無響室の中で全ての音情報を細大漏らさず勢いよく鳴らすような、色気も味わいもないがとにかく音をモニタリングするという意味では本当に優秀な機種です。スピーカーで聴くのが主であっても、音源や機器の調子を探る上でもヘッドホンというのは手元に常に必要です。そういう場合、できれば密閉型がいい。でも低音スカスカだったり高音キンキンだったりしては聴いていてつらい。どうせなら優秀なものが欲しい。そんなニーズには実によくあう機種です。
ただ、高解像度というか音の分離がよいというか、細かい音を拾い上げる力は強力ですが、ホールトーンや弦楽器の倍音等の、微妙で漂うような響きが間引かれているような印象があるのも事実です。無響室風の音響というのもその辺から来るのでしょうか。弦楽器の音色に注目すると痩せて聞こえるというか、微妙に変質しているように聞こえます。実際には音を「間引く」ようなことはしてないでしょうから、どうしてそうなるのかイマイチ分かりませんが…。
また自然な音場感の再現にも弱点はあります。ヘッドホンで頭内定位だから当然とも言えますが、STAXの静電開放型の機種はその種の情報をホログラムのように再現する能力が優秀であることを考えると、やはりこれは弱点と言わざるを得ません。S-LOGICという音場再生機能も、私にはあまり有効に働いていないようです(かなり個人差があるそうです)。そういうところに限って言うと、STAXの静電型ヘッドホンの方が優れています。というわけで私の場合、この機種とSTAXのとはどうしてもすぐ手の届くところに置いておくことになります。もっともEdition9は密閉型ですし、音を明瞭に拾い上げしっかり聴かせるという点でいえば、これほど優れたものもありません。
また低域の重みのある音が迫力豊かに再現されるのも、聴いていて面白さを感じます。たまにメタルなんかを爆音で聴きたくなったときには重宝しますね。
問題は、とにかくその価格の高さでしょうか。本格的にスピーカーやアンプを揃えることを思えば低額であるとはいえ、実用的な意味でいいヘッドホンが欲しい、というくらいの動機ではちょっと退いてしまう値段です。基本性能が異常に高い機種だけに、ヘッドホンマニアだけのアイテムになるのはもったいない気がします。
【SPEC】●再生周波数帯域:8Hz〜35kHz ●インピーダンス:30Ω ●出力音圧レベル:96dB ●ヘッドバンド側圧:5.2N ●質量:310g(コード別)