パグ太郎
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クラシック中心に聴いています。オーディオは手段と考えてはいるものの、気がつくと手段の魔力に取り付かれてしまうことも多く、日々修行をしております。

マイルーム

パグ太郎の部屋
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持ち家(戸建) / リビング兼用 / その他 / 16畳~ / 防音あり / スクリーンなし / ~2ch
Phileweb登録後1年、気が付くとスピーカー導入していました(2018/6)。所有製品はHRS130ですが、製品DBに登録がないので、一番近いもので代替しています。 10数年愛用したアン…
所有製品
  • スピーカーシステム
    GERMAN PHYSIKS HRS120 Carbon
  • プリメインアンプ
    OCTAVE V110SE
  • ハードラック
    QUADRASPIRE QAVM
  • RCA/BNCオーディオケーブル
    KIMBER KABLE KS-1020
  • 電源ケーブル

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日記

ディリュカが明かしてくれたC.P.E.バッハの魅力、またまた人様の日記に便乗

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2019年03月17日

ゲオルグさんイチオシのピアニスト、シャニ ディリュカの新録音は、なんとC.P.E.バッハとモーツァルト曲集です。

ご本家ゲオルグさんのレビュー日記への返歌ということで、屋上屋ではありますが感想を残しておきます。

これまで、彼女のシューベルトの小曲集とソナタ、メンデルスゾーンの無言歌、ベートーヴェンのチェロソナタを紹介いただいて、その繊細な優しさと、同時に豊かな広がりを感じさせるロマンティックな世界観に、いつも心奪われていました。その流れから見て、新作のこの二人の作曲家の組み合わせは意外。ロココの軽快な愉悦という共通項でくくりたくなる二人ですが、ディリュカのこれまでの作風で、それがどう料理されるのか、ちょっと想像がつきません。さらに、モダンピアノ以外に、ピアノフォルテでの演奏も収録されているとのこと。あのタッチと音色の細やかなコントロールを身上とする彼女がピアノフォルテ? ますます謎と期待が膨らみます。

膨らんだ謎と期待ですが、予約したCDが届く前にネットでのストリーミング配信が始まってしまいました。堪え切れずに手を(耳を?)つけてしまいました。

C.P.E.バッハと言えば、バロック音楽を代表する父、J.S.バッハとの葛藤、そのバロックの重厚な構築物との対極にある、軽妙な愉悦感にあふれたロココの時代の作曲家として名を残しています。ただ、サン・スーシ(without worry) 「憂い無し」を謳い文句にして、ひたすら明るいこと、心配事すら排除する様なロココ派でありながら、C.P.Eは、それだけにとどまらない、軽快さを基調としながらも、悲しみ、苦しみ、愁いという、もう少し多様な人間の感情を表現する 「感情過多」「多感形式」とも言われていたのですが、自分には今までピンと来ていなかったのです。
(『サンスーシ宮殿でのフルート演奏』 フルートはフリードリッヒ大王、チェンバロ伴奏がC.P.E.)

今回、この演奏を聴いて初めてその意味が分かった、と言いますか、C.P.E.バッハの本当の価値が分かった様な気がします。最初の曲から驚かされたのが、軽やかさ、旋律的な美しさと、哀愁が併存し、陰影のある深みのある音楽が広がっていることです。それと同時に、ロココの音楽としての、軽やかで繊細で、重たさを感じさせない、この不思議さ。モーツアルト以外のロココ風味の音楽で、ここまで情感豊かに、心に染み入る音楽を聴いたのは初めてです。

そう思っている所に、モーツァルトのピアノ・ソナタ2曲が登場します。それも、短調。正しくモーツァルトの短調。「モオツァルトのかなしさは疾走する。涙は追いつけない」という有名な言葉の通りの演奏です。その原点が、優美さ一辺倒のフランス風ロココとは異なる、「感情過多」「多感形式」といわれるCPEバッハにあったということが、ディリュカの二人の作曲家の演奏は明らかにしてくれます。
(あまりに有名なセリフを引用するのは気が引けたのですが)

そして、ここから一歩先に進めば、心の語り声を率直に表現するロマン主義の音楽が生まれてくるのでしょう。それは彼女がこれまで最も得意にしてきた世界です。そう考えてみると、この文脈でC.P.E.バッハの魅力を引き出し、そしてその変容をモーツァルトにつなげて見せることは、ディリュカだからこそ出来たことなのかもしれません。

ゲオルグさんも引用していますが、ブックレットにある彼女の「神の世界に境界線はない、あるのは変容だけ」という言葉を見ても、バロック・ロココ・古典・ロマンという流派の境界線よりも、その美しい変容を示すという課題に意識が向かっていることが分かります。そして、この録音は、その困難な課題を達成した素晴らしい作品だと思います。

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レス一覧

  1. パグ太郎さん

    私も、ジャン・ロンドーのアルバムでC.P.E.バッハの魅力に遅まきながら目覚めました。なるほど単に宮廷的、教会的な美しい音楽から、感情豊かで動的なロココやウィーン古典派の音楽へとつなげていったのはC.P.E.なんですね。

    ゲオルグさんの日記にもレスしましたが、そこには音律の問題と楽器の特性が深く関わっていると思います。音律で言えば、特に調性のキャラクターが生まれ、そこから「転調」の技法が自在となり、嫌われていた3度和音の緊張感のある響きの開拓が進みます。

    楽器は、鍵盤楽器でも強弱表現が可能となったクラヴィーア、ピアノフォルテが隆盛になっていきます。新しいピアノの機構の開発がどんどんと進みますが、そのおかげで響きや残音の長短もコントロールが可能となり、連打の速度も上がっていき、ロマン派の世界へと突き進んでいくわけです。まさに「疾風怒濤」時代の疾走感とはそういうものだったのではないでしょうか。

    大バッハは、うなりの生じない古典音律がまだまだ主流だった時代にミーントーン(平均律)を使用したクラヴィーア音楽を盛んに作曲したわけで、彼の音楽のそういう基質は、バッハの音楽が現代ピアノで盛んに演奏されしかもそれが魅力に富んでいることでも証明されます。C.P.E.は、父のそういう先取性に気づいていたのだと思います。フリードリヒ大王に「時代遅れ」と見なされていた父親を引き合わせたのはそういう父の偉大さを認めさせたかったのではないでしょうか。

    byベルウッド at2019-03-18 00:10

  2. ベルウッドさん

    レス有難うございます。
    今日、通販サイトより悲しいメールが届きまして、CDの発売が3/20から4/20に延期になったそうです。ダウンロードサービスは出来ているというのに、なんということでしょう!

    アルバムタイトルのTempéramentsの意図がどこにあるのか、いつもこだわりネイムングに込められた想いの長文の演奏者自己解説を書いてくれる彼女の文章を読んでから音律との関係を書いてみたかったのですが、残念です。楽器の選択も必ず関係しているのでしょうね。

    byパグ太郎 at2019-03-18 20:40

  3. パグ太郎さん
    今晩は

    ベルウッドさんへのレスを拝見しました。CD発売延期ですか。。。残念!

    アルバムタイトルのTempéramentsの意図については、私が読んだ限りでは「多感形式」の持つ感情の解放という側面、つまりテンペラメントの原義である方に寄せた意味と、ピアノの音律の意味との二重の意味合いを持たせているように思います。ただ細かいニュアンスが読み取れていないので、他に読んで下さる方がおられると助かります。。。

    楽器の選択も、最後の2曲に関しては、楽曲のテンペラメントがフォルテピアノでないと十分に表現できないという彼女の判断があったと解釈していますが、それ以外の側面があるのかな。

    ただ、パグ太郎さんとベルウッドさんの解説をいただいたおかげで、このアルバムの意義というか功績のようなものが、より明確に認識できるようになってきました。

    シャニさんの解説には「神の世界に境界線はない、あるのは変容だけ」の後には、次のような一節が続いています。

    Considering the tragedy of his bitter and vivid life, Mozart leads us to the corridors of spirit designed by Carl Philipp, relying on an unchanging dialectics. There are musical genres that tear veils, but never oppress souls.

    これが私が感じた「テンペラメントの系譜」ってことかな~と思います。

    byゲオルグ at2019-03-18 23:17

  4. パグ太郎さん

    いよいよCDというパッケージソフトは面倒くさいことになってきたようですね。ゲオルグさんのおかげもあって、私は、速攻で入手、昨日から聴いています。

    一方でファイル配信では、リーフレットがついていないので、あまり読まないですね。ディリュカの題名には深謀遠慮があるなどとはつゆ知らず、彼女自身の解題も読まずにいろいろ知ったかぶりの妄想をしてしまいお恥ずかしいかぎりです。

    慌ててpdfのリーフレット本文を斜め読みしてみました。

    "Temperaments"については、冒頭に字義が並列されていて、彼女のこの標題についての謎解きらしきものは書いてありませんでした。

    その字義では、「体質を構成するものの調合」「相反する性質を調和させる配合」などと難しいことが書いてあります。面白いのは「ある厳格さを和らげるための調合」という字義で、これが音楽用語で言う「音律(Temperaments)」に近いですね。

    彼女の解説では、エマニュエルこそモーツァルトやハイドン、ベートーヴェンの『父バッハ』であって、大バッハはその後メンデルスゾーンによって「再発見」されるということになります。息子エマニュエルは当時は最も偉大な作曲家だったんですね。

    バッハの「平均律」は、実は平均律ではありません。世の中には大いなる用語上の誤解があります。音律の歴史は、整数倍の純正の協和音(=うなりのないゼロビート)の厳格さといかに妥協するかの歴史だった言えます。どうしても三度の音程が純正からはずれ和音が汚れてしまう。大バッハはヴェルクマイスター音律における内声の3度の適度な狂いがかえって三和音(3度を3つ重ねた和音)の緊張感の高い美しい響きとなることを発見し、それを多用したと言われています。それが、いわゆるバッハの「よい響きに調律された(Well-tempered)」鍵盤曲集というわけです。

    話しが長く、くどくなるのでやめますが、それがモーツァルトにとって「父」であるエマニュエルに伝承され、色彩に富んだ和声や情感豊かな旋律美となって豊穣な調性音楽の世界を切り拓き古典派の先駆となり、ルバートやレガートなどを説いた鍵盤楽器奏法を確立した偉大な作曲家たらしめたということだと思います。それが私の妄想です。

    子は父を超えていたのです。

    byベルウッド at2019-03-19 10:06

  5. ベルウッドさん、ゲオルグさん

    レス有難うございます。
    ここで愚痴ったのが通じたのか、昨日1カ月遅延の通知が来たと思ったら、今日は1カ月早まって3/21発売になったという通知が届きました。CDというパッケージメディアは面倒な事になっているのは確かなようです。

    ということでリーフレットを手に取るのは少しは早くなりそうです。

    Tempéraments の含意も気になるのですが、同曲を最初と最後に配して違う楽器で弾いて聴かせていることが面白いなと思っています。

    byパグ太郎 at2019-03-19 18:53

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