パグ太郎
パグ太郎
クラシック中心に聴いています。オーディオは手段と考えてはいるものの、気がつくと手段の魔力に取り付かれてしまうことも多く、日々修行をしております。

マイルーム

パグ太郎の部屋
パグ太郎の部屋
持ち家(戸建) / リビング兼用 / その他 / 16畳~ / 防音あり / スクリーンなし / ~2ch
Phileweb登録後1年、気が付くとスピーカー導入していました(2018/6)。所有製品はHRS130ですが、製品DBに登録がないので、一番近いもので代替しています。 10数年愛用したアン…
所有製品
  • スピーカーシステム
    GERMAN PHYSIKS HRS120 Carbon
  • プリメインアンプ
    OCTAVE V110SE
  • ハードラック
    QUADRASPIRE QAVM
  • RCA/BNCオーディオケーブル
    KIMBER KABLE KS-1020
  • 電源ケーブル

レビュー/コメント

レビュー/コメントはありません

カレンダー

    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    

最新のレス

日記
製品レビュー/コメント

製品レビュー/コメントへのレスはありません

お気に入り製品

お気に入り製品はありません

日記

アルゲリッチ・酒井茜ピアノデュオコンサート:音楽の力を引き出すのは「魔法使いのお婆さん」か「地母神」か

このエントリーをはてなブックマークに追加
2019年10月02日

本題に入る前に。
大好きなソプラノ歌手ジェシー・ノーマンの訃報が飛び込んできました。
ワーグナー、R.シュトラウスの新たな魅力を教えてくれた、そしてフランス歌曲の魅力を広げたくれた偉大な歌手の想いでは色あせることは無いでしょう。ご冥福をお祈りします。


********ここからが本日の日記です********

プロコフィエフの『シンデレラ』を、プレトニョフが二台ピアノ用に編曲した作品のこの録音は、何度も弊日記に登場しています。
中でも、真夜中の大時計の鐘と共に、魔法の効き目が失われて全ての夢物語が崩壊していく情景でのピアノの重低音の強打12発が問題。普通に鍵盤を打っている、弦を拳で叩いている、いや、バチで叩いている、いやいや、これは足踏みの音だと、配信の動画証拠やら、編曲楽譜の確認やらを含めて、諸説出てまいりまして、未だ結論が出ていないという状況になっております。

 各説には、夫々、「ご自身のシステムではこう聴こえる」という、音楽・演奏解釈とは別の「熱い思い」も混じりあっているのが、このコミュニティらしい所ではあったのかもしれません。 

さて、その超局所的一大事に、最終結論が示される時が来たのです! 話題の編曲作品を献呈されているアルゲリッチ本人が来日公演でこの曲を演奏するというのです。流石にプレトニョフ自身が登場するのではないのですが、彼女が相手に選んだのは、日本でも海外でも幾度も共演をして可愛がっている酒井茜。これは、積年の疑問を解消する絶好の機会、何を置いても聴きに行かなくては!って、動機としては若干首を傾げたくなるのは否めませんが・・・・。 


ということで、サントリーホールの『酒井茜&マルタ・アルゲリッチ ピアノ デュオリサイタル』に行ってまいりました。このテーマでメッセージなど頂いた皆様方にもお声がけをさせて頂いた中、当日のご都合がついたGRFさんとOrisukeさんのお二人とご一緒させていただきました。プログラムは、モーツァルトの「4手のためのピアノ・ソナタ」、問題の(?)『シンデレラ』、そして後半は『春の祭典』のストラヴィンスキー自身の編曲による2台ピアノ版というデュオ・ピアノ好きには堪らない構成です。 

プロコフィエフやストラヴィンスキーのピアノ編曲版なんて、一般受けしそうにないマニアックなプログラムだと思っていたのですが、アルゲリッチの人気を反映してか、サントリーホールはほぼ満席。それに、女性客の比率が高い。なんてぼんやり考えていると、奏者二人がご登場、さっと座って間も置かずに、いきなりモーツァルトの連弾が始まります。こちらの心の準備も出来ていません。そのためか、若書きのモーツァルトらしい、軽やかで愉悦感あふれる時間の流れを感じることが出来ぬまま終了。どうなってしまうのかという一抹の不安を、次の『シンデレラ』の別人かと思える気合の入った演奏は拭い去ってくれました。

 いや、凄い。何が凄いかというとアルゲリッチの魔法の力です。一見してそれほど力が入っているとか、表現のダイナミックさに驚くとか、そういうことはなく、大きな両手が鍵盤を滑っているだけなのです。それなのに、情景の移り変わり、場の空気や明暗の転換が、その一滑りで演出されていくのです。まさしく魔法使いのお婆さん(失礼)の杖の軽い一振りです。そして、その演出された情景の中で酒井の硬質でダイナミックなピアノが、シャンデリアの煌めきの中で踊るシンデレラの様に跳躍し続けている。こちらは、まだまだ若く、魔法使いのお婆さんに負けるまいと、相当力が入って、表情付けにも工夫を凝らしています。夢見心地で聞きほれている内に、気が付けば大時計12発で、魔法の時間が終わりを迎えてしまいました。いや、凄かった。 

お伽噺の『シンデレラ』でこのあり様です。大地の豊穣の男神に捧げる乙女の生贄の儀式という『春の祭典』になったら、どこまで行ってしまうのだろうかというのが、休憩時間の想いでした。が、後半も最初から最後まで、当方の想いの上を行く飛んでもない演奏でした。『シンデレラ』のアルゲリッチが「魔法使いのお婆さん」なら、こちらは正しく大地・豊穣の「地母神」そのもの(春の祭典に登場するのは、愛欲と大地の豊穣を司る男神ですが)。アルゲリッチの左手から繰り出される重低音は、女神の足踏みの様に、大地を目覚め揺り動かし、大気を震わせる、そういう深いエネルギーを持って、大ホールの空間を包み込んでしまっていました。その春に目覚めた大地の中で、犠牲となる乙女の狂おしい舞踏を酒井の硬質な指さばきが表現していきます。原曲のオーケストラ版でもここまで、原始的な自然の覚醒の力・狂気を描き出している演奏は滅多にない、そういう恐ろしさを感じました。 

もう、呆然として拍手するだけだったのですが、あれだけ弾いた後で、2曲もアンコールに応えるとは。それも、ラヴェルの『マ・メール・ロア』から『妖精の園』と『パゴタの女王』の優しく繊細な美しい響き。フランス音楽の響きに耳が洗われる思いがいたしました。 

ということで、大満足の三人で感想会の祝杯を挙げたのですが、普段であれば丁々発止の感想が飛び出すこの三人が、揃って「何も言うことなし」ということになったという事実からも、その夜の演奏の凄さが窺い知れたのであります。めでたしめでたし。 

えっ? シンデレラの時計12発はどうなったか? 酒井は立上がって手の平で弦を直接叩いていました。でも、会場に鳴りひびいていたのはアルゲリッチの左手の最低音の打鍵の響きで、そこに酒井の弦を叩く異音がかぶさって独特の音色を作り出していたと思います。ただ、それはプレトニョフとの録音とはまた違う印象で、、、。 でも、そんなことは、もうどうでも良くなってしまったというのが本当の所。それこそが音楽の力なのかもしれません。    

次回の日記→

←前回の日記

レス一覧

  1. パグ太郎さん

    昨日は、本当にありがとうございました。

    あんな凄いコンサートを聴く機会を与えていただき、ただただ感謝致しております。

    ストラヴィンスキーでの猛女二名のノーガードでの打ち合いに完全に我を忘れていました。アルゲリッチのあの音の凄みは、いったい何なんでしょうね。酒井茜が鍵盤を「しばき倒す」くらいに全力でぶっ叩いても出てこない音が、なぜ80近い老女が肩一つ動かさず、手を滑らせるだけでカワイのピアノから溢れ出てくるのか・・・・もはや、「魔術」と思わないと納得できないです。

    また、3月に行きたいですね。

    byOrisuke at2019-10-03 00:21

  2. orisukeさん

    レス有難うございます。

    春に祭典のアルゲリッチは大砲打ち込まれている感じと会場では申し上げましたが、もっと深く地の底から湧き上がってくる、でもごく自然で棘がないという気持ちが強くてこういう表現になってしまいました。

    どうしてもアルゲリッチの印象ばかりになってしまいますが、酒井茜も堂々と渡り合っていた、というか自分の個性を十分に表現していて素晴らしかったですね。

    またご一緒させてください。

    byパグ太郎 at2019-10-03 08:53

  3. パグ太郎さん

    一番上のCDは、先日のオフ会でおかけしようと準備していたのですが、時間がなくてカットしてしまいました。何だか予知するものがあったのかもしれません。

    ノーマンは、結局、ナマでは聴けませんでしたが、NYのラガーディア空港でゲートそばのベンチに座っていて、ふと顔を上げたら大柄の黒人女性がいつのまにか真正面に座っていて、目と目があってしまい「あ?」と声をもらしたらニヤリと笑みを返してくれました。それがノーマンでした。


    シンデレラの謎解きはついに決着したということですね。

    バズケロ邸のオフ会が懐かしいですね。普通のピアノの音と違う音がすると言ったのが私で、手で弦を叩いてるのではないかと仰ったのがパグ太郎さんでしたね。空耳だとか、装置のせいだとか、そういう声まで出てきましたが、これでバズケロさんも、パグ太郎さんも私もメンツが立ちましたね(笑)。

    某SNSのコミュでは、パートナー嬢のミスタッチが多くて興ざめだったとの冷評もありましたが、結局は、アルゲリッチのオーラの凄さ、貫禄、熱気で、すっかり吹き飛んだというのがその評者の結末のようでした。

    byベルウッド at2019-10-03 11:14

  4. こんにちは

    アルゲリッチ+酒井茜の春の祭典はCD(2014年録音)持ってます。物凄く気合の入った演奏と録音で、最後に拍手が起きるまでライブ録音だと気づきませんでした。

    (蛇足)
    この演奏って、出だしは綺麗な和音で演奏されているけど、途中で不協和音が入ってきて、特に2曲目の出だしの連続不協和音連打がとても不快で、春祭の初演で観客が怒ったのも、ちょっと飛躍してしまうけど、60年代にエレキギターの歪んだ音を聞いた大人たちが極端な拒絶反応を示したのもの、この連弾を聴いて初めて納得でしました(←どうでもいいですけど)

    本題ですが、シンデレラは聞いた事がなかったので、早速注文しました。楽しみです。

    bykomagome at2019-10-03 12:19

  5. ベルウッドさん

    レス有難う御座います。
    ノーマンは私の中では、この前まで現役という印象だったので、ショックでした。2枚目もPhilips盤の写真にするか、ベルウッドさん、fukuさんに教えていただいたエテルナ盤にするか迷ったのですが、一般の認知を考えてこうしました。指揮者は先日話題になったマズアというのも、因縁?

    シンデレラの謎は、スッキリ解決かというと、プレトニョフとの共演録音とこの部分の響きが違っていたので、微妙ではあります。でもそんなんことは本当にどうでも良いと思える体験だったのです。

    byパグ太郎 at2019-10-03 13:02

  6. komagomeさん

    レス有難うございます。

    不協和音もそうですが、リズムも変ですし、内容も性愛の男神に処女の生贄というテーマで、あれだけ煽れば、騒ぎになったのでしょうね。今では、アマチュアオケでも平気で弾きこなすので、凄いものです。

    シンデレラもお気に召すと嬉しいです。

    byパグ太郎 at2019-10-03 13:10

  7. パグ太郎さん、

    こんにちは。

    レポート、感慨深く拝見しました。
    感動が伝わってきます。
    せっかくお誘いいただいたのに諸事情のため行けなくて…
    大変残念な思いをいたしました。

    やはりアルゲリッチは魔女だったんですね。(笑)
    春の祭典は昔はファジル・サイの自己4手版、最近はサラ・オットとトリスターノの版で聴くことが多いです。

    サラ・オットが裸足の足で床を踏み鳴らしていると思われるところは普通はどう弾くだろうと変なところが気になります。

    ピアノは2台ともカワイだったのでしょうか?

    byK&K at2019-10-03 13:13

  8. パグ太郎さん、こんばんは。

    スコダ、ノーマン、佐藤しのぶと訃報が続いていますね。
    次は、などと縁起でもないことが頭をよぎります。
    来年はこういう事態にあまり遭遇したくありません。

    スゴイ演奏会だったようですね。
    うーん、拙宅からだと遠すぎて何度も往復とはいかないですし。
    羨ましく思いつつ、来年の計画を立てることにします。


    >アルゲリッチの左手
    的外れな考察ですが、彼女の二の腕と指の太さが秘密なのではないかと思います。
    どう見ても一般的な一流の女性ピアニストの1.5倍はありそうです。
    筋肉はその断面積にに比例して力が出るはずですから、少なく見積もっても2倍くらいの力が出せそうです。
    しかも、何本もの筋肉を複雑にコントロールする必要がありませんから、より高精度な動きを長時間続けることが可能になりますね。
    身体全体を使った動きはここ一発という時には非常に有効ですが、それを正確に続けることはとても難しいだろうと思います。
    私自身の経験(未熟なものですが)から言うと楽器の種類に関係なく、大きくて柔らかい音を出すためには地力が必要ですねぇ。
    もちろん、小さくて抜ける(浸透力のある)音を出すのもそうですけれども。

    ということは「魔女」というよりは「マッチョネス」と言った方が良いのかもしれません(笑)

    byfuku at2019-10-03 21:06

  9. K&Kさん

    レス有難う御座います。K&Kさんなら、どういうご感想になるのだろうという思いが頭をよぎった演奏会でした。

    いえ魔女ではなく、「魔法使いのお婆さん」です。魔法使いは弟子入りしたり学校に通って、知恵と技術を習得し初めてなれる賢者ですが、魔女は血筋で生まれつきなるもの(なんのこっちゃ?)。

    2台ともカワイだったと思います。東方の席からは片方しかエンブレムは確認できませんでしたが。

    byパグ太郎 at2019-10-03 23:14

  10. fukuさん

    レス有難う御座います。

    確かに手の大きさ腕の太さは目につきましたね。おまけに左利きなんだそうで。やはりあの音と響は、物理的な力によるものなのでしょうか。何事も物語に仕立てたい人間にとっては、やはり神秘的な技のせいにしておきたいのです(笑)。

    byパグ太郎 at2019-10-03 23:21

レスを書く

レスを書くにはログインする必要があります
ログインする