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東京都在住のオーディオマニアです。リビングオーディオです。狭いスペースを与えられてやっています。MPS-5,Marklevinson No32Lなどを愛用中。クラシックはほとんど聞かず、ポップス、ラッ…

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日記

Jeff Rowland ジェフ ローランド CorusとModel625の私的レビュー

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2011年06月01日


凄い音だなと思うことこそあれ、
センスのいい音だな、
とオーディオやっていて思うことは案外少ない。
超弩級のハイエンド機器は、
その勢いと、こだわりの強さが災いして、
ユーザーにとってはむしろ荷が重いこともある。
聞き手にもそれ相応の、
精神的、体力的そして金銭的エネルギーを要求するのである。
かといって大衆向けにコストを抑えた
オーディオでは全く食い足りない。
シンプルでコンパクトなのだが、
既に絶対的なサウンドクオリティを持ち、
手馴れた音作りのセンスでオーナーの官能を刺激、
さらにはキラリと光るデザインの趣味で際立つ。
そんなオーディオマシーンには滅多にお目にかからない。
しかし、今回レビューする
Jeff Rowland Design Group(ジェフローランド)の
Corus(コーラス)プリアンプと
Model625パワーアンプのペアはそれそのものだろう。
(私の好みに合っているというだけか?)
一瞬だが、オーディオの趣味を
このシステムで打ち止めにする手もアリかな、
と思うほど、そのサウンドセンスに魅了されたのを告白したい。

外観:
プリアンプのCorusはカッコいい。
二階建てのCriterion(クライテリオン)も格好はいいのだが、
個人的にはシェイプアップしたCriterionを見るようで
さらにカッコよく感じた。
このコンパクトさがたまらない。
39.5cm×31.1cm×9.4cmというサイズになる。
この絶妙な幅の小ささが実にいい。
デザイナーはこのサイズをどうやってきめたのだろうか?
この凝縮感はNAGRAのアンプなどでも感じるが、
あのメカメカしさとは無縁だ。
むしろラグジュアリーな、ツヤツヤした外観は
オーディオに興味のない女性にさえ受け入れられるかもしれない。
ブラックメタリックとシルバーメタリックのツートンに、
ストライプ仕上げは定番なのだが、カッチリとしていて、
いつもながらに見事だ。
基本的なデザインは、
いつものジェフのルックスを踏襲しているに過ぎないが、
このピカピカの筐体仕上げと
コンパクトさの取り合わせがなぜか嬉しい。

入出力はアンバランスもバランスも可であるが、
パワーアンプがバランス専用であることから考えて、
バランス優先の作りなのかもしれない。
やはりバランス入出力の方が音は良いようだ。
なお出力はアンバランス、バランスそれぞれ二系統あり、
バイアンプ構成も可能である。
電源部はこれも立派な、
黒のアルミ削り出しの細長い別筐体一個であり、
本体と同様の仕上げがなされており、
左右別なケーブルが本体へつながれて給電される。
こういうところも一切の手抜きなしとなっている。
なお、音質面に配慮しリモコン受光部も別筐体である。
横長のディスプレイはあらゆる情報が集中的に表示される。
これは、それほど見やすいものでもないが
少なくともグリーンの淡い色合いには文句はない。
勿論、消灯可である。
リモコンは細くてシャープな印象だがこれもアルミの削り出し。
カチリとした操作感、手に持った質感は最高だ。
大抵の操作はこれ一本で足りる。

パワーアンプのModel625は
サイドパネルにザックリと開けられている
ヒートシンクのデザインに目を奪われる。
高級パワーアンプたるもの、
ヒートシンクの形に凝らずして、何に凝るのか。
こんなにも大胆にデザインされたヒートシンクは久しぶりに見る。
このアンプもクラスのわりに
コンパクトで軽量、一人で移動可能である。
なおスピーカーバインディングポストは片チャンネル二組づつで、
締めやすいが、Yラグにしか対応しないカルダス製のもの。
入力はXLRバランスのみであり、
電源ケーブルは
いつもの20A専用の特別なプラグを使うタイプである。
足はパワーアンプには珍しく、三点支持である。
このパワーアンプはデルリンボールを介してスタックできるそうで、
バイアンプ駆動もお薦めとのこと。
このデルリンボールはCriterionでも登場したが、
ジェフの密かなマイブームなのだろうか、
他のメーカーでは使わないグッズだ。

音質:
送り出しはラックスマン、
あるいは
エソテリックの最高級一体型SACDプレーヤーであり、
スピーカーは
既にレビューして高評価のB&Wの802Diamondである。
スピーカーが良いものなので、
少々差し引いて考えるべきかもしれないが、
それにしても心地よいサウンドだ。
変な言い方なのだが、
心地よいのにオーディオの血が騒ぐ音だ。
このペアのサウンドは、
十分に柔らかいのだが、すこぶるキレも良い。
もちろん、ノイズはかなり低い。
上位のCriterionのノイズが低すぎるので、
あちらと比較すると問題はあるのだが、
Corusのノイズレベルは
余裕でNo.32Lのレベルに匹敵する。
セカンドベストのモデルに、
このノイズレベルが実現できる時代となったのだ。
これが技術の進歩であろう。
そして、レンジの広がりも技術の進歩を感じるものだ。
もうこれ以上はムリかもしれないと思わせてしまうほど、
上も下も伸びきって、どの帯域でも音数豊かに描写される。
それは最新鋭アンプらしさそのものなのだが、
ここでは、そのレンジの広さを全く顕示しない。
そんなことは当たり前であるかのような涼しい顔だ。
高域、中域、低域とも解像度はとても高く、
どの音の高さにおいても、
聞き逃していた微細な音の起伏が立体的に聞こえてくる。
ハイスピードな応答で全帯域が揃っているが、
ここでも、これ見よがしな振る舞いはない。
パワーアンプModel625の持つ
300W-8Ωの強靱なる駆動力は、
どのようなスピーカーと対峙しても
問題なく鳴らし切るレベルであるが、
このパワー感さえ誇示する様子がない。
なんとも自然体な奴らだ。
とはいえ、
最近多い、
オーガニックで健康的な生成りのサウンドとは
少し趣きは違うようだ。
高域にわずかだが艶と輝きがあり、
そして全帯域に適度の密度感があり
それらが全て巧みなアクセントになっている。
これがジェフのサウンドのメルクマール(標識)だ。

本システムのサウンドステージの広大さは
ステレオパワーアンプのそれとは思えない。
それだけチャンネルセパレーションが良いのであろう。
もちろん、
このナチュラルな音の広がりについては
スピーカーの能力が寄与するところが大きいことは否めない。
それにしても、まるでサラウンドに聞こえることすらある、
この音場感は何なのだろう。
プレイボタンを押し、
システムに信号が走り出すと同時に、
リスニングポイントが
心地よいエアーに完全に包み込まれるようだ。

このプリアンプCorusとパワーアンプModel625の音には
適度な「軽み」、羽毛のような浮遊感があり、
この軽みに乗せて、
ミネラルウォーターのような潤いや、
澄み切った空気感がリスニングルームを静かに満たしてゆく。
この微妙な軽み、
いや適度の重力感が心地よさの根本なのかもしれない。
そう、このようなライトな高級感は、
色々とオーディオを聞いてきて初めて意識したものだ。
(ジェフのアンプには以前からあったのかもしれないが、
言葉にならなかったのかも)
心理的に
ハイエンドオーディオの重苦しい呪縛から解き放たれるような、
この「軽み」の感覚を大事にしたい。

こうして、
輝きと落ち着きが同居する、
ジェフのアンプ特有のあの質感を強く感じつつ、
次々と素晴らしい音が耳に届られる快楽空間に身を置くうちに、
私はいつのまにか、
試聴室のソファーから抜け出すことができなくなった。

フラッグシッププリのCriterionといえば
バッテリー駆動時の音が最大の魅力なのだが、
セカンドベストのプリであるCorusには、
あれほどの静けさはない。
しかし、ノイズレベルはCorusで十二分だ。
Corus では、
Criterionより音楽は静的ではなく、控えめになり過ぎない。
音楽は、そうあるべきときには、躍動し、弾けて聞こえる。
ポップスやロックをかけても
きちんと音が前に出てくるところもCriterionとは異なる。
ボディソニックでズンズン来る感じではないにしろ、
低域の刻みの正確さ、尾を引かないスピード感は特筆できる。
これは圧倒的なクオリティ感あるいは静寂感、安定感で押してくる、
大型ラグジャリーカーのようなサウンド、
いわゆるビッグサウンドではない。
Corusのサウンドは
むしろ小回りが効く小型の超高級スポーツカーのような音で、
細かいディテールたちがつぶさに聞こえて、実に小気味よく、
スピード感、リズム感のある音楽を聞くのが楽しい。
こういう違い、
フラッグシップモデルと二番手の葛藤は
かつての
シナジーとコヒレンスというジェフの名作プリアンプでも
繰り広げられていたことを思い出す。
セカンドベストが侮れない。
それがジェフのプリアンプではなかったか。
歴史は繰り返す、
というよりジェフは繰り返すというべきか。
どうにも痛快な類似である。

まとめ:
セカンドベストのプリと
中堅クラスのステレオパワーの組み合わせなのだが、
これほどにビューティフルなジェフサウンドを奏でられると、
さらにハイエンドな
他社のアンプたちの存在価値もさすがに危うい。
特にB&Wの802Diamondとはデザインも含め、
ベストマッチとなるように思う。
このスピーカーを加えたシステムは
音像型ではなくほぼ完全に音場型であるが、
リスナーは一音一音の実体感の細やかさ、
音が強すぎず弱すぎずの匙加減の巧みさに酔いしれるので、
もう、ナントカ型などという戯言はどうでも良くなる。
最近、外で強い音のシステムばかり聞いて
食傷していたせいもあるのだろうか。
とにかく、ほとんど聞き疲れしないのに、
これほど音楽を聞いたという
充実感のあるシステムはなかなかないだろう。
もちろん、
オーディオに、
はっきりと感じられるほどの苦味や辛さ、甘さのような風合い、
あるいは重量感、密度感のある克明な音像、
痛いほどスリリングに飛んでくる音、
そんなやや疲れを伴う過剰さを求める方にはお薦めしない。
そういうどこかプロスポーツめいたオーディオ、
めくるめく麻薬的狂気をまじえた
ゴージャスなオーディオを求めることは
ここではできない。
しかし、自然体でありつつ、センスはあくまで小粋に、
でもクオリティだけは超本格的に音楽を楽しみたい方には、
言わば理想の音世界を提供するシステムであろう。
これは高級クラブを借り切って、
ステージから少し離れた
ソファーに身をうずめながら好きな音楽を楽々と聞いている、
そんなイメージだ。
これが
ヨーロッパの伝統ある大コンサートホールの貸切りでないところが、
上位のシステムとの差だろう。
投資は確かに安くはないが
同じ価格帯では、ほぼ、この音は出ないであろうし、
上位のシステムになると、
かえってこの貴重な「軽み」は消えてしまい、
気分的にどこか重くなるようで
むしろ上位システムには行きたくないというのが、
私の個人的嗜好である。

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  1. 上奏書屋さんこんにちは

    Jeffのデザインは前から好きでしたがこれもいいデザインですね。金属の質感をこれだけうまく使いこなしているのは流石です。これをデザインしたデザイナーの日常生活も知りたくなるくらいセンスいいと思います。
    802ダイヤモンドのピアノブラックとは見た目も音も含めて最高でしょう。
    個人的には前面パネルの厚みとストライプ仕上げプリは上部のリブ
    メインはヒートシンク特にサイドがヨーロッパの寺院の回廊?みたいで素敵です。ヘーゲルのブラックボックスとは対照的ですね。

    いいものを見せていただきました。

    byオルフェのサンバ at2011-06-02 11:30

  2. はじめまして。
    Jeffのアンプ、特に美しい金属の固まりのようなパワーアンプは、聞いたことがないだけに気になっていました。
    本格的な試聴記を読むことができて、とても参考になりました。それに加えて、すこぶる文章がお上手で説得力がありますね。
    オーディオは、音楽そのものに浸りきれる世界に到達して、はじめて山の頂上に辿りついたことになりますが、上奏書屋さんのシステムは、
    そこまで行っているように思われます。またの書き込みを楽しみにしています。

    bykitatanuki at2011-06-02 12:33

  3. オルフエのサンバ様、レスありがとうございます。
    ご指摘の通りデザインのうえでも音のうえでも、
    802Diamond はジェフのペアにベストマッチですね。
    私もかなり心を動かされた試聴でした。
    また、面白いものがあったらレビューします。

    by上奉書屋 at2011-06-03 07:24

  4. Kitatanuki 様、レスありがとうございます。
    CD の測定の話は興味深く読ませていただきました。
    今後もいろいろ勉強させてください。
    また、面白いものがあったらレビューします。
    それでは。

    by上奉書屋 at2011-06-03 07:35

  5. 上奉書屋さん、こんばんは。

    貴殿のレビューを読むと、その商品が本当に気になり始めます。
    しかし、情報量が少ない中、大変参考になるものばかりです。

    たしか、上奉書屋さんは、ジェフのパワーアンプをお使いになっていらしたんでしたっけ?
    私も普段聞く音楽は、クラシックはほとんど聞かず、ジャズ、R&B、ポップス、レゲエなどです。

    今後とも宜しくお願い致します。

    byZati at2011-06-03 22:21

  6. Zati様、レスありがとうございます。
    私は少し前のジェフのモノラルパワーを使っていて、
    大変気に入っています。
    今回レビューしたジェフのペアは802diamondと組むと、
    かなり私好みの音を出せていました。
    もしよかったら聞いてみてください。それでは。

    by上奉書屋 at2011-06-03 23:37

  7. 上奉書屋さん 初めまして。

     以前から拝見させて戴いておりました。
    今回、ジェフ コーラスを導入し至福の時間を満喫しております。

    以前は802D、レビンソンのプリ・パワーの構成で長く聞いていましたが、販売店よりたまたまジェフ コーラスを自宅試聴させて戴き衝撃を受けました。素晴らしく透明感があり広がりのある音場感・・私にとって未体験の感覚でした。
     早速、コーラスと今回が最後・・の思いで併せてLINNのSOLO*2をオーダーし心待ちにし、やっと入荷音出しを行いました。
     以前から知人よりLINNのSOLOは、別格とのアドバイスが有り決断し導入致した次第です。

     LINNのSOLOはあまり雑誌などでも取り上げられる機会も少なく、不安も有りましたが・・・私は最高のパワーアンプであると確信しています。クライマックスのあの小さな筐体に底知れぬ高品質なパワーが潜んでいます。音場感が大きく広がりますが、希薄にはならず気持ちよく定位し密度感は十分です。
     B&Wの800シリーズは鳴らしにくいスピーカーだと思っていましたが、初めてB&Wのユニットがドライブしているなぁとの感覚を感じます、ユニットが躍動しています。

    もうこれくらいでオーディオは良いかな・・と初めて感じました。
    音では無く上質な音楽を聴かせてくれます。全く聞き疲れしません。

    今後はSOLOをバイアンプするぐらいでしょうが、資金が相当にきびしいので・・将来の楽しみにしておきます。

    機会があればSOLOにチャレンジしてください。

    byazzurri at2011-11-16 15:23

  8. azzurri様、レスありがとうございます。素晴らしい組み合わせで音楽を楽しんでおられるようですね。Soloは発売直後から様々な試聴で随分お世話になり、大好きなアンプの一つですが、コーラスと合わせるとどうなるのか?それはおそらくご本人のみが知る世界でしょうね。いつか私もリビングにsoloを置いてみたいです。それでは。

    by上奉書屋 at2011-11-16 23:06