Arc Acoustics
Arc Acoustics
ワタシハオンキョウチョットデキル  生まれ付いての不精者で飽きっぽいので多分大した事書きません。 訂正やご要望などのご用件は是非メッセージにてお寄せ下さい。  拝読した上で妥当なご指摘や内容…

日記

最新の日記
カレンダー
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30    

最新のレス

日記
製品レビュー/コメント

製品レビュー/コメントへのレスはありません

お気に入り製品

お気に入り製品はありません

お気に入りユーザー

お気に入りユーザーはありません

最新の日記

VituixCADにPreference ratingの算出が実装されました!

自作・改造派向けの情報です
既に理論派スピーカー自作界隈をざわつかせていますが、SPINORAMAの算出等極めて高機能な唯一無二のスピーカー設計支援ソフト、VituixCADにPreference ratingの算出が実装されました!
今まで一々データをワークシートに投げてスコアを算出しては一喜一憂していた一部の変態達は狂喜乱舞しております。
(実はメールで機能改善・追加要望を出していたのですが、まさか本当に実装してくれるとは!)
去るゴールデンウィークに開催されたオーディオ勉強会自作スピーカー マスターブック オフィシャルサイトでも紹介されましたSPINORAMA、Preference rating、VituixCADと、参加者の方々にとっては大変ホットな話題かと思います。
是非お試し下さい!

SPINORAMAとは
以下に示すANSI(米国規格協会) CTA-2034-Aとして定められた、スピーカーの放射特性を含む物理特性を表現するための、業界標準のフォーマットです。
(但し実線は想定値、破線は比較用の同軸3wayモニターラウドスピーカーGenelec 8341A)

ラウドスピーカーの軸上及び5°若しくは10°刻みの
水平軸外特性 (5°刻み)
垂直軸外特性 (5°刻み)
から

・軸上周波数特性 (ON: ブラック)
・一般的な聴取環境での3人掛けソファーを想定した水平+/-30°垂直+/-10°のエリアの平均周波数特性を示すリスニングウインドウ (LW: ライム)
・典型的な部屋で想定される周波数特性 (PIR: グレー)
・典型的な部屋を想定した初期反射 (ER: ブルー)
・角度毎にウエイティングを与えて算出するパワーレスポンス (SP: レッド)
・指向性を評価するためにリスニングウインドウ(若しくは軸上周波数特性)で正規化した、パワーレスポンス及び初期反射の指向性指標 (SPDI: レッド/ERDI: ブルー)
を求めて表示します。

Preference ratingとは
良い主観評価を得るラウドスピーカーが100-16kHzに於いてフラットな軸上特性と滑らかな軸外特性、そして伸長した低域を持つ事は古くから知られています。
これは遡る事35年前、ハーマン研究所のトゥール博士らが行った主観評価実験により示されましたが、感覚的にも当然の事と言えましょう。
一連の研究から、3次元的に測定されたデータを実用的に表現するフォーマットとして、後にANSI(米国規格協会) CTA-2034-Aとして規格に採用されたSPINORAMAが生まれます。
更に今から15年前には、同じくハーマン研究所でダブルブラインドテストのために作られたスピーカーシャッフラーという専用設備を使って行われた大規模な主観評価実験に基づき、物理特性から算出する主観評価の予測式が求められました。
これがオリーブ博士によるPreference ratingで、SPINORAMAから算出したスコアとダブルブラインドテストによる主観評価は、実にp≦0.0001の有意性とr=0.86もの相関を示します。(AES Paper 6190)
勿論モデルの限界はありますが、大規模な主観評価実験に裏打ちされたこれらの要素は、良い主観評価を得るラウドスピーカーを作るのであれば最低限クリアすべき必要条件である事に最早疑問の余地はありません。
スコアは約30%のウエイトを低域が握っていますが、低域はサイズやコストとのバランスで決まるため、より純粋な設計のレベルを見る場合にはラウドスピーカーの低域特性を無視してf6≒14.5Hzのサブウーファーを仮定したwith subスコアで評価します。

現在の数式ではwith subで他の3要素がパーフェクトの場合(NBD_ON=0.0、NBD_PIR=0.0、SM_PIR=1.0)に10.0ポイントに達します。
良い設計のラウドスピーカーの目安(必要条件)としては、with subで8.5以上が妥当なように思われます。
折しも自作スピーカー マスターブック著者であり、オーディオ勉強会のプレゼンターの一人でもあるだしさんが3万円という低予算でEstimated preference rating 6.0を目指し連載中の記事Śiva Projectが、その低域限界からwith subに換算すると8.5に相当します。

市販されているラウドスピーカーの一部のSPINORAMA及びPreference Ratingは
pierreaubert.github.io
Speaker Data
等で公開されています。
With subのランキングはNeumann、Genelecといった軸外を綺麗にコントロールしているモニターラウドスピーカーがトップを独占し、そして設計のレベルはかなり落ちるもののまずまずの特性を有するRevelやKEFのコンシューマーラウドスピーカーが続きます。
一方で、Bowers and Wilkins等のハイエンドと認知されているコンシューマーラウドスピーカーが、その実無頓着と言う他無い劣悪な特性を有している事に、些かのショックを受けられるかも知れません。
(尤もB&Wの独特な形状は、少しでも音響を分かっている人には測定するまでも無く壊滅的な指向性を見て取れる、悪い設計の典型例なのですが。笑)

VituixCADとは
Kimmo Saunisto氏による、世界的にも最強の呼び声高いスピーカー設計支援ソフト(シェアウェア 非営利無料/支援歓迎)です。
多機能でありながら直感的で初心者にも使いやすいインターフェイスを備えており、
クロスオーバーの自動設計、エンクロージャー、バッフルディフラクション等の多彩な設計支援機能に加え、
測定データの後処理、業界標準のSPINORAMA(ANSI/CTA-2034-A)や今回追加されたPreference rating等による物理特性の客観的な評価が行えます。
ユーザー・スポンサーにはHarman、Revel、JBL、amazon、MAGICO、Sonus faber、Harbethといったメーカーがその名を連ねています。
使用方法はヘルプページや、自作スピーカー マスターブック オフィシャルサイト VituixCAD 紹介ページにて紹介されています。



8/23 追記: 自作スピーカービルダー向けの内容だったが,一般の方が購入検討時にスコアやSPINORAMAを考慮する場合を想定し,データを読む時に注意すべき事項を追記

・私のコラムよりも,読むべきは
原典である
A Multiple Regression Model for Predicting Loudspeaker Preference Using Objective Measurements: Part I - Listening Test Results, by Sean Olive
A Multiple Regression Model for Predicting Loudspeaker Preference Using Objective Measurements: Part II - Development of the Model, by Sean Olive
や,
Sound Reproduction - The Acoustics and Psychoacoustics of Loudspeakers and Rooms, Third Edition, by Floyd E. Toole
そして講演動画の
Floyd Toole - Sound reproduction – art and science/opinions and facts

出来ればその全てと言いたいところですが,先ずは講演動画だけでも目を通して,ご自身で良く理解して下さい。
また,Sound Reproductionはその内容の質と浸透力,実用性に加え,トップクラスの研究者が専門的な内容をオーディオファイルに説くという,専門書でも単なるオーディオ本でも無いその独特の立ち位置からも,理論派オーディオファイルの必携書と言えます。
きっと長さ1インチ当たり$50のケーブルよりも,厚さ1インチ当たり$50の本の方が音を良くする事でしょう。


・スコアや測定の話題は,大変反感を買いやすい情報である
オーディオファイルには,感性を統計上で扱われる事に(それが感性に沿った評価法を構築するためであるにもかかわらず!)強い抵抗を示す方がいらっしゃいます。

一部のメーカーと既存の顧客層がある種のエコーチェインバーのように機能する事で代を追う毎に先鋭化してしまい,ハウスサウンドと言えば聞こえは良いものの,その実かなりまずい状況に陥っています。
ブラインドテストに於いて人の聴覚が求める音と売れる音の乖離も問題です。
横並びの比較試聴では他の製品に対し目立つ派手な音が選ばれがちで,中庸な製品は売り辛いのです。

その現実や脱却の難しさを身を以て知っているのは他ならぬHarmanでしょう。
HarmanはJBL,Infinity,そしてRevelを擁しますが,実はこうした新世代のアプローチによる設計はJBLの民生品では受け入れられず,Revelの製品群として結実しているという経緯があります。

またスコアである以上序列が生じますし,欠点を明らかにする事にもなりますが,それを快く思わない方もまた少なくありません。

従って,多くのオーディオファイルに受け入れられる事を目的とするならば,あまり相応しいコンテンツとは言えず,寧ろ敵意を向けられる可能性もあります。


・スコアが悪いラウドスピーカーは概ね悪いと言えるが,ただスコアが良いだけで良いラウドスピーカーと言える保証は全く無い
従って,単純なコスト/パフォーマンスの2軸で捉えるべきではありません。
例えば極端に狭い指向性は安定した聴取が不可能になるため避けるべきですが,そうした製品は乱れがちな軸外特性のレベルが低い分,寧ろ良いスコアを出す可能性があります。
また,スコアには様々な抜け穴があり,意図的かは不明ですがスコアをハックするような特性のスピーカーも上位に入っています。

ソースデータの質に問題が無いか,スコアが考慮していない要素に問題が無いかにも,注意を払う必要があります。
こちらのサイトpierreaubert.github.ioでは,Klippel NFSの生データから得られたもの,SPINORAMAをスキャンしてデータ化したもの,疑似無響室測定によるものが混ざっています。
極端な例はGoogle Nest Audio (5.5/7.6)とMagico A3 (5.5/7.5)です。
これらは見掛け上殆ど同じスコアを有しますが,Magicoがリリースしたデータには30Hzまでしか載っていないため,LFXのスコアが実際よりも悪くなっています。
また,Google Nest Audioは恐らくグリルを外せば更に良くなりますが,オーディオ機器としては歪み率が悪い,低域のアクティブなブースト/カットが顕著など,スコアには表れない大きな問題を抱えている事は明らかです。
(それ以外にもNFSが低域で球面調和関数の次数を制限してしまうために,測定法によっては低域の発音源が離れて配置された構成のラウドスピーカーのLFXが悪化している等の問題もある)


・スコアが何故,どのように悪いのかまで踏み込んで見るべき
パーフェクトな製品が無い以上,欠点は製品の性格をより強く反映していると言えます。
スコアよりもその元となったSPINORAMA,そしてSPINORAMAよりもその元となった軸上・軸外特性は,より多くの情報を含んでいます。

例えば指向性が良く音圧周波数特性が悪い場合,それはSPINORAMA上では滑らかなDI/ERDI(右軸),軸上と連動して上下するER/PIR/SP(左軸)として現れます。
この場合はイコライザの使用により,問題を大幅に軽減できます。(e.g. Presonus Eris E5 XT)

低域の伸長が不足している場合の多くは,コストやサイズ,最大音圧といった要求仕様とのバランスで決まっているので,用途に合った物を選ぶと良いでしょう。

DIが悪い場合は指向性が悪い(*)ため,仮に軸上が滑らか/フラットであれば滑らか/直線的なPIRは得られませんし,PIRが滑らか/直線的であれば滑らか/フラットな軸上は得られません。
指向性が悪いスピーカーでは直接音と初期反射音の一貫性が得られない事,その修正が困難である事から,避けるべきと言えます。
(* より踏み込んだ話をすると,水平指向性と垂直指向性が相補的に悪かった場合,トータルのDIは平均化されてしまうので,良いDIが良い指向性を示すとは限らない)


・スコアにはポジコン/ネガコンの限界があり,良いスピーカーは最早その限界を超えている
私がスピーカーを設計した上での感触としては,軸上フラット/軸外スムーズという原則に従って真っ当に設計すればwith sub 8.5程度までは到達しますが,それ以上はそれぞれの設計思想によって異なるでしょう。
特にモニターラウドスピーカーに多い,モノポールから定指向性へと遷移するタイプの設計はPIRが折れるため,SM_PIR=PIRの線形回帰直線の決定係数のペナルティが(私見では不当に)重くなります。
従ってより高いレベルでの比較を行う場合は,ソースである軸上・軸外特性その物の評価に立ち返るべきであると考えます。
拙作では要求仕様から自ずと定まったターゲットレスポンスとスコアの相性が良かったために高いスコアを得られそうですが,これが良く出来たモニターラウドスピーカーよりも好ましい指向性と言えるかは分かりません。


・その他の私個人の意見
・指向性が整っている限りその広さ/狭さはスコアにほぼ影響しないが,指向性の強さには嗜好(≠優劣)があると感じているため,自らの嗜好を把握すべき
・モノフォニックでのテストは軸外特性の乱れがマスクされにくいが,指向性の強さの嗜好には影響し得るので,指向性の強さの嗜好評価を行うならばステレオフォニックでテストすべき
(より広い指向性はモノフォニックにより不足する側方反射音を補うため,広指向性有利になる)
・LFXに帯域制限や帯域によるウエイトの変化が無いのはまずい
(約1.3ポイント/Octで増減する)
・他にも考慮すべき要素はあるよね
(各種非線形歪み,群遅延,コンプレッション,ポートノイズ,最大音圧,見た目…)


8/29 追記: 100-16kHzと書いていますが,厳密に言えばNBDは100-12kHz,SMは100-16kHzです。
でもグラフ目一杯に綺麗な特性が広がっていた方がちょー格好良い(頭弱ガバガバ理論)ので頑張って100-20kHzまで整えましょう。

尚このコラムはVituixCADの制作者に要望を出して実装して頂いた手前,最低限周知に努めなければという義理から実に2年半ぶり(多分)に書いたものです。
書いて数日は一応チェックしていたものの,週が変わり,月が変わりともなれば放置に近くなると思いますが悪しからず。
何か分からない事があったらリンク先の論文やソフトウェアのヘルプページでも読んでちょ。

最新のレビュー/コメント

レビューはありません

マイルーム

マイルームは公開されていません

所有製品

所有製品は登録されていません