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東京都在住のオーディオマニアです。リビングオーディオです。狭いスペースを与えられてやっています。MPS-5,Marklevinson No32Lなどを愛用中。クラシックはほとんど聞かず、ポップス、ラッ…

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日記

ニューオプト KH-07N ヘッドホンアンプの私的レビュー

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2011年05月10日

今更なのだが、
ヘッドホンアンプには
バランス接続の可能なものと
シングルエンド接続専用のものがある。
現在は
バランス接続の可能なMBA-1Platinum(改)を使っているが
不満はない。
ただ、シングルエンド接続独特の音質美、
音場よりも音像を際立たせる、シンプルだが深い鳴り。
バランス接続のヘッドホンアンプが
高価なラグジュアリースポーツカーとすれば、
まるで、レース用にチューニングされた
スーパーバイクのような存在が、
高度なシングルエンドヘッドホンアンプの音だ。
そういうものを強く意識させる
シングルエンド接続専用ヘッドホンアンプに
憧れが残っているのは事実である。
ラックスマンのP1uがその代表例なのだが、
さらに一歩踏み込んだ音がないかと、
様々なヘッドホンアンプをわたり歩いてきた。
実は前々から気になっていたアンプがある。
ニューオプト製 KH-07N ヘッドホンアンプ。
最近、この知る人のみぞ知る
ヘッドホンアンプの製品版を試聴することができた。
ニューオプトという会社自体は、
業務用の様々な電子機器を
画像、医療等のプロフェッショナルのために開発、
生産する企業であるが、
製品の宣伝がほとんどないので知らない方も多いだろう。
しかし、
ある種のプロフェッショナルの現場で鍛えられた
ハイテクノロジーを持って、
コンシュマーに参入してきたその密かな情熱は、
滅多に得られぬ高音質として実を結んだようだ。
少なくとも私の試聴経験の中では、
このKH-07Nの音質は、
シングルエンド接続専用ヘッドホンアンプでは
最高のモノの一つである。
(今回の写真はヘッドホン祭りのフジヤ様の画像から
拝借しました。)

外観:
梨地仕上げのシルバーの筐体である。
分厚いアルミ板を組んで作られた横長の箱。
フロントパネルの真ん中に
重たそうな、
アルミの削り出しのボリュウムダイアルが鎮座しており、
その左側にはアルミ製のヘアライン仕上げと
LEDのあしらわれた丸いステンレス製スイッチ、
右側には二口のロックつきのノイトリックの
ヘビービューティな標準イヤホンジャックが見える。
バックパネルには電源ケーブルを挿し込むインレットと
シングルエンドのRCA端子がL、R二つ見えるのみ。
側面のパネルは厚みがあるものだが、
これはヒートシンクをかねているかららしい。
純A級アンプを積んでいるので発熱が大きいのだが、
フルパワーでドライブしても
十分触れえる程度の発熱に抑えられている。
足は四点支持でアルミの円柱状のものだが、
ディンプルのあるゴムが仕込んであり滑りにくい。
非常にシンプルな外観であるが、
ずっしり重厚な印象もある。
中身は詳しい内容はほとんど公開されていないが、
二基の電源トランスに振動対策を施し、
シングルエンドにも関わらず
低ノイズな純A級アンプをこれも二基贅沢に使用するなど、
かなり練られた内容と見た。
また、
内部の電源部と回路部の間に大きな空間が存在するのだが、
経験上、このような空きは無意味ではない。
結局、部品どうしの熱的、電気的干渉を防ぐ効果があり、
ある程度の音質的メリットがあるのではないかと思う。
一見地味なアンプだが、
オーディオに慣れている人間がよくよく見ると、
只者ではない雰囲気に気付くだろう。
プリアンプとして使用できない、
入力は1系統のみで、ゲイン切り替えなし、
XLRキャノンプラグに対応しないなど、
ストイックに機能を限っていることも
音質に効いているであろうと思う。

音質:
AKGのヘッドホンで試聴した。
送り出しは初級クラスのSACDプレーヤーで、
当然、シングルエンド接続である。

このアンプの外観は特記すべきことはあまりないのだが、
その音はかなり特記すべきものである。
これは
非常に高密度で緻密な音像を提示するヘッドホンアンプである。
高域は煌びやかではないが、しっかりと伸びており、
直接音とそれにまつわる細かい余韻をきちんと分離して聞かせる。
過度のヌケの良さの強調や、
リンギングを想起させるような
金属的な高域ではないところに好感が持てる。
中域は濃密であり、
これも最近のアンプには聞けなかった音質傾向である。
といってもアメリカの真空管アンプのような
バタ臭さがある濃厚さには傾いていないのが日本製のアンプらしい。
極めて解像度が高く、音数も多いのにも関わらず、
この音の厚みはどうだ。
こういう緻密に音が詰め込まれた、
ミッシリした中域はなかなか聞けるものではない。
また、これは輪郭を強調しすぎの痛い音では全くない。
音の輪郭の際はシャープなのに、この肌合いの良さは稀有だ。
キレの良さと適度な粘り感、
柔らかさがミックスされた絶妙さとも言える。
低域も、もちろん厚い。
確かにインパクトの強さで興味を引くタイプではない。
このニジミのない分厚い低音域の引き際は清く、リズミカルだ。
かなりテンポの速い音楽でさえ、
その疾走感をむしろ加速させるほどなのだが、
それと引き換えに解像度を落とさないところが素晴らしい。
この低域の自在なドライブ力はかなりなものだ。
このアンプの音は音像の細密描写を得意とし、
空間性の提示が前景に出るものではない。
(空間性は
バランス接続の可能なMBA-1Platinum+HD800が抜きん出ている。)
ノイズはかなり低いレベルに抑えられており、
ボリュウムをかなりあげても、
耳ざわりな雑音は聞こえてこない。
またボリュウムをあげても歪みの増幅が少ないことも特記できる。
全体に揺るぎないピラミッドバランスを保った音ではあり
安定感がある。
しかし、同時にスピード感や躍動感もかなり持っているため、
音楽のリズムやメロディの変化に俊敏かつダイナミックに追随する。
純A級アンプにありがちなゆったり感や余裕は、
このアンプのアピールポイントではない。
(Luxman P1uでは逆に、この辺が長所として感じられる。)
ゲインは抑え気味にしているとのことだったが、
そういう抑制された印象はなく、
むしろ若干、前ノメリに弾けた音調のように思えた。
今回はハッとさせられるビビットな表現も随所に織り込まれて、
なかなか飽きさせることがない試聴であった。
この音で本体価格20万円というのだが、
純粋に音質で評価すれば、
かなりコストパフォーマンスが高いと思われる。
対抗馬となるであろう、Luxman P1uや
インターシティのシングルエンドヘッドホンアンプよりも
さらに積極的な音作りを感じる。
ニューオプトは、会社概要を見る限り
オーディオ界での実績ははっきりしないのだが、
偶然、ここまでの音に辿り着いたとは思えないほど、
確信犯的なサウンドに思える。
さらに、だれも持っていないものを所有できるという
優越感もこのモデルにはあるだろう。
いろいろ考えても、
やはり最強のシングルエンドの一つではないかと思う。

まとめ:
このヘッドホンアンプはベイヤーのT1などと組み合わせると、
ドライブ力の点でも、音調の一致という点でも
大変に素晴らしい組合わせではないかと思う。
また上流にはどんなに高級な送り出しを持ってきても、
十分に情報を捌ききれる力を持っているようなので、
今回の試聴に用いたプレーヤーのレベルでは
その潜在能力は、実はあまり引き出せていないと推測される。
送り出しにハイエンドSACDプレーヤー、
およびそれに準じたDACを持ってきて、
ヘッドホンはT1あたりを接続、
RCAケーブル、電源ケーブルにも相応しいものをあてがったら
さらに凄いサウンドが飛び出してくるにちがいない。
投資の価値はかなりありそうである。
十全に処置されたKH-07Nと比較されたら、
私のMBA-1Platinum(改)も安穏としてはいられないであろう。

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