パグ太郎
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クラシック中心に聴いています。オーディオは手段と考えてはいるものの、気がつくと手段の魔力に取り付かれてしまうことも多く、日々修行をしております。

マイルーム

パグ太郎の部屋
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持ち家(戸建) / リビング兼用 / その他 / 16畳~ / 防音あり / スクリーンなし / ~2ch
Phileweb登録後1年、気が付くとスピーカー導入していました(2018/6)。所有製品はHRS130ですが、製品DBに登録がないので、一番近いもので代替しています。 10数年愛用したアン…
所有製品
  • スピーカーシステム
    GERMAN PHYSIKS HRS120 Carbon
  • プリメインアンプ
    OCTAVE V110SE
  • ハードラック
    QUADRASPIRE QAVM
  • RCA/BNCオーディオケーブル
    KIMBER KABLE KS-1020
  • 電源ケーブル

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チェコ音楽専門と思っていた弦楽四重奏団で、プロコフィエフの疎開先を知る

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2018年07月31日

パヴェル・ハース弦楽四重奏団(PHSQ)というチェコ出身のグループがあります。02年にプラハで設立され、師匠が、あのスメタナ弦楽四重奏団のヴァイオリニスト シュラカンパです。お国物のチェコの作曲家、ドボルザーク、スメタナ、ヤナーチェクなどの室内楽曲を、チェコの代表的レーベル、スプラフォンから何枚もリリースしています。本当に骨の髄までチェコ一色。メリハリのはっきりした潔い、辛口の演奏が楽しめる注目の団体ですが、録音で出てくるのは殆どチェコの作品で、受け止める側も、そういう先入観といいますか、色眼鏡で見てしまいます。
(金髪の女性が第一ヴァイオリンで外見のままの超アグレッシブな演奏、左にいる白いジャケットがチェロで彼女の夫。そして、夫婦の間をしっかり抑えているのが右端のヴィオラ。この三人は不動のメンバー。第二バイオリンは交代が続いています)

そもそも、団体名のパヴェル・ハースって何? 調べてみると、これまたチェコの作曲家の名前です。パヴェルはチェコのユダヤ人を父、ウクライナの港町オデッサ出身者を母に持ち、1944年アウシュビッツで命を落とした、20世紀前半の戦争と革命の時代の真っ只中を生きた人物です。作曲家としては、ヤナーチェクに音楽を学び、ボヘミア・モラヴィアの民俗音楽と、ユダヤの伝統、現代音楽、ジャズの影響を受けた作風だそうです。歴史に「もし」はありませんが、フランスに亡命できていればプロコフィエフ、アメリカに亡命していればコルンゴルドのような人生を歩んでいたのかもしれません。このグループが、メンバーの名前でもなく、土地の名前でもなく、この人物の名前を団体名に冠するのは、それなりのメッセージ・意図があってのことなのでしょう。
(P.ハース:チャップリンの「犬の生活」の映画音楽を手がけたという情報も)

そういう、彼らの録音の中に、二つのプロコフィエフの弦楽四重奏曲を録音したものがあったのです。これまでの先入観でチェコの一筋の団体と思い、正直、気にも留めていませんでした。それ以上に「プロコフィエフの弦楽四重奏曲? 聴いたこともない」という状態でもありました。が、この団体の名前の由来を知ってしまうと、彼らが演ずるプロコフィエフはどういうことになっているのか、そもそもプロコフィエフの弦楽四重奏ってどういう曲か、なんていう好奇心が止められなくなってしまいました。

すみません。長い前置きでしたが、今日のテーマはこの録音です。


プロコフィエフは生涯に弦楽四重奏曲を2曲作曲しています。1曲目は1931年、亡命先のパリ在住ですが、そろそろソ連に戻るような動きを見せていた頃の作品。パリ時代の、前衛的な激しい曲調で、先鋭的な響きとリズムが特徴的。それと交互に現れる暗く叙情的な旋律の対比が、いかにもプロコフィエフらしい。

激しいリズムを情熱的にぶつけてくる躍動感、そして、その速度変換の切れ味から来る爽快感があふれ出る様な、PHSQの個性にピッタリとはまった演奏です。特に第2楽章のドライブ力と疾走感は、自らを「バンド」と名乗るこの団体ならではの、引き込まれるような爆発力を感じさせてくれます。一方で、単なる爆発だけでなく、メランコリックで暗い旋律が頻繁に顔を覗かせるプロコフィエフならでは場面転換の巧みさと、その深みのある表現は、「パヴェル・ハース」を名乗るものの、一筋縄ではいかない意地を感じさせるものがあります。

もう一つの2番。こちらはソ連帰国後の41年の作品。より民衆・民俗的な要素を取り入れた一聴分かりやす作風を取り入れていた時期。おりしも第二次世界大戦によるドイツのソ連侵攻にあたり、黒海沿岸のコーカサス地方へ疎開し、その土地の民謡や民俗音楽を主題やリズムに取り入れたりしています。疎開先は昨今話題のチェチェンは目と鼻の先で、イスラム文化の影響が濃厚な土地(今でいうとロシア連邦カバルダ・バルカル共和国の首都 ナリチクって初めて聞いた国名と地名)。そして、パヴェル・ハースの母の出身地オデッサは黒海を挟んで対岸というのも因縁を感じます。

この弦楽四重奏曲2番は、このような背景で作曲されているため、民謡の旋律や、エキゾチックなリズム、オリエンタル風楽器を模した弦楽器のお遊びが、そこここに散りばめれ、1番の先鋭さと比較して、より親しみやすい作品にはなっています。でも相手はプロコフィエフです。素直な大衆万歳・民族団結の音楽になるわけも無く、皮肉っぽい場面転換と、暗い悲観的予言が飛び出してきます。

民俗的旋律とリズムといえば、ボヘミアンの血の濃いPHSQの得意とするところです。チェコは東欧と西欧の接点で、コーカサスは東欧とオリエントの接点という違いはありますが、辺境の文化混交から生まれるエネルギーを掬い取る勘所を押さえているのでしょうか、本当に巧みな演奏です。その一方で、やはり、革命と戦争の世紀の作曲家としてのプロコフィエフ、あるいはパヴェル・ハースの、暗い情念とアイロニーが演奏の根本の所にしっかりと埋め込まれているのは言うまでもありません。

こうやって振り返って見ると、プロコフィエフのこの2つの作品、彼らしい佳作の割りに人気が薄く、録音も殆ど無いのも、この作品の本質を引き出すためには、PHSQのようなバックグランドと志向を持ったの演奏家が必要だからなのかもしれません。亡命帰りのソ連の作曲家は、ドイツ軍の侵攻を逃れて疎開した土地で、その風俗に刺激をうけた曲を作曲し、その土地に縁のあるチェコのユダヤ作曲家ハースは、ほぼ同じ時期にドイツ収容所で処刑されたわけですが、それから70年後の現代、ハースの名前を冠した団体がプロコフィエフのその曲を演奏する。そこにどのような思いがあるのか、この演奏を聴きながら考えずにはおれなくなってしまうのです。

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  1. パグ太郎さん

    プロコフィエフの弦楽四重奏というのは聴いたことがありません。確かにCDは少ないですね。検索するとボロディンSQとかプラハSQとかがあります(いずれもDENON/日本コロンビア)が廃盤になっていました。

    私の世代は、教育を受けた時期が冷戦のただなかで、地図帳はバルト三国からウクライナ、中央アジアまでソ連という国で赤一色で塗りつぶされていてろくな教育は受けていません。多様な民族、歴史国家の知識は皆無でした。冷戦崩壊後になって少しずつ知識がついてきたという惨状です。

    そんななかでジョージアは、岩波ホールで観た映画が印象的で初めてソ連邦の中が決してロシア単一ではないことに気づいたきっかけでした。ワイン醸造が盛んなこの土地で、トビリシの市幹部の水増し等の不正とそれに対する怒り、告発という内容だったと思います。父が学会への出張でソ連(現ウクライナ・キエフ)に行って、その土産にワインを買ってきて、ワインはフランスかドイツと思い込んでいた高校生の私は首をかしげましたが、映画を観てようやくジョージア=ワインと結びつきました。

    この地域は、民族が入り組んでいて、しかもキリスト教とイスラム教との接点でもあって、バルカン半島なみの紛争区域であることは、今日のチェチェン紛争でよくわかります。

    広くコーカサス地方と言いますが、有名なハチャトリアンはアルメニア人ですね。ジョージアの主流は同じくキリスト教徒のグルジア人でロシア正教に帰依しロシアに従属しましたが、山岳地域は強硬なイスラム教徒が多く歴史的にロシアはこの地方の治安に苦しんできました。それだけに音楽の民族色は複雑なのでしょう。

    チェコ人は、ドイツ・オーストリアというゲルマン民族に突き刺さるように接しているスラブ民族国家で、しかも、宗教改革の原点で旧教と新教のせめぎ合いがあって近世は文字通り血塗られた歴史を経ています。そういう民族のアイデンティティーを強く持つ一方で多様な民族文化に敏感なのではないでしょうか。

    byベルウッド at2018-08-02 13:54

  2. ベルウッドさん

    レス有難うございます。お返事遅くなってしまい申し訳ありません。

    岩波ホールはグルジア映画や、バルカン・アジア・アフリカの作品を次々と紹介してくれて、それでその国を知るようなことが私も多かったです。なんと、今も、テンギズ・アブラゼ監督の祈り三部作の纏めて上映しているし、10月からジョージア映画祭をやるみたいですね。

    昔、視た映画を色々思い出してしましました。

    byパグ太郎 at2018-08-05 12:13

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