パグ太郎
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クラシック中心に聴いています。オーディオは手段と考えてはいるものの、気がつくと手段の魔力に取り付かれてしまうことも多く、日々修行をしております。

マイルーム

パグ太郎の部屋
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持ち家(戸建) / リビング兼用 / その他 / 16畳~ / 防音あり / スクリーンなし / ~2ch
Phileweb登録後1年、気が付くとスピーカー導入していました(2018/6)。所有製品はHRS130ですが、製品DBに登録がないので、一番近いもので代替しています。 10数年愛用したアン…
所有製品
  • スピーカーシステム
    GERMAN PHYSIKS HRS120 Carbon
  • プリメインアンプ
    OCTAVE V110SE
  • ハードラック
    QUADRASPIRE QAVM
  • RCA/BNCオーディオケーブル
    KIMBER KABLE KS-1020
  • 電源ケーブル

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日記

フランス4人娘はカメレオン奏法? アキロン弦楽四重奏団のCDデビュー演奏に幻惑

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2019年01月12日

2016年のボルドー国際弦楽四重奏コンクールで優勝したアキロン弦楽四重奏団(AKLQ)が、CDデビューしたというので、早速聴いてみました。
女性4人のフランスの若手グループということで、一昨年の来日時には、当コミュニティでも話題になったのですが、当方は演奏会もTV放映も全く気が付かず仕舞いでした。

デビュー録音に選ぶのは、お国もののラヴェルとかドビュッシーかと思いましたら、なんと、ハイドン、モーツァルト、シューベルトというウィーンで活躍した3人の作曲家。その三人の作品中でも一番人気の代表作というよりも、その少し後ろに控えていて、でも夫々の作曲家のキャリアの転換点になったような重要な作品という、渋い選択です。これを挨拶代わりに持ってくるというのは、相当な自信なのかもしれません。

という期待で聴き始めた最初のハイドンから心が躍らされました(作品20-2、『太陽四重奏曲』のニックネームが付く曲集から2番)。明るく元気いっぱい、音楽の作りが大きく率直。もともとハイドンの作品は音楽を演奏する愉悦みたいなものを感じさせるという意味では、モーツァルトの精妙な複雑さ、ベートーヴェンの深刻さ、シューベルトの悩み深さとは無縁の、天真爛漫さが取り柄だと思っています。この「取り柄」は、精密機械のように細部を突き詰めることに血道を上げている現代の若手弦楽四重奏団にとっては、却って難物なのかもしれません。が、AKLQは稀に見る大らかさで、この作品を歌いきっています。こちらもつられて「楽しくて良いな~」という能天気な感想。

そうは言ってもボルドー優勝者ですので、単なるお気楽な演奏のはずはありません。ビブラートをかけず、ピッチも低めの、今風のピリオド奏法で、一つ一つの音がクリアです。中でも、ヴィオラと第二ヴァイオリンという支え役が全体をコントロールしている演奏(それが綺麗に聴き取れる録音でもあります)ですので、この太陽弦楽四重奏曲という作品集によってハイドンが確立したといわれる弦楽四重奏曲という形式の、がっちりとした揺ぎ無い構成を見せてくれます。

天真爛漫なハイドンは若くて元気な彼女たちにも、合っていたのでしょうが、「精妙な複雑さ」を求められる次のモーツァルトは、そう簡単ではないかもしれません。選ばれたのは、モーツァルトがハイドンに捧げた6曲の『ハイドンセット』の1曲目、14番。モーツァルトも、この『ハイドンセット』で弦楽四重奏曲の自己のスタイルを確立したといわれていて、セットにはこれ以外に15番、17番『狩』、19番『不協和音』という大傑作があります。が、彼女たちは何故か14番を選択。

ハイドンの様子からして、モーツァルトも明るく伸びやかな歌いっぷりを予想していたのですが(ちょうど、このイタリア弦楽四重奏団の演奏のように地中海の明るい光を感じさせてくれる?)、見事に外されました。
(久々に明るいモーツァルトを期待したのですが)

ハイドンの所でも言いましたが、がっちりと構成を見せるという要素がさらに強まっているのです。通常であれば、旋律担当の第一ヴァイオリンとチェロが主役として、時には明るく、時には朗々と歌う、それを裏側で支える第二ヴァイオリンとヴィオラが、それをつなぎ合わせて、全体の響きをピラミッド型に作りだせるのが、典型的な「良い」弦楽四重奏団です。でも、そういう通常の主従の役割分担が、AKLQでは主従ではなく殆ど均等になっています。4つの楽器が絡み合って作り出す一体の骨格を鮮明に炙り出すことが、旋律の流れよりも優先されている様に感じられます。元々この14番という曲は、従の楽器の活躍が比較的多い曲だからとも言えますが、敢えてその14番を選んで、自分たちの特性を顕らかにすることを意識して行ったように思えてなりません。

ハイドン・モーツァルトに続くウィーン縁の弦楽四重奏曲の名作といえばやはりベートーヴェンなのに、それを飛ばして次はシューベルトです。それも12番『断章』。文字通り1楽章のみ仕上がって残りは未完成のまま放置された曲ですが、最晩年の3つの傑作、13番(ロザムンデ)、14番(死と乙女)、15番への先駆けとも言われ、やはり作曲家の弦楽四重奏作品の転換点となった作品です。

ただでさえ構造性が良く見えないシューベルトの作品の中でも、途中で放棄された作品。しかし美しい歌と深いメランコリーが交錯する劇的な効果では晩年の名作に匹敵し、作曲家の死後数十年して、断片のみでも復活したという音楽です。ここまでの2曲で見えてきた彼女たちの特徴、明るく天真爛漫にも歌えるし、精妙さに隠れた構造を炙り出すこともできる、、、、そのどちらのスタイルで演奏するのでしょうか? いや、どちらでも上手くいかないのでは? 

聴いてみて、またまた、驚かされました。全く別の新しい顔が登場したのです。最新の弦楽四重奏団らしい精密機械の様な正確性と、それを駆使したダイナミックで疾走感あふれる演奏。それに乗ってシューベルトのメランコリックな美しい旋律が、激情迸るように流れていきます。こういう演奏もできるのかと呆気にとられていたのは一瞬のことで、彼女たちの『断章』の奔流に飲み込まれてしまいました。(なお、断章が終わってからCD再生終了まで気を抜くと、もう一発驚かされますので、油断禁物です)

楽曲の世界に合わせて、これだけ表現様式を大きく変えて見せる、それも極めて高度なレベルで独自性を持ってやりおおせている。ちょっと信じられない思いです。若手カルテットのデビュー録音にしては、渋い選択だなという最初の印象だったのですが、聴き終わってみると、彼女たちの表現の幅をしっかりと聴き手に伝えるための選曲だったことに気づかされました。それも、曲の力に心が行きがちな傑作ではなく、演奏家の力をより鮮明に印象付けられる楽曲選定。その上、どの形にしても極めて高度で、どれが本来の彼女たちの得意とする姿なのかわからないほど。

今回の録音で彼女たちが敢えて選ばなかった各作曲家の最高傑作と言われる作品をどう演じるのか、そして、これまたスキップした弦楽四重奏曲の一つの頂点であるベートーヴェンは、また異なるスタイルで演じて見せるのか、更にお国のラヴェル・ドビュッシーはどうなるのか、ちょっと目を離せない存在になってしまいました。そして、彼女たちがこの後、この究極のカメレオン演奏を追求していくのか、それともその中から自分たちのスタイルを一つ選び取っていくのか、それはわかりません。それを追いかけてみる気にさせてくれる刺激的なデビュー録音であったことは間違いありません。

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どうでもいいオマケ:リリース日の近い気になるCDが2枚あります

一つはヴェロニク・ジャンスのショーソン歌曲集。アルファ・クラシックから3月にリリース予定。

もう一つはイブラギモヴァ・ティベルギアン組のフランクのヴァイオリン・ソナタ。ハイペリオンから2月にリリース予定

ネットで予約しようとして、画像だけを見て「あれ、これ注文済みだよな・・・・」と思い込んでしまったのですが、数日前にジャケットの「激似」に気が付き、片方しか注文していないことが判明。

使われているのはレオン・スピリアールトというベルギー象徴主義の画家の『水辺の女』という作品。1946年に亡くなっているので著作権フリーで問題はないのでしょうが、このままリリースされるのかどうか、そういう意味でも「気になる」CDなのでした。

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レス一覧

  1. こんにちは

    ご挨拶が遅れましたが、本年も宜しくお願い致します。

    アキロン弦楽四重奏団のCD、私もレビューの準備をしておりました。。。私の印象も、ハイドンとシューベルトは素晴らしい!と思いました。モーツアルトもライブだと、もっと違った印象になるかもしれないな~などと思っておりました。

    私はチェロとヴィオラが骨太な感じがしてよいな~と思ったのですが、おっしゃるように「4つの楽器が絡み合って作り出す一体の骨格を鮮明に炙り出すことが、旋律の流れよりも優先されている」のだと、日記を拝見していて整理できました。この感じはなんとなく新しいなと直感したので、レビューしたくなったのですね。キアロスクーロのハイドンは聞き比べましたが、音場の広がりの違い・ピッチの高低差があって、好対照だなと感じました。かなり印象の異なる演奏ですね。

    byゲオルグ at2019-01-12 10:42

  2. こんにちは

    「大姉御」路線も、ついに4人全員大姉御(というほど貫禄はついてないですかね)まで到達してしまったんですね(笑)。触発されて、すかさずポチりました。ありがとうございます。確かに、曲の解釈と腕に自信が持てなかったら、この演目選択は出来ませんね。ある意味、大胆だと思います。この、カルテット大豊作現象は、どこまで行くのでしょうね。いまは来月のベルチャがとにかく楽しみです(嬉)。

    「断章」とか、ベートーヴェンの「大フーガ」のような断片ものが結構好きです。先週、遅ればせながら、ベルチャのベートーヴェン全集(Zig-Zag盤のジャケットが欲しかったんです)を入手し、真っ先に大フーガをかけて、あまりの凄さに後頭部を壁に打ち付けてしまいました。

    発売予定の2枚の盤がほぼ同じカバーアートというのも珍しいですね。イブラギモヴァの方は予約済みでしたが、ジャンスのショーソンは気がつきませんでした。

    byOrisuke at2019-01-12 14:54

  3. ゲオルグさん

    レス有難うございます。アキロンをフォローされていたのですね!

    本当にハイドンはキアロスクーロとは対照的ですネ。日記の通り、色々な顔を見せてくれたのでどれが本当の姿か判らないのが正直なところでして、ゲオルグさんのご感想も是非拝見したいです。

    byパグ太郎 at2019-01-12 17:04

  4. Orisukeさん

    レス有難うございます。大姉御というには、ちょっとキャリア不足でしょうか。どちらかというとフィギュア女子で4回転を軽々とこなすロシアのジュニア勢を見る思いに近いかも知れません。凄いけどこの後どうなって行くのか、楽しみと心配が半々。

    ベルチャのベートーヴェンはやはり衝撃的です。聞き込んでも、新たな発見、気付きがあったり、こちらの気分で違って聴こえるという意味では、名演奏としての条件を満たしている気がするのです。

    別件ですが、アパルテのデエのフランス歌曲集入手したら、LT/Yoshida作品でした。やはり独特の音場感ですね(Après un rêve)。

    byパグ太郎 at2019-01-12 17:24

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