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東京都在住のオーディオマニアです。リビングオーディオです。狭いスペースを与えられてやっています。MPS-5,Marklevinson No32Lなどを愛用中。クラシックはほとんど聞かず、ポップス、ラッ…

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日記

Plextor Plexwriter premium2 専用 クリーン電源 SAEC SDP-0512の私的レビュー:オーディオの都市伝説

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2011年12月03日


私には分からない。
デジタルオーディオが全く分からない。

たとえばCDトランスポート。
それ以外の環境を全く同じくしても
製品によってこんなにも音が違うのは何故だろう?
またデジタルケーブルによる音の違いもナゼ?
コレは確かに感じるのだが、なぜそんなことになるのか。
コンパクトディスクという音楽メディアが出たとき、
デジタルになれば、その種の音の違いはなくなる、
というふれこみだったはず。
この違いの原因はデータの読み込みの精度、ジッターの低減など、
いろいろと説明されている。
とはいえ、
それらの違いだけで、これほどの音の違いが出て良いものか。
そもそも、それらの値にどれくらいの度合いの違いがあるのか?
それは人間の耳に、音の違いとして聞こえてよいほどの違いなのか?

PCオーディオになると、さらに悩みが深まる。
バイナリが一致しているのに原本とコピーでは音が違うという人がいる。
パソコンの画面の色によって音が違うという人までいる。
これらは考えようによっては
ほとんどオーディオの「都市伝説」である。
なぜこんな違いがあると言うのだろう。
本当はなにも違いはなく、
聞いている人間の耳が間違っているだけなのではないか?
いや、そうとも言い切れまい。

私には、ますます分からない。
皆、声高に自分の意見を主張するが
おそらく誰も正確なところは知らない。

全く別な視点から見てみよう。
「オーディオはスペックではない」
「人間は測定器ではない」
「オーディオは楽しむもので測るものではない」
そう言っている人たちが一方にいるのも事実だ。
彼らは言う。
測定値の差のあるなしで悩むより、
なぜ音の違いが出るのかで悩むより、
まずは実物と対峙して、
虚心坦懐に音を聞いてみて、気に入ったなら、それを取ればよい。
そして自分の耳で聞いていないものについては良し悪しは言わない。

私はそう達観したい。
そんなふうに悟ってみたい。

しかし、都市伝説は後を絶たない。
私はフラフラする。
正気と狂気の狭間。

最近、新たなオーディオの都市伝説を聞いてしまった。
CD-Rドライブの決定版、
PCオーディオ用CDリッパーの超定番にして
最高の性能を持つと言われる
Plextor製 Plexwriter premium2 専用のクリーン電源が
SAECから限定発売されたというのだ。
SDP-0512である。
なんと定価189000円!
私は一桁ゼロのつけ方を間違えたのではないかと疑ったほどだ。
Plexwriter premium2自体、今はディスコンだが、
2万円ほどのドライブに過ぎないのに。
こんなに高価であるにも関わらず、
SAECによると
最初のロットは発表直後のほぼ一日で売り切れ。
その後もどんどんオーダーが入る状態とか。
限定50台というのが効いたのか?
あまりの反応の良さに驚いているという。

そんなもので音が変わるはずがない。
リッピングドライブの電源をクリーンにしたら、
リッピングデータが変わるのか?
まさか。
リッピングはバイナリ一致が全てのはず。
電源をクリーンにしないとデータに閾値を超えるノイズが乗る?
それ本当?

そう考えた次の瞬間、
私はプチ達観した。
とりあえず、これを買おう。
次に耳鼻科に行こう。
自分の聴覚が
少なくとも医学的に問題ないことは確かめておきたい。
なにしろこれは、私にとっては「都市伝説」なのだ。
そこで正常と判定されたら
その電源でリッピングをして、
吸い出されたデータを聞いてみよう。
そして、それから考えよう。
とにかく、自分の耳で音を聞かずして、
効果がないと決め付けることは、
できないじゃないか。

外観:
到着したSAECのSDP-0512は
Plexwriter premium2よりわずかに大きなグレーの筐体である。
SAECらしい色合い、SAECらしいフロントパネルの面取り。
いかにもマジメな日本の製品という雰囲気である。
両サイドパネルはヒートシンクであり、それなりの発熱は予感される。
このヒートシンクはエッジが立っていて持ちあげる手が痛い。
フットは低い四つ足である。
天板にはビスの頭が多めで、ガッチリと作られた筐体のように見える。
Chikumaの高級タップもウラを見ると、ビスの頭数が多かった。
背面にはAC入力があり、
高価な電源ケーブルをあえて差し込むこともできる。
私はSAEC独自の2P電源ケーブルである、PL3000Dを挿してみた。
いわば純正組み合わせである。
このAC入力に並んでXLR端子が一つあり、
これがPremium2へ行く12VのDC出力だ。
ここから出る20cmくらいの
短いMINI DINコネクターケーブルで
Premium2とSDP-0512は結線される。
このケーブルの長さは少し短い。
Premium2とSDP-0512は重ねて置かざるをえないような長さだ。
並べて置くこともなんとかできるが、とても近くに置くしかない。
ヒートシンクが鋭いので、その置き方は困る。
異なるラックの段に分けて置きたい場合、これでは短すぎる。
全体にチープ感は少なく、
約19万円の機械の外観として、見合わないわけでもない。
また、ずっしりと重い。
対になるPremium2の方がはるかに安っぽい筺体と言わざる得ない。
こちらはかなり軽く感じる。
SDP-0512の天板をあけると中身にはギッシリと部品が詰まっている。
高透磁率方向性珪素鋼板を用いた内部絶縁トランス、
アモルファス系コアを利用したコモンコードチョークコイル、
リニアテクノロジーのLT1085(レギュレーター)等の
音質対策品を奢っていると言うが・・・。

このようなPCオーディオ機器用の電源はSAECだけでなく、
CSE, Acoustic revive, Audio design,
NSIT,エルサウンド等から出ているが、
なぜか日本のメーカーが多い。
このようなピュアな電源への関心は日本的発想なのだろうか。
ただし、
Plexwriter premium2専用というクリーン電源はSEACのみだし、
付加的な機能なしで、これだけの価格のものも、
現在のところ、この製品のみである。

音質:
とりあえず事情を説明し、簡単に診察と検査を受けたものの
迷惑げな微笑とともに追い返された。
もちろん、診断書などは出してもらえない。
これは予想された結果だ。
正常範囲内ということらしい。
ただし、耳の掃除だけはしていただいた。

オーディオに関心のない人々を巻き込むのも、
ほどほどにして本題に入ろう。

まず、XPの入っているノートパソコンを
Premium2にUSB接続、付属の電源アダプターから給電しつつ、
CDをWAVでリッピングする。
ソフトはdB power AMPを用いる。
次に付属の電源アダプターを外し、SDP-0512をつなぎ、
ここから給電するようにする。
他は全く同じ条件でPremium2で同じCDをリッピング。
今回はどれでもアキュレート・リップの表示が出た。
こうして、同じタイトルで
リッパーの電源のみが異なる二つのWAVファイルが出来た。
なお、
バイナリが一致するかどうか等の測定や数値の検討はしない。
バイナリ一致のためにオーディオをやっているわけではないし、
それは、その方面に関心のある方がやって下さるにちがいない。
自分の耳にはどう聞こえるか、それが全てだ。

さて、二つのWAVファイルを
KLIMAX DSにつないだヘッドホンシステムで聞き比べよう。

ウーム、認めたくないが、微妙な差があるように感じる。
確かに。
オーディオでは、なにをやっても音は変わると言う人もいるが、
そういうことなのだろうか。
僅かながらだが、細かな音がより聞こえやすいデータになったようだ。
ディテールに生命感が宿ったように聞こえる楽曲が確かにある。
特に電源を24時間入れっぱなしにした後で、
リッピングすると、
ON直後のリッピングよりも効果がはっきりとしたように思う。
新電源でリッピングしたデータは
弱音の存在感が増したような印象がある。
余韻の伸びがあり、音楽がなかなか終わらない。
もとは、そんなにノイズがデータに乗っていたのだろうか。
ノイズが減ると読み取り精度が上がるのか。
この音の変化の原因はどうもよく分からない。
また、音楽の流れがより滑らかに聞こえるような気もするので、
より、聞きやすくなった印象もある。
逆に若干おとなしくなってしまったとも言えるところもある。
しかし、驚きのあまり、詳述したくなるほどの、
大きな変化量ではないのも確かだ。
レンジの広さや音の歪みの少なさ、
音の立ち上がり、立ち下り、帯域バランス、スケール感等、
それらの要素には変化はないように聞こえる。

この程度の差では
オーディオに関心のない人にとっては
よく分からない差ということになってしまうことになりかねない。
試しに、電源を換えた二つのデータを家族や友人に聞かせると、
音質が少し違うことまでは、
考えないで言い当てられる人が多く、予想外だったものの、
強化電源の方が、音がイイとした人は
案外少なかったのも予想外だった。
音の好みの問題はありそうだ。

以上、
俄かには信じがたいが、買って試してみると、
僅かだが、確かに音は違うと結論せざるをえない。
ただ、この音の変化を良い変化と感じるかどうか、
そして、この変化量と価格のバランスをどう考えるか。
これは個人の判断にゆだねられることになるだろう。

そもそも
"Plexwriter premium2が最高のリッピングドライブである"
という話からして当初は「都市伝説」だったかもしれない。
しかし、
これは今となっては
多くのユーザーが認めているので
「都市伝説」から「実話」に格上げになっている。
バイナリ一致とかいう話をするなら、
ある程度のレベルの製品であれば
どのドライブでも同じ結果を得るはずである。
なのにPlexwriter premium2をあえて最高という人は、
バイナリ一致のみで音質の良し悪しが語れないのを
自分で認めてしまっていることになりはしまいか。
そこから敷衍していけば、
電源が違えば、データの質も変わってくるということも
全否定することはできないように思う。
やはり、リッパーとして
わざわざPlexwriter premium2を選んで買った方は、
この電源を使ってみてもいいのではないか。

とにかく、
恐れていたことが現実のものとなった感もある。
こうなるとリッピングをやり直さなくてはならないかもしれない。
ああ面倒だ。

また、
Acoustic revive, Audio design等から出ている電源で、
このPlexwriter premium2を駆動できた場合の
音質変化も気にはなる。
やはり量的には微妙な差なのだろうか。、
変化の質自体も違うのかもしれない。

試しにSDP0512はそのままで、
電源ケーブルをPillar AC2に換えてリッピングし、音質を比較する。
こちらはさらに微妙になるが、
何回も繰り返して聞きこみ、
念入りに比較すると、やはり差があることが分かる。
SAECの電源ケーブルに比べてわずかに柔らかく広がる感じだ。
やはり電源の質が
リッピングデータになんらかの影響をおよばしているのだろうか。
しかし、こちらはさらに微妙な差だ。
これは普段のリスニングでは、ほとんど意味がない差かもしれない。

別な視点から見れば、
総計数百万の再生システムの大元となる
音楽データを吸い出す機械が、
チープな電源アダプターで動く、
汎用のCD-Rドライブで、良いかどうかは
議論の余地のあるところだったので、
こういう電源が出て、
選択枝が広くなったのは、なにも悪いことではない。
事実、こうして、
リッピングをしているこの機械を眺めていると、
今までにない安心感を得られた気もする。
なにか、いままで頭に引っかかっていたものが
あるいは、つかえがスッととれたような。
やはり、あのチープな電源アダプターは
精神衛生上、よろしくはなかった。
やはり、オーディオファイルというものは
カッチリと作られた
いかつい電源BOXを眺めるのが好きな人種なのだ。

繰り返しになるが、
この程度の音質変化では、
この価格には必然性がないという意見は、
やはり出てしまうかもしれない。
SAEC SDP-0512は
CDリッピングの可能性をトコトンまで突き詰めてみたい、
PCオーディオの可能性の全てを試してみたい、
そういうエンスーな方々のための限定アイテムである。

試していないが、
この電源はPCオーディオにおけるリアルタイム再生では
もっと明確に威力を発揮できるものと思う。
しかし、どうせそれをやるなら、
普通のCDプレーヤーを使うべきとしか私には思えない。
したがって私はその音質変化についてはテストしていない。

まとめ:
ネット上では、この電源に関しての感想が、既に掲載されている。
その方によると、音はいい方向に変わり、値段なりの価値があるとか。
(ただこれはリアルタイム再生での音質らしいから参考にはなりにくいが)
こんな感想が出てしまうと、
人気のPCオーディオ分野の機器であるから、
いくら割高とはいえ、
50台などアッという間に売り切れてしまうかもしれない。

湯川秀樹博士が
「新しい真理を見つけたときは常に少数派である」と言っている。
デジタルオーディオの全く新しい真理、
音質を左右する全く新しい要素が見つかったとき、
それはいわゆる「都市伝説」扱いだろうし、
それを実践する人々は、きっと初めは少数派には違いない。
CDリッピングの電源の質が、
その新しい要素として加わる時代は来るのだろうか?
私自身、
未だに確信は持てないのだが、
もしかすると、その時代は、もう既に来ているのかもしれない。

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