので、本来であれば、お礼申し上げる所でした。

    エル スールも良かったですね。もう少し大人の世界が中心でしたね。美しい光と陰影と、秘められた複雑な感情との、抑制されたバランスが、この演奏と共通するものを感じます。

    こちらこそよろしくお願い致します。

    byパグ太郎 at2018-06-02 12:47

  3. ゲオルグさん

    すみません。交代したメンバーはピアニストでなくヴァイオリニストでした。クイデルはオリジナルメンバーです。ミュンヘン国際コンクールの時のヴァイオリニストはゲッケルでしたが、現在はロビヤールに代わっていたというのが、正しいです。いずれにしても、現状の二人の相性は素晴らしいですね。

    間違った情報で申し訳ありませんでした。

    byパグ太郎 at2018-06-03 20:37

  4. パグ太郎さんこんばんは。

    一年で日記の数が100本ですか!
    誠に素晴らしい文才ですね。

    パグ太郎さんならではのクラシックの独特な解釈はコミュニティに新風をもたらしております。

    オフ会にも積極的で既に多くの交流があるのも驚きです。
    これからも私を含めて多くの人との交流が続いて行くと思っております。

    そしてパグ太郎さんのシステムからも感性豊かな文章を次から次へ筆を走らせる程の味わいのある音が聞こえてきます。

    これからもパグ太郎さんならではの視点と論点でこのコミュニティを賑わせてください。

    byニッキー at2018-06-03 21:08

  5. ニッキーさん

    このコミュニティの大先達に、コミュニティを賑わせるように言われてしまうと緊張してしまいます。

    システムも、聴く音楽も、極めてマイペースで、自己満足のためにしかやっておりませんので、任が重過ぎです(笑)。

    これからもご指導、お引き廻し宜しくお願いします。

    byパグ太郎 at2018-06-04 12:29

  6. パグ太郎さん、こんばんは!

    日記が100本目達成ですか凄いですね!
    私はファイルウェブ歴が2年位ですが100に全く届かないと思います。
    100の内クラシックの話題が80%くらいですか?
    それだけ書けるほどクラシックの造詣が深いというのも尊敬致します。

    パグ太郎さん邸でのクラシック勉強会が楽しみです。
    出来れば美人演者を中心にお願い致します。
    って、こんな俗物的発想じゃクラシック失格ですね。

    byCENYA at2018-06-04 21:42

  7. CENYAさん 今晩は。

    レスありがとうございます。
    自分の楽しみを書いているだけで、気が付いたら数がたまってしましました。自己満足のために書いているだけですが、少しでも面白がっていただける方がいらっしゃると、やはり励みになります。

    美人奏者に集中できる自信はないですが・・・。
    今後とも、よろしくお願いいたします。

    byパグ太郎 at2018-06-05 23:36

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