日記
Apple Musicのしくみ
2021年11月16日

かつてのiPod/iTunes/iTunes Storeで、音楽ダウンロード時代に覇権を握ったアップルですが、その分ストリーミングでは後手に回った印象がありました。しかし捲土重来を期したApple Musicでは、同社のハード、ソフト、サービスを存分に生かしたシステムを造り上げ、昨年時点の調査では、ユーザー数は業界3位ながら、満足度は1位と上昇路線に乗っている印象。ロスレスがベースになり、ハイレゾや3Dオーディオが加わった2021年の6月以降は、デスクトップ・オーディオやヘッドフォンユーザーだけでなく、ハードコアなオーディオやシアターユーザーにも無視できない存在になりました。
Apple Musicで提供されるコンテンツのフォーマットやスペックは色々な媒体で詳しく紹介されていますが、ここでは実際に家庭で使用した際の使い勝手や印象を述べておきたいと思います。
まずApple Musicは、ストリーミングとダウンロード、さらにCDからのリッピングや、ファイルの取り込みにも対応した、ハイブリッドのサービスで、そこからゲットしたコンテンツを、Mac、iPhone、iPad、AppleTVなどのハードで、それぞれの能力に応じた再生ができるのが特徴です。スマホでの使用だけを想定したサービスや、ファイルのダウンロード専門のサービスとは一線を画す、スケールの大きなサービスです。
現在Apple Musicで提供されているオーディオコンテンツは、ロッシーは256KbpsのAAC(ディスク上のファイルは.m4a。Apple MPEG-4 オーディオと表示される)、ロスレスとハイレゾはALAC、空間オーディオはDolby Atmos(ファイルはいずれも.movpkg。HLSメディアと表示される)で、最高192KHz/24-bitのハイレゾは外付けDACの使用が推奨され、空間オーディオはAtmos対応ハードが必要です。空間オーディオは、ヘッドフォンやスマートスピーカーでも再生可能ということになっていますが、やはり本領を発揮するのはAtmos対応のアンプから、リアルなマルチスピーカー環境に出力した場合です。
さて実際にApple Musicで3Dオーディオを聴くにはどうするか。Atmos対応のAVアンプとサラウンドスピーカーを既に所有している場合、最低限必要なのはAppleTV 4Kというハードウェアです。これをHDMIケーブルでAVアンプに繋ぎ、電源を入れて、Appleのクラウドサービス、iCloudで共通で使用されるApple IDを取得すれば、ホーム画面からApple Musicのアプリを立ち上げて、音楽にアクセスすることができるようになります。

ただ、AppleTV 4Kは基本的にリモコンで操作するので、検索などはやりやすいとは言えません。リモコンにはマイクがあり、Siriの音声入力も使えますが、例えばクラシックの曲名を正確に入力するのは簡単ではありません。ここで、iPhoneやiPad、Macを所有している場合、同じApple IDを使ってApple Musicを使うことで、ライブラリを同期することができます。例えば、iPhoneでApple Musicをブラウズし、気に入った曲やアルバムを「+」ボタンを押して登録すると、すべてのApple Music端末のライブラリにも同時に追加されます。つまり、iPhoneやMacなどで探し、AppleTV 4Kとシアターシステムで聴く、という連携ができるようになります。
下のダイアログは、iPhoneの設定ダイアログで、Atmosを使うかどうかや、ストリーミングとダウンロードでの音質を設定することができます。

これは各端末ごとに異なった設定ができ、ライブラリとしてアーティストや曲目は同期されるものの、容量や音質、ネットワーク環境などにより、自由に選択することができます。例えば、インターネットの接続速度があまり早くない場合、ストリーミングは再生の安定性を重視してAAC 256Kbpsを選ぶ一方で、ダウンロードは時間がかかっても良いので、最高音質のハイレゾを選ぶ、など色々な工夫ができます。
下の図は我が家のApple Musicシステムです。

バックボーンとなる宅内LANは、光回線から有線ギガビットイーサネットを各部屋に引いていて、iPhoneやiPad以外は基本的に有線接続。Apple Musicのアイコンがついているのが、Apple Musicを使う上で使用頻度の高い端末です。これらのどの端末から曲やアルバムをライブラリに登録しても、すべての端末ですぐにライブラリが同期するので、使い勝手は非常に良いのと、ストリーミングで聴くかダウンロードするかは各端末で選べるので、容量に合わせた運用ができます。実際、AppleTV 4Kの画面を映し、ライブラリの「最近追加した項目」を見ながら、MacのApple Musicで曲やアルバムを「+追加」すると、すぐにAppleTV 4Kの画面に現れ、本格的なオーディオで聴くことができるようになります。
アンプがAtmos対応で、スピーカーが3D配置されている場合、最適な3Dオーディオを楽しむことができます(我が家の地下シアターの場合)。アンプはAtmos対応だが、スピーカーが3Dではないサラウンド配置の場合、アンプがスピーカー配置に合わせたデコードをしてくれます(リビングの場合)。我が家はリビングのサラウンドスピーカーは天井埋め込みで高さがあるので、なかなかの包まれ感を感じることができます。アンプがAtmos対応でない場合、AppleTV 4Kからの出力はマルチチャンネルのPCMになります。我が家の仕事部屋の場合、パイオニアのアンプには7.1chのディスクリートの音声として入力されています。再生環境が異なれど、ファイルの形式を心配したり、フォーマット変換をする必要がないのは、Appleらしい長所と言えると思います。
Apple Musicにおいて、ストリーミングとダウンロードをどう使い分けるかは、ネットワーク環境や使い方によっても判断が分かれると感じます。オフラインでも音楽が聴きたい(例えば飛行機とか)場合は、使用する端末によって帯域を選択し、ダウンロードすることになるでしょうし、自宅で早いネットワーク環境で聴く分には、大きな差は出ないでしょう。このネットワークの速度は、3DオーディオをAppleTV 4Kで聴く場合に特に重要で、それはAppleTV 4Kにはコンテンツをダウンロードする機能がなく、すべてストリーミング再生になるからです。我が家はネットワークは実測で700-800Mbps出ており、今までに音切れなどのトラブルは経験したことがありませんが(ハード内のバッファリングも巧みに行っているのでしょう)、クオリティを担保するためにも、なるべく早いインターネット接続があることに越したことはありません。

Macから直接HDMI端子経由で出力する場合ですが、2019年以降のモデルでは、Thunderbolt 3端子から、新しいHDMIアダプターを経由することで、4K@60pで出力することができるようになりました。そして、2021年モデルのMacBook ProではHDMI端子が復活し、アダプターなしで4K@60p出力ができます。オーディオ的には、この出力はマルチチャンネルのPCM音声を出力できるようになりました。アップデートでAtmos出力が出来るようになることを期待したいと思います。そうなれば、Atmosのオーディオファイルをダウンロードして、速度の早いストレージから安定度の高い再生ができるはずだからです。また、Appleによると、MacBook Proの2021年モデルは、96KHzのサンプルレートに対応したDACを内蔵しているとのことです。
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レス一覧
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ブレーメンさん
本件では、いろいろとご教示いただきましたので、お礼代わりに情報を入れさせていただきます。
今、伊豆に来ていて確かめてみたのですが、やはり通信速度というのは結構この4Kの機器を使う際には重要なようです。
伊豆では、有線でも無線でも160Mbpsぐらいしか速度が出ないのですが、この環境で同じCDのロスレスの音源を再生してみると、PC経由で再生するAmazon Music(HD)は、スムーズに再生されるのに対し、Apple 4KTVを通すと、時々、音が止まってしまったり、ノイズが出たりする現象が発生することに気が付きました。
恐らく、これはPCとApple 4KTVの機器のバッファー容量の違いだと思われます。このような現象は、東京の書斎の環境(700Mbps前後)だと発生しないので、やはりこの機器を使うには、ご指摘の通り、ハイスピードのインターネット環境がMustだという結論に達しました。
最後に書かれていた、新型(?)のマックPCを買えば、「バッファー容量の大きいApple 4KTV機器」の代わりとして使えるのでしょうか?もしお分かりになれば、ご教示いただければと思います。
byAuro3D at2021-11-22 12:23