パグ太郎
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クラシック中心に聴いています。オーディオは手段と考えてはいるものの、気がつくと手段の魔力に取り付かれてしまうことも多く、日々修行をしております。

マイルーム

パグ太郎の部屋
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持ち家(戸建) / リビング兼用 / その他 / 16畳~ / 防音あり / スクリーンなし / ~2ch
Phileweb登録後1年、気が付くとスピーカー導入していました(2018/6)。所有製品はHRS130ですが、製品DBに登録がないので、一番近いもので代替しています。 10数年愛用したアン…
所有製品
  • スピーカーシステム
    GERMAN PHYSIKS HRS120 Carbon
  • プリメインアンプ
    OCTAVE V110SE
  • ハードラック
    QUADRASPIRE QAVM
  • RCA/BNCオーディオケーブル
    KIMBER KABLE KS-1020
  • 電源ケーブル

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メジャーレーベルの新進指揮者・埋もれた作曲家の売り出し術にハマる、あるいはバルト諸国の「暗さ」について

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2020年01月11日

昨年末から弦楽器、ピアノの若手発掘が、続いておりましたが、今日取り上げるのは指揮者ミルガ・グラジニーテ=ティーラ(リトアニア出身 1986年生)です。
ただ、この指揮者、バーミンガム市交響楽団(CBSO)の音楽監督を2016年から務めているという意味では、昨年末から続けて取り上げている「若手」ではないかもしれません。何せこの団体の音楽監督といえば、ラトル、オラモ、ネルソンスと続いており、ここを卒業すれば次は超一流のメジャーオーケストラという注目のポストなのです。そこに、30歳の若さ(指揮者でこの年齢は小僧っ子、いや小娘なわけですから)で就いている以上、並の指揮者ではないはずです。

その注目の彼女がドイツ グラモフォン(DG)と専属契約を結んで最初に出したのがこの録音。
「同レーベルと専属契約を結んだ最初の女性指揮者」などという広報PRの巧みさもあってか、グラミー賞のオーケストラ部門で入賞候補に入り込んでいますので、目にされた方も多いかもしれません。

ただ、取り上げた作品というのがヴァインベルクという作曲家の交響曲2番と21番。ヴァインベルグって誰? 何々、1919年ワルシャワ生まれのユダヤ系作曲家で二次大戦と同時にソ連に亡命、ショスタコーヴィッチの影響を強く受けた作曲家、、、、。これは比較対象のないフィールドで新進指揮者を戦わせようというDGの高等戦術か?などと勘ぐりたくなる選曲です。でも大戦間の東欧生まれのユダヤ系音楽家と知ると、捻くれ者の血が騒いでしまい、つい手を出してしまいました。

結論から申し上げると、聴いて良かったと思いました。まず、この作曲家をちゃんと聴いてみたいと思わせてくれたということです。

20世紀初頭のポーランドにユダヤ人として生まれることは、その後の歴史の酷薄な力に翻弄されることを運命づけられてしまったということです。予想通り、19世紀から激しさを増していたユダヤ人排斥、大量虐殺(ポグロム)で彼の曽祖父、祖父は殺され、両親と妹は大戦中のナチスの強制収容所で殺されています。そして本人はといえば、ドイツのポーランド侵攻を避けてソ連に亡命するも、戦後はスターリンの反ユダヤ主義運動の批判の的となり逮捕されてしまいます。が、スターリンの死により救われたという、20世紀前半の歴史を体現しているような生涯です。

二枚組のCDを通して流れているのは、重い低域の持続音です。暗い。でもその暗さには漆黒から薄明に至る微妙なグラデュエーションがあって、その変化の美しさがこの作曲家の魅力だと感じます。勿論、多大な影響を受けたというショスタコーヴィッチを感じさせる所、お約束の(?)ユダヤ風の哀愁を帯びた戯けたリズムと旋律、祖国ポーランドの英雄ショパンの引用などなど、色々な要素や工夫はあります。が、それらは単なる逸話とか素材でしかなくて、「墨色の階調」と呼びたくなるものこそ、この作曲家の本当に描きたい世界だったような気がします。

彼の最後の交響曲である21番は『カディッシュ(ユダヤ語で聖なるもの)』というタイトルで、ゲットーの犠牲者への追悼がテーマだそうですから、より劇的で激しい表現が見られます。一方、2番は、より叙情的で、やっとやって来た春の兆しを含んでいる、でも未だ夜明け前、とでも言いたくなる仄暗い中に優しさを湛えた音楽です。21番の結末の闇に中に消え去っていく響き、それに続けて2番の冒頭が流れると、救われる思いと同時に、その対比の美しさに息を呑むほどです(でも、本来の聴き方ではありませんね)。

初めて聴くティーラの指揮ですが、この精妙な諧調の描写をオーケストラから引き出している手腕、そして緊張感、集中を持続させる構成力には、やはり只者ではないと思わせるものがあります。

もう一つ忘れてはいけないのは、ヴァイオリ二ストのギドン クレーメル率いる弦楽アンサンブルである「クレメラータ バルティカ」が、CBSOに参加していて、21番のヴァイオリン ソロはクレーメルその人が演奏しています。
(リハーサル中の二人。クレーメルは最近、ヴァインベルグの普及に熱心で、ECMから手兵と共に、続けて作品集をリリースしている様です)

指揮者はリトアニア、ソリストはラトビア、作曲家はポーランド、協力アンサンブルは団体名にバルティカを冠している、皆さん、ドイツとソ連に挟まれたバルト海沿岸諸国の出身者達。印象的だった重く暗いモノトーンは、どこかペルトに通じるものがある様な気がしていたのですが、ぺルトもバルト三国のエストニア出身。同じ空気を吸って生まれ育った人達の、自然や時の積み重ねに対する独特の感性がここにあるのかもしれません。「20世紀の東欧・ユダヤ」という文脈でこの録音に手を出しましたが、バルト海諸国の美しい「暗さ」に引き込まれてしまう結果となりました。

でも、この未知の曲だけでは、若い指揮者の魅力が全て出尽くしているはずもなく、次はもっと聴き慣れた曲を聴いてみたいと思わずには居れません。ウムム、これはDGの戦術にまんまとハマっています。おまけに、この作曲家の曲を他にもちゃんと聴いてみたいと思っている所に、これまたこういう録音が出ました。全く、このレーベルの遣り口の何と巧妙なことか、、、、。

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  1. こんばんは

    ヴァインベルグ、生誕100周年なので、結構な勢いで録音が増えたんですね。意外にホットスポットになっていたようで、気がつきませんでした。私、クレメラータ・バルティカはちょっと苦手なのですが、ミルガ女史は、かなり気になります。ルックスがどことなくイブラギモヴァに似ていたりして・・・(汗)。まあ、スタートは東欧ものから入るとしても、あのCBSOがそれだけで音楽監督にするはずも無いですし、20世紀音楽全般に適性があるのかも知れませんね。DGとCBSOにはなにやら魂胆がありそうです。せめてバルトーク、ショスタコ、ブリテンあたりを入れてくれると、何となく特徴が見えそうですけど・・・。正体が分からない段階で重要ポストにスッポリ収まっているという意味では、キリル・ペトレンコもそんな感じですよね。これから何が出てくるのやら、面白くなってきました。

    byOrisuke at2020-01-12 22:12

  2. Orisukeさん

    レス有難うございます。

    >イブラギモヴァに似て

    確かに。ミルガさん、写真によって印象が随分違いますね。

    今年は、CBSOを率いてルツェルン音楽祭に登場するらしく、演目として、シベリウス「レンミンカイネン」、サンサーンス・チェロ協奏曲、ドビュッシー「海」、サミュエル・バーバー「アダージョ」、バルトーク・ピアノ協奏曲、ホルスト「惑星」などが並んでます。

    一方、経歴を見ると、ハイデルベルク市立劇場→ベルン歌劇場→ザルツブルク州立劇場という地方歌劇場でキャリアアップしてきています。ここだけ見ると往年のマエストロの様です。

    今後が楽しみです。

    byパグ太郎 at2020-01-13 08:30

  3. おはようございます。

    ミルガさん、最終トラックの2分50秒くらいから、自分で歌ってるんですね。

    「ラミンタ・シャルクシュニーテ: 作品集」は、配信だけではなく、DVD付きのCDも買うか迷うところです。

    今年も、音源紹介楽しみにしています。

    byきょや at2020-01-13 10:50

  4. きょやさん

    レス有難うございます。

    最終トラックのソプラノは指揮者自身という情報と、別の歌手だという情報と両方あるみたいですね。どちらが本当なのでしょうね。

    DG2作目は、これまた聴いたことのないラミンタ・シャルクシュニーテというリトアニアの作曲家という所までは知っていても、何故か手出しできずに止まっています。

    byパグ太郎 at2020-01-13 12:43

  5. パグ太郎さん、こんにちは。

    期待のニューフェイスのご紹介、ありがとうございます。
    確かにDGのようなメジャーレーベルで女性指揮者の名前を見ることはありませんでしたから新鮮な感じがしますね。
    これからが楽しみです。

    >ヴァインベルグ
    と聞いて昨年買って積んでしまっていたChallengeClassicsのディスクを聴いてみました。
    確かに仄暗い響きですが、同時に柔らかく温かな光が差し込むようなイメージを思い浮かべてしまいました。
    メモリアル・イヤーではありますが、新たなレパートリーとして定着して欲しいです。
    まあ、ディスクの営業的には難しそうな気もするのですが、そのあたりは何か大人の事情があるのかもしれませんね。

    そのあたりをレーベルでなんとかクリアしてもらって積極的なリリースを期待したいです。
    ECMでの録音がなければペルトの音楽に触れる機会はおそらくなかった気がしますし。

    byfuku at2020-01-14 08:25

  6. fukuさん

    レス有難うございました。
    新ウィーン楽派のマーケットをカラヤンを使って創り出した前歴の有るDGですから、「120年の歴史初の長期専属契約を結んだ女性指揮者」を使って、「バルト楽派」の売り出しを狙っているのかもなんて妄想しています。

    byパグ太郎 at2020-01-14 23:00

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