パグ太郎
パグ太郎
クラシック中心に聴いています。オーディオは手段と考えてはいるものの、気がつくと手段の魔力に取り付かれてしまうことも多く、日々修行をしております。

マイルーム

パグ太郎の部屋
パグ太郎の部屋
持ち家(戸建) / リビング兼用 / その他 / 16畳~ / 防音あり / スクリーンなし / ~2ch
Phileweb登録後1年、気が付くとスピーカー導入していました(2018/6)。所有製品はHRS130ですが、製品DBに登録がないので、一番近いもので代替しています。 10数年愛用したアン…
所有製品
  • スピーカーシステム
    GERMAN PHYSIKS HRS120 Carbon
  • プリメインアンプ
    OCTAVE V110SE
  • ハードラック
    QUADRASPIRE QAVM
  • RCA/BNCオーディオケーブル
    KIMBER KABLE KS-1020
  • 電源ケーブル

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日記

ムローヴァの「注文の多い演奏会」、あるいは大女優の競演映画に思う贅沢な悩みについて

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2018年10月22日

ムローヴァのソロ・リサイタルに行ってきました。前回日記でバティアシビリの大絶賛の後、節操が無いといわれそうですが、これまた、大変素晴らしい演奏会でした。

プログラムのメインはバッハの無伴奏ということしか確認せずに、会場の墨田トリフォニーホールに入ると、プログラムと一緒に、お願いの紙をいきなり渡されました。曰く、80分連続演奏で休憩なし、途中の出入りは禁止、曲間の拍手もお断り。何だか注文が多い演奏会だなあと思っている内に場内が暗くなり、演奏者の入場。

イメージ通りのすらっとした長身、長い手足、そして驚いたのはバイオリンと弓を1セットづつ両脇に抱えての登場。更に後ろに黒服の女性を従えています。ヴァイオリンで譜めくり助手とは珍しいと思ったのですが違いました。女性はマイクを持った通訳で、演奏前に二挺のヴァイオリンの解説です。一つはバッハを弾くためのバロック仕様で、1750年製のガダニーニにガット絃を張って、バロック弓、調弦は低めの415ヘルツ。もう一つはバッハの合間に弾かれる現代作品のためのモダン仕様で、ストラディヴァリウス「ジュール・ファルク」1723年製に、スティール絃とモダン弓で、調律は通常のは440ヘルツ。そして、再度、曲間の拍手は不要とのお願い。注文も多いですが、趣向も凝っています。モダン楽器でデビューし大活躍しながら、キャリアの途中でバロック楽器に傾倒しつつも、近現代曲、更にはワールドミュージックにもその活動の幅を広げてきた彼女らしい拘りが感じられます。

生で聴くムローヴァのバッハは初めてです。素直で滑らかな絃の音が、全く神経質に響くことなく空間を満たし、静かに落ち着いた音楽が流れていきます。最近、当家のオーディオはボリューム上げすぎだし、全体の響きや空気感より細部のリアリティに耳が行きすぎだということが、最初の曲で身にしみて判ります。バッハの無伴奏パルティータ1番から二曲弾いた所で、ヴァイオリンを持ち替えます。「うーん、もう少しこのまま聴かせて欲しい」と思っていると、チューニング音から、ストラディバリウスの大きくて輝かしい音に、会場の空気が変るのが感じられます。やはり自分の好みはこちら。でも藤倉大作曲の音楽には乗り切れず、ヴァイオリンの音色にのみ聴き惚れます。と思うまもなく、今度はガダニーニでバッハのソナタ3番が始まり、先ほどの静かで落ち着いた世界が戻ってきます。で、それがニ曲続き心がその雰囲気に慣れてきたという所で、またストラドで現代音楽の小品・・・・。良い音です。いっそこのままバッハもモダン楽器で弾いて欲しいとか思っていると、また元に戻ります。

この楽器と楽曲の組み合わせ、頭では理解できても、自分の心の中では世界として一体化しておらず、シーソーに乗せられギッコン・バッタンやらてている感じです。それが三回往復して四回目でやっと、楽器と音楽がしっかりと嵌ったのですが、それがプロコフィエフのヴァイオリンのための無伴奏ソナタをストラディバリウスの組み合わせ。
(プロコフィエフの無伴奏ソナタが収録されたCD)
この曲の軽いユーモラスな表情と皮肉っぽい暗い翳がムローヴァにピッタリですし、ストラドの輝かしく硬質な音色が雄弁にその音楽の心情を詠っていて、最高の組み合わせです。全3楽章引き終えて、思わず拍手をしそうになったのを、いかんいかんと心の中の喝采にとどめました。その後のバッハのパルティータ2番の有名で長大なシャコンヌの素晴らしさは言うまでもありませんでしたが、心の底では「ストラドで通して聴いてみたかった・・・」というのが偽らざる気持ちでした。

バッハと近現代のバイオリン独奏曲を交互に演奏し、途中で拍手をしてはいけないという注文の多い演奏会は、一連の音楽を一つの作品として受け止めて欲しいという想いだったのかもしれません。自分にとっては、古楽奏法でのバッハをガダニーニで聴くのは、素晴らしい体験で、それにどっぷり浸かって、この一時間半の時を過ごしてみたかったですし、ムローヴァの奏でるストラディヴァリウスの怖いほどの魅力に集中して近現代の楽曲を聴くことができれば、プロコフィエフ以外の現代の楽曲もその美質に気づくことができたのにという気持ちもありました。逆に言うと、一つの作品に織り込まれた二つの錦の輝きが余りに個性が強すぎて、一体として見るには魅力的過ぎたという皮肉、且つ極めて贅沢な悩みになってしまったのかもしれません。

どこかで、これに似た感覚あったのがずっと引っかかっていたのですが、思い出しました。昔の観た映画で、有名な大女優二人が協演していて、二人の人生が一つの物語に織り込まれていくという作品。自分にはどうにもしっくり来ず、どうせなら、夫々を主演にした二本の映画にして、大好きだった女優をじっくりと見せて欲しかった・・・。ちょっと例えが悪すぎますが、そういう気分です。

でも、これは贅沢な物言いです。本当にいい音楽を楽しめたし、今日の最初の一音で流れてきた、ハッとするほど柔らかく静謐な響きこそ、家のシステムで本当に再現したいものだということを改めて気づかせてくれたという意味では、文字通り耳を洗われる体験をすることが出来ました。これは、しばらくムローヴァのこのCDをどう鳴らすか、楽しい四苦八苦が続きそうな予感がします。

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  1. パグ太郎さん

    ムローヴァに行かれたのですね。

    バッハの無伴奏を、現代曲とをスタッガードで演奏するというのはイザベル・ファウストで体験しました。とても刺激的で素晴らしい演奏でした。

    http://community.phileweb.com/mypage/entry/2408/20131031/39767/

    そのファウストも、モダンとピリオドを持ち替えることをやるようになりました。水戸で聴いたバッハのソナタの演奏もなかなかのものでした。

    http://community.phileweb.com/mypage/entry/2408/20161015/53191/

    けれどもひとつの演奏会で楽器を換えるということはしていません。バッハの無伴奏の時はモダンのストラディバリウスで通していましたし、ソナタの時はベザイデンホウトのミートケ・チェンバロのレプリカとのデュオで通していました。

    モダンとピリオドを交互にというのは、ピッチの違いもあるし聴衆にとってもけっこう厳しいのではないでしょうか。文字通り千鳥足(stagger)ということになります。

    あまり知に働きすぎるのもどうなのかなぁという気もします。

    byベルウッド at2018-10-23 11:00

  2. ベルウッドさん

    レス有難うございます。

    ペルトの新録音が凄く良かったので、久々に行って見ました。
    一つ一つの演奏は、熟成が進んで、凄く良かったのですが、ちょっとプログラムが凝り過ぎという感は否めませんでした。

    後で調べたら、前回来日の2年前にもほぼ同じプログラムで1回だけリサイタルやったみたいですね。きっと評判が良かったのでしょう。

    >モダンとピリオドを交互にというのは、ピッチの違いもあるし聴衆にとっても

    そうなんです。やはり並べて聞いてしまうとモダンなストラドの輝かしさの魅力に引き寄せられるのですが、曲はバッハの方が良いというねじれ現象で、それが4往復するのです。唯一、バランスしたのが、プロフィエフとストラドの組み合わせでした。

    メルニコフの4種ピアノで4曲弾き分けの日記にも書きましたが、こういう趣向は、私は得意ではないようです。でも、ムローヴァは熟成して、更に良くなってきましたね。

    byパグ太郎 at2018-10-23 18:09

  3. パグ太郎さん、初めまして。

     2台のそれもかなり性格の異なるヴァイオリンによる演奏会、中々興味深いですね。
     オーディオ的にも音楽的にもそれぞれの異なる世界を一つのコンサートで上手く調和させるのはかなり難しそうです。

     流石にこういうコンサートは聞いたことがありませんでしたが、以前イザベル・ファウストのコンサートで弓を曲ごとに交換しているのに出会ったことがあります。残念ながらその説明はありませんでしたし、その違いを聞き分ける事はできませんでしたが、その理由が気になっています。どなたか考えられる点はありませんでしょうか。

    byケン at2018-10-24 08:47

  4. ケンさん

    はじめまして。 レス有り難うございます。ファウスト、私も大好きです。彼女はインタビューでこういう話をしていました。

    「私は常に複数のバロック弓を持ち歩き、その日はバロック・ヴァイオリンを用いて、遅い楽章は柔らかい弓、速い楽章はアーティキュレーションが明確となる弓、無伴奏曲は3本目の長い弓で弾きました。ただ、ホールや共演する楽器、湿度といった状況、作曲者やソナタか協奏曲かによって変わりますし、最終的には楽器ではなく音楽が全てです」
    https://ebravo.jp/archives/31042

    なかなかの拘りですね。無伴奏のジャケットを見ると何時も弓道を想像してしまうのですが、3本小脇に抱えていると本当にそう見えるでしょうね!

    byパグ太郎 at2018-10-24 09:15

  5. パグ太郎さん。

     レス有難うございます。インタビューの件、なるほどそのなような理由かもしれません。勉強になりました。

     何らかの表現の為かとは思っていましたが、残念ながら聞いた時はそこまでの違いは解りませんでしたね。

    byケン at2018-10-24 14:04

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