日記
なにゆえルームアコースティック(音響)は難しいのか(前)
2022年01月31日
防音を施した専用オーディオルームの引渡しから2年半が経ちました。当初から音響対策、インテリア、機材など様々な更新を行い多々思う所があるので、表題の内容を2つの視点から少し掘り下げてみます。
■その1 体験することの難しさ
私の場合、これまで6つの部屋にオーディオシステムを組んできました。
①木造 和洋混在12帖
②RC造 洋室7帖
③RC造 洋室14帖
④RC造 洋室24帖
⑤木造 洋室18帖
⑥木造 洋室18帖(防音有り専用室)
延べ6回システムを組みましたが、ある程度本格的に防音や音響と向き合い専用室を構築したのは今回が初めてです。そして、私を含め多くの人は防音の専用室を得るのは最初で最後になり、2回、3回と構築することはコストや時間を考慮するとあまり現実的ではないと考えられます。
システムの入れ替えや調整を行い、機材の音を確かめることは時間とお金があればそれなりに体験できますが、防音と音響についてはそれ自体が専門分野であり、専用室の構築や音響対策は「それ自体」を体験しないことには分かり得ず、「それ自体」を体験する機会がごく限られています。
ショップやイベント、個人宅訪問、あるいは書籍やSNSで情報を集めることで経験や知識を集めることもできますが、それらはあくまでも断片的で間接的なものでしかなく、防音の有無、吸音したらどう変化するか、拡散したらどうか、それらを自分自身で試行し、思考し、体験し、理解し、理屈と実践を照らし合わせて活かすことができるレベルになるのは困難を極めます。
繰り返しになりますが、専用室の構築は不動産の購入と併せて行うことが多いので、おそらく一生に一度あるかないかです。その時点で必要な経験と知識を蓄積し充分に持ち合わせている人は早々おらず、趣味の個人レベルではそもそも適切なルームアコースティックが難しいのではないかと考えられます。
■その2 音響を音響として捉えることの難しさ
個人レベルでは適切な対応ができないため、その道のプロである音響設計を行う業者や設計士がおり、通常はプロの業者と二人三脚で物事を進めていくようになります。ここで問題になるのは・・・極めて根本的な事ですが
「音響を音響(物理的現象)として捉えることができるか」
ということではないかと思います。問題を改善・解決するためには、問題を問題として適切に捉えないと的は外れる一方ですが、果たしてそれが出来ているのでしょうか。
オーディオマニアである施主はそれ用の専用室を構築するにあたって、様々な拘り、好み、感性、知識、経験、音楽観を持ち合わせていることは想像に難くありません。それ自体は別に悪いことではなく、それらがあるからこそ専用室を構築することになるわけです。
しかし、しかしながら・・・それらの思い入れ、あるいは思い込みが強すぎるとどうなるのか?
例えば、
・信奉するメーカーの薄く軽いパネルは低域を吸い
・ユニットはサイズの限界を超えて低域を再生し
・ケーブル次第で再生音は音にも音楽にもなり
・コンサートホールの再現に吸音は絶対悪で
・フルレンジはマルチウェイを超え
・ゲージは音の良い長さを定義し
・デジタル補正は全知全能で
・デジタル補正は有害無益で(どっちだよ
・気を送ると音が良くなり
・お札は音を最適化し
・結界は音を高め
・音は音速を超え
やがて、施主の熱く強く重い想いはハイエンドを超越どころか物理法則を超え始めます。さながら車は空を飛び、船は山に登り、飛行機は地面を掘り進むかの如く突っ走った想いを前に、適切で妥当な音響などという見えにくく分かり辛いものは軽んじられ、置き去りにされてしまうのではないか・・・そう思わずにはいられないことが稀にですがよくあります。

音響って物理現象なのである程度の挙動と対策が分かっているはずなんですが、それすらも認識しない、あるいは認識が軽い、あるいは理解しようとしない、あるいは曲解する、そうした結果がどうなるかというと「ルームアコースティックは難しい」に帰結するのです。
レス一覧
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こんにちは。
基本的に仰られていることに賛成です。特に、
・デジタル補正は全知全能で
・デジタル補正は有害無益で(どっちだよ
の「どっちだよ」に。(^^)
後編があるようなので、話は続くのでしょうが、一点だけ。前提と帰結が逆さまではないでしょうか?こんなことはルームチューニングを真面目に受け取らない人にはどうでもいいことでしょうが。
ルームチューニングは難しいから、難しいのではないでしょうか?その結果として種々の曲解や施主の飛躍が生じるのではないでしょうか?
ルームチューンの作業そのものは単純であるのでしょうが、特に潮時を知るのは難しくないですか?また、私は左右の誤差が10cmくらいはいけるのではと思っていましたし、定在波対策を考えると、むしろアシンメトリカルの方がよいのだと思っていたのですが、まったくの曲解でした。せいぜい私の予想の半分が限界値であるようです。私はベルリンフィルというのは第一ヴァイオリンを早めに動かすという変わったノモスを持つオーケストラなのかと思ってしまったほどなのです。
例えば、このような左右のアシンメトリー性については、相当な船で山を登る式の曲解があるように思えるわけです。
つまり、曲解がルームチューニングを困難にしている、、、ん?
そうでしょうか。実は数センチのルームチューニングのズレに多くの施主のシステムは反応していないだけなのではないでしょうか?つまりルームチューニングが足りないわけです。難しいのはどこまでルームチューニングするのかで、つまりルームチューニングは難しく、やってみないと分からない。失敗もあるが、やる価値がある、何か得体の知れないもの、というのが私の感想です。このような正体不明のところがあるので、なかなかルームチューニングに踏み切れなかったり、その結果、Qさんが挙げたような不可解な発想も助長されるのではないでしょうか。
すいません。思索の邪魔をするつもりはないです。後編を待ちます。
byベルイマン at2022-02-01 15:53
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ベルイマンさん
うーんww見事なコメントありがとうございます。後編は期待しないでくださいな。
byQ at2022-02-02 00:06
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Qさん
こんにちは。興味深いお題です。
ベルイマンさん同様、基本的に仰られていることに賛成です。
私はここ数年、その1、その2に加えて、「僕はどのような部屋にしたいのか?」で悩んでいます。
それは、自身の部屋とオフ会で幾つものお宅に伺った経験から、リスニング・ルームの条件として「趣味の空間としての居心地」が非常に大切だと考えているからです。端的に言って、念入りな「防音」部屋や、シアター仕様の濃い壁色の部屋は、私には居心地が良くありません。
都会や集合住宅にお住いの方は、ある程度の音量を出すためにも「防音」が必須でしょうし、Visualを真剣に取り組まれている方は、迷光対策として濃い壁色を選択せざると得ないことは理解します。
専用室は、オーディオ優先すから、機器の配置の自由度も高く、時には散らかしたままで置いておくことも可能なので大きなアドバンテージがあります。更に防音を含めた内装もオーナー次第です。
私個人は、家人が許容できる程度の防音、居心地を損なわない程度の内装で留まっており、そこより先に踏み出せないでおります。音のクオリティの点で、改善すべき点が数多あることは分かっているのですが、ある程度のルーム・アコースティックを達成した後は機器の選択と使いこなしで何とかしようとしています...
byのびー at2022-02-02 03:01
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のびーさん
ご家族との折り合い、適切な音響対策、心地よいインテリアはそれぞれが難しいですね。私の場合、後ろ2者については問題点を洗い出して切り分けしてバンバン対策を進めていきました。引渡し当初は拙い部分も多かったのですが、今では随分改善したし、これからも絶賛改善予定です。のびーさんのご健闘をお祈りします。
byQ at2022-02-09 21:31