日記
Anti-Mode 2.0 Dual Core導入レポ(4)システムへの組み込み
2013年10月05日
続きです。
※今回の記事は特に私の主観と憶測が強く出たものです。正確な情報はご自身で調べるなり、販売元に直接問い合わせるなどして確かめてください。
【1】デジタル接続(S/PDIF(光)→S/PDIF(光))
オーディオ好きにはどこかに「イコライジングは音質劣化を招く!」「どうしてもEQかませる場合はデジタル段で!」というアタマがあると思います。私もそうでして、AM2DC購入当初はデジタル接続以外に考えていませんでした。また私自身、
>とりあえずデジタル(光)接続してみましたが、懸念していた音質変化は、MAJIK DS -> DP700のコアキシャル接続と比べても、ざっと聴く限りではありませんでした。ホッと一息。
と以前に書きました。
しかし結論を先に言えば、これは撤回せざるを得ません。

(a)MAJIK DS ->[Toslink]-> DP700 ->…
(b1)MAJIK DS ->[Toslink]-> AM2DC ->[Toslink]-> DP700 ->…
(b2)MAJIK DS ->[Toslink]-> AM2DC(バイパス) ->[Toslink]-> DP700 ->…
以上のように接続し音質変化を比較観察します。なお、ボタン一つで音場補正フィルタはバイパスすることができ、補正前後の音質変化についてはたいへん容易に比較ができます。バイパスすると、写真のようにディスプレイが赤基調になります。

(b1)と(b2)だと(b1)が優れているのは、今まで書いた通りです。ところが問題は(a)と(b1/2)の比較です。つまり、AM2DCを挟むことで何か音質上の変化があるのかどうか?という点です。
これについては、2つの大きな変化を感じ、特に2つ目の理由で、いったんデジタル接続は中止するに至りました。
(1)(a)→(b)で音量が低下する。
リスニングポイントで簡易計測すると約8dBもの音圧低下があります。調べると理由は2つあって、
(i)本機には何らかのデジタルフィルタがデフォでかかっているらしく、それで約2dB程の音量低下がある。
(ii)部屋に音場補正かける際にヘッドルームを自動で設定するが、それが拙宅の場合6dBである。
つまりあわせて約8dBの音量低下が拙宅では発生するというわけです。このこと自体は、ボリュームを上げれば済むことなので大きな問題ではないと言えます。
(2)(b)は(a)に比べどうも音場が平板な気がする。
音量を上げてもどうも払拭できなかったのが、この点です。音圧は上がるが、音場が若干平坦というか平板になり、どうも窮屈な印象なのです。これは最初はあまり気にならなかったのですが、時をおうごとに気になってしまいました。
どうしてこのように感じるのか、結局理由はわかりません。私の気のせいかも知れません。16bit音源を16bitで出力するとき、DD変換中にヘッドルームを設定するなら必然的にダイナミックレンジは縮小しなくてはならないはずで、それが理由か?とも憶測しましたが、確証はありません。
しかしいったんそうした迷いが生じると、落ち着いて音楽に集中できなくなるのも事実です。
【2】アナログ接続(RCA→RCA)
そこで当初は予定になかったアナログ接続を試してみました。
しかしご理解いただけると思いますが、既存のシステムのアナログ段にこうした機器を挟み込むのはそれなりの心理的抵抗があります。
(c)C2410 ->[Unbal.(KS1011)]-> AM2DC ->[Unbal.(KS1011)]-> A45...


しかし結果は予想を上回るもので、少なくとも拙宅では、純粋デジタル接続より確かに良い出音(平板さの除去)が得られました。
よく聴くと、高域の鮮明感が少々増したようにも感じますが、それは低域がタイトになったため相対的にハイ上がりの傾向になり、かつボリュームが大きく開けられるようになったため、高域が目立ちやすくなった可能性があります。そこで今は違和感を生むケースがあるかどうか、いろんな音源を聴きこんでいるところです。
【3】所感
アナログ接続に予想外の手ごたえを感じながら、つらつら考えてみるに、AM2DCはそもそもアナログ入出力をメインに設計されたのでは?と思えてきました。
根拠は次の点です。
(1)アナログ入出力の場合、現在流通するハイレゾ音源の解像度すらはるかに上回る6.144MHz/40bitでAD/DA変換を行うが、この処理能力は何かの「おまけ」であるにはスペックが高すぎる点。
(2)デジタル入出力だと、6.144MHz/40bitという高い処理能力がまるで使われず、はるかに低い仕様での動作となってしまうこと。(D→A、A→Dでも、デジタルをかます限りAN2DC機能の「宝の持ち腐れ」が発生する。)
(3)様々なデジタル入出力をサポートすることは、様々な規格・仕様のデジタルデータの演算処理を多彩に行うことになるはずで、素人にはよくわからないが、それはあんまり良くないんじゃないか?(テキトー)という点。
AM2DCの設計思想は、「既存のデジタルデータの規格には依存せず、システム中のアナログデータを極めてハイレベルの解像度で処理し、最短距離でもとのシステムに信号を返す」という点に狙いがあるのではないか?と思われました。もしそうだとしたら、同一の設計思想と筐体のもと、最も無駄のない形でデジタル信号処理ができるはずです。
【4】課題
現行の接続でひとしきり楽しんだら、デジタルも含めた他の接続も試したいと思います。しかしクリップ防止や帯域バランスの変化で再生音量に変化があり、各段のゲイン設定をはじめ、システム全体の再調整が必要になっています。これらの変化を見極め落ち着かせるにはもう少し時間がかかりそうです。
続きます。
レス一覧
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キングジョーさんはじめまして。面白いレビューありがとうございます。大変興味深く拝読させていただきました。本機はStereophileでも高評価ですね。Stereophileのレビューアーもアナログ接続を好んでいますから、キングジョーさんの結果と一致しますね。
http://www.stereophile.com/content/music-round-57
1つお伺いしたいのですが、本機は周波数特性を修正してくれることはわかったのですが、残響時間(phase response)を補正する機能はついていますでしょうか?
byumetaro at2013-10-06 10:05
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umetaroさま
こんにちは、コメントありがとうございます。
やはり権威?ある人と意見が一致すると少々安心しますね(笑)
さて残響時間の補正ですが、私の見る限りそうした機能はないようです。
ライブ/デッドという部屋の傾向そのものを改変するような機能は持たないようで、あくまで既存の部屋の基本特性を維持しながら、明確な欠点を発見して改善する、というスタンスのようです。
byキングジョー at2013-10-07 16:07
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キングジョーさん、ご回答有難うございます。残響時間の補正はないのですね。了解です。最近、音響調整のソフトウェアについて色々調べているところで、キングジョーさんのレポートを大いに参考にさせていただきました。
因みに、現在購入を検討しているのが、Amarra Symphony というMac OS用のソフトウェアです。Diracというスウェーデンの会社の技術を使っており、周波数特性と残響時間両方の補正をやってくれるようです。
http://www.sonicstudio.com/amarra/amarrasymphony_irc
このソフトウェアを調べて行く内に、音響調整のウェブサイトを眺めていたのですが、その中にこんな記事もありました。周波数特性と残響時間の両方の補正をやるのが望ましいという内容です。
Why Can't I Fix All my Acoustic Problems with EQ?
http://www.hometheatershack.com/roomeq/wizardhelpv5/help_en-GB/html/iseqtheanswer.html#top
更に色々調べると、音響調整の開発者が、やはりルームチューニングが基本で、音響調整で改善できるのはせいぜい20−30%だと。
http://thewelltemperedcomputer.com/KB/DRC.htm
この分野はこれから大きく発展するのではないかという気がします。
あまり情報がない中で、Anti-Mode 2.0 Dual Coreを導入されたキングジョーさんは先見の明が有りますね。同機はStereophileでも高評価ですし、キングジョーさんも評価されているので、大変気になっておりました。キングジョーさんは基本のルームチューニングをしっかりやられているので、より効果が高かったということかもしれませんね。
byumetaro at2013-10-07 23:31
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umetaroさん、こんにちは。「先見の明」などと大それたものはないですが、自分のニーズに合っているのでは?という直感だけはありました。
私はPCは音源管理のみに用い、再生時は極力PCは外す方向で組んでいますが、デジタル段で処理を完結させようと考えるなら、「餅は餅屋」と言いましょうか、PCやMac上で信号処理させるのがきっといいでしょうね。扱えるパラメータも圧倒的に豊富でしょうし。
また紹介してくださったリンク先は、非常に興味深いものでした。部屋のデジタル音響補正の役割が1/3に達しないというのは少々控えめ過ぎるにしても、その主旨は今なら何となくわかる気がします。
この問題の難しさは、到達点が一体どこなのかをリスナーが明確にしていないと、途方もない混乱の道を歩まなければならない、という点でしょうか。
少なくとも、(1)部屋固有の音響特性の偏差、あるいは個性をどう評価するか。完全にモニタリングに偏るなら、この偏差の消去を目指すわけですが、それが好ましいとは必ずしも言えませんし、この偏差がそもそも「問題」なのかどうかもリスナーの評価が必要です。(2)高忠実度再生のために最低限クリアすべき問題点(特に定在波由来の低域問題)をいかに現実的に解決するか。…以上の2つの問題意識を明確に分ける必要があると感じました。
AM2DCはあくまで(2)に焦点を合わせて作られているようで、そこに絞って言えば非常にスマートなソリューションを得られます。一方(1)に関しては、リスナーが好みに合わせてセッティングやルムアコで対応すべきで、深くは立ち入らないという思想です(たぶん)。
怖いのは、「全帯域でフラットを目指そうよ!」という一見分かりやすい目標も、うかつに踏み込むと(1)(2)両方に自動的に踏み込むことになり、それはもうタイヘンであるということです。
私はAM2DCで(2)だけ片づけて、いったんこの領域から離脱しようと思います(笑)。でも戦果は上々であったというのが実感です。
byキングジョー at2013-10-08 14:24