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東京都在住のオーディオマニアです。リビングオーディオです。狭いスペースを与えられてやっています。MPS-5,Marklevinson No32Lなどを愛用中。クラシックはほとんど聞かず、ポップス、ラッ…

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日記

ASUKA AS-FIL1500 アスカ マスターラインフィルターの私的レビュー:いつか見た青い空

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2012年01月18日


私は見たことがある。
この東京ではもう見られないであろう
宇宙まで透き通るような真っ青な空を
遠い昔に見たことがある。

私は北国の生まれだ。
自分が小学生を過ごした町は
本当に田舎町で、家の周りは畑ばかりであった。
土地の使い方は本当に広々としていて、
地平線というものが見えた。
冬夜の猛吹雪が嘘のように晴れた朝。
ソリを曳いて、
真っ平らで真っ白な大雪原をラッセルし、
その真ん中あたりまで来て、真上を見あげると、
雲ひとつない真っ青な空が、
私の頭上に巨大なドームを作って冷え切っていたものだ。
小学生の頃に見た
あの冬のシェルタリングスカイのように
澄み切ったサウンドに出会いたい。

ASUKAという日本企業が、
最近、
立て続けに冴えたオーディオアクセサリーを開発している。
ラインケーブルやインシュレーターなど、
音響上の各要素のバランスの取れた優品ばかりだが、
私が最も興味を惹かれたのは、
マスターラインフィルターと名づけられた
電源ノイズフィルターである。
(今回、お貸しいただいた関係者の方々に感謝申しあげたい。)
このフィルターは
100kHz以上で80dB以上のノイズ減衰度を謳っている。
これほどのスペックを誇る
電源ノイズフィルターはかつてなかった。
コンシュマーオーディオにおいては、
過剰とさえ言えるスペックの追求により、
他社製品との音質上の差別化を図ろうとする、
ASUKAのオーディオ事業部の姿勢。
その意気や良し。
これは
日本的なオーディオ機器開発の典型的コースのひとつではあるが、
その追求の深達度、
いささか典型的とは言えないレベルにまで深まっているようだ。
今回は、その追求の軌跡を追っていく私的レビューとなるだろう。
その軌跡の尽きる場所で、果たして、リスナーは何を見るのか?

約束の場所に広がっていたのは、いつか見たあの青い空だった。

外観:
鏡面仕上げの筐体はズッシリと重く、とても大きく感じる。
440×232×193mmという寸法の重圧がある。
一口しかコンセントがない電源ノイズフィルターとしては
私の知る限り最大のものである。
このモノラルパワー並みのボリュウムマスを眺めていると、
もう少し小さく作れたらと思う。
一つのコンポーネントに
一つのラインフィルターというコンセプトらしく、
一口しかコンセントがついていないわけだが、
やはり不便は不便だ。
価格としては約30万円と
それなりの価格になってしまっているのだし、
一台一台の大きさもかなりのものだから、
多数を導入するのは事実上困難だ。
グレードを落としても、
電源タップのような感覚で使える製品も期待したい。
セカンドモデルとして考えれば、
ブランドイメージ上でも問題なかろう。
(実際、電源タップも計画されているようだが)

トップに誇らしげにあしらわれた
ロゴマークプレートの大きさもオーディオアクセサリー界最大だろう。
モノが良いのだから、
こんなに大きくロゴを見せる必要はないかもしれない。
しかもフロントパネルにも、控えめなロゴがプリントされてある。
この小さいロゴだけでも良かったのではないか。
ピカピカの鏡面仕上げのステンレス製大型筐体で、この巨大ロゴ。
部屋に据えてみると、かなり目立ち、押し出し感はある。

この電源フィルターにはトグルスイッチがついていて
ON/OFFする機器である。
(OFFにしたからといって
フィルタースルーで電源が供給されるのではなく、
単純に機器に電源が供給されなくなるようだ)
いままで、いろいろな電源フィルターを試したが、
多くは、電源ケーブルを両端に結線さえすれば
機能する、簡素なものであった。
マスターラインフィルターはスイッチが必要なくらい、
特殊な機構を採用しているのかもしれない。
7段にわたるパイ型フィルター、基盤の対称性配置、
2mmの銅単線によるワイヤリング、電磁方式ブレーカー等、
情熱的な構成が発表されているが、
その詳細はシークレットである。
なお、ほぼ全く発熱はないようだ。

また、このトグルスイッチは下に下げるとOFFだ。
素人考えだとラック付近に作業に入ったとき、
うっかり触れてOFFにしそうであるが、
それはないと言いたいのだろう。
これは電源ケーブルの真下に配置されているからだ。
この隙間に足は入らない。
ここまで考えているところを見ると、
よほどこのトグルスイッチが使いたかったのだろうか。

あえて言わせてもらえば、
ラインフィルターに
電源スイッチはないに越したことはないように思う。
家電製品の一般常識として
スイッチをONにしたまま、電源ケーブルを差し込んだ場合、
突入電流から機器を守るため
ヒューズ、ブレーカー等の保護装置が
切れる、あるいは落ちることがある。
その後はヒューズを入れ替えるなど、復旧作業しないかぎり、
機器は稼動しなくなるが、
大抵のオーディオ機器では
素人には復旧できない、あるいはさせないことになっている。
面倒は困るから、いつも神経質なほどスイッチのOFFを確認して
慎重に電源ケーブルを差し込むのだが、
オーディオ機器の約半数ほどは
電源のON/OFFがややわかりにくい位置に
スイッチが置かれているような気がする。
目視による確認が、かなりしづらい場合もある。
(LINNのKLIMAXシリーズなどは最高に確認がしずらい。)
このラインフィルターの場合も、
電源ケーブルが差し込まれている状態では
ON/OFFが見やすい位置にあるとは言えないし
LEDの光で知らせてくれるわけでもないので、
この確認をラック裏でやることにはストレスを伴う。
またシステムが上手く働かないときの
確認作業もひとつ増えてしまう。
さらに、一概には言えないものの、
スイッチは接点を一つ増やし、
音質を劣化させると唱える向きもあって、
そこが心配になる神経質なオーディオファイルもいるにはいる。
音質や安全のためとあらば、いたしかたないが、
やはり、ない方がよいとは思う。

さらに言えば、
ON/OFFの表示がシールであるのも私は好きではない。
経験上、シールはいつか必ずはがれるし、
張りなおしたときに位置を取り違えるおそれもある。
なにかの拍子にシールがはがれて、
どっちがONだかOFFだか分からなくなることは想像したくない。
このクラスの機器は長く使うことを前提としたいので、
印刷か彫刻が望ましい。
(実際、ブランドロゴはプリントされてすぐ横にあるではないか)

フィルターの一口コンセントの部品そのものは
一見、通常のもので特殊な音質対策品には見えなかった。
しかし、よく考えると一口コンセント自体、やや珍しいものである。
これはフルテックか、どこかのオーディオグレード品なのだろうか。
差込みの食いつきはしっかりしており、不用意に抜けそうにない。

ボトムプレートはなんと12mm厚のアルミ合金製。
それを支えるフットは4点支持であり、
ASUKA独自の特殊金属製のインシュレーターが奢られている。
この足は双晶構造を持つ、
日本製の金属材で作られており高い制振性を誇る。
形状はスパイクではなく、広い面で接地し、高さ調節はないようである。
この電源フィルターの底面は、この手のアクセサリーとして、
異様なほどガッチリと固められているのが印象的。
これは音にも効いているだろう。
また、ボードと足の精度から見て、
これを置く床はある程度以上には平坦であることが望まれる。
でないと足が浮いてしまう。
このクラスの機器なので、できれば専用ボードを誂えたいものだ。

今回試聴したマスターラインフィルターの型番はAS-FIL1500-7であり、
入出力100V/200V対応で定格20A、トランスがないタイプである。
このモデルの上に
ノイズフィルター用の新型トランスを搭載したものが存在し、
そちらは50万円とさらに高価だが、
さらにノイズに対する免疫がさらに高いものという。
過去にも電源にトランスを導入したことはあるが、
好みの音になることが皆無であったので、今回はパスした。

この電源フィルターのつなぎ方は様々考えられる。
一台しかないなら、電源タップにつなげることが考えられるし、
音声の大元であるプレーヤーにつなぐのもよい。
またプリアンプにつなぐのもアリである。
もちろんヘッドホンアンプでもよい。
プリメインアンプ、パワーアンプに対しては
消費電力の上限があるので、なんでもとは行かないが、
つなげないことはない。

いろいろとやってみると、最も良いのは一台なら
プレーヤー、プリアンプ、ヘッドホンアンプがいいようだ。
電源タップにつなぐと効果は明らかに薄れる。
逆に以上の機器についてであれば、
どれにつなげても、
変化の質と量は大きく変わらないことも分かった。
以下は、それらの機器につなげた場合のインプレッションである。

なお、今回は、
大元のコンセントから
マスターラインフィルターに到る電源ケーブルは
ACデザインのごく普通のケーブル(ZERO1.4)を使用し、
マスターラインフィルターから機器へと到るケーブルは、
通常使用しているものをそのまま使った。


音質:
私の場合、なにかを試聴すると、まず何らかのイメージが浮かぶ。
そのイメージを背景として、
聞こえている音に意識を集中し、音の特徴を聞き取ろうと努力する。
そのイメージはオーディオの原風景であり、
私的レビューを書くうえで最も重要なものだ。

このASUKAマスターラインフィルターをSACDプレーヤー、
あるいはプリアンプ、ヘッドホンアンプに接続して、
得られた音風景は、小学生の頃に見たあの青い冬空だった。

一言で言うと、よりクリアーなサウンドに変貌する。
クリーンであると言ってもよい。
全域にわたってすっきりとし、
ノイズが取れている印象がはっきりとある。
ただし、
このクリアネスは他社のこの種の電源装置とはやや異なる趣きを持つ。
音の力強さ、そしてスピード感を伴ったクリアネスなのだ。
この極めて「速力」のある透明感は、
電源に付加する装置による変化としては
ほとんど未体験の領域のものであり、
システム内での
ASUKAマスターラインフィルターの存在感を強烈に印象付ける。

この速力は躍動感の向上や、音の輪郭の明瞭化をも生み出しており、
各帯域に好ましい変化が聞いて取れる。
高域のヌケが導入前よりも向上したという印象はないが、
より明るく、輝かしく感じられる。
このブリリアントな高域はカラフルであり、若干、派手か?とさえ思う。
中域の透明感、明瞭度、立体感は確かに増しており、
カツゼツのしっかりした、
小気味よいボーカルが聞けて、満足度が高い。
低域は、柔らかくほぐれる印象はなく、
スケール自体は、ややコンパクトにまとまってしまうが、
解像度が増すうえ、音の動きが良くなり、愉しく聞ける。
特に、中低域での音の小回りが効き、フットワークが軽くなることは、
とにかく他の電源装置ではあまり感じられない部分だ。

このマスターラインフィルターの特徴として
ガツンとリスナーに音をぶつけるような局面のある音楽で
出音が意外なほど鈍らないことがある。
この音のインパクトの、グッと来るような手ごたえは、
電源装置をかませていることを考えると、かなり立派と言える。
一般に電源フィルターでは、音の衝撃感はややソフトになり
クリアネスとトレードオフの関係にあることが多いのであるが、
この欠点が、技術的に巧く回避されていることに
いささかの驚きと賞賛を禁じえない。

他方、このフィルターを通すことで、
マッタリとしたゆとり感や、
香るような艶情、人肌・木質の暖かさが
付加される兆しはほとんど感じない。
これは、もともとの機器が
そのような風情をすでに持ち合わせていれば
そのまま、表に出てくるであろうが、
そのような分野に対して影響力はないようである。

また、
このフィルターを通して通電すると
音場の見通しは良くなるが、奥行き自体はややこちらに迫ってくる。
ライブで言うと、ややかぶりつきに近い音場展開となるようだ。
音像は一歩リスナーに近づいて、迫力を増してくるが
定位感はあいまいにならず、むしろ見事に整理されて、
キレイサッパリと提示される。
この音場の清潔感も電源フィルターを入れた効能のひとつ。

こうして、音がクリアになった分、
出音は若干スレンダーな感じ、
あるいはややソリッドな、硬い感触に傾くようになり、
音楽の温度感もわずかに下がる印象がある。
この音場の気温の微妙な降下が
冬空を想い起させるところでもある。

これらの効果は、
そもそもスピーカーシステムほどの音場感のない、
ヘッドホンアンプで使っても
十分に確認できるのが面白い。
このフィルターの生み出すクリアネスは
もともとノイズが耳につきやすい
ヘッドホンリスニングでも絶大な威力を発揮する。
おまけに躍動感がスポイルされないので、
ヘッドホンアンプの格が
一段上がったように感じられることもあろう。
ただ、
ヘッドホンアンプと比べて
つりあわないほどに大きな、
このラインフィルターを
システムのまとまり方として、どう考えるかというのはある。

マスターラインフィルターをシステムに加えたサウンドというのは
総じてクリアかつ勢いのある音調として聞けるもので、
何も足さない、何も引かないと宣言して
すましている感じのオーディオではないと思う。
むしろ製作者の熱い思い入れが感じられる音だ。
その熱は電源フィルターという機器を通して、
この速力のある、
クリスタルクリアーなサウンドとして昇華したようだが。

電源フィルター、電源コンディショナー、
クリーン電源、ノイズカットトランスと名づけられた電源機器たち。
メーカー名だとトランスペアレント、アキュフェーズ、NSIT、
CSE、アコーステックリバイブ、シュンヤッタ、MIT、光城、
サウンドナイト、フルテック等。
これらを強い関心をもって試用してきたが
このASUKAの音のレベルに達しているものは
私の経験上、皆無のように思われる。

元来、
オーディオのアプローチとして
電源をクリーンにして高音質を得ようとするのは全くの正攻法だ。
先ごろのラスベガスのオーディオショウでは
ジェフ・ローランドが自社製品に汎用的に使えるものと思われる、
新型の電源ユニットを展示していたようだ。
あちらはバッテリー方式を愛するようだが、
ASUKAはあくまで商用電源を純化する道を選んだ。
しかし商用電源のクリーン化は何かを犠牲にすることも多い。
ノイズが減ると、
スピード感や躍動感はスポイルされる傾向にあり、
これを防ぐために様々な工夫が望まれる。
その工夫の技術的な到達点の一つとして
ASUKAマスターラインフィルターを
第一に挙げてもいいではないか。

まとめ:
ASUKAマスターラインフィルターは、
いままで聞いた電源ノイズフィルターの中では、
最優秀の音質を実現するものの一つのように思われる。
スペック追求に捧げる無垢かつ無私なる思いの結実であり、
実に日本的なオーディオアプローチの勝利を見た思いだ。
この、日本晴れの大空を思わせるサウンドは、
雑誌、ネット等を調べるかぎり、
ごく僅かなレビューを除いて、ほとんど知らされてはいない。
確かに、
この値段の高さと大きさ、一口コンセントであることは
この製品にとっての災いである。
しかし、たとえ一台でもシステムに加えれば、
たちまち効果を表す電源デバイスであることは保証してよい。

このマスターラインフィルターは
新たな電源に芸術性の付与を求めるオーディオファイルには
あまり向かないモノだし、
安価に大幅な音質のジャンプアップを目指す向きにも
手放しで、お薦めはできない。
しかし、
自身のオーディオシステムに自信のある方、
既に、
かなり高いレベルの音を出せているのだが倦怠期に入ってきた方、
オーディオを高品位にリフレッシュするのには
格好の電源フィルターかもしれない。

ともあれ、今日のところは
晴れた冬空の青さの下、
銀色の筐体を眺めて、気分よく音楽を聞こう。
日本の技術の勝利に無言の快哉を叫びながら。

追伸:
上奉書屋は2012年度より万策堂として独立しました。ご興味のある方はどうぞ。

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