日記
第426話 価値とは何か。
2022年11月30日
3月に家が火事になった。全焼だった。
翌日の現場検証で、消防職員から家がいつ倒壊するかもしれない危険な状態だと告げられた。
それから一ヶ月程して、いよいよ数日中に家の解体が始まる時、せめてオーディオがある自分の部屋を一目見ようと、危険を承知で家の中に潜入してみた。
恐らくアキュの50周年記念である1000シリーズのプレーヤーを最速でスクラップにしたのは私であろう(爆)




幸い、家族も無事、近所への被害も無かったのは本当に良かった。
日がたつにつれ、しだいに気持ちが落ち着いていった。そこでオーディオについて、今まで自分が大切だと思っていたモノが、実は違っていた事に気が付いた。
オーディオを趣味にしていた身として、音が良いオーディオ関連の製品を優先して選択することは自然な流れだった。故に音が良いモノに価値があると思い込んでいた。しかし、これはオーディオ製品を選ぶ時の単なる目印に過ぎなかったのだ。
価値を経済的に説明すると、求める人の数と言えるが、個人的なオーディオにおける価値は、費やした時間の多さという結論に至った。
今回の火事で、家族を除いて真っ先に頭に浮かんだのが、大瀧詠一のロングバケーションのCDだった。所謂、初期盤というヤツだ。
このアルバムがリリースされたのは、自分が10代前半の頃で、親友がAurexのカセットデッキを買ったのだ。しかも最新のノイズリダクションであったadres搭載機で、自分は、もの凄〜く羨ましかったのだ。当時は高価なレコードはカセットテープにダビングして、レコードはキズが付かないように大切に保管するのが常だった。その大切なレコードにロンバケがあったのだ。
友人宅で聴いたAurexの淡いグリーンに彩られたVUメーターを見ながら聴いたロンバケ。後に自分がオーディオに興味を持つ大人になって、このロンバケがCD第一号という記念すべきCDである事を知る。あのロンバケがこんな歴史的なCDだったとは・・・。この時、自分の中でこのアルバムは頂点になった。十代で親友と聴いたロンバケは、自分と関わった時間の長さにおいて、どんな高音質な盤にも代えられない価値になった。
また、この初期盤を手に入れるのに、数年かかったことも影響しているだろう。
知っている人は知っていると思うが、このCDは音が悪い。初期の35DH1はレベルが低すぎだし、2ndは今度は音が大きすぎて、機器によって音が歪みっぽく聴こえる始末。3度目でようやく納得できる音量でプレスされたというこのCD。なので今回の火事で、どんな高音質な盤よりも、この音が悪いロンバケを頭に思い描いた事実は、自分の中で高音質という要素は価値が無かったことに気が付いたのだ。
なので、家に潜入して、この音が悪いロンバケのCDを見つけた時は、本当に嬉しかったな〜!
もう、他は要らないと。
アキュも私からしたら大変高価で、このような状態になったことは本当にショックだった。だが買ったばかりだからこそ思い入れも浅く、結局、金で買えるモノはそんなに愛着も湧かないのかも知れない。
時間をかけると言えば、火事になる前は、付属の電源コードのセッティングにこだわっていて、人によっては、インシュレーターやルームチューニングがそれに当たるだろう。
このようにオーディオにおいて、何に時間を費やし、何を思い巡らし、そしてその時間が長くなればなるほど、その対象は他には代えられない価値になる。
先月、家が完成した。
小さいながらもオーディオ部屋も確保した。
そしてこのコミュが、今日限りだという。
来週、ここに新たなオーディオ機器が到着する。
それは自分のブログで記そうと思う。
新たなオーディオ機器は、MQAを主体にする完全なストリーミング&ファイル専用機でCDPはない。この先、CDを大量にストックしていく生活はイヤだというのが理由だ。
しかし、音質的にはCDやレコードといったメディアの方にアドバンテージがあると思うし、年代によるメディアの音質の差というのも、正直、面白いと思う。
音が良い故に自分には価値がない。
今度のオーディオのコンセプトは、「音質にこだわらなければ、オーディオはこんなにも楽しい」というもの。
レコードは再開するつもりだが、Bluetoothを使ったワイヤレスにするつもりで、MQAから新たなコーデックであるMQairを採用したプレーヤーがリリースされるのを今から期待したい。
それにしてもスマートスピーカー、音楽の選曲やラジオの選局を声で操作出来るって、こんなに快適だったんでね。
もう、オーディオ要らないかも.・・・
レス一覧
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あぁ…、アキュが…、Heliconが…。泣
ご家族が無事でよかったですね。
byHermitage at2022-11-30 22:08
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試聴記さん
そんな事があったんですか… (-_-メ)
これを機に 変わろうとされているのですね。
音楽は どの様な形であれ 心を豊かにしてくれます
オンガクは音を楽しむと書きますが オーディオでは「音が苦」に成ったりもします。 まぁー 苦の先には楽が来ると思い それも楽しんでいるのが オーディオを趣味と言う輩の宿命ですかね (^^)/
色々と大変でしたでしょうが ご無事で 新しい生活がスタートする事に お祝いを申し上げます。
アコスの住人。
byアコスの住人 at2022-11-30 22:21
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辛すぎるイントロでしたが、貴重な価値観の再構築ですね。
矢切亭主人も少しだけ経験があります。
とにかくご家族が無事で、そして再スタートが切れると伺って安心しました。
by矢切亭主人 at2022-11-30 22:22
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火事からの再開は大変だっととお察しします。
思い出のCDが見つかって良かったです。
ここは閉鎖されますが素敵なオーディオ人生になる事を祈っています。
byヒロ803 at2022-11-30 22:25